白い太陽、赤い月

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  1.  
  2. [目覚め]

【まえがきは必ずお読みください】



【11/25更新(まえがき)】【未完】【更新停止中】



中世風ファンタジーです
あらすじ: 帝国の支配下、村で過ごしていた青年ソル。いつか反帝国組織に自分も参加して、帝国の属国であり祖国のミーリアを解放せんと奮戦する。反帝国組織の一員と思われている壮年の剣士ザイルとともに旅をする



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[目覚め]

 また国が一つ、無くなった。
 陶芸家の里として知られた我が故郷(ふるさと)、芸術の国『ミーリア』の隣国『レイサ』までもが、今やこの大陸最大の大帝国、鉄と血の国『ガアスアール』の属国。その手中にある。
 この悪循を、何とかして断たねばならない。今こそ悪国ガアスアールに向けて剣を振り上げ、立ち向かうべきなのだ。少なくとも、俺はそう思っていた。

 俺は、一つの小さな林村に生まれた。その村の名は、アンナムという。ガアスアールの隷国となったのちのミーリアの小村である。
 貧しい暮らしではあったが、幼少時から幸せというものは、幼いながら感じていた。今や何処にいるのかも分からぬの母や父も、村では評判の良い両親であった。こういうこともあって、貧しくはあったが、生活が楽しくないと思うようなことは、あまりなかったのだ。——ただ一つ、帝国ガアスアールを除いては。
 ガアスアールは、古くから支配する立場にあり、そこに住まう人々も、支配しなければ気が済まぬ気質の持ち主のようだった。ミーリアはガアスアールからの侵攻に敗れ、支配される立場へと落沈した。俺は物心ついた時から、そのことを知り、ガアスアールを憎んでいる。
 人々は苛税を強いられ、年貢に反発すれば反逆罪として帝国兵に殺されるか、重い供物によって食糧が失無し飢え死ぬか、アンナムやその他の多くの村々では、明日を生きられるかどうかも分からぬ生活を送っていた——。


* * *


 村の朝は早い。
 高地に立地し、夏の間も肌寒い日が多いこのアンナムの村では、小麦の栽培が盛んに行われている。どうやらそれは、俺が生まれるよりずっと前の、古い時代からそうであったようだ。よって、主食も小麦で作った麺麭(パン)が多い。それに乾酪(かんらく)(チーズ)をのせて焼いて食べるのが一般的だった。それは俺の好物でもある(好物というよりかは、一番食べ慣れているもの、と言ったほうが正しいか)。
 寝台、というよりは長い椅子のような寝床から半身を上げ、大きく背伸びをする。滞っていた血流が一気に解放され、身体全身に血が巡る感覚と、火照った体熱を感じた。
 近くの小窓の木板を外し、そこから外を見てみると、空は雲一つない快晴。見事な夏晴れだった。
 寝床から立った俺は、手始めに部屋の隅に置かれた水桶に近づいて顔を洗った。何よりも先に顔をしっかりと洗わねば、新しい一日は始まらない。顔を洗った後、勝手元のある部屋に向かう。
 部屋に入ってから、俺は手早く火打石で火を起こし、(かまど)に火を入れ、鉄鐺(フライパン)を上に載せた。そして、今日の朝餉(あさげ)を取るために地下の貯蔵庫に向かった。
 先ほどの、寝室及び居間にあたる部屋の、更に奥の小部屋の扉を押し開けて、そこから続く地下室に繋がる階段を降りていく。九段ほど降りると、一階よりもより肌寒い——『肌』をつけずに、そのまま『寒い』と言ってもいいくらいの——薄暗い部屋に辿り着いた。
(……蝋燭(ろうそく)を持ってくるのを、忘れたな)
 それでも、夜目を利かせれば多少は見えなくもないので、蝋燭(ろうそく)は取りに戻らないことにした。蝋燭(ろうそく)は貴重で値が張るので、使わないのが一番である。貯蔵庫から、保存された乾麺麭(パン)乾酪(チーズ)を手に取り、地上階に戻る。
 居間への扉を開けると、白い太陽の(まばゆ)い光が、また瞳に差し込んできた。
(そういえば、今日は『奴ら』が、この村に来る日だったな)
 俺は考え事をしながら調理を始めた。



 熱せられ、半分ほど溶けた乾酪(チーズ)の乗った、こんがりと少し焦げ目のついた麺麭(パン)の皿を手に取り、調理場の卓子についた。
 すぐに皿から手に取ってから、麺麭(パン)を咥えて卓上を見る。卓の上には麺麭(パン)と共に置かれた数枚の羊皮紙がある。それは、一日が過ぎるごとに順に黒鉛で数字をつける、いわば暦のようなものである。
(やはり、そうだ)
 今日も例によって数字をつけたが、三十一となった(つまり三十一日目)。一日も忘れることなく書き、紙は『奴ら』が訪れる三十一日目に変えるから、この数字は間違ってはいない。
(正直言って、顔も見たくないが……致し方あるまい)
 半分ほど食んでなくなった麺麭(パン)を手に握りしめて、(まぶた)を閉じる。
 俺が言う、『奴ら』とは、つまり『帝国人』のことである。『帝国』とは……そう、俺にとって、最も憎しみ深く忌々しい、大帝国ガアスアールの人間が、今日このアンナムの村に来るのだ。
 何のために来るのかと言えば、それは無論のこと、税の徴収のために来るのである。それ以外に、奴らがここを訪れる理由はない。徴収以外に訪れたいとも、奴らは(ちり)ほども思ってはいないだろう。
(今日は家にいなければな……。扉を蹴破られて、中を荒らされても困るからな)
 奴らは属州の人間たちを、人間とは思ってはいない。徴税の際に家の中から反応がなければ、何事もなく住居の扉を蹴破って中に侵入し、物色して代わりの物を漁る。それが、この世界では普通だった。また徴税に反発すれば、始めは鞭打ちの刑ほどで済むが、それを何度も行ったならば、いずれは極刑に処されることとなる。実際この村でも、死罪に処させた者がいた。それは、この村にもあるという、『反帝国』を掲げる組織の人間だったという。
(いつかは……俺も)
 いつも帝国兵どもの徴収の際に思う。いつかは、俺も、その反帝国の組織とやらの一員となり、解放戦線に参加しなければ……と。そう思うと、いつも、いてもたってもいられなかった。
(少しは……手がかりを掴めてきたのだが……)
 その反帝国の組織のことである。分かったことは、この村にも確実に反帝国組織と思われるものがある、ということ。そして、俺の剣の師匠でもある、ザイルも、何か関わりを持っている、ということだ。
 ザイルのことについては、やはり何かしら秘密があると、以前から思っていた。武器もろくに持てない(俺はいつもザイルから、木剣で剣術を習っている)属国の人間であるのに、剣術の腕前は素人目に見ても一流であるし、あの歳(恐らく、40半ば)になっても、妻子のいない独り身であるのだ。そして、いつも、この村からどこかへ出かけている。この村に住んではいるのだが、長居するようなところは今まで見かけた試しがない。
(そろそろ、問い詰めてみるか……)
 俺は今月の徴税が終わったあと、剣の稽古の際にザイルを問い詰めてみることにした。
(ひとまず、今は待つだけか)
 俺は、握りしめて潰れかけた残りの麺麭(パン)を、むしゃむしゃと頬張った。



ドン!
 調理場の隣にある流しで皿を洗っていると、不意に家の入り口のほうから、誰かが扉を強く叩く音がした。
(来たか……)
「税の徴収だ、扉を開けろ。開けないのであれば……」
 きつく張り上げた声音の、若い男の声もする。俺は皿を一旦置き、小走りで入り口の扉へ向かった。
 そして、ゆっくりと扉を押し開けた。
「……小麦なら、ある。さっさと帳簿に名前を書いて、立ち去れ」
 俺はその男を見るやいなや、どすのきいた低い声で言い放った。
 やはり帝国人のようだった。目深に被った黒いフード付きのローブと、ローブに隠れた黒い手甲と足甲、それに、腰に提げられた(つるぎ)とガアスアールの国旗付きの背中の盾が、その男が帝国の人間であることを如実に示していた。
 帝国人の男は俺と目を合わせようともせずに、小さく笑い、口を開いた。
「話が早くて、助かるねぇ。蛮人どもの中にも、気の利く奴がいるのか。前の奴は、供物を出し渋って危うく殺したくなりそうだったのに。お望み通り、すぐに去るよ。お前のような低劣な属国の人間と、お喋りするつもりはないんでね」
 男は終始馬鹿にするような、揶揄(からか)うような高い声でそう話し、手元の帳簿に俺の名前を書いてから、すぐに馬に乗って去っていった。
(ふん……下劣な帝国人めが)
 馬に乗って駆けていく背中に、俺は人差し指と中指を立てた。これはミーリア人にのみ伝わる指言葉で、口に出しては到底言えそうもない罵詈雑言の類いを意味する。本当は、それを口に出して言ってやりたかったが、そんなことをしたら命が危ういのでやりはしない。
(また荷運びか……面倒だな)
 荷運びというのは、徴税のための小麦運びのことである。ガアスアール帝国は、徴税できる人間と供物があるかどうかの確認には兵士を一人寄越すが、自分たちで運んでいきはしない。運び人は、徴税者本人なのである。それも俺を苛立たせた。供物を運ぶガアスアール西方支局がある『ライノの街』までは、最短でも歩いて二日はかかるのに。そして更に憤りを覚えることに、納税の期限は一週間以内ときた。遅くても、五日後までに、険しい道のりを旅する準備をしなければならない。一週間を過ぎた時点で、その者は何人たりとも刑罰の対象となる。その厳しすぎる徴税の仕方に、俺はいつも憤慨していたが、命のためには、解放戦線に参加するためには、やる他ない。明日にでも、行くしかないだろう。
「午後まで時間があるな……畑仕事でもするか」
 ほぼ毎日習っているザイルの剣の稽古が始まる昼過ぎまでには、まだ時間があったが、徴税以外に村でやることといえば後は畑を見ることくらいだった。俺は、ちょうど外に出たのも良い機会だと思い、畑に向かうことにした。


* * *


 昼下がり。
 村はずれにある、木柵で囲われている、こじんまりとした小さな畑のような広場の前に俺はいた。
 空は灰の色一色で、今にも雨が降りそうだ。待ち人は、まだ来なかった。
(……いつもは俺より先に来て、悠々と椅子に腰掛けて待っているのに)
 こういう日が、そういえば……前もあった。考えてみればそれはいつも、家にある暦の三十一日目、帝国の徴税日にあたる日だったような気がする。
(何か、彼にとって特別な日なのか)
 俺にとっては、一月で最も(いや)な、最悪な日であったが、彼にとっては、何か、重要なことがあるのかもしれない。彼に、反帝国組織と関わりがあるという噂が立っていることを考えれば、何ら不思議なことではなかったが。
 パカパカ、という音が聞こえて、俺はその音が聞こえた方向にすっと振り向いた。
「ザイル、今日は馬でお出ましか」
 ようやく、待っていた待ち人がやってきた。その者は、背中に二本の木剣を携え、馬に乗ってやってきた。
「おお、私よりも先にもう来ていたか、ソル君。……ふふ、なにせ今日は稽古の後、遠出しなければならないのでね。何のために遠出するかは……今のところ、秘密さ。さてさて、ソル君。そちらの首尾はどうだい。何事もなく、生活できている?」
 やや低めで、優しげな声の主の名は、ザイル。俺の剣の師匠だ。口周りの茶色い無精髭と、後ろで結ばれた癖の強い長髪、そして褐色(ブラウン)の瞳が印象的な、大柄な男である。
「今日は例の奴らが来て、(うんざ)りだ。貴方のところにも、来たのだろう?」
「ああ、もちろんだとも。面倒は起こしたくなかったから、ちゃんと応対はしたがね」
 ザイルは馬から降りて、背中の木剣を二本とも抜き身にする。片方を俺に手渡してきた。

白い太陽、赤い月

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白い太陽、赤い月

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