明日未然
少しだけの雨だけが生きられる明日であればいいのに。
知らない気持ちを知りたいと思うだろうか。なにかの記念日。隔たってゆく質量。水滴のニュアンス。
知ることは一番尊いのだろうか。
訪れなかったことを哀しめないのだとすれば。沈みゆくベンチ。唐突ではなかったシミュレーション。
訪れるものを初めから知らなかったなら。
憧れることさえ知らないのなら、どうして愛せるだろうか。
二つに折れていた紙巻煙草。憧れることを憶える対象すら、約束にはなかったのなら。
少しだけの雨を知って、続いて、憶えてきた、ここまでの、明日未然。
記念日も質量も、アクセントにはなかったから。焦がれる前に焦がれるって荒れ野が初めになかったから。
憧れることを、ようやく憶え始めたのだから。
少しだけの雨で生きられるなら、わたしのデザイン、わたしだけが知りえる線を、明日なぞるだろう。
明日未然
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