13月の訪れ

 僕は夢を見た。あれと同じ夢を僕は見た事があると思った。ああ、なるほど、そうだなと、どんな不思議なことも、ごくり、とのみこめた。「既視感」というものなのか本当に見た事あるものなのか、よくわからなかったが、僕は絶対に見た事があると思った。
「今日は12月41日、気温は10度前後、」
細々と小さい時でノートにつづっていく。遠くに見える儚い光に全てを託して、とくとく、とくとくと、自分の胸の内にある時計と方位磁石を辿る。
「今日、、そうだあれがあったな……どこに、、、」
僕は小さな住処のころころかたかたゆれるキッチンの棚にぶら下げた薄い赤色の紅茶の茶葉の入った小さな袋を取り出す。そして落ちそうなほど並べられ瓶から青色のさらさらした砂のようなものをとる。紅茶袋の中に青い砂を入れてお湯を注ぐと小さなカップに青い海が生まれる。その海はあたたかく喉にとろとろと沈んであらう。身体は温まり、心地よい気持ちに誘われる。そうしている間にまた激しい吐き気と痛みに目が覚める。
 ―――今日は一体、何月何日なんだろう。今日僕は本当は何をしていたんだろう。
 つるつるとして綺麗な陶器の欠片がちらばり、うすく茶色ににごったベッドに横たえる自分を見て彼は思った。うすく笑みを浮かべる自分の顔を心底薄気味悪く思った彼はその顔にカーテンをかけた。
 次に夢から覚めた時僕は、遠くに自分を見た。ぽつぽつと音が一定に響き音程のほとんどないBGMが流れていた。透明の海の水をぽとぽとと垂らして洗濯していた。徐々にその音が遠く、聞こえなくなっていく心地良さに身を任せ、宙に浮くからだがとけていくのを静かに受け入れるのだった。

13月の訪れ

13月の訪れ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-11-08

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