明日未然

明日未然

    
    


      



少しだけの雨だけが生きられる明日であればいいのに。



知らない気持ちを知りたいと思うだろうか。なにかの記念日。隔たってゆく質量。水滴のニュアンス。

知ることは一番尊いのだろうか。

訪れなかったことを哀しめないのだとすれば。沈みゆくベンチ。唐突ではなかったシミュレーション。

訪れるものを初めから知らなかったなら。

憧れることさえ知らないのなら、どうして愛せるだろうか。

二つに折れていた紙巻煙草。憧れることを憶える対象すら、約束にはなかったのなら。



少しだけの雨を知って、続いて、憶えてきた、ここまでの、明日未然。



記念日も質量も、アクセントにはなかったから。焦がれる前に焦がれるって荒れ野が初めになかったから。

憧れることを、ようやく憶え始めたのだから。



少しだけの雨で生きられるなら、わたしのデザイン、わたしだけが知りえる線を、明日なぞるだろう。


      

明日未然

作品集1 http://slib.net/a/1845/
作者ツイッター https://twitter.com/2_vich

明日未然

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-11-19

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