魔法つかいになれたら
本屋さんで、おんなのひとが、立ち読みしていた本が、魔法つかいになるには、なんていう感じの、題名の本だったのだけれど、もし、いま、これから、魔法つかいになれるとしたら、まず、なにをしたいか、すこしだけかんがえてみたのだけれど、よくある、ふつうに、へいぼんな、空を飛びたい、しか、思い浮かばなかったよ、せんせい。
(ぼくのせんせいは、しろいくま)
きょうは、さむい夜だから、せんせいの淹れたミルクティーが、甘くて、あたたかくて、ちょうどよかった。ブランケットにくるまって、せんせいの、ふかふかしているようで、意外と筋肉質な、せなかに、そっと寄りかかる。冬の夜は、空気が澄んでいるから、ぱち、ぱち、と、星のはじける音が、よくきこえて、それが、こもりうたになる日もある。せんせいが、ぼくを、ぎゅっ、と抱きしめてくれる割合は、一晩に二回、三回ほどで、ほんとうは、ずっと、いっしょにいるあいだは、抱きしめていてほしいのだけれど、せんせいは、せんせいだから、しごとがいそがしくて、それは、ぼくも、わかっているつもりだから、ちゃんと、がまんしているよ。せんせいに抱きしめられたとき、からだじゅうの細胞が、鳴くの、きゅっ、と鳴いて、心臓や、内臓なんかが、しだいに熱をもって、細胞は、ちいさな声で、切なげに、鳴きつづける。せんせいが好きだって、叫んでるみたいだ。
魔法つかいになれたら