二十七時のドーナツやさん
ノエルは、かみさまになれない。
星の降る夜に、まちじゅうの信号機が、びかびかと点滅して、きみのからだはあしもとから、まぼろしになっていく。にんげんは、やさしいですね。そう言った、とあるくまの、漠然とした感じはいまでも、わすれらんないし、きれいなパステルパープルのつめを、こいびとのひふにくいこませていた、しらないおんなの顔も、ぼくの脳裏に焼きついて、はなれない。
カフェオレをのむ、ドーナツやさんで、二十七時だけれど、ドーナツやさんはふつうにやっていて、おみせのひとは、げんきにドーナツを揚げている。チョコレートクリームをかけたり、生クリームをはさんだり、している。となりの席の、わには、シナモンロールをたべていて、ノエルは、シナモンロールがおいしそうといいながら、ソーセージパイをたべてる。
いまごろ、高速道路は、おっこちてきた星々が、車のタイヤと、アスファルトのあいだで削られて奏でる、悲鳴にも似た音楽に、みちているでしょう。
二十七時のドーナツやさん