独裁者

ある国の国家指導者が言った。

「俺の銅像を広場に建てろ」

この国では閣下と呼ばれている国家指導者の言葉が法であり、絶対なのだ。

「閣下の仰せのままに」

宮殿に集められた大臣たちが答えた。彼らは即座に実行した。

数ヶ月後には宮殿から見下ろせる広場に巨大な閣下の銅像が建った。
それから毎日、宮殿から銅像を眺める閣下はご満悦だった。

広場を行き交う国民は、銅像の前で足を止めては銅像を見上げた。
銅像の製作だからと食料と金、労働力、あらゆる全てが奪われたから。

しかし、閣下は勘違いしていた。銅像で足を止める国民が自分を慕っていると。
そして再び大臣たちに言った。

「全ての町に俺の銅像を建てろ」

「閣下の仰せのままに」

またしても大臣たちは即座に実行したのだった。

それから数ヶ月後には国中の全ての町に銅像が建った。そして、

「国中を見て回る」

全ての銅像の出来栄えを愛でるため、閣下が大臣たちに命じた。

「閣下の仰せのままに」

大臣たちはすぐに豪華な車列を用意して、閣下率いる大勢の一団が国中を歩き回ったのだった。

銅像のさらなる製作と閣下たち訪問団の存在で、非情にもまた国民の食料と金、労働力は搾り取られた。

国民はもう銅像を見るのも嫌で、通りすぎるときには無意識に頭が下を向くのであった。
国中の町を回るうち、その様子を見た閣下が今度は、勝手に国民が自分を敬っている、と興奮していた。

またまた閣下が大臣たちに言う。

「俺を神として崇めろ」

「閣下の仰せのままに」

懲りずに大臣たちは即座に答える。そして、彼らは迷いもせず閣下を殺害した。

閣下は天国へ旅立ったのであった。
神の住まう天国へ。

独裁者

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-10-31

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