執事たちに甘えたい~全てを委ねて~

ヤリクリー

注意事項
①米印はト書きです。読まないでください。
②カッコ内は読んでください。
③作者は執事喫茶が何かを理解しておりません。ご注意ください。
④この作品は、男性3人女性1人の合計4人声劇です。

執事たちに甘えたい~全てを委ねて~

〔登場人物〕
男性:雅樹、義之、義直
女性:蓮(れん)


(※ここはスリーピングボイス。温泉旅行に一部の執事達が出かけているので、お留守番組が屋敷を切り盛りすることに。)

義直:なぁ、雅樹。

雅樹:はい、何でしょう?

義直:あちらのお方、この屋敷に居たっけ?

雅樹:ん?

…あぁ、蓮さんですね。“彼女”、真琴さんと同じく男装女子です。元々は屋敷の総料理長ですが、ごくまれに執事として我々と共にお嬢様をもてなすのです。

義直:なるほどね~。

蓮:…。

義直:蓮さん、はじめまして。

私、義直と申します。この屋敷に配属されて2,3カ月ほどしか経っていません。まだまだ不慣れですが、何卒お願いします。

蓮:…あぁ、よろしく。

雅樹:ま、“彼”は少々プライドが高いのでこんな感じです。慣れたら話しやすくなると思いますよ?

義直:それでは皆さん、今日も屋敷を開館させますよ。用意をお願いしますね。

蓮:了解した。

雅樹:はい。

義直:任せろ!


義之:おかえりなさいませ、お嬢様。ようこそ、スリーピングボイスへ。この屋敷でのルールはご存知でしょうか?はい、はい、はい。それだけ御存じなのであれば心配不要ですね。
では、案内担当が参るまで少々お待ちください。


蓮:初めまして、お嬢様。私、蓮(れん)と申します。お部屋までは私が案内いたします。どうぞついてきてください。

義之:それでは、ごゆっくり。


(※お部屋に到着。)

蓮:お嬢様が到着されました。入室いたします。

義直:かしこまりました。どうぞお入りください。

蓮:では、お嬢様。どうぞ中へ。


義直:“おかえりなさいませ、お嬢様。”

お手荷物の方をお持ちいたします。

蓮:さぁ、どうぞこの椅子に。

義直:お嬢様。私、“義直”と申します。以降、お見知りおきを。

蓮:そういえば、まだお嬢様のお名前を伺っていませんでしたね。
“遅くなったけど、教えてもらえないか?”

なるほど、○○と言うのか。
“よろしくな!○○!”

義直:(蓮、あいつツンデレなのか?
キャラがブレッブレだし。)

蓮:お嬢様、本日は外が大変寒かったと思います。何か温かいものでも頂きませんか?スープでも、アツアツの鉄板焼きでも、温かい麺類もご用意しております。

“鉄板焼き”ですね。かしこまりました。用意の方を致しますので、少々お待ちください。


(※蓮、一旦退出。)

義直:ほら、ひざ掛けをどうぞ。お嬢様のお気に召す模様ではなくて申し訳ありません。そして、こちらですね。“ゆず茶”でございます。お水ですとさらに身体を冷やしてしまうと思い、温かいものを用意させていただきました。

寒いの、大変ですよね。お嬢様も苦手と。奇遇ですね。私も苦手なのです。寒がりですので、すぐに低体温症になってしまうので困るのですよ。
“わかっていただけますか?”


(※扉をノックする音が。)

蓮:お嬢様。お料理の用意が整いました。扉を開けてくださいませ。

義直:了解しました。お開けします。


(※蓮と雅樹が入室。)

蓮:お嬢様、お待たせいたしました。こちら、“執事焼き”でございます。基本的な具材はモダン焼きですが、そこから私が一手間二手間(ひとてまふたてま)加えますので、とくとご覧ください。

雅樹:お嬢様、初めまして。私、“雅樹”と申します。お願いしますね。

配膳の方を失礼しますね。

蓮:では、私のトリックをご覧ください。

この執事焼きですが、まだ未完成です。ここに溶いた卵を流してシート状に。その上に乗せ、卵シートを纏わ(まとわ)せます。クルンと空中で数回転。最後に、赤ワインを隠し味に利用した特製ソースを塗ります。青のりやマヨネーズ、鰹節はいかがいたしましょうか?
“鰹節とマヨネーズ”ですね。かしこまりました。ではこの上に、マヨネーズをかけ、鰹節を躍らせて完成です!特製ソースに含まれる赤ワインは、アルコールを飛ばしてありますのでご安心を。

中を切ると、ご覧の通り。いつものお好み焼きとは全く異なりますよね?これが、我が屋敷の冬限定メニュー“執事焼き”でございます。

義直:さぁさぁ、冷めないうちにどうぞ♪

見るからにこの笑顔!“美味しい”、頂きました♪
そう焦らずに、ゆっくりとお召し上がりくださいね。

雅樹:そう言えばですが、蓮さん。

蓮:はい、何でしょうか?

雅樹:貴方は、このように人前で調理パフォーマンスをすることってあるのですか?前からあなたとは数回ご一緒させていただいていますが、このようなシーンは初めてです。

蓮:まぁ、今日からこのメニューが始まって初注文だからな。雅樹さん達にも一度見てほしかったのさ。画像のイメージよりも、実際にまとめ上げるシーンを観たら印象が変わるんじゃないか、ってね。多分、こんなパフォーマンスはほぼしないだろうね。

雅樹:今回だけの特別、というわけですね。

蓮:そういうこった。

雅樹:お嬢様、この特製ソースがお気に召されたようですね。

義直:蓮さん。噂だと、このソースを作るのに相当な日数を使用したとかなんとか出ているけど、どうなんですか?

蓮:結構日数はかかってますね。ベースとなる野菜も、日本国内の、少しお高めの良品を使用させていただいておりますし、煮込み作業も一ヶ月くらいは少なくともかけていますね。食品添加物を使用したくないので、野菜のエキスをどれほど抽出させられるかを考えて煮込み、まとまったところでワインや調味料を加えて完成させました。
思い出すだけでも、ほぼ鍋につきっきりなことぐらいしか思い出せませんね。

義直:まるほど。それだけ丹精(たんせい)込めて仕上げたと。

蓮:そういうことです。

義直:それに、蓮さんは、とある大手ホテルの3つ星レストランで“副料理長”でしたもんね。

蓮:…まぁ、料理長があまりにも上を行き過ぎていたので我々は適わ(かなわ)ないと。

雅樹:どうやら、お嬢様はそのホテルに宿泊されたことがあるようでして、あなたの手料理も頂いていたそうですよ。そうとうお気に召していたようで、そのレストランのためだけにホテルに通っていたとか。

蓮:お嬢様、お耳の方を失礼いたしますね。

“またここでお会いできたことに大変感謝しております。これからもお嬢様のために美味しい食事を提供させていただきますので、当屋敷でも引き続きお願いしますね。

私の料理を気に入っていただけたお嬢様のことが、大好きであります♡”(照)

雅樹:珍しくお嬢様に照れていますね。

義直:それだけ嬉しいんだろう。いつもは厨房だっけか?おもてに顔を出すことはそうそうないから、喜びもひとしおだろうなぁ。

蓮:はい、デザートですね。お持ちしますので、少々お待ちください。

義直:お嬢様。お水がほしいと。かしこまりました。

こちら、お水をどうぞ。多少はお口の方がスッキリしたかと。

蓮:こちら、デザートの“北海道チーズのベイクドチーズケーキ 黄金のソースとワッフルを添えて”であります。
こちらのチーズケーキには北海道産のクリームチーズを使用しており、口どけはなめらかで濃厚な味に仕上げました。ワッフルは軽い食感で重い感じはございません。宮崎県産のマンゴーを利用した黄金ソースと共に頂いてください。

義直:(やっていることが、本当にホテルの食事とほぼほぼ変わらないんだよな。
ま、彼だからできると思えばそりゃそうか。)

蓮:アハハ。そこまで飛び跳ねるくらいに喜んでいただけて、本当にありがたい限りです。

“お嬢様のためなら、いつでも美味しいお食事を提供させていただきますね♪”

義直:お嬢様♪それだけ興奮するのは構いませんが、口元、汚れていますよ。

“綺麗なお嬢様には、そのような汚れは似合いません。少しは落ち着いてもいいかもしれませんよ?”


(※食事を終えたお嬢様。)

義直:お嬢様?
はい。“何か本の読み聞かせをしてほしい”と。かしこまりました。食後の休憩として、読み聞かせの方をさせていただきますね。


(※すると、扉をノックする音が。)

義之:義之です。先に会計の方に上がりました。

義直:よし。それじゃ、先に会計を頼んだぞ。


(※会計を済ます○○お嬢様。)

義之:確かに、会計の方を確認させていただきました。

雅樹:読み聞かせですが、夏目漱石の坊ちゃんでよろしいですかね?

蓮:私も読み聞かせに参加させていただきますね。

台車の方は既に片づけてありますのでご安心を。


(※読み聞かせが始まる。)

義直:“親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間程腰を抜かしたことがある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかもしれぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りることは出来まい。弱虫やーい。と囃し(はやし)たからである。小使(こづかい)に負ぶさって帰って来た時、親父が大きな眼をして二階から飛び降りて腰を抜かす奴があるかと云(い)ったから、この次は抜かさずに飛んで見せますと答えた。
親類のものから西洋製のナイフを貰って奇麗な刃を日に翳して(かざして)、友達に見せていたら、1人が光る事は光るが切れそうもないと云った。切れぬ事があるか、何でも切って見せると受け合った。そんなら君の指を切ってみろと注文したから、何だ指この通りだと右の手の親指の甲をはすに切り込んだ。幸いナイフが小さいのと、親指の骨が硬かったので、今だに親指は手に付いている。然し(しかし)創痕(きずあと)は死ぬまで消えぬ。”

雅樹:“教師も生徒も帰ってしまったあとで、一人ぽかんとしているのは随分間が抜けたものだ。宿直(とのい)部屋は教場の裏手にある寄宿舎の西はずれの一室だ。一寸(ちょっと)這入ってみたが、西日をまともに受けて、苦しくって居たたまれない。田舎だけあって秋がきても、気長に暑いもんだ。生徒の賄(まかない)を取り寄せて晩飯を済ましたが、まずいには恐れ入った。よくあんなものを食って、あれだけ暴れられたもんだ。それで晩飯を急いで四時半に片付けてしまうもんだから豪傑(ごうけつ)に違いない。飯は食ったが、まだ日が暮れないから寐る(ねる)訳には行かない。一寸(ちょっと)温泉に行きたくなった。宿直をして、外へ出るのはいい事だが、悪るい事だかしらないが、こうつくねんとして重禁錮(じゅうきんこ)同様な憂目(うきめ)に逢うのは我慢の出来るもんじゃない。始めて学校へ来た時当直の人はと聞いたら、一寸用達(ちょっとようたし)に出たと小使(こづかい)が答えたのを妙だと思ったが、自分の番が廻ってみると思い当る。出る方が正しいのだ。おれは小使に一寸出てくると云ったら、何か御用ですかと聞くから、用じゃない、温泉へ這入るんだと答えて、さっさと出掛けた。赤手拭(あかてぬぐい)は宿へ忘れて来たのが残念だが今日は先方で借りるとしよう。”

蓮:“清(キヨ)の事を話すのを忘れていた。―――おれが東京へ着いて下宿へも行かず、革鞄(かばん)を提(さ)げたまま、清や帰ったよと飛び込んだら、あらお坊ちゃん、よくまあ、早く帰って来て下さったと涙をぽたぽたと落したおれも余り嬉しかったから、もう田舎へは行かない、東京で清とうちを持つんだと云った。
その後ある人の周旋(しゅうせん)で街鉄(がいてつ)の技手になった。月給は二十五円で、家賃は六円だ。清は玄関付きの家でなくっても至極(しごく)満足の様子であったが気の毒に今年の二月肺炎に罹(かか)って死んでしまった。死ぬ前日おれを呼んで坊ちゃん後生(ごしょう)だから清が死んだら、坊ちゃんの御寺へ埋めて下さい。御墓のなかで坊ちゃんの来るのを楽しみに待っておりますと云った。だから清の墓は小日向(こびなた)の養源氏(ようげんじ)にある。”

以上ですね。

義之:読み聞かせも終わったところで、ちょうどお時間のようです。

義直:お嬢様。今日は楽しんでくれたかな?またいつでも遊びに来いよ!

雅樹:今回は、初めて読み聞かせの方をさせていただきました。もし、またやってほしいのであればいつでもリクエストしてくださいね。読んでほしい本のリクエストも可能です。持参も問題ありませんよ♪

蓮:“また、俺たちに逢いに来てくれるよな?
いつでもここで俺たちは待っているから。

お嬢様、アイシテル…。”

義之:では、最後の一言を。

“行ってらっしゃいませ、お嬢様。”

雅樹・義直・蓮:“行ってらっしゃいませ、お嬢様!”

蓮:“スリーピングボイス、またのご来館を心よりお待ち申し上げます。”

執事たちに甘えたい~全てを委ねて~

参考・引用
・夏目漱石『坊ちゃん』(株式会社新潮社版/平成22年6月10日 142刷)
義直は、5頁1行目~6頁1行目まで。
雅樹は、42頁9行目~43頁6行目まで。
蓮は、179頁6行目~179頁14行目まで。

執事たちに甘えたい~全てを委ねて~

執事喫茶シリーズ最新作!今回は、温泉旅行(別作品を参照)中のスリーピングボイスの様子をお届けします。新キャラの登場に、当屋敷の素敵な声による読み聞かせもございます。テクニックが光る屋敷の様子をどうぞご堪能ください。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-11-08

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