優しさの沼
どろどろどろ
どこまでも優しい人間になってみようと思った。
沼に手を突っ込むと、どろどろどろと泥が纏わり付いて引っ張られているかのように底へ底へと落ちていく。
底の終わりまで来たけれど、それを突き破ってどろどろどろと、泥の底はどこまでも続いてく。
一つ、ころんと艶めきを感じるつるつるとした肌触り。
手を何処までも空に戻して引っ張り上げると、そこには赤い林檎が、一つ。
泥がつるつると弾き飛ばされて、頬に、口に、目に入りそうになったけど、私は薄っすら片目を開けて、まつ毛の隙間からその林檎を見上げた。
綺麗な林檎は、所々白く模様がかっていて、少し黄緑を帯びて、強く陽射しを照り返し光り輝いて見えた。
優しさの沼