金十境一±
僕は無理に声を出したが、それが彼に聞こえたのかはわからなかった。
「―――そう、そうさ、そうだよ君がぼ、ぼかぁなんだよ。ぼかぁ君が大好きで、''あこがゑ''て、君みたいに''ないたゐ''、そう思ったよ。君に助けられてから、ぼくの全てが君!君!君になったのさぁ!愛され方や涙の流し方、嫌いな''まんま''やお仕事、利き手も左にするんだ、きっと、きっと治してみせるさ。そうだ、そうなんだよ、ぼかぁ、そうしているうちに、だんだん''れぷゐか''じゃあ我慢が、出来なくなってぇいたんだ。」
僕は震えていた。目の前にいる僕は、確かに僕、僕なんだ。なのに、全く違う生き物に思えた。僕であるのにそれに触れることは出来ず、ひやりとした硬さしか感じられない。
「ぼくぁ、最近よく話せるようになったよ。ぼくぁ、君に追いつく日は近いと思うんだねぇ、、、意味でしかない、その程度なんだろうねぇ、ぼくたちゃあ。」
不吉に笑う僕を僕は水面に浮かべさせることしか出来なかった。
「またこんな鏡の前に…」
ああ、迎えが来た。彼は逆らうことが出来ず、惜しくもまたクレーンに持ち上げられる。あれはいったい、僕なのか、僕ではないのか、いつか、いつかわかるといいなあ。ぼくぁ、ぼくぁ、一体…。
「あぁ、っきゃ、うういえお、ぷぅ〜」
「はいはい、いい子ね。」
金十境一±