【超短編小説】着信

六井 象

 夜中、電話の着信音で目が覚めた。枕元の携帯を手に取って確かめてみたが、画面には何も表示されていない。アパートの隣の部屋だろうか。それにしては音が近い。部屋の電気を点けて音の出所を探ると、夕方、膝を擦りむいた時に貼った絆創膏の下から聞こえてくることに気がついた。しばらく待ってみたが、音は止む気配がない。仕方なくそっと絆創膏を貼がすと、音が止み、知らない女の声で「元気~?」と聞こえてきた。普通の電話ならまだしも、絆創膏越しにする質問としてはおかしいだろう。いらいらしたので何も答えないまま、絆創膏を丸めて寝てしまった。

 翌朝、足の激痛で目が覚めた。見ると、部屋に知らない女がいて、俺の膝の傷を泣きながら掻きむしっていた。

【超短編小説】着信

【超短編小説】着信

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-11-04

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