知ること

知ること

死ぬゆく私は、私を愛してくれた人たちにいったい何と言えばいいの?


何かを知ることは、ひとつの世界が死ぬことだ。

みんな私のことを明るい子だと思っている。
辛いことが少なくて、悩みはすぐに打ち明けて、だいたい寝てるか笑ってる。
どんな光さえ届かない闇を心の内に隠しているなんて思っていない。

いま私が自殺したら?

みんなの信じている世界は死んでしまうかもしれない。
夏に隣で笑っていた子が秋には消える。
他人の心は本当に1ミリだって分かることはない。
愛や友情や思い出や言葉や気づかいが、ときにどれほど無力か。

私はどうすればみんなの世界を揺るがさずにいられる?

答えは明白。
何も言わず、差し伸べられた手を無視すればよい。
そうすればみんな、私のことを自分勝手で薄情な「リセットさん」として忘れてくれる。
いい子だと思ってたけれど、浅はかなところもあったしやっぱり悪い子だった。
恩を仇で返す、周りのことは考えない、そういうことはまぁ、たまにあるよねって。
それで私の存在がゆっくり、音もなく、みんなの世界から消えてくれる。

知ること

せめて愛してくれた人たちにありがとうと伝えたかったけれど、それは私のわがまま。

知ること

死はφじゃなくてただの0だよ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-11-02

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