たいせつにしたいもの
こどもの声がきこえるから、たぶん、きみが、わらったのだとおもう。
むかし、天使だった、きみは、いつも、あったかい手をしていて、むなしさでできた、ちいさなあなを埋めるのは、雨の日のフルーツパフェだった。
教室が、宇宙のどこかに飛んでいって、わたしたちの星が、そろそろと永久睡眠をはじめている。
さいきん別れた恋人と行った映画の内容を、ときどき、なんとはなしに思い出す。そのひととは一度も行かなかったラーメン屋で、しょうゆラーメンを食べているときとかに。
生物室で、せんせいがつくる蝶の標本をながめているあいだが、じつはいちばん楽しかった学生時代に、もう二度ともどることができないという現実を、わたしはいまだ信じられないでいる。過去には立ち入ることができないのだと、わかっているからこそ、思い出は鮮明に、生々しくよみがえってくるのか。
きれいなものって、いつも儚いね。
たいせつにしたいもの