原宿の裏。

花野 尋

 KENZOの白のトレーナー、左腕にBALENCIAGAのバッグを持った女が吊革を握って、僕の前に立った。
KPOPの女性グループの中に一人はいるだろうセンター分けのパツキンにマスクをしている。
マスクをしていてもそこまで可愛くはない。
夜は気温が低いからか、電車は暖房が効いていて暑かった。
明治神宮前に着いたので、そこで降りた。

駅を出ると、人が多くてイライラする。
どこにいたって人間なのに、中身のないアホに偏見してしまう。そして、僕もその中の一人だということを、この時はまだ気づいていない。

人ごみを避けるために原宿の裏を通る。
ハリーポッターの映画の路地裏みたいに急に人がいない。
いつもこの道を通る。2、3ヶ月に一回、美容院に行く時に。

人がいないならこの場所は好きだ。キャットストリート、猫を見たことはないけどね。

17時半ちょうどに美容院に着いた。
今回は思いきってベリーショートにしてくださいと言った。いつもは前髪の長い米津の玄師っぽい髪型なんだけど、今回は思いきって。


 いつも切ってもらってるこの人の集中力が僕にうつって、少し緊張して、後ろのほうでスマホのアプリで大笑いする若者アシスタントたちにイラついて、前髪をバッサリいかれた様が異様にオシャレで、出来上がりのイタリアの子供風なベリーショートに満足した。

帰りも同じ道を通る。
夜の原宿の裏は小さく煌めいて、静かで、よく観る最近の音楽のMVみたいで、少しだけその世界にすいこまれた。

帰りも同じ線の電車で帰る。
KENZOの白のトレーナー、左腕にBALENCIAGAのバッグを持った女が吊革を握って、僕の前に立った。
さっきと違うことがあるとすれば、僕の髪型がベリーショートになったこと。

原宿の裏。

原宿の裏。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-11-07

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