メシア篇其の2

これちかうじょう

メシア篇其の2
  1. 5月8日(月)
  2. 5月9日(火)
  3. 5月10日(水)
  4. 5月11日(木)
  5. 5月12日(金)
  6. 5月13日(土)
  7. 5月15日(月)
  8. 5月16日(火)
  9. 5月17日(水)
  10. 5月17日、回転寿司店にて初デート
  11. 5月18日(木)
  12. 5月19日(金)

交換日記は続いています。
その経過をどうぞ。

5月8日(月)

真咲へ

久しぶりだね、ゴールデンウィーク中は何してたのかなあ?
やっぱり勉強?
俺はね、ちょっと具合がよくなくてずっと寝てたよ。
でもちゃんと学校には行こうって思ってるから、心配しないで。
約束通り、書道部にも顔出すって決めてるし。
でも書道部の奴ら、やになっちゃうんだ。
俺のこと弟だとか言ってふざけてくんの。
文化部担当の真咲から何とか言ってやってくんないかなあ?
そもそも書道部って何で俺だけなの?男子。
女子ばっかでうるさいんだよ、やになっちゃう。
中間テストはね、ちゃんと頑張るよ。
でも分からないとこあるから、後で教えてくれると嬉しいなあ。

猪瀬大地

5月9日(火)

大地へ

連休中はお産がひっきりなしに続いてて、夜中もたくさんの人が来たからあんまり眠れてないんだ。
勉強するにもはかどらないというか。
うちは父親が産婦人科医で、開業医なんだけど、
母親が助産師ってのもあって、ふたりで往診にも行くんだよ。
いずれ僕はそれを継ぐんだけれど、
それに対してはどうとも思ってないんだ、本当は。
ただ、なるべくしてなるというものかも知れないね。
大地は夢とかありますか?
僕はいまだに考えたことがないんだけれど、
将来はそういう感じです。

天野真咲

5月10日(水)

真咲へ

生徒会に戻れてよかったね。
やっぱり真咲は副会長がよく似合うよ。
藤堂先輩ともうまくやっていってね。
それと、橘ってやつのことなんだけど。
噂だけどさ、柳瀬橋と付き合ってんだって。
生徒会の副会長の見習いやってんでしょ?
いいなあ、俺も柳瀬橋と喋りたいなあ。
ミスコンの時の写真見たんだけど、カッコよかったんだよね。
あ、真咲もミスコンは見てないんだっけか?
1位の藤原先輩の美人さには負けるけど、
2位の柳瀬橋も、3位の高瀬先輩もカッコよかったんだよ。
今度写真見せてあげるよ。
でもさあ、何で藤原先輩ってあんなに美人なの?
同じクラスでもめ事とか起きないの?
なんていうか、
すんごい羨ましいというか、容姿の点で。
俺もあんだけ美人だったらよかったのになあとか思うわけ。
でも美人すぎるとあれが発動しちゃうって知ってる?
うんそう、『美人薄命論』ってやつ。
これ、中村に教えた方がいいよね?

猪瀬大地

5月11日(木)

大地へ

美人薄命論?それは何だか気になる論理だね。
まあそうだね、美人は薄命って昔から言われてるけど、
藤原は心配ないと思うよ、鍛えてるし(過度に)。
うちのクラスでは藤原に対してはもう免疫ができてるから、
喧嘩とかもめ事は起きないけれど、
城善寺が一ノ瀬と言い合いになるのは困るかな。
いつもふたりの喧嘩を止めるのは僕か、当の藤原なんだけど。
それはそうと、今度査察が入るから気を付けて。
書道部は確かに今のところ大地以外は全員女子だね。
前の査察ではいきなりお茶出されて困った経緯があるんだけれど、
今回は部費を適切に使っているかってことに焦点を当ててるから、
半紙代とかごまかさないでねって言っておいて。
それにしても美人薄命論なんて、大地も不思議な話をするね。
ちょっと興味が出てきたよ。

天野真咲

5月12日(金)

真咲へ

この前ね、俺、見ちゃったんだ。
藤原先輩が派手に転ぶところ。
あーあー、あれじゃあ本当に命まで短くなるよって思っちゃったよ。
中村、気づいてるかなあ?
それはそうとね、うちの部の女子連中はさ、
お茶入れるのが好きなんだよ。
査察って中等部時代にもあったやつでしょ?
生徒会にはよくしておけってみんな思ってんだよ。
俺はそうは思わないね。
お茶入れるくらいなら、墨汁を少しでもグレード上げろって言いたい。
筆も材質によっては書き味が違うんだ。
半紙も国産のじゃないと駄目。
今度内閣総理大臣賞取るからさ、そしたら褒めてね!
字が綺麗だってのは俺の唯一の誇れるところなんだ。
まずは県大会を勝ち抜かないとなあ。
ほら、青陵のライバル校の矢島短期大学付属だけど、
あそこに超うまい字書く奴いるんだよ。
女子だけどさ!

猪瀬大地

5月13日(土)

大地へ

今日は僕が家に持ち帰りだね、このノート。
月曜に渡す時に言おうと思ったんだけど、
本当に今、惨めな気持ちだったのが嘘みたいなんだ。
城善寺がね、こんな僕を『友達』だって言ってくれたんだ。
教室復帰した時も、クラスメイトが何も知らない中、
普通におはようって言ってくれて、
修学旅行の話もしたりして、
それが何だか救われたというか。
一ノ瀬にも言われたよ。
友達じゃなかったら何なのって。
藤原は何も言ってくれないけど、そういう会話をずっと聞いててくれるし。
もし、もう一度あの日に戻れるとなっても、
僕は戻るんだろうなと思う。
戻って、そして経過して、今に至るならば、それでいいと思ってるんだ。
こうして大地とお話してるのも、不思議な感じがしてたけど、
慣れたしね。
中間テストの勉強、分からなかったらすぐに言って。
すぐ教えるから。
まあ、僕は万年学年2位なんだけどね。
それでもいいなら、いつでもどうぞ。

天野真咲

5月15日(月)

真咲へ

本当に教えてくれんの?やったあ、嬉しいなあ。
今ね、うちのクラスでは将来、ていうか、来年なんだけど、
理系と文系、どっちにするかーって話で盛り上がってるんだ。
俺は文系かなあ。
真咲は理系クラスにいるんだよね?
俺は得意なの、現代文とか古文漢文だし。
世界史よりかは日本史の方が得意だし。
やっぱり文系かなあって言ったら、女子が「私もそうするー」って馬鹿にすんの。
なんつーか、俺のこと弟だって思ってんの、書道部の女子連中だけじゃないみたい。
どうせ俺は小さいよ、去年の身体測定では156センチしかなかったもん。
今年は伸びてるかな?わくわくするなあ。
真咲は180センチもあるんだよね、すごいなあ、羨ましいなあ。
俺はせめて、一ノ瀬先輩よりかは大きくなりたいね。
女子で176センチってすげえよ。
でも将来的に考えれば俺だって男子だしさ、伸びるとは思うんだよね。
ただちょっと無理かなあ、書道部じゃあ背中まっすぐにして書いてても、
運動はしてないんだから。
運動すると背が伸びたり体重が増えたりすんでしょ?
だとしたら俺には見込みがないなあ。
真咲はどうやって背を高くしたの?
運動してたの?

猪瀬大地

5月16日(火)

大地へ

僕は運動というか、3歳の頃から空手をやってたんだよ。
今はもうやめてるけど、中等部の2年までやってたんだ。
なんと、あの一ノ瀬は空手にテコンドー、柔道まで習ってたんだそうだよ。
だから身長も伸びたんじゃないのかな。
確かに、女子なのに176センチは大きいね。
そうそう、僕にも昔からの友達がいてね、前に大地が言ってた、高瀬なんだけど。
今は情報科学部で主席の生徒だけど、初等部時代から仲が良かったんだ。
彼は177センチあるって言ってたよ。ただちょっと痩せてるかなって思う。
将来はアナウンサーになるのが夢なんだそうで、
今も放送部で副部長として頑張ってるんだ。
ほら、式典とかの司会はみんな高瀬じゃないか。
部長の一ノ瀬はウグイス嬢として甲子園に引っ張りだこだけど、
うちの学校の放送部は鼻が高いね。
橘も生徒会と放送部を掛け持ちだし、
大変だろうけど、頑張ってくれてるから応援したい。
そうそう、橘が1位なんだってね、総合進学部1年の成績。
大地も負けないように頑張って。
背が小さくたって、何かに向かって頑張ってるっていう姿が見えると、
それはそれでかっこいいって言えると思うんだ。
僕も頑張るよ、医学部の受験。
もしかしたらだけど、留学するかもしれないしね。

天野真咲

5月17日(水)

真咲へ

留学?すんの?いつ?今年?来年?
せっかく喋れるようになったのに、つまんないよ。
もっと日本にいてよ。
大学が外国でもいいけど、高等部の3年間は日本にいてよ、お願い。
じゃないと俺が駄目になっちゃうもん。
俺が駄目になったらどう責任とってくれんの?
って、そんなこと言っても、真咲は行っちゃうんだろうね。
あー、寂しいなあ。
でもさあ、外国って、アメリカ?
そしたら毎日英語で喋るの?すごいねえ、さすがだあ。
そうだ、今度放課後、お寿司食べようよ。
勿論、真咲のおごりだけどね!
たまにはいいよね、生徒会の人間でも、帰りに食事とかすんの。
俺、寿司なら食えるんだ。
だからお願い、連れてってね!

猪瀬大地

5月17日、回転寿司店にて初デート

「久々だね、こうして一緒に歩くのは」
「…そーっすね」
あれ、と僕は思ってしまう。
交換日記と随分、態度が違う気がするんだけれど。
「どうかした?本当にお寿司をと思ったんだけど」
「いや、別に」
苦笑する。
何かが気に入らないんだろうけど、僕にはそれを知る由もないし、
手立てもきっかけも何もない。
だから、思わず笑ってしまった。
「何笑ってんだよ!」
「え?いや、別人だなあって思ってしまって」
「どこがだよ、俺はね、雨が降ってないから気分が悪いんだよ」
「ああ、そうだったそうだった。君は雨じゃないと駄目だったんだっけね」
「何を今さら」
今日は曇りを何とか続けている空は、今にも雨が降り出しそうだけれど、
この分だと持ちこたえてしまいそうだ。
「とにかく初めてのことだからさ、帰りにどこかに寄っていくってのは」
「何、緊張してんの」
「そうだね、本屋さんで参考書を買うのとは全然違うから」
「ふーん、そっか」

回転寿司とはいえ、ここは回転しない寿司屋になる。
レーンが2本敷いてあるところを、寿司が勝手に作られ、流れてくるのを取るだけなのだ。
プライバシーを保護するためなのか、脇も前も後ろも個室のようになっている。
その店を指定したのは大地の方だった。

「どうぞ、好きなのを注文して」
「うん」
僕は僕でお茶を用意する。
大地はタッチパネルでいくつか注文して、それからぐてっとテーブルに突っ伏した。
これは相当、具合が悪いんだろう。
「ねえ真咲」
「うん?」
「これってデートになんの」
「え?」
「だってふたりっきりで逢ってるんだもん、そうだよね」
「…まあ、そうなるのかな」
「そっかあ、えへへ」
僕の中では、後輩とお茶、くらいの意味合いしかないんだけれど。
まあ、デートと思ってくれても構わないと思う自分がいることが不思議だ。
「あ、ほら来たよ」
黄色い寿司、卵が流れてきた。
それも3つ。
「大地、卵好きなの」
「うん好き、これしか食えない」
「じゃあお寿司じゃなくてもよかったんじゃない?」
「だってここ、他の人から見えないでしょ?」
「うん、見えないけど」
「それがいいんだよ」
どういいんだろうか。
僕は僕でお茶をすする。
「食べないの」
「お腹は減ってないし」
「でもせっかく来たんだから何か注文しなよ、せめてプリンとか」
「プリン…それも卵だね」
何かひとつくらいは、と頼んだのが大葉漬けいかだ。
元々味がついてるので好きな部類なんだけど、
それを受け取って食べると大地が目を丸くした。
「…真咲」
「うん?」
「いつも昼飯どこで食ってんの」
「生徒会室だけど?仕事、たくさん残ってるし、昼休みを使って少し片づけるんだ」
「それ正解だわ」
「どうして」
「いや、自分の顔、鏡で見れば分かるわ」
女子じゃあるまいし、鏡なんか持ってないと言い張ると、
「お前、すんげえ食べ方汚い」
と一蹴されてしまった。

そんな、初デートでした。

5月18日(木)

大地へ

指摘された件、ようやく理解しました。
親にも思われてたみたいで、食べ方の件。
うちの親は多忙で、それこそ一緒に食事なんてあんまりしないんだけれど、
たまに一緒になる時があって、
その時から思ってたみたいです。
僕もそうだね、薄々?気がついてはいたのかも知れないけれど、
お弁当食べる時に何故か汚れるなあとは。
まさか大地に指摘されるまで気が付かないとはね、
恐れ多いことでした。
これから気を付けます。
鏡もちゃんと持ち歩いて、チェックします。
昨日はありがとう、誰かと食事なんて久々だったから、
少し緊張してたんだ。
またどこか、一緒に行ければいいなと思うけれど、
大地はどうですか?

天野真咲

5月19日(金)

真咲へ

今日は学校を早退したんだ。
病院に行かなくちゃいけなかったから。
注射をね、2本、肩にするんだよ。
すんごい太い針だから、結構痛いんだけど、それも我慢我慢だよ。
またどっか行こうね。
それを考えればこんな注射、痛くもなんともないよ。
あと1週間ちょっとで中間テストだね。
数学の教科書の、素因数分解ってところがちょっと分からないんだ。
あと、理科の生物も。
化学は数式さえ覚えちゃえば大丈夫なんだけど、
生物って難しいね。
2年になったら物理も入るでしょ?
俺、頭がパンパンになっちゃうよ。
真咲ってすごいね、2位ってすごいことだよ。
俺はね、高等部入って最初の抜き打ちテスト、学年で33位だった。
1位は橘だよ。
全然叶わないなあって思う。
そういうの、真咲も城善寺先輩に感じてた?
嫉妬とか、だった?

猪瀬大地

メシア篇其の2

一気に5月19日まで行きましたね…。
ツンデレな大地が可愛いなって思いますが、いかがでしたでしょうか。
実際本人に逢ってみると、ぶっきらぼうだったりでれたり、
真咲は変わりがないんですが。
今はまだ、中等部時代からの先輩後輩、と思ってる真咲と、
嫌いだけど好きになってく葛藤の中にある大地というふたりです。
これからも見守ってくださると嬉しいです。

メシア篇其の2

交換日記は続いています。 その経過をどうぞ。

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更新日
登録日 2019-11-24

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