崖の上にて

マチミサキ

はい!
わたしは今
寒風吹き荒ぶ
見晴らしの良い所におります。

そういうと
何処かの山かとおもうでしょう?

ですが
実はそうではなく
ここは
某大学の敷地における穴場

あまり人の来ない高台にある
学舎の裏庭なのです。

そんな所を不審者よろしく
彷徨いております。

こんなに巨大な建造物を
こんなに急な断崖そばに建てて
本当に大丈夫なのでしょうか。

マジモンの崖っぷちですよ
コレは。

だいたい
学校って
小中はともかく
高大は高台に建ててありません?

歴史ある学校ほど。

気のせいかな。

私の出身高校は
かなりの高台に
ありましたのもので。

ロッキーが駆け登りそうな
長い長い急な階段の先にあったのです。

このままでは
心身ともに
天国に辿り着いてしまうのではないか…、


不安になる頃
ようやく
校舎が見えてくるような感じ。

車で入れる別な道もあったのですが
八割の生徒は
この急な階段を登り下りして
通学していました。

雪でも雨でも。

それはともかく
今日はあまり学生もいない

なぜなら
入試があるから。

私もそれ絡みです。

受験生ではありませんが。

在校生の代わりに
高校生達が山盛り。

実に様々な制服姿がゴロゴロと。

今日は推薦入試ですって。

本当は私も是非
受けてみたいところです。

関係者説明によると

ひとくちに推薦とはいっても
幾つか種類があるようで。

自己推薦だの
指定校推薦だ、
と。

自己推薦ってどんなのか
ちょっと興味があり
交ぜてもらいました。

私の予想では…

面接室のドアをノックは無しで
おもむろにあけ
面接官や試験官などは無視

そして七歩進み
部屋の窓をあける

すると待ちかねたかの様に
次々と舞い込み
入って来る小鳥やカラスなど
あらゆる野鳥
さらに
いつの間にか足元に佇む
夥しいほど多数の犬猫や鼠

その中心には1人の受験生

その数は加速し
もはや
部屋の中や廊下
校舎には
足の踏み場もないほど。

が、
動物や昆虫達はそれでも
どんどんと我先に!

ひっきりなしに集まり
大学を中心に途方もない数が溢れる。


この奇跡にも
受験生は何事もないような
穏やかな
それでいて
形容し難い半眼の表情を浮かべ

右手は天空を指し
左手は地へ

そこへ
雲の切れ間からスポットライトのように
陽光が射し込み
受験生を照らす


《━━━天上天下唯我独尊━━━━》


受験生は
迷いなく澄んだ一言を発する。

こんな所でしょうか。


・・・・・・・・・・


流石の人気私大だけあって
この少子化
学生不足
経営難も何処吹く風ですな。

結構な受験生の群れ。

皆、どうしても
筆記試験は避けたい所なのでしょうか。

私も
列を成す群れの終着点
受け付け係

の、邪魔をするかの如く
その傍らに立ち
受験生達の様子を窺っておりましたが

なんですかね?
コレ?

上記の予想どころか
ヘコヘコと
くたびれたスーツを似合わせる
ベテランサラリーマンのような

両手で名刺交換を行うかの如く
そっと受付書類を渡す受験生たち

・・・ひとつ、宜しくお願いしますョ・・・

そんな心の声が聞こえてくるよう

そういう風にするように
其々の高校などで指導されているのですか?

私の時はそんな風潮はなかった!

なぜ
両手で書類を差し出し
恭しく頭を下げるのか?


まあ、こちらが母校でも無ければ
試験も推薦でも無かったので
詳しい事はよく分かりませんけど。

おっと
だいたい受け付けも終わったようで
早くもお昼すぎ

ちょっと
こちらの学食で評判との
噂のナポリタンを食してきます。

またのちほど。

はい!
ナポリタンは
まあ・・

いえ、値段からいえば
上等なものでしょう。

たぶん
あちらは
ミートボールが乗っている
ルパン的なものが
受けているのではないでしょうか。

しかし私は
ナポリタンの上に
ピーマン輪切りスライスが無いものを
ナポリタンとは認めたくない。

そして
軽くタバスコ。

これも無かった。

譲れない私のこだわり。

革新工夫も大事ですが
オーソドックスでこその良さも
忘れないで欲しい。


その後わたしは
敷地内をさらに
探検しておりました。

いやあ
昨今の大学とは凄いもので
コンビニもあれば
郵便局みたいなものもあるし
ATMもある。

さらに本屋まであるし
ちょっとした町みたいですな。

特に気に入ったのが
幾つかある学舎の古いほうは
未だにトイレが和式である、ということ!

これは実に素晴らしい!!

しかも綺麗で広い!

しかも水流も強いとなれば
言うことなしです。

こちらの学生さんが羨ましい。

これは
受験生にとっては
実に強い志望理由になるのではないでしょうか。

やはり
トイレは和式こそが至高。

誰も来ないし
思わず20分くらい
引き込もってしまいました。

これが
新しい校舎のほうだと
オートでライトが切れて暗闇に
取り残されるわ

洋式だわ

挙げ句
水圧は弱いわ、で
とんでもないですよ。

そして
お腹に入れては出してをしてから

何やら賑やかな体育館のほうへ
歩を進めてきました。

ほほう

新体操ですな!

まったく
興味がない。

どうせなら
ボクシングが良かった。

なんて失礼ですが。

それでも
不審者丸出しで
少し眺めていると

『あ、父兄の方ですか!』

そう声を掛けられ

いいえ違います、只の不審者です。

とも言えないので
まごまごしていると

宜しければ
中でご見学ください!

との事で
若者達を見守るババ軍団一画のパイプ椅子へ。

余談ですが【父兄】という言葉を
久しぶりに聞いた気がします。

男女平等の観念からか
最近では専ら
父兄という言葉は使わず
【保護者】
に変わりつつありますからね。

それにしても
やはり
人間とは身嗜みが大事。

こうして
小綺麗なスーツに身を纏い
首からカードをぶら下げていなければ、
と思うと身震いが。


これがもし

スウェットにサンダル
髪ボサボサの中年男性で
ニヤニヤニチャアしながら
涎を垂らして覗き見ていたなら
どうなるか。

通報待った無しですよ。

事案発生

夕方のニュースにラインナップされてしまう。

そんな事はともかく
皆さんお上手。

なにか
フラフープみたいなのに
バックスピンかけたりしてて
面白い。

なにか

ジャンプで
巨大なリングに乗ったり投げたりして
戦うバトルものありましたよね。

正式名称は判りませんが
リボンや棍棒みたいなのも
なんとなく
使いようで武器化出来そう

私的にはリボンが良い。

【鞭】ですよ!

先端が音速超えるヤツ。

ロマン武器ですなぁ
憧れます。

全体攻撃可能ですし。

使った事も無いしノウハウも解りませんが
鞭・トンファー・トランプ投げは
やはり押さえておきたい辺り。

因みに九節鞭なら
ほんの少しだけ心得があったりして。

とか
見学しながら
考えていました。


そして
コーチ陣はとても厳しい。

保護者達が監視しているのに
そういう態度には厳しいこの御時世スルーの
まったく遠慮がない厳しさ。

体育会系とは
こんなものなのでしょうか。

華やかなりし
新体操の裏側を見てしまった。

すると

小学生くらいでしょうか。

140㎝あるかないか位の
チビッ子が
私の側の壁でハアハアいいながら
休憩していたので

『小学生?中学生かな??大変だね!』

そう話し掛けると
しばし無言

息を整え
返してきた言葉が

『高校生ですけど!』

失礼しました。

いや、とても
可愛らしく
小柄なお嬢さんだったもので。

しかしなぜ
高校生なのに
大学で練習しているのかが疑問でしたが。

ともかく
私も
小柄童顔なので
その気持ちはよく解ります。

申し訳ない。

私も
その昔
伊達に20代後半である時分に
平塚で補導されかけた訳では無いのです。

『今日!学校はッ!
1人でこんな時間にどうしたの!?』

見知らぬババアから
いきなり
そう脅され
連行されかけましたから。

童顔に加え
ファッションセンスも
欠乏していたので
田舎から家出でもしてきたのか、

そう思われたのでしょう。

崖の上にて

崖の上にて

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-11-09

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