志村正彦は完結した。

志村正彦は完結した。


明日死ぬという誓いの中でしか今日を生きられない人に、命の重さを説くなんて残酷だ。
私は代わりに、魂の軽さを唄う存在でありたい。

高校生のとき、好きだったバンドのボーカルが急死した。
それを知ったのは友だちとディズニーシーに行く電車の中。
その日の思い出で今も残っているのは、ヨーロッパを思わせる建物たち、間を縫う運河を船に乗って進んでいくアトラクションの上、夜空に雪がちらつき、橙色の街灯が所々に灯って滲む感動的な風景を見ながら私は、あぁ彼はもう…、と思ったこと。

志村正彦という閉じた環に想いを馳せると、私はとても安らいだ。
彼はもう誰にも届かない。
彼はもう損なわれない。
彼はもう完結したのだ。

志村正彦は完結した。

志村正彦は完結した。

死はφじゃなくてただの0だよ 投稿済みの物を解体

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-10-29

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