第8話-28

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 ターミナズが密集する水の広い球体には、ティーフェ族を中心とする各種族、ヴィジュラ人と戦うすべての種族の連合軍から派遣された兵士や傭兵がひしめき、戦場へ向かう準備をしていた。

 ティーフェ族の兵士が1人、整備を終えたターミナズの前に立ち、パイロットが来るのを待っていた。

 しかしそこに現れたのは兵士ではなく、海洋学者であった。

「ビザン代表。シェルターへ避難なさらなかったので」

 兵士が笑顔ですごい勢いで泳いで近づくビザンに聞いた時、いきなりビザンは銀色のキューブで兵士を殴りつけた。

 もちろん兵士は頭部を強打したのだから平然としれはいられず、水中に倒れこみ、傷口を押さえ水中で唸って転がった。

 その隙にターミナズの、巨大なクラゲのような生命体の下方から中へもぐるようにビザンは入り込んだ。

 すると後を追ってきたミザンもターミナズの中に入り込んだ。

 が、ミザンは兄を止めるどころか、白い両腕を広げ自ら操縦することを選んだ。

 兄が黙って妹の顔を見る。

「後戻りなんかできないのよ」

 各種族が戦場へ向かう緊張感の糸を張り巡らせる中で、一体のターミナズが発着ベイから抜け出たことなど、誰が気づけただろう。

 ターミナズはそのまま戦場とは反対の宇宙域へ出た。

 兄妹の眼には惑星の反対側のさらに先の領域で宇宙を埋め尽くすターミナズと鋼鉄の宇宙艦隊が交わり、渦を巻き、命が消えていく壮絶な光景が映っていた。

 仲間たちが戦っている。そう心中でビザンは思いながら、感情はなんにも沸いてこず、ただ惑星ムーノに向かうよう、妹に指示しただけだった。

 超空間に一体のターミナズが消えたのは、宇宙に戦火が拡大する最中のことだった。

第8話-29へ続く

第8話-28

第8話-28

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-10-28

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