銀色のフォーク
「駄目だ 駄目だ 駄目だ 駄目だ」
銀色のフォークが溶けて垂れて床に滴り落ちた
それをそっと撫でた私は舌の上へ運んだ
ざらざらとした食感が喉の奥を滑る
そのフォークを飲んだ時に沢山の白い目が私を見た
「そんなことできっこない」
泣きながら全てのフォークを舐め飲み込み終えると沢山の白い目が私から目線を逸らした
「そんなことできこっない」
深い底から見えたのは、差し出された沢山の手
いざその手に届きそうになると、その手はいなくなった
登っても登っても辿り着けないのは
手も出口もずっとずっとそれは相手の心にしかないものだから
優しい顔で、私に抜かされることを恐れたそれは、私が手を掴むことをギリギリで何度も拒んだ
暗闇で私が
銀色のフォークを飲み込んだのは「できっこない」と白い目が言ったから
認められたかった私に待っていたのは、背けられた白い目
そこには飲み込む前と同じ、私の前にはただぼやけた霧しかなかった
やっと気づいた
もう一度銀色のフォークの味を身体中で感じたら茶色いナプキンを首に巻きつけて
あなた達が飲み込めなかった銀色のフォークで鋭く肉を突き刺し、ナイフで引き千切り口に運ぶ
肉の味を噛み締めたら
私の中にある、掴めるものを信じてもう一度深い底から爪を立てる
二度と求められてもあなた達を求めない
白い目を二度と思い出さないように
差し伸べられた手を追い越して這い上がる
銀色のフォーク