【超短編小説】荷台

六井 象

 図書館へ行った。目当ての本を探していたら、隅にある本棚の陰で、おじさんが一人ぶっ倒れていた。驚いて駆け寄ると、おじさんは口に栞をくわえていた。なんだ。誰かがおじさんを途中まで読んだ後、ここに置きっぱなしにしていただけらしい。よく見ると、おじさんもうっすら微笑んでいる。何かを懐かしがっている顔のようにも見えた。元の場所がわからないので、図書館のスタッフに読まれかけのおじさんのことを伝え、目当ての本を借りてその日は家に帰った。

 次の日の夕方、図書館の裏に停まっていた軽トラの荷台に、昨日のおじさんが縛られて転がっているのを見た。とっさにうつむいて横を通り過ぎた。なぜうつむいたのかは自分でもよくわからない。

【超短編小説】荷台

【超短編小説】荷台

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-11-07

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