時を止めて#1

時を止めて#1

テストで0点をとった。

苦手な数学で。

高校1年、中間テスト。

まさか、とは思った。でも、まさか自分が0点だなんて。

不思議と、全然ショックではなかった。

当たり前だ。こんな、マンガでしか見たことのない様な点数を取ってしまったのだから。

友達にも言ってない。

親になんて言えるわけない。

だから、家に帰ったらシュレッダーにかけよう。うん、そうしよう。

なんて、寒空を見上げながら思った。

そんな、初冬のある日のこと。



1、 冷めたココア

「まぁまぁ、そんな落ち込まないで。次挽回すればいいですよ。」

数学教師に慰められる。

情けない。

チャンスは与えてくれた。けれど、プライドはズタボロ。

もう、今にも泣きそう。

「沙耶―!!!!どーだった?そんなにヤバいの?目ぇ死んでるよーっ」

友達に大声で言われる。

みんなはきっと、0点だなんて思いもしていないだろう。

でも0点なんて言えるわけない。言った時点で、一生馬鹿にされるし。

後悔先に立たず。

いまさら、後悔なんかしても遅いのだけど。

でも、当たり前に後悔するでしょ?

「塚本、もしかして0点とか?お前ならありそうーーー!!」

げっ。

隣の席の綾野武が冗談のつもりっぽく馬鹿にしてくる。

うん。図星。

綾野も相当悪かったらしいけど、0点ではないらしい。

第一、 普通に勉強してれば5点だって余裕で取れるテストだったのに。

開始直後、真っ白になったあたしの脳内。

それは、高校受験の時にも通ずるものだった。

それでよく、特進に入れたものだと思う。

いくら他の教科がよくたって、数学があれでは。

志望校の幅が異常に狭まってしまったのも、数学が足を引っ張ったからだ。

あぁ。

数学なんて、何でこの世にあるのよ。

二次関数だとか、三角比だとか、日常で使わないでしょ?

一生、数学から逃れられないの?

滅びちゃえ。

滅びちゃえばいいのよ、いっそ。

あぁ、もう、ほんといや!!!


まだニヤニヤしている綾野を尻目に、あたしは7時間目の終了を告げるチャイムと共に教室を飛び出した。

時を止めて#1

時を止めて#1

塚本沙耶、高校一年生。 ごくごく平凡に、今まで生きてきた。 だが、最近そんな日々に不満を抱き始める。 そんなある日、ある人との出会いによって、沙耶に人生が少しずつ変わっていく。 カフェを舞台に繰り広げられる、不思議なラブストーリー。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-10-28

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