銀色のフォーク

「駄目だ 駄目だ 駄目だ 駄目だ」

銀色のフォークが溶けて垂れて床に滴り落ちた

それをそっと撫でた私は舌の上へ運んだ

ざらざらとした食感が喉の奥を滑る

そのフォークを飲んだ時に沢山の白い目が私を見た

「そんなことできっこない」

泣きながら全てのフォークを舐め飲み込み終えると沢山の白い目が私から目線を逸らした

「そんなことできこっない」



深い底から見えたのは、差し出された沢山の手

いざその手に届きそうになると、その手はいなくなった

登っても登っても辿り着けないのは

手も出口もずっとずっとそれは相手の心にしかないものだから

優しい顔で、私に抜かされることを恐れたそれは、私が手を掴むことをギリギリで何度も拒んだ


暗闇で私が

銀色のフォークを飲み込んだのは「できっこない」と白い目が言ったから

認められたかった私に待っていたのは、背けられた白い目

そこには飲み込む前と同じ、私の前にはただぼやけた霧しかなかった

やっと気づいた

もう一度銀色のフォークの味を身体中で感じたら茶色いナプキンを首に巻きつけて

あなた達が飲み込めなかった銀色のフォークで鋭く肉を突き刺し、ナイフで引き千切り口に運ぶ

肉の味を噛み締めたら

私の中にある、掴めるものを信じてもう一度深い底から爪を立てる

二度と求められてもあなた達を求めない

白い目を二度と思い出さないように

差し伸べられた手を追い越して這い上がる

銀色のフォーク

銀色のフォーク

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-11-27

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