シアワセのループ

水の中から、古く錆びた私の城が顔を出す。それは宝石のように(きら)めき、私の視線を海の彼方へと運んでいく。閉じた世界。ここは不可侵の私だけの世界。青空が私を迎え入れてくれる。海底に咲く花たちのダンスに合わせて私は歌う。覚醒した時の流れ。全てを待つ鼓動。約束された情熱が操る多幸感。周囲では金管楽器たちが、私はいくつもの花と手を取りながら、各々の世界を創造している。急斜面でパレードをする私たち。静かな水滴と肩を並べて歩き、さわやかな色で宙を染めていく。夜の心臓が私に語りかけてくる。歯車の鳴る方角へ。私は宙に浮かぶ星々にキスをして、夜から届く甘い手紙を舐める。ジェットコースターが私の手中(しゅちゅう)から急降下する。炎に照らされて大きく揺れる私の船。この時間の高揚(こうよう)は明日の食卓に並ぶ。不意に(こぼ)した熱い涙を拾い集めて、寂しがり屋なあの月の下へ。



宙を揺蕩(たゆた)う花びらたちの行進の音が聞こえる。あの思い出の空が私の脳領域から飛び出して、ついに私たちは決別してしまう。私は私でなくなる。恐怖と興奮で私の脳と心はドロドロに混ざり、空っぽの私は星の空の下、輝かしき船を背に、一人あてのない闇の中をただひたすらに歩く。どこまで進もうと全てが見えなくなってしまった世界。閑古鳥(かんこどり)に支配された私は、かつての私の記憶を再生する。

シアワセのループ

シアワセのループ

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  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-11-17

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