如月駅の時報とからくり時計

だすたあ

運転再開の目処は現在たっておりません。

‪ここは首都圏のとある私鉄‬
‪AM 7:15‬

‪ホームには暗い表情をした女子高生が直立している‬
‪目は虚ろだ...。‬

ファンファンファン‥‥
電車がホームに入線することを知らせる接近警報音。
女子高生の足がすくむが何かを決意したように前を進ませた。
黄色い点字ブロックのその向こう側へと‥。

‪そこに急行と書かれた少し古めの黄色の重量感ある車両が入線してきた。‬
令和に入ったのに昭和臭いデザインだ。

ホームにいる女子高生、
顔は綺麗で整ってはいるが少し涙がでている
目元が湖になり、少女は戻らない選択をした。

decideそしてdescend ‪ー。
そして少女は空を飛んだ。‬

驚きおののいた運転手はマスコンハンドルを力強く引いた_。
‪とたんに金切り声の悲鳴をあげる無機質な‬丸いライトの車両__。

‪無音が鳴り響き。‬
少女に彼岸花が咲いた。

無機質な鉄のレールとコンクリの枕木に花畑が咲いた。
ギィィィィギィィィガコンガコン!プシュー!!
すでに人を殺してしまった黄色い鋼鉄の塊は騒音をならし緊急ブレーキを無情にかけていた。

耳障りな警報音がこだまする。
ビィィィィイ…。
駅中に鳴り響くけたたましい音

その音に人々は驚いていたが妙に慣れたように
呆れたように、次に自分たちの事を心配した。
ドアが開かない急行の車内とホームには、
スーツという文民が着る軍服を着た人間たちであふれていた。
彼らは呆れ、憤り、愚痴をいい、ボヤき、あげくに人の死まで皮肉を言っていた。
会社に電話をかける人々も多くいた。

現に冷たい黄色の鋼鉄製の凶器の数百メートル先は人だったタンパク質の塊が転がっているというのにだ。
無造作に。

そして間もなくシワがある制服を着込んだ駅員達ががせわしなく証拠隠滅するように青いビニールシートを覆い臭いものに蓋をする。

しばらくして車掌が他人事のように人身事故を告げる放送をした。

だれも亡くなった人間のこと、人が亡くなった事など、どうでも良いのだ。この中に自分が"電車を止める"ことになる人などたくさんいるというのに
まるで機械が動かなくなったような対応だ。

しばらくして電車とホームから人が機械的に追い出される。

そして代わりに救急隊と警察がホームの中に降りていく
助からないのに、無意味に小走りで走り抜けていた。

駅のコンコースでは人々が振替乗車券という紙切れの為に脳死したように欲しがって列をなしている。

午前7時15分ごろ、如月駅で人身事故があり、上下全線で運転を見合わせています。現在、救助活動と警察の検証をおこなっております。運転再開は未定です。
とコンピューターのテキストボイスみたいな棒読みの駅員の放送が鳴り響く中

午前8時が回った。。。

アメージンググレースがコンコースに鳴り響いた。
時報だ。コンコース中央の時計台から発せられた…。
ピエロのようにそして、パズルみたいに動くからくり時計とアメージンググレース
これはきっと亡くなった女子高生への鎮魂歌だろう

Amazing Grace,
how sweet the sound,
That saved a wretch like me…
I once was lost
but now am found
Was blind, but now I see.

如月駅の時報とからくり時計

如月駅の時報とからくり時計

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-11-04

CC BY-NC-ND
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