等身自殺
「インターネットに飛び降りて死のうよ」
最初にそう言ったのはK子の方だった。
私は夏休みが終わるのを恐れていた。
学校に行きたくなかった。
何(いじめとか)があったという訳では無いが学校に行きたくなかった。
そんな私と同じく学校という窮屈な四角に上手くはまり込めなかったK子の口から漏れ出たその言葉から、計画は進められて行った。
「集合場所は電子レンジの地下3階ね」
私が決めた。特に意味は無いけどインターネットに飛び下りるなら電子レンジは外せないと思った。
「うん。じゃあ決行は8月34日、夏休みが終わる日で。」
K子が言った。
異議は無かった。妥当だと思った。
あとは残りの1週間、飛び降りの準備をするだけだ。
飛び降りの準備をするのはお布団の中。
頭の中のTwitterで飛び降りると呟き、そのツイートへのユーザーインプレッションが多ければ多いほど飛び降りの成功率はアップする。そのために私は架空世界のTwitterのフォロワーを増やすことに専念した。
0に0をかけると3になった。3に位置をかけると11になった。そうしてフォロワーを増やして行った。
飛び降り決行の前日の夜。6日でフォロワーは1000人ほどになった。ユーザーインプレッションもまあまあの数字を出すようになった。準備は万端だ。試しにツイートしてみる。
『飛び降りる』
さすが、1000人もフォロワーがいればすごい!いいね!たのしそう!だのと暖かいリプがたくさん送られてくる。止めるようなことを言う人は居ない。治安が良い証拠だ。
満足して眠りについた。
決行日 スマートホンを制服の胸ポケットへ入れ手ぶらで電子レンジへ向かった。進む足がどんどん早くなる。最終的には走る形で地下三階へ降りた。肩で息をしながら辺りを見渡すと、まだK子は来ていないようでレンジはがらんとしていた。
「ごめん、待たせた?」
1時間くらい後にK子が来た。
「待ったよー!私、楽しみで巳の刻には着いてたんだからね!」
「あはは、ごめんごめん」
しばらく沈黙が続いた。ふと目線が合うとなぜかおもしろおかしく感じてきて2人で笑い転げた。打ちっぱなしのコンクリートがひんやりと涼しかった。
「さて、やりますか。」
K子、
「そうだね」
私。
まず脳内でそれぞれツイートする。
『飛び降りる』
どんどんユーザーインプレッションが溜まっていく。20,40,100、、、
硬いコンクリートの床が揺らいできた。ぶよぶよになっているのだ。成功だ。
「ねえ!すごい!私たち本当に飛び降りるんだ!」
興奮気味にK子が言った。瞬間、サアーッと内蔵が移動する感覚に襲われた。落ちた、かと思うとざぶんと音が鳴り、それ以降はなんの音もしなくなった。目を開けると一面が青だった。青に包まれていた。隣にはK子が居る。物珍しそうにインターネットの内部を見ている。だんだんと息が苦しくなってきた。意識が遠のく。視界が眩む。ーーーーインターネットエクスプローラーが最期に見えた。
等身自殺