白いたんぽぽ
「なんでこんな人間なんだろう?」
たんぽぽを持ったあなたはフーッと息を吹きかけながら飛んだ白い綿を目で追いかける
「私って人より駄目なんだ」
あなたをちらっと見ると嬉しそうにあなたは微笑んだ
「たんぽぽ、全部飛んでった」
フワフワの白い綿は風に乗って揺れて遠くへ見えなくなった
「昨日私がここにいたら、たんぽぽは何処にも飛んでいかなかったかも。」
「私が、明日ここにいたらたんぽぽはもう飛んで無くなってたかも。」
たんぽぽの話しなんて… 私がそう言い掛けた時、あなたはこっちを見た
私はドキッとした
「あなたが昨日、ここにいたら私には会えなかったかも。あなたが明日ここにいたら、私はもういなかったかも。」
「そんなこと、あり得ないでしょっ」
言い終えた後、俯きながら噛んだ唇が痛かった
フワッと風の気配を感じて、白い綿が沢山流れていくのが見えて、パッと横を向いたら
沢山の白い綿になったあなたは何処にもいなくって、多分あなたであるあなたは風に揺れて何処までも飛んでって見えなくなった
「今日、あなたに会ってなかったら、あなたは明日ここにはもういなかった…?」
誰も答えてくれない問いかけの中に、風の微かな音が混じった
「どうしてこんな人間なんだろう…?」
私が知りたかったのは、多分そんなことじゃあ無くって
隣に、あなたがいて、私がいて、
その横を沢山の命が通り過ぎてって、
あなたがただいてくれたらそれで良かったのに。
こんな問いかけに、答える訳でもなくただ隣で聞いてくれるあなたがいてくれたら、それで良かったのに。
白いたんぽぽ