4週間

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  1. 一週目(5月)
  2. 二週目(8月)
  3. 三週目(11月)
  4. 四週目(2月)

一週目(5月)

私は月曜日が嫌いだ。
一ヶ月前までは新しい生活が始まる高揚感によって麻痺させられていたが、やっぱり月曜日は嫌いだ。しかしながら、嫌いな人の方が多そうだから特別な珍しい主張では無いのかもしれない。
スマートフォンから鳴っているベルの音で週の始まりを知る。時刻は6:55分。この中途半端な5分は布団から出る気力を振り絞る為に過去の自分が設定した時間である。我ながら自分の事をよく知っているもので、大体5分ぐらいごねた後目覚めるのだ。まんまと自分が設定したスケジュール通りにベッドから出て大学に行く準備を始める。まずはシャワー浴びて週末の気分を全て流す、その後、好きな曲をかけて、一ヶ月前よりは気合を抜いたメイクをし、暑さにも涼しさにも対応できる服を着る、最後に学校のものが全て詰まったバックを持てば完成、自分だけの家に鍵をかけて慣れてきた道で学校へ向かう。

私は火曜日が一番嫌いだ。
理由は簡単で、一番ハードな時間割なのだ。なぜこんな時間割になってしまったのか責任者に問い正したい...まあ、私なんだけど。とりあえず、そんな重い責任背負えないので火曜日に八つ当たりしておく。
そんなハードな学校とがっぷり四つで組み合った私は帰った後直ぐにベットに倒れ込んだ。疲れた…学校とはこんなに疲れるものだったか、中学高校の頃の体力はどこへ行ってしまったのやら…自分の体力の低下も火曜日に背負わせる事にする。火曜日の様な懐の深い男性とお付き合いしたいものだ。どうやら、好きと嫌いは紙一重みたい。
そんな事はどうだって良い、どうでも良くない事はこの家の家事を私がやらなければ何も進まないという事である。最初の頃は自由を手に入れた気になって浮かれていたが…どうやら、自由を手に入れるためには代償が必要らしい。仕方がないので代償を支払う、今日は元気の残高が少ないので自炊だけで許して欲しい。明日はやるから、頑張ってね明日の私。

私は水曜日が嫌いだ。ごめんなさい、嘘を着きました。正直に言わせてもらうとそんなに毎日の様に曜日にについて考えていない。強いて言えば学校があるから嫌いだなーぐらいなので学校が嫌いなだけである。
なので、私は学校が嫌いだ。夢を追ってどうしても入りたかった大学と言う訳では無いので、惰性で大学も出ておいた方が良いだろうぐらいの気持ちで通っている。そうなったら、授業が楽しいはずがない。強いて言えば、数人出来た友達を喫煙所で話すのは楽しい。
私はタバコを吸うわけでは無いのだが、最初に話した友達が喫煙者で、地元から離れた大学に来てしまった私には友達がこの子しか居なかった。休み時間の度に喫煙所へ行く子だから一人でいても寂しいし付いて行ってるのである。そこに通っている内に友達も何人か出来た。
そして、その子が明日学校帰りに私の家に来る。私の友達はみんな実家から通っている。そこで学校から一番近い一人暮らしの私の家に白羽の矢が立ち、宿題をする事になったのだ。
昨日の私からのツケも背負いながら気合を入れて掃除をする。と言っても、暮らし始めて一ヶ月ぐらいなのでそこまで散らかっては無い。この新しい部屋に遠慮してしまって綺麗に使っている。お金を払って借りている期間は私の部屋なのだが、まだ馴染んでいないのだ。前の家の人の空気も抜けきっていない様な、新鮮さが抜けきっていない、部屋見知りだ。丁寧に部屋を扱いながら明日に向けて掃除をする。

放課後、友達と一緒に私の家に帰って来た。予告通りの展開である。いらっしゃいませ、2名様ですね、奥のベットにでも腰を下ろしてお待ち下さい。
真っ先にベランダに出てタバコを吸い始める、分煙だ、絶対に室内では吸わせない。と言ってもタバコの匂いは入ってくる。部屋の空気とタバコの匂いが混ざる、まるで私の部屋では無いかの様な気持ちになる。彼女達は満足した様で、各々がコンビニで買ったペットボトルやお菓子を広げ、宿題を始める。力を合わせたおかげで二時間ぐらいで終わった。その後はだらだらと時間が流れる。
有難うございました、またのご来店をお待ちしています。結局、宿題をしていた時間と同じぐらい駄弁った後帰っていった。飲み食いした残骸とタバコの匂いが部屋に残る。窓を開けて片付ける。いつもの私の部屋に戻る。

華の金曜日!今日は、居酒屋行ってクラブ行って朝までパーティーだ!騒ぐぜウェイウェイ!
そんな大学生活だと思っていた、夢を見ていたわけでは無いが、私にもそういう大学生活が訪れ、人や記憶や価値観などが出会い別れを繰り返すのかと思っていた。が、全くそんな事はなかった。家、家家家、いつも家。自分が出ないのも悪いがそれにしても家である。恐らく原因は、私が住んでいる付近に友達が全くいない事、サークルやバイトなどをやっていないという事で繋がりを作れていない事だろう。大学生と言えども未成年なので一人でお酒を飲みに行くのが怖いと言うのもある。さて、やる事もないのでお家で麦とホップが原料の飲み物を開ける。美味しさは全くわからないが、慣れていた方が後々良いと思うからである。後は、これを先週観た外国の映画でこの飲み物を飲んでいてカッコ良かったからだ。喉越しとはなんだろうか…難しい飲み物だ。その後はレモン味や桃味のジュースを数本飲み、歌い、踊り…気分が良くなって来たので寝た。

遅めの起床、雨、憂鬱。おやすみなさい。
さてさて、起きたら昼もそこそこに過ぎ、雨も降っている様で今日は何も出来ないであろう事が決定する。仕方がないのでスマートフォンを弄る弄る。怠惰に休日を使い果たす。
終わるところだった、レンタルDVDの返却期限が今日のはずだ、返しに行かなければ。その帰りに綺麗なお店を見つけた、あれはバーかな?いつかあんな所でカッコよく飲む大学生になってみたいものだ。

平日と休日の進みスピードが全く違う。起きて寝て、気づいたら夜だ。数年後に書く事になる卒業論文のテーマはこれにしようかな。
さてさて、残った時間でどうしよう、勉強でもしようかな?それとも映画でも借りてこようかな?この街の散歩でもしてみようかな?
選ばれたのは映画でした!早速家を飛び出し、どうせまた金曜の夜にやるだろうジブリの映画を借りてきて、軽く振って作った炒飯を食べながら観る。何度も見て来たはずなのに何度見ても面白い。ふと思った、私は将来こんな風に誰かの何かになれる仕事に就けるのだろうか。何かになりたいと言う目標は無い、しかし何か誇れるものにはなりたいと思う。とりあえず、巨神兵にはなりたく無いかな。

二週目(8月)

今日は前期授業日程最終日、つまり最後のテストの日である。終わった!とりあえずは終わった!そこそこは勉強したのでそこそこの結果は出てくれると思う。しかしそんな事はどうでも良いのだ!ようこそ夏休み様、一年ぶりです、待ち侘びました
夏休み、このワードに心が踊らない人なんて存在するのだろうか。いや、いない。少なくとも私は知らない。部屋に帰って来た私はとりあえずベッドにダイブする。明日は前期お疲れ様会としてみんなで飲み会をする予定だ。三日後には地元へ帰るし、大学生の夏休みも二回目という事で予定もバッチリだ、死角はない。そんな楽しい楽しい夏休みが始まる前にバイトに行くための準備をする。

バイトの疲れからか、学校が終わった事への油断からか昼過ぎに起きた。アラームに支配されない起床とはとても気持ちがいいものだ。今日予定されている飲み会は夜からなので其れ迄は時間が余っている。世の人達はどうやってこの余白を埋めているのだろう。とりあえず、世の中の人達の意見は一旦置いておいて私は何をしよう。そうだ、明後日に迫った地元への帰省に向けてお片づけでもしましょう、そうしましょう。でもその前に腹ごしらえ、腹が減っては掃除も出来ぬ。ベッドから出て冷蔵庫を開けると、お茶と調味料しか無かった。うーん、帰省前に買い出しして余っても困る…コンビニにしよう。寝間着から上着だけを着替え、マスクを装着しイヤホンを刺して掃除の為のエネルギーを買いに出た。

これは断言できる、お酒のせいだ。昼過ぎに目覚める。昨日とは同じ様な時間に起きたはずなのに全然気持ち良くない、寧ろ気持ちが悪い。昨日は、居酒屋で飲みカラオケで夜を明かした。何の捻りも無いが結局楽しい飲み会だった。そして、翌日二日酔いになる所までが大学生の飲み会のテンプレートだ。ちゃんと今日の私も気分の悪さと頭の痛さに襲われている。今日は一日中ベッドの上で過ごそう。明日の準備とか無理、ご飯も要らない、お水は頂戴。

今日はアラームで早めに起きる。二日ぶり、アラームさんおひさー。昨日何も出来なかった代わりに今日は少し早起きだ。地元から離れた場所で買った洋服を多めに選んでキャリーバックに詰める。
さて、荷造りは終わった。部屋を出る前に窓や電気のチェックをする。広く無いのですぐに終わってしまうのだが、二週間も帰らないとなると少し念入りになる。二回ぐらい見回した後にスマートフォンの充電器を見つけカバンの中に入れる、多分これで忘れ物は大丈夫。少しの間さようなら、私だけの部屋。

「朝ご飯だよ!起きなさい!」
アラームよりは心地がいい声で起きる。朝ご飯、一人暮らしを始めてから食べなくなったなあ。お腹は全然空いていない、そういう体になってしまったのだろう。しかし、作ってもらったのなら食べなければいけない。いつも座っていた椅子に座って朝ご飯を食べる。弟はまだ学校があるらしく、制服を着ている。この前まで小学生だった弟が制服を着ている事に違和感を感じた。少し見ない間に大きくなったなあ。よくよく見たら家の感じも少しだけ変わっている。見た事のない健康器具に、新しくなった掃除機、どこで買ったか分からないお土産…変わってなかったのは高校生の頃の教科書ともう着ない服とベッドぐらいしか残っていない私に部屋ぐらいだ。この慣れ親しんだ家も少し目を離すと私が居た時と空気が違ってくる。私がこの家で吐いていた空気は無くなっている様で、少し寂しさを感じた。

死角はないと思っていた、夏休みが始まったあの日までは。しかし、死角というのは見えないから死角なのだ、あの時の私は夏休みの始まりに浮かれて驕っていた。地元に帰ってきたには良いものの、かなりやる事が無い。友達数人に連絡を送ってみたものの、バイトや大学のサークルなどで捕まらなかった。こうなって来るとやる事が無い、知り尽くした街なので散歩しても全く楽しく無い。仕方がないので映画でも借りてこよう、実家の方がテレビが大きいので迫力が違う。その前にブルーレイレコーダーには何が録画されているんだろう、気になって調べてみると、最新のドラマやバラエティ番組が1日に2本づつぐらい録画されていた。私が出て行く前から家族が好きだったバラエティ番組が変わらず録画されていて少し嬉しかった。その番組を最新の放送から数本みた。

家族の人を起こさない様に静かに鍵を開けて家に入る。私は休みなのだが、寝ているみんなは明日からまた学校や仕事が始まる、起こしてしまったら申し訳ない。お風呂入るけど起きないでね。
それにしても地元の友達と遊ぶのは楽しい。大学の友達と遊ぶのも良いが、やはり何か違うのだ。どちらも楽しいのだが、何故か昔の自分に戻る気がする。こちらの方が自然な気がする。気がするだけなので対した差は無いのかもしれない。大学にいる時はもうその地域の方言が会話で出てしまったりするのだが、地元に帰って来ると完全にこっちの喋り方になってしまう。どちらも意識しているわけでは無いのだが、豪に入らば郷に従ってしまうのだろうか、その土地の空気が脳に入った時にスイッチが切り替わってしまうのか、いつの日にか原因が究明される日を心待ちにしておこう。今はとりあえずそっとドライヤーのスイッチを入れる。

三週目(11月)

肌寒さを感じ、アラームよりも少しだけ早く目が覚めた。毛布が完全に剥がれている、暖房が聞いてるとは言え、これは寒いはずだ。アラームの時間まで少しとは言え持て余しているので煙草を吸いに窓へ向かう。窓を開けると一気に気温が下がる、来る途中で拾ったTシャツ一枚では秋の朝の空気には対応できない、手早くタバコに火をつける。白い息が混ざっていつもより煙が多く感じた、部屋の暖房と外の冷気とタバコの煙が混ざる。
「寒い、何してるの?」
私の毛布を奪って丸まっていた彼が寒さで目を覚ました。寒くて起きたのはお互い様なのであまり悪いとは思わない。とりあえず質問に答えるために持っているタバコを彼に見せる。理解はしたが納得はしてない顔でまた眠ろうとした彼の隣で元気よくアラームが鳴った。
「学校行く?行くなら起きなきゃ。」
私は、半ば答えがわかっている事を聞く、
「行かない、何よりもとにかく眠たい…行くの?」
と聞かれたので煙草の火を消してベッドに戻り毛布を取り返す。サボり仲間を見つけた彼は笑いながらキスをし、胸に手を当てる。何よりも眠たいんじゃなかったのかい、と頭の中でツッコミながらタバコじゃなく歯を磨けば良かったと後悔した。

昨日は休んでしまったので今日は学校へ行った。週末は彼が泊まりに来る事が多い。そして、そのまま月曜日に学校を休んでしまう事が多くなった。そういえば今週末で付き合って半年か、プレゼント何にしようかな。この前に、彼が忘れていった私とは違う種類のタバコに火をつける。彼の影響で吸い始めたタバコだが、彼がいない所ではあまり吸わない。やっぱり私のやつとは違って煙がきつい。寒い、もう良いや。半分ぐらいでタバコを折る。部屋が週末の匂いになる。

バイト疲れた。タバコとバイト先の匂いが染み付いた服を脱ぎ捨てて今日のバイトのハイライトを思い出す。一年近く働いててもミスはするし、その都度ある程度は怒られる、うざったい客も来る。慣れたとは思うが、それは知っているだけで苛立つし、落ち込みもする。もういい、お風呂に入って残り香を上書きしてしまおう。後は寝てしまえば感情は全てベッドに落ちていく。

「じゃあ帰ってきたら飲みに行こうね!年明けとかどうかな?」
「多分大丈夫、楽しみにしてるね。」
この子は電話すると長いんだよな。通話履歴は二時間を軽く超えていた。こんなに長い間何を話したっけ…思い出す。地元の友達の近況、彼女の彼氏の愚痴、私の恋愛の話、他愛の無い話。特に私の恋愛の話についてはかなり根掘り葉掘り聞かれた、
「相変わらず男運ないなぁ」
とまで言われた、失礼な奴だ。それでも二時間話していて苦痛だとは思わなかった、特別楽しかったとは思わないけど、それでもまた話したいとは思う。これが友達だなあ、それ以外も友達はいるけど、この人は間違いなく友達だなと思う。たまに、地元の子と話している間は地元に帰っている気分になる。私の部屋にも地元の風が吹いているような…私が地元愛に溢れている間も会話は進む。時計は12に向けて一歩一歩進んで行く。
「じゃあそろそろ寝るー。おやすみ、またね!」
時計が到着する前に終わりの時間になった。
「またね。」
と、挨拶を返す。電話が切れる。風が止む。多分彼女とはまた話すだろう。次は地元で面と向かって話す事になるかな。さて、後いくつ寝るとお正月だろうか、早く来い来い。その前に師も走る月を過ぎなければいけないのか、私もバイトや就職活動が忙しくなる時期かもしれない。そんな12月がもうすぐやって来る。そんな忙しそうな季節の前に体力を蓄えておこう。時計はさっさとてっぺんを過ぎ、休まずに歩き続ける。それを尻目に、エアコンから吹く温かい風を浴びながらとりあえず一つ、眠りにつく。

私は大学生として約三年間学校に通って来たが、何を得たのだろうか。結局どこでいつ役立つのか分からない勉強をし続けて来た。これまでの小中高も一緒だ、受験以外であまり役立った試しが無い。やりたい事は全く決まっていない。どんな仕事に就くのだろう。明日の就職説明会で運命の出会いは有るのだろうか?一生やっていきたい、生き甲斐になるような会社と出逢えるのだろうか?夢がある人間が羨ましい、そこに向けて努力する事が出来るのだから。夢が無い人間は夢を探す為に頑張ればいいのだろうか。無理だ、それ自体が夢では無いのだから頑張れない、今の人生もそこそこ楽しいのだから頑張る必要を感じない。でも夢がある方が楽しそうに見える、その人達はいつ夢を見つけそれを夢だと自覚したのだろうか。夢が無い私は夢が有る人を夢見て…よくわかんなくなって来た。夢ってなんだよ、うるさいな私の勝手にさせろ。寝て夢でも見ようかな…この終わり方が一番癪だ、絶対寝てやらん、もうちょい起きてやる。

疲れた、履き慣れない靴とやり慣れない事を一日中やっていたお陰でかなり疲れた。同じ様な表情で同じ様な歩き方をしていた彼等も同じ事を思っているだろう、お疲れ様、またどこかで会いましょう。さて、知らない人達への労いはこのくらいにしてこのパンフレットの束をどうしようか。金の卵が居るかもしれないと通り過ぎる人全員に笑顔でばら撒いていたパンフレット達。しかし、笑顔の彼等も、同じ表情の同志達もあまり大きな期待をして参加しているわけでは無いだろう。希望を見出した人や、夢に向かっての第一歩だった人も少しはいただろう。少なくとも私はそれにはなれなかった。迷走した大学生活の延長線上だった。後一年で放り出される社会の道標はまだ見つからない。今日は頑張った、これ以上は進めない、頑張れ無い、頑張る事もわからない。お酒を空けて止まることにした。

お酒は好きじゃ無い。そんな事をお酒を飲みながら思う。私はお酒の味自体は全く好きじゃ無い。むしろ後味は嫌いだ。タバコやおつまみで掻き消さなければ多くは飲もうと思わないだろう。ただ、酔っている感覚はかなり好きだ。全ての事がどうでも良くなってしまうのだ。ただ、自分の名誉の為に言いたいのは酒癖は悪くはない。暴れまわったり、奇行に走る様な事は無い、ただなんでも面白くなり、なんでも良くなるのだ。それが一般的に酔うって事か?だがしかし、他の人の気分を知らないのでこれは自分だけの酔いだという事にしておく。
なぜこんな事を思ったかと言うと、今週も彼が部屋に来てご飯を食べ、お酒を一緒に飲んでいるわけだが、彼の酒癖が悪いのだ。私と飲んでいる時は何も無いが、私が居ない所だと女の子に手を出したり、元鞘と会ったりしているらしいのだ。もしかしたらこれは男性にとっては普通なのかもしれない。あと、酒癖の所為だけではないのかもしれない。ただ、噂で聞いただけなので本当は何もかも良いのかもしれない。限りなく黒に近いが、推定無罪と言う言葉もある。私がその眼で見るまで、この耳で聞くまで、何もなかった事にしよう。今の私はこの関係を壊したく無いのだ。この部屋に週一で集まってだらだらお酒を飲んで一緒に寝て月曜日を怠惰に潰すこの関係が好きなのだ。そして彼の事も好きなのだ。この前友達に言われた事を思い出して、溢れそうな笑みと共にお酒を飲む。多分、私は酒癖は良いが男運が悪いのだろうな。

四週目(2月)

おはようございます。今日も一日何も起こらないでしょう。おやすみなさい…
こんにちは。いや、最早こんばんはに片足突っ込んでいる時間だ。寝過ぎた。しかし、最近はずっとこの調子なので過ぎたと言うよりはいつも通りなのかもしれない。どうせ何もやる事が無いのでいつ起きても良いのだ。学校に通わなくなって約一ヶ月が過ぎた。正直なところ、四年生になってからはゼミだけだったのでそこまで学校には通ってなかったが、卒論も就活もバイトも終わってしまったのでもうやる事がいよいよ無い。そりゃあ怠惰な暮らしにもなって来る。元々活発な子では無いのだ。
さてさて、また眠くなるまで映画でも見よう。ご飯の買い出しついでに何か借りて来よう。よおし今日は、何を見ようかな、何を食べようかな、何を飲もうかな。

こんにちは。今日は久し振りに予定がある。夜からだけど、張り切る事は悪い事じゃ無い。ただ、早く起き過ぎてしまった…時間を潰す為にまずは一服。張り切り過ぎは良く無い。
さて、吸い終わった。この程度では時間は全く潰れなかったが、目は覚めた。今日の飲み会へ連れて行く戦闘服を選ぶ。寒いからこのコートで、じゃあ中はニットで下はシンプルなやつで良いだろう。いや、久しぶりのお出かけ、今日は気合を入れてワンピースとかにしようか。あるいは…よし!先ずはお風呂から!その後ファッションショーだ!今日は私のバイトの送別会、気合を入れて行く事は何も悪く無いだろう。堂々と主役の座に座ってやろうでは無いか!はいはい、まずはお風呂、寒い寒い。

気持ち悪い。昨日は散々だった。見事主役の座に腰掛けた後の記憶が殆ど無くなっている。記憶が無いのに散々だった事だけは分かる。散々だったから記憶が無いのだ。散々だが最高に楽しかった昨日は今日まで侵食してちゃんと気持ちが悪い。私の中のアルコールはまだ昨日を終わらせたく無いらしいが、残念ながら私は今日を始めさせて貰う。流石にやらなければいけない事があるのだ。さて、そろそろ始めてしまおう。この部屋を出て行く準備を。

今日は一人でひっそり通い続けていたバーにさよならを言いに行く。少しだけ片付いてきた部屋で準備をする。この街にも色々な思い出が出来た。失礼な話、最初の頃は何も無い街だなと思っていたが、今となれば思い出に装飾され好きな街になった。しかし、引っ越した後ではよっぽどの事が無い限り都会から離れた学生街に来る事は無いだろう。その前に、学生生活の最後に、この街にいる間に、思い出をなぞっておきたいのだ。今日は記憶に残しておきたいので程々のお洒落をする。今夜の主役は誰かにくれてやる。

今日はこの部屋を一人で占領する最後の日だ。こんな段ボールだらけになってしまったが、まだまだ私の部屋だ。大好きな私の部屋だ。コンビニで買ってきた晩酌セットを広げる。段ボールの上に水滴が落ちる。思い出が滲む。この素晴らしい部屋も最初はただの部屋だった、しかし毎日息を吐いていたら私の部屋になった。匂いも変わった、傷もつけた、私の物になった。誰がどう見ても私の部屋だっただろう。私の部屋は私が吐いた息で出来ている、染み付いている。次の人も最初は私の空気が染み付いた部屋をよそよそしく感じるのだろう。安心してほしい、次第に私は消えて行く。そして次の人の物になる。今日はタバコは吸わないでおこう、今日は私の部屋のままで。

友達が手伝いに来てくれた。が、本番は明日なので今日はこの子と最後に遊ぶ日だ。そのまま泊まって貰って明日搬出の手伝いをして貰う。労働力を貰っているので今日の飲み代は私持ちだ。段ボールが増えたが、少し広く感じる部屋でお酒とおつまみを減らす。最初に仲良くなった子と今でも仲良く出来ている事は素直に嬉しい。あまり友人が増えなかった大学生活だったが、この子が友達になってくれただけで良かった。
窓に並んでタバコを吸う、
「最初は私一人で吸ってたのにね。」
彼女は笑って茶化してくる。
「貴女が寂しそうだったから一緒に吸ってあげてるんだよ。献身的な私を有り難く思って。」
冗談で返してみると、
「あっそ、クソ彼氏の所為じゃ無かったっけ?」
大笑いしながら倍で返された、冗談じゃない
「うるさい。」
本当にうるさい、窓の外で笑っていると近所迷惑だ。まあでも、明日出て行くしもういいかな。私も釣られて笑った。

何もなくなった部屋を眺める。これでもまだ私の部屋だった残り香がする。未練がましいな、重い女見たいでかなり自分に嫌気が指した。いや、こんなにお世話になったんだ。大学より、お酒より、タバコより、彼氏より、友達より…何よりも大学生活で一番長く過ごしてきたものだ。これに何も思わない方がどうかしていると思う。言い過ぎかもしれないけど、とりあえず今はいいや。
私は地元で就職した。私がなりたかった私なのかはわからない。少しだけ興味が湧いたからその職業を希望して、たまたま受かっただけだ。これが夢だったのかと言われたら分からない。ただ、少しだけ楽しみではある。
これから私は地元へ帰る。そこで働く。来週からはまた、知らない部屋で過ごすことになる。今までありがとう、私の部屋。さようなら。

4週間

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  • 短編
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  • 成人向け
  • 強い性的表現
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