作文 「落下する私」
○年△組×番
毛利彩花
私は呪いにかけられています。
病気ではなく呪いなので、現代日本ではほとんどの人が私の状態を理解出来ず、私の主張は虚言か勘違いとして扱われます。
もちろん医学によって治療、管理、予測はできません。社会保障や援助も受けられません。孤立し、時にそしられます。
呪いは年齢を重ねるごとに強くなっている気もしますが、それは呪いによって社会の中で遅れをとることによってそのような気がしているだけかもしれません。
この呪いについて私にわかっていることが2つあります。
ひとつは、呪いがどんなに強くなっても直接、私の心臓を止めることはできないということです。呪いと私の心臓が止まるまでの間に必ず、私の意思が挟まります。
ふたつめは、呪いは私の肉体も深く蝕んでおり、肉体が生命活動を続ける限り解けることはないということです。
私はこの呪いによって過去に2回、手痛い挫折を味わいました。
呪いはとても残酷で、息を潜めて私を油断させ私が何かに届きそうになったら途端に暴走し、私のことを引きずり下ろしました。
頑張らないとどんどん状況は悪くなります。
でも頑張っても状況は良くはなりません。
私は産まれてからずっと、溺れていく途中なのです。
明るい未来を期待し、努力して、絶望する。そんなことをあと何回、経験しなければならないのでしょうか。
いっそ余命幾ばくもなければどんなにいいでしょう。
それで私は自ら余命を決めました。そうしたら、とても楽です。
だって間もなく死ねるのならば、状況が悪くなることも怖くない。頑張らなくていい。
重力に抗わず身を任せて、バーンッと地に叩きつけられる前に意識を失ってしまえばいいのです。
痛みも苦しみも辛さも、地面に叩きつけられた一瞬後からで、一瞬前まではとても気持ちが良いのです。
ただあまりの気持ちよさに迫る地面を忘れてしまわないように。
それだけ気を付けて、私は落下中です。
作文 「落下する私」