【少女の想いは渋皮モンブランのよう】

立津 てと

「ほら!先輩、見て見て!ケーキセット680円だって!アタシ、これにするぅっ!先輩もこれでいいですよねっ?」
「えぇ~、さっきパスタ食べたばかりじゃん。オレ、ケーキなんか要らないよ」
「ダメです。先輩はモンブランを食べないといけないんです」
「コーヒーだけでいいって。それに、なんでモンブランなの?」
「だって、アタシ、ミルフィーユかモンブランか決められないですもん。渋皮モンブランですよ」
「それがどうしたの?」
「それがどうしたって、栗ですよ、栗!旬じゃないですかっ!」
「じゃなくて、なんでモンブラン食べないといけないのって」
「だからぁー、アタシはミルフィーユにするんで、先輩はモンブランなんですっ!」
「えぇーと、ヒロちゃんが両方食べたいだけとか」
「さっすが先輩、ご名答!じゃあ、注文するねっ」


「いや、だから待ってって。オレ、今、ケーキなんか食べられないよ……」
「もぉ、どぉしてそういう冷めること言うんですかぁ。もし今日で地球が滅亡したらどうするんですか。アタシ、このままケーキ食べないで地球が滅んだら……悔しくて死んでやるもん」
「あのねぇ……地球が滅んだらね、わざわざ自殺なんかしなくても死ぬよ」
「はぁ……何マジレスしてるんですか、そこ笑うところでしょ。ホント、先輩ってドンなんだから」
「何?今の、冗談なの?ドンって何?」
「もぉいいです。そういうのをドンって言うんです」
「アレ?なんかヒロちゃん、怒ってる?」
「怒ってなんかいませんよぉーっだ」


「分かったよ。ケーキセット2つ頼めばいいんだろ?モンブランとミルフィーユだね?」
「なんで、そんな投げやりのイヤイヤ感丸出しなんですかぁ?」
「そ、そ、そんなことないよ」
「そんなことありすぎですっ!」
「いやいや、なんかそのぉ、ヒロちゃんと喋ってたら、本当にケーキが食べたくなってきたよ」
「キャハハッ!メッチャ無理してるぅ……」
「違うって!」
「要らないんなら、先輩は食べなくてもいいです。アタクシが、モンブランも食べて差し上げてもよろしくてよ」
「結局二つ頼むんだね」
「何言ってるんですか。当たり前じゃないですか。そして、先輩が奢るんです」
「何となくそんな気はしてたよ……」


「いいじゃないですかぁ、こんな日なんだから、ケーキぐらい奢ってくれたって」
「はいはい、もちろん、奢りますよ。いや、奢らせて頂きます」
「何ですか、ソレ。嫌味ですかぁ?いいですよ、いいですよ。自分で払えばいいんでしょ」
「ごめん、そんなつもりじゃ……」
「許してあげないからっ!」
「ホント、ごめん。じゃあ、こうしようか。お詫びにケーキセットご馳走させてくれる?」
「何だ、分かってるじゃん。さっすが先輩!最初からそう言ってくれなきゃ。こんな日ぐらい、楽しく過ごしましょ」
「さっきから、こんな日、こんな日って、どんな日のこと?」
「オホホホ、ソチはのぉ、清々しい秋空の元、絶世の美少女とティタイムを過ごせる特権を得たのでございますわよ」
「ははは……絶世の美少女って、まさかヒロちゃんのこと?よくもまぁ、自分で……ははは」
「そこは笑うところじゃないんです!」
「えっ?冗談じゃないの?」


「はぁ……前から分かってたけど、本当に先輩ってドンなんですね」
「だから、ドンって何なの?」
「もぉ、ドンってのはね、先輩のことです!」
「説明になってないよ」
「大体、何っすか。折角のデートなのにそのやる気のない普段着は。もぉ、信じられない。何で寝癖つけたまま来るかなぁ……」
「ヒロちゃん、この後誰かとデートするの?」
「何てこと言ってるんですか?この後は映画観る約束でしょ!ちゃんとビリヤードも教えてもらいますから!ディナーも一緒にって言ったじゃないですか!」
「だって、さっき折角のデートだって……」
「はぁ?先輩、いい加減にしてください。怒りますよ。先輩とヒロがデートしてるんです!」
「えっ?これってデートだったの?」
「もぉっ、どこまでドンなんですかっ!」
「だから、ドンって何?」
「先輩のことですっ!」



(了)

【少女の想いは渋皮モンブランのよう】

【少女の想いは渋皮モンブランのよう】

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-11-29

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