甘い城

杉山 実

  1. 後継争い
  2. 後継争い加熱
  3. 自分の道
  4. 新社長誕生
  5. 美沙の初仕事
  6. 救済方法
  7. 美沙の作戦
  8. 新たな展開
  9. 裏工作
  10. 潜入へ
  11. 残された会話
  12. 運ばれた美沙
  13. 精神病院
  14. 精神鑑定検査
  15. 婦人科の恐怖
  16. 羞恥プレー
  17. 剃毛プレー
  18. 裏切りの果て
  19. 特別病棟
  20. 自白剤
  21. 中之島病院の闇
  22. 自白
  23. 剃髪
  24. 病院の捜索
  25. 厚子の失踪
  26. 厚子の調教①
  27. 厚子の調教②
  28. 厚子の調教③
  29. 厚子の調教④
  30. 厚子の調教⑤
  31. 厚子の調教⑥
  32. 厚子の調教⑦
  33. 地下室へ
  34. 全てを知られて
  35. 幻覚
  36. 処女喪失
  37. アナルバイブ
  38. 救出
  39. 悪の崩壊
  40. 岡山駅の偶然
  41. 痛手を残して

後継争い

赤城家の郵便受けに、今朝は特別分厚い新聞が配達員によってねじ込まれた。
「お父さん!今朝も沢山の折り込みチラシが入っていて、郵便受け一杯に成っていたわ!」高校生の娘美沙が茶の間に持って来て置くと、挟まれた折り込みチラシが束に成って下に落ちた。
「今朝は金曜日だから特別多いな!」美沙の父親信紀は散らばって落ちた折り込みチラシを拾い集める。
「これはお花の頒布会ね、毎月自宅に届くのね!綺麗わね!」母親の紗子が頒布会の折り込みチラシを見て言った。
「これって、二万五千円を一括に払うのか?」信紀が値段を見て言った。
「分割払も有るでしょう?」
「でも金利が付くみたいだよ!分割なら二万七千円って書いて有るな!」
「多いわね、頒布会!茶碗、絵画、酒何でも有るわね!お父さんの会社の和菓子も頒布会で売って貰えば凄く売れるわね」冗談の様に言った紗子の話が、現実に成って行く。
二千年の三月、赤城家の朝の一時だった。

赤城信紀は和菓子の製造メーカー、千歳製菓の営業課長と云っても社員は二十五名程度で営業は信紀を含めて三人。
その三人が一応全国を受け持つ、実際は古くからの取引先に行くのだが、時には先様の問い合わせで各地に行く事も有る。
千歳製菓は宮代千歳社長が始めた名古屋の冷凍和菓子会社。
宮代千歳は既に七十歳を超えて、長女婿の京極隆史に譲るか次女婿酒田慎治に譲るかが社内の注目に成っていた。

酒田慎治は常務取締役製造本部長で、京極隆史は専務取締役営業部長だ。
創業三十五年だが、地元の学校給食を中心に堅実な業績を残しているが、売上げは伸び悩みここ数年横ばい状態が続いていた。
次期社長の座を射止める為には、京極専務には目立つ業績上昇が最重要なので焦りが最近目立っていた。
朝会社に行くと京極専務が信紀の席にやって来て「社長が来年で引退を考えていると、家内が昨日実家に行って聞いて来たのだよ!今年中に何か大きく売上げを伸ばす新規の得意先を捜さないと私の目が無いかも知れない!」焦った様に言った。
「専務は長女の婿なのですから、優先では?」
「それが、酒田常務が極秘で驚く様な新製品の開発をしているらしいのだよ!宮代社長は常々会社の業績を上げた人間に後を譲るとおっしゃっているだろう?それに妹の貴美子さんの方を可愛がっていると、貴代子も言っているから安心出来ない」
「そう言われましても、学校給食も年々生徒の減少で数字が伸びません!病院食も糖分控え目で老人ホームに先日納入しました饅頭は、餅の成分が多いので喉が詰まるとのクレームが来ました」
「赤城君が言うのは悲観的な事ばかりじゃないか?もう少し良い話しは無いのかね」
「はぁー困りました!」と言うと「今日中に何か良い提案を持って来なさい!君も子供さんにお金が必要な時だろう?昇給無く成るよ!」
朝から自分の社長就任が決まらないのは、営業の成績が原因だと苛立ち八つ当たりをされた。

だが夕方に成って益々事態は悪化して、酒田常務が前々から試作をしていた商品を社長に発表したのだ。
大手のテーマパークのキャラクター商品で、納入業者と試行錯誤を繰り返して、漸く製品化に漕ぎ着けたと伝えて賞賛を浴びていた。
テーマパークのお土産売り場で解凍して販売するが、当面は代表的なキャラクターの品物の詰め合わせを秋から販売の方向で納入業者と決まった様だと話した。
宮代社長は大喜びで、酒田常務を「営業部隊よりも研究室に営業力が有る」と絶賛した。
それを伝え聞いた京極専務は、営業から戻った赤城課長に「何か良い販売先は見つかったのか!」語尾を強く怒った様に言った。
赤城課長は雲行きの悪さに、自宅から持って来た頒布会大手の折り込みを見せて「専務、この折り込みをご覧下さい!この頒布会なら当社の和菓子が売れると思うのですが?」そう言いながら恐る恐る差し出した。
「日本酒の折り込みに季節の花か?」怪訝な顔で折り込みを受け取り見る京極専務。
しばらく見つめていたが急に手を叩いて「そうか!課長!面白いかも知れない!先方にアポをして、私が自ら行こう!君も一緒に商談に行こう!大阪で美味しい物を食べて美味い酒が飲めると良いな!」
急に元気に成る京極専務を見て、まだ商談も決まって無いのに喜ぶのか?不思議な感覚に成って自分の席に戻ると、折り込みチラシの電話番号に電話をした赤城課長。

モーリスと云う頒布会の会社は業界トップで、一部上場の優良会社だと、ネットで調べていた京極専務は、既に取引が成立した気分でパソコンを眺めていた。
赤城課長は大手なので中々取引も難しいと思いながら電話をすると、若い男性が赤城に会社の規模、取り扱いの商品そして所在地を尋ねて、しばらくして「私共も和菓子の頒布品を捜していたのですよ!良いタイミングですね」快く商談に応じると言った。
相手の名前は庄司克己と名乗るが、まだ二十歳過ぎの若々しい声。
流石に上場企業は違うのだ!若い人材が揃っているのだと思った。
専務の都合を聞いて伺う日を連絡すると言うと「いつでも合わせますので、本当に良いタイミングで良かったです」庄司はパソコンを傍らに置いて、赤城課長の電話を聞いて即座に千歳製菓の業態、構成等必要な事柄のチェックをしていたのだ。
パソコンの画面上に、合格のマークが点滅して商談の相手としては合格の評点が出ていた。
モーリスではメーカーのチェックが全国規模で行われているので、新人の庄司でも簡単に商談が出来る様に成っている。
入社後半年間の研修を受けて、バイヤーとしてデビューする。
庄司は大学を卒業して昨年入社した新人だっが、この千歳製菓が二件目の合格企業だった。

庄司が村井営業課長に「先程名古屋の千歳製菓と云う和菓子屋から問い合わせがございました。データを調べましたら合格企業のリストに有りましたので、来週商談を入れました」
村井課長はパソコンを叩いて「千歳製菓、冷凍和菓子のメーカーだな、社長は既に七十歳を過ぎている。地元の学級給食とか病院、老人ホームに納入しているが、ここ五年程売上げが伸び悩んでいるな!これからは少子高齢化が進むので学校給食は伸びない!我々が取引するには最適な企業かも知れない!取引が出来る様に話しを進めて構わない!」笑顔で庄司を激励した。

モーリスと商談が出来る話しは直ぐに京極専務に赤城課長が報告すると、大喜びで「流石は赤城課長だ!長年営業をしているだけの事は有るな!」そう言って褒め称えた。
その褒め方に、簡単に商談の申し込みを受け入れて貰えましたとは言えなく成った赤城課長。
「それで、いつ商談して貰えるのだ!」
「それがこちらの都合に合わせると言って貰えました」
「課長!それは素晴らしい、先方は乗り気だ!君は社内と得意先に対する話術は異なるのだね!」嫌味の様に言うと早速手帳を出して「来週の木曜日に行こう!土曜日はゴルフの予定だから木曜の夜なら飲んでも大丈夫だ!大阪の近くで他に何処か挨拶に行ける会社を捜して置いてくれ!それでなければ泊まりに出来ないだろう?」
「は、はい!何処かと言われましても、、、」
「神戸方面に何か小さな会社が在っただろう?」
「は、はい小諸物産って介護の会社に納品している小さな取引がございますが?」
「そこに金曜日昼から行こう!決まりだ!」京極専務は自分で言うと自分で納得していた。
赤城課長は呑気な京極専務に呆れながら自分の席に戻ると、部下の山下建男に小諸物産に訪問すると連絡する様に言った。

翌週張り切って京極専務と赤城課長は株式会社モーリスの本社に向った。
昨夜自宅で赤城は娘の美沙に「お父さんの会社も、先日の頒布会のモーリスと取引が出来るかも知れないぞ!」嬉しそうに話す。
「大丈夫なの?簡単に商談してくれるって、大きな会社でしょう?」
「そうだな、お父さんの会社の数百倍の売上げだろうな?凄いだろう?納入出来ると直ぐに売上げが上がって給料が増える」
「そんなに簡単なの?兎に角頑張って!」そう言って笑うと、直ぐにテレビの歌番組に視線を移して口ずさみ始めた。
女子高生には父親の会社の話しは興味が半分だった。

「ここが本社か?一部上場の本社にしては小さいな!」そう言いながら玄関を入って「課長!あれは何だ?」目の前のガラスケースに入った置物に目を奪われた京極専務。
そこには鷹か鷲が大きく翼を広げて、松の枝から今にも飛立つ姿が在った。
「これは金か?宝石が散りばめられている様だな!」
「本当ですね!驚きの置物ですね!」
来客を先ず驚かせる手法なのだが、二人は外見の小さな建物を完全に忘れて、儲かっている一流企業は違う!とド肝を抜かれた。
受付電話で連絡をすると美しい女性が現われて、商談室に案内をした。
商談室でも二人の目の前に大きな水槽が飛込む。
「あの魚は何だ?」商談室で京極専務が尋ねる。
「熱帯の魚でしょう?大きいですね!驚きました」この二人の会話は全て佐伯のモニターに映し出されている。
「佐伯君!どうだね?二人来て居る様だね!大丈夫か?」村井課長がいつの間にか佐伯の後ろに来て尋ねた。
「大丈夫です!入り口の鷹の置物に驚いて、水槽のブラックゴーストで撃沈ですね」そう言って微笑む。
待合室でもシルバーアロワナが悠々と泳ぐ姿に驚かされていた。
「お待たせしました!ご案内致します」先程の女性とは異なる美人が八番の商談室に案内した。
流石に仕切られた商談室には何も無かったが、しばらくして現われた庄司を見て(若造か?)と二人が同時に思っていた。
立ち上がって名刺の交換を終ると、早速自社のパンフレットを差し出す赤城課長。
しばらく黙ってパンフレットを眺めて「中々魅力的な商品をお持ちですね!」笑顔で言った。
「ありがとうございます」笑顔で礼を言う京極専務が次の言葉で耳を疑った。
「単発企画と通年企画が有りますが、最初は単発企画に致しましょう!」
「は、はい」
「今からなら丁度五月の節句企画に間に合います!早速見積もりを提示して下さい!その後は通年企画を組んで販売しましょう」
「五月の節句なら柏餅かちまきですね!それで宜しいのですか?」
「はいそれでセットにして販売致しましょう?販売金額で一億程度でしょう?」庄司は簡単に話す。
「一億!」声が裏返る京極専務だが、急に支払いが不安に成り「支払いサイドはどの様に成りますか?」小声で尋ねる。
「そうですね、最初は小さな企画ですから末の末で結構ですよ!多く成ればまた考えて下さい」
「えっ、三十日サイドで宜しいのですか?」
「はい、結構ですよ!それから運賃は当社が払いますので、倉前価格でお願いします」
「通年企画に入るとどれ位の販売に成るのですか?」怖々尋ねる。
次の言葉に再び腰を抜かす程驚いて、商談を終えて帰る時に案内の女性に「あの置物本物ですか?」小声で尋ねると微笑みながら「時価一億と聞いています」と答えた。
  「じ、時価一億!」声が裏返る京極専務。
二人は何もかも桁違いの会社だと、ド肝を抜かれてモーリスの本社を後にした。
「赤城課長!商談は上手く出来たのだよな!」
「はい、上手く出来たと思いますよ!柏餅とちまきのセットの見積もり依頼を貰ったと思います」
「そうだよな!支払いも三十日って聞いたよな!」
「はい、売上げも一億程は売れるって聞きましたよ!」
「五千円のセットが二万個だ!製造出来るか?」
「専務この様な大量の注文なら、値段も格段に安いのだと思いますね!」
「そうだな!見積価格が問題だろう?」
二人は嬉しさ半分、怖さ半分だったが気分は売れた!で一致している。
ホテルに向って新大阪駅に戻りながら夢を見ていた。
「ホテルで一服したら飲みに行こう!明日は午後に小諸物産に挨拶に行くだけだ!今宵は前祝いだ!」意気揚々とホテルに向っていた。

その頃モーリスでは庄司に村井課長が「どうだった?千歳製菓は?」
「ド肝を抜かれて帰って行きました!」
「取引が始まってからが本当の勝負だ!今はまき餌の段階だから、魚が集まるのを待つのだ」
「はい。村井課長判っています!」
「第二課は先日の果物屋で失敗したから、今回は許されない!」
「はい、安田さんの様には私は失敗しません!」
「我社で失敗は営業職を去る事を意味している!安田は倉庫の管理に配置転換されたが、結局は退社する様だ!」
「優秀な営業で係長をされていた方ですよね!」
「そうだったが温情を出してしまった!果樹園の娘に惚れてしまったのが原因だった様だ!庄司君はその様な事の無い様に、この千歳製菓の案件を必ず成果の有る様に頑張るのだ!」
今、村井課長が名前を出したのは、四課青果の担当をしていた安田俊幸の事だった。
今年の前半まで、辣腕で社内でも出世頭として後輩達の注目の的の二十七歳だった。
全国的な折り込み、地域限定の折り込み、雑誌専用、インターネット専用と販売方法も大きく変わる。
今回は季節企画の商品に成るので、西日本、東日本に別けて一週間の差を儲けて販売される予定に成っている。
送料込みで五千五百円での販売、東西の販売量が各一万セットを予定しているのだ。
昨年の実績が有るので、庄司も簡単に販売量を提示出来たのだ。
昨年販売実績の有った会社は早々に断っているので、今年は異なる製造工場が必要だった。
千歳製菓が商談に来たので即商談に成っているが、今後はまだまだ不明だった。

「生産能力は無理すれば、大丈夫だと思いますがパートの増強が必要でしょうね」
夕方の居酒屋で納品する事を前提に、京極専務と打ち合わせを始める赤城課長。
「だが今後頒布会に納入するには、商品の整理、得意先の整理が必要に成るな!」
「そうですね!専務モーリスと本格的な取引が始まると、我社の設備では限界に成る事も想定出来ますね」
二人の会話は夢の話しに押し進んで、上機嫌で酒を浴びる程飲んでしまった。
元々専務はお酒好き、女性好き、夜の遊びが大好きな男。
赤城自身も酒は好きで、再三自宅で妻と娘に酒臭いと敬遠される事も屡々だ。
酔っ払うと美沙に抱きついて頬にキスをするので、小学生の時から逃げ回る事も多かった。
妻の妙子もその様子を微笑ましく見ていたが、時には度が超えて怒る事も有った。
親子三人が平和に暮らせて、やがて娘の美沙に彼氏が出来て嫁に行けば、老後は二人で豪華客船の旅を楽しみにしている。
本気で考える時も有るが、それは夢で充分満足出来たのだ。

深酒をして、二人がホテルに戻ったのは午前一時を過ぎていた。
そのままベッドに倒れ込んで、目覚めたのは翌朝九時を大きく過ぎてからだった。
赤城課長は驚いて専務に詫びの電話をしたが、京極専務はまだ夢の中だった。
結局ホテルを出たのが十一時で、新大阪駅にタクシーで向い。
新快速電車で神戸まで向うが、京極専務は常に具合が悪い様で殆ど会話が無かった。
タクシー代を払う時「えー、こんなに!」と初めて驚く京極専務。
小諸物産に到着すると、スレートの屋根に貧相な社屋を見て「こんな薄汚れた会社だったのか?」小さく呟く京極専務。
見かけとか大きさを重視する京極専務の性格を知っていたので、赤城課長はここには連れて来るのは躊躇ったが、、、、
「挨拶だけして、早く帰ろう!」
古ぼけた扉を開いて入って行くと、少し薄暗い階段を上ると事務所が在った。
「いつもお世話に成っています!千歳製菓ですが?」
赤城課長が挨拶をすると、社員は昼休みなのか?まばらで一人の女子事務員が「お待ちしていました!社長を呼んで参ります」と挨拶をして、簡素な応接に案内をした。
「質素なのは外見だけでは無いな!」社内を見渡して感想を言った時、社長の小諸郁雄が入って来て「僅かな取引なのに、次期社長様にお越し頂いて恐縮です」そう言って名刺を差し出す白髪頭の小さな男。
「いいえ、大阪に用事がございまして参りました」次期社長と言われて急に気分が良くなった京極専務。
「大阪に今朝いらっしゃったのですか?」
「いいえ、昨日頒布会の大手に商談に参りまして、関西に来たので寄らせて頂きました」
「頒布会大手と申しますと、もしかしてモーリスでしょうか?」
「はい、そのモーリスに行って参りました」
「宝石を散りばめた鷹でしたか?鷲をご覧に成られましたか?」
「は、はい時価一億円とお聞きしました」
「一億もするのですか?流石上場企業ですね!若造がバイヤーをしていたでしょう?」
「はい、よくご存じですね!」
「私も一度商談に伺ったのですよ!商談は成立しませんでしたがね!千歳製菓さんなら製造工場ですからお取引が可能でしょう」
「工場が在る会社が条件なのですね」
「若いバイヤーが一億売れると言ったでしょう?」微笑みながら言う小諸社長。
「は、はい!よくご存じで」と言った時、事務員が遅れましてと言いながらお茶を運んで来た。
赤城課長も忘れていたのか、自社の手土産の饅頭の包を慌てて差し出していた。
「ご丁寧にありがとうございます。モーリスの売り文句のひとつでしょうね、誰にでも一億売れると話す様ですよ!」
「そうなのですか?一億は売り言葉なのですね!」笑う京極専務は、腹の中で自分の会社は取引が出来たが、この小諸物産は取引が出来なかったから、この様な話しをするのだと半ば馬鹿にして聞いていた。
「取引には充分気を付けられて下さい!商談の待合室で、他の会社の営業部長さんがモーリスと取引されるのなら、充分気を付けなさいと話してくれました!」
「どの様な会社の方ですか?」
「漬け物会社の部長さんでしたが、ご本人もこの商談が最後で退職されると話されました!それを聞いていましたので、商談も上手く運ばなかったと思いますがね」
結局モリーリスの話しで終始して、小諸社長は注意して商売をしなさいで終った。

赤城課長の自宅では、夕食時に鷹の置物の話しと大きな魚の話しで盛り上がる。
美沙が「それって、取引先に対して威圧感を示しているのでは?」
「確かにな!高価な生き物、高価な置物、強烈な販売量だったからな!」
その話しの続きで小諸物産での出来事を話すと、美沙が「私の直感だけれど、その社長さんの話が正解の様な気がするわ」そう言って微笑むと食事を終って自分の部屋に消えた。
「最近美沙、綺麗に成って来たな!それに大人顔負けの事を言うな!」
「だってもう高校三年生ですよ!春から大学生ですよ!」妙子が微笑みながら言った。
「直ぐに彼氏の一人や二人連れて来るかも知れないな!」
「でも商談が上手く進んで専務さんも上機嫌だったのでしょう?」
「売上げが飛躍的に伸びたら、給料も上がるだろう?美沙の結婚の時には助かるかも知れない」
「美沙はそんなに早く嫁には行かないと思いますよ!」
「何故判る!美人だから直ぐに彼氏が出来る!既に居るかも知れない!」
「大丈夫ですよ!美沙はお父さんが理想だと言っていましたから、中々貴方程変な人は居ませんよ!」そう言うと大笑いをする妙子に釣られて一緒に笑う信紀。

京極専務は既に昨日の日曜日に妻と一緒に、宮代宅を訪れて報告を終り増産体制の構築まで話しを進めていた。
宮代社長から、京極専務に後を託す様な言葉を聞いて益々張り切っていた。
この取引きが後々赤城課長を苦しめる事に成るとは、その時知る筈も無く先方からの返事待ち状態に成った。
自宅でも会社でも毎日の様に話すので、赤城課長の毎日はモーリスが頭から離れない。
 三月の初めに商談に大阪に行き、二週目には製品の納入が決定する猛スピードの商談。
赤城課長は送られて来た契約書を持って京極専務の決裁を伺いに行く。
「全く条件的には不満は無い!支払いは三十日サイドで、送料は先方持ちで当社は宅配の会社が貸してくれる伝票発行器を設置して、貼付けて発送するだけだ」
「ただ、将来売上げ増加時には支払いサイドは両者で協議と成っていますが?」
「売上げが大きく増えれば当然、支払いサイドも伸びるだろう?常識だよ!六十日程度なら普通だ!」

数日後モーリスから正式な契約書が届き、箱の発注、原料の手配が始まり千歳製菓は大忙しに成った。
製造の責任者でも有る酒田常務も「専務には完全に脱帽です!大口の注文を頂き、製造部も久々に張り切っています」そう言って褒め称えた。
「テーマパークのキャラクターは進んでいるのですか?」
「大手で海外の会社ですので、中々進みません!国内の会社は早い!」そう言って嫌味をちくり。
月末からちまきと柏餅の製造を始めるが、毎日残業が四月の末まで続く事に成った。

赤城課長の娘、美沙も四月から大学に通い始めて、生活がこれまでと大きく変化した。
連日の残業で赤城課長自身も夜には工場に入って製造の手伝いをしている。
僅かな時間で商談から納品まで進むが、相手は上場企業で年商一千億以上、利益も八十億の優良企業、何の不安も無い。
別会社のモーリス衣料品販売の売上げも、八百億で本体と遜色無い規模だ。
今回の納入も三十日サイトの振り込み、京極専務は毎日の製造を見て、近くの営業冷凍庫に商品が納入されるのを、笑みを浮かべて確認作業をしていた。
「連休に成ったら泊まり込みも有ると思う!」自宅に深夜に帰って妻妙子に話す信紀。
「でも凄いわね!いつも定時に帰れるって、事務の女の子喜んでいたのに、今は同じく残業でしょう?」
「九時まで手伝っているよ!でも夏のボーナスは期待出来るとみんな張り切っているよ!」
「臨時のバイトも沢山雇っているでしょう?」
「急だから、派遣で補っているのが現状だ!」
それだけ話しをすると、風呂場に飛込み機嫌良く鼻歌を歌う信紀。
「お父さん上機嫌ね!」美沙が歌声を聞きながら言うと「二十億程度しか売れない会社に一億も特注が入れば嬉しいのでしょう?」
「本当に何も無いのかな?大きな会社が簡単に取引を初めて、少し調子が良すぎる気がするわ!」美沙が不安を口走ると妙子が口に一指し指を当てて、言わないで!言わないで!とジェスチャーをした。
今は上機嫌、それが一番だと思う妙子だった。

後継争い加熱

結局大忙しで、疲れ切って大きなトラブルも無く無事に出荷作業が終了したのは五月の十五日。
小さなトラブルは数十件発生したが、モーリスからは初めてにしては上出来だと村井課長が電話をしてきた。
京極専務はその電話を貰って直ぐに社長に報告に行った。
「社長!今モーリスの村井課長から御礼の電話がございました」
そう伝えると「ご苦労だった!続けて納品出来る様に一度先方の方を工場見学の名目で招待しなさい」微笑みながら言った。
結局売上げは一億には到達しなかったが、京極専務の聞き違いでモーリスの売上げでは予定の一億を大きく超えたと喜ばれた。
だが千歳製菓には創業以来の大量発注に、今後頒布会への固定的な売上げを期待しているので、接待の話しに成っていた。

数週間後、名古屋駅に迎えに向った京極専務と赤城課長。
初めて会う品質管理課長飯田に丁寧に挨拶をして車に乗せて本社工場に向った.
「我社の頒布会の生産が可能か?機械等の見学をさせて頂きますので、宜しくお願い致します」飯田課長の言葉に「もっともでございます。指摘頂き改善出来る部分は改善したいと考えています」京極専務は間髪を入れずに答えていた。
「当社も貴社の生産能力に合わせて販売エリアを決める事にしたいと考えていますので、品質管理に協力をお願いします」村井課長が話した。
二人が会社に到着すると、社長室で宮代社長を始めとして、製造の責任者の酒田常務が出迎えた。
簡単な社内の説明の後、酒田常務の案内で二人は工場の中に入って行く。
工場の隣には保育園が在るのか、元気な子供の声が聞こえる。
「お隣は保育園ですか?」村井課長が尋ねた。
「そうですね、私立の保育園ですが園児は多い様ですね」
窓から外を見て村井課長が「隣の敷地は広いですね」そう言ったが酒田常務には意味が理解出来なかった。
工場内の見学が終り社長の宮代の前で「当社の頒布会をお任せするには少し設備の老朽化が目立ちますね!」開口一番に話す品質管理課長の飯田課長。
工場の見学の時には全く何も言わなかったのに、いきなり社長の前で言った事に驚く酒田常務。
「は、確かに随分使って居ますので、、、」言葉を濁す宮代社長。
指摘された機械は数百万から数千万の設備で、最新式に変更するには投資が必要に成る。
その後の接待の席でも村井と飯田の両課長は常に設備を最新式にと繰り返した。

翌日早速宮代社長達幹部は会議を行って、指摘された設備を最新式にする事を話し合ったが、意外に酒田常務は反対で京極専務が推進と明暗を分けた。
酒田常務は今の設備以外で包装の設備を増設して、自分が取り組んでいるテーマパーク向けのキャラクター商品を作りたい。
本来なら、工場の設備が良く成る事は工場の責任者としては嬉しいのだが、工場長の神崎もキャラクター商品を酒田常務と一緒に開発してきたので同調した。
会議では全く結論が出ず、今後のモーリスでの商品採用の様子を見る事で決着した。

自宅で数日後赤城は家族に設備の話しをすると、美沙が口を挟み「でも他人の会社に来て、設備が古いとか結構言いたい事を言う会社ね!」と言った。
「美沙も大学生に成ると結構云うわね」妙子が微笑みながら話す。
「私ね、将来はジャーナリスト希望なの、新聞記者、雑誌記者、テレビのキャスターも良いかも」
「美沙は美人だからテレビが良いかも知れないぞ!」信紀が言うと妙子が「お父さん褒めたら調子に乗りますよ」そう言って窘めるが、笑いが絶えない赤城家の食卓だ。
その後寝室で「驚いたよ!美沙がジャーナリスト関係希望だったとは!」
「私は前から聞いていましたよ!お父さんが美沙に言った美人は本当ですよ!最近綺麗に成りました!これからは変な男が現われるかも知れませんよ!」
「それは困る!よく監視して変な虫には注意だぞ!」
「大丈夫ですよ!今は誰も特定の人は居ない様ですから大丈夫ですよ」
二人は一人娘に目を細めて、昔話に目が冴えて眠れなかった。

酒田常務は翌週からキャラクター商品の開発を急ぐ為に、東京のJST商事を訪れてテーマパーク担当の吉村課長に事情を話していた。
吉村はアメリカの本社の承諾を貰えば直ぐに商品化は出来ると答えた。
但し、本社は厳しいので正確に商品を製造出来ない場合は、返品に成る危険性が有りますと再び念を押した。
酒田常務もワンチャンスに賭けなければ社長の椅子は無いと、妻の貴美子に煽られる様に東京に来たのだ。
傍目から見れば小さな会社の後継争いだったが、姉妹には次の世代である息子のどちらが社長に成るか?これが大きいのだ。
お互いの子供が同級生で大学四年、有名私立大学に行く自分の息子に将来の社長を託したい貴代子と貴美子だ。

酒田常務は無理矢理にでも商品の製造依頼を受ける為、JST商事の吉村課長を銀座の高級店に誘っていた。
「この様な接待をして頂いても、アメリカの本社の意向が強いのでご期待に添えるか?」
「それなら、アメリカの本社の方に会わせて頂けませんか?」
「来週ジェームス、クーパーが来日するので、一度会われますか?」
「私は英語が出来ませんから、、、、、」
「大丈夫ですよ!彼は日本語ぺらぺらですから、日本が大好きなのですよ!特に着物の女性に興味を持っていますよ!」
酒田常務は今晩招待したので、ジェームスの好みとか攻略法を教えてくれたのだと解釈した。
来週来日すると一週間は日本に滞在するので、その間に一日商談日を貰える事に成った。
酒田常務には京極専務に負けているので、挽回のチャンスに成ると信じていた。

意気揚々と東京から帰ると、早速社長室に報告に向う酒田常務。
宮代社長が話を聞いて「酒田常務、それは良い話だが我社にそれ程のキャパが有るか?」いきなりその様に言った。
「社長!当初キャラクター品は一種類から始めますので、今の設備で充分だと思いますが?」
「酒田君!それがモーリスの次の商品が決まったのだよ!今後次々増えるのも決まった様だ!」
「えっ、もう次の品物が決まったのですか?」
「彼岸だんごとお月見饅頭のセットが、前回同様の数量で決定した様だ!」
「次々決まりますね!」
「工場長が設備の増強を言ってきたので、自働包装機を購入する段取りで銀行に打診したのだよ!」
「確かに最新式の自働包装機を導入すれば、人手が少なくて数多くの包装が出来ますが、高額でしょう?」
「この機械が有れば、君の商品も苦も無く生産出来るので思い切って導入しようと、工場長とも話し合った」
酒田常務は小さくても千歳製菓は無借金が売りだったと、この時脳裏を掠めたが次の宮代の言葉で危惧が吹っ飛んだ。
「貴吉が将来社長をする様に成れば、近代的な設備を問われる事に成るだろう?」
貴吉とは酒田専務の息子で、京極専務の息子、晃とはライバルとして絶えず競っていた。
ここで宮代社長が貴吉の名前を出したと云う事は、自分に社長を継がせる心づもりだと感じていた。
「社長!息子の事まで考えて頂きありがとうございます」
「当然だろう!私の可愛い孫なのだから、将来頑張って貰わなければ成らん!」
酒田常務はその言葉に、無借金経営の小さな会社から、大きな有名な会社に成って息子が将来三代目の社長に成る夢を見てしまった。

自宅に帰って赤城は妻の妙子と娘の美沙に、モーリスとの商売に新店が無く、八つ当たりする様に成り行きを話した。
「私と歳が変わらない様なバイヤーでしょう?」
「二十代で若いから、美沙とそれ程歳が離れてないな!」
「方や一流企業のバイヤーで、我が家の娘は脛かじり?」母が微笑みながら口を挟む。
「大学生って言ってよ!もう直ぐジャーナリストに成るのよ!」
和やかな食卓だったが、その後モーリスから難題が持ち上がり苦悩するとは、この時思いもしない信紀。

酒田常務はJST商事の吉村課長と一緒に向島に向った。
酒田常務は吉村課長に一任して、着物女性が好きなジェイムス、クーパーを接待していた。
吉村課長も再三ジェームスを接待していたが、半分は取引業者に負担させて自社の負担の軽減をしていたのだ。
行きつけの料亭(向花)に慣れた感じで入って行く二人の後を、新参者だと見せつけた姿の酒田常務の姿が有った。
小春と云う芸者が直ぐに座敷に現われて、ジェームスに抱きつくと早速目の前でキスをしている。
アメリカ人には常識なのだろうが、酒田常務はいきなり強烈な刺激を受けた。
既に吉村課長とジェームスの間では話が纏まっていて、形式だけで接待をさせられているのだが、酒田常務には判らない。
側に二人の芸者が来て、緊張の酒田常務に酒を飲ませて宴席は盛り上がり、酒田常務が酔いつぶれてしまって、目覚めると二人の姿は消えていた。
勿論二人共別のホテル?旅館?に消えて、勘定だけが吉村常務の元に残されていた。
二人は芸者と一夜を共にして、膨大な接待費に一気に酔いが覚めて、会社のカードと個人のカードに分けて精算しなければ「こんなに接待費を使うなら、辞めてしまえ!」宮代社長の怒る顔が目に浮かんだ。

この日も小春と遊んで上機嫌に成っていたが、数日日本で過して帰る時に「一度京都で舞妓遊びをしたいです~」その様な捨て台詞を残してアメリカに帰って行った。
吉村課長は見送ると同時に舌打ちをして「すけべー野郎!どこまでしゃぶるのだ!」独り言の様に叫んでいた。

「こ、これは何?」クレジットカードの控えを見せられて驚く貴美子。
「これでも会社と二分割にしたのだよ!向島は高い!」
「向島?」首を傾げる貴美子。
説明を聞いて益々怒る貴美子に「お父さんは私が実績を上げたら、貴吉を将来社長にしたいとおっしゃったのだよ!」
「えっ、それは貴方が社長に成るって事よね!お父様の考えが判った気がするわね!」
「名古屋の小さな和菓子メーカーから、大きな会社に成るのだよ!自働包装機の新型も導入されるので、大口注文が必要なのだよ!これは将来の投資だよ!」
その言葉に貴美子は息子貴吉の社長の姿を想像していた。
結局、貴美子は貴吉の社長就任の為には、全てを投げ出しても良いと大きく態度を変えた。

七月末、最新の自働包装機が工場に設置されて、早速彼岸団子の包装が開始された。
宮代社長は製造を見学して、これで生産量は大幅にアップ、人件費も節約出来ると喜んだ。
来週から月見饅頭も製造するが、今度は充填機の老朽化がクローズアップされて、再び銀行に融資の計画を打診する事に成る。
地元の信用金庫、名新信用金庫はその情報を掴み、千歳製菓との取引を画作する為に支店長、香取健吾は部下の志水を連れて挨拶に行く。
「早耳だね!」宮代社長は驚いた表情で応対したが、経理の女性北川碧と志水が交際していたのが原因だとは判らない。
地元の優良企業と取引をする為に、志水が経理の北川碧に近づいていた。
三十歳に近い北川は千歳製菓で十年経理をしているので、隅々まで知っている。
特別顔が綺麗でも無いが、香取支店長に再三千歳製菓との取引を始める様に言われて苦肉の策に出たのだった。
婚期を逃しそうに成っていた北川碧には、志水が白馬の王子様に見えて付き合い始めたのだ。
千歳製菓の業績、新規の取引先、資金繰り等が手に取る様に志水の耳に届いた。
最近新規の取引先のモーリスで大きな商いが出来て、今期の業績が大幅上昇との調査結果も後押しした。
香取支店長は千歳製菓と取引を始める為に、破格の金利を準備して交渉に来ていた。
応接室にお茶を運んで来た北川碧は、志水に目で合図をして嬉しそうに応接室を出て行った。

「常務、我社に追い風が吹いている様だな!新規取引で先程来た名新信用が破格の金利で充填機の購入資金を貸そうと言って来たぞ!」
酒田常務は「社長!私からも良い報告がございます!」
「えっ、まさかアメリカの?か?」
「はい、JST商事の帳合いで、来年四月より一品のキャラクター饅頭の納品が決まりました!」
「おおー数万個か?」
「はい、その様に聞いています!」
「風が吹いてきた様な気がするのは本当だったな!もう少し設備の増強が必要に成る様だな!」

その話を聞いた京極専務は自分の実績がずば抜けていると自負していたので、虚を突かれた気分に成って驚いた。
「赤城課長!モーリスの年間商品の提案を急いで、安定的に売上げが確定させなさい!」急に強い調子で指示をした。
今の様なスポット販売の場合、常に競合に出し抜かれる心配が有る。

自宅に帰った赤城課長が「お前達、年間を通じた饅頭の販売なら何を提案する?」と尋ねた。
しばらく考えて「お正月の饅頭でしょう?雛祭り、五月の節句、秋の彼岸団子位だと思うけれどね」妙子が答えると美沙が「バレンタインも、、、、でもケーキかな?チョコだから饅頭は変ね」
「夏は塩饅頭に水饅頭よね!」
「セット企画だから、正月の紅白薯蕷 饅頭、上生菓子で栗かの子、松、竹、梅だな!彼岸の後はこの企画で、次が雛祭りで五月の節句、彼岸団子か?」
「頒布会なら毎月でしょう?売上げ安定ね」
「それが、今の会社の規模では任せられないと言われているのだよ!」
「沢山設備入れても駄目なの?」
「どうも難しい様だ!頒布会に入れると楽に成るのだが、中々モーリスの担当者が首を縦に振らない!」
「それって何か他に理由が有るのかも知れないわね?」
「他って?何?」
「判らないけれど、気に成るわ」美沙の言葉が頭の隅に残った信紀だった。

モーリスでは取引をしている会社をABCに分けて定期的に調査をしている。
千歳製菓は何故かAにランクされて、調査が毎月行われていた。
勿論経営状態、社内の跡目争い、軋轢等細かい部分まで調査が行われていた。
その業務を行っているのが管理課と呼ばれる全ての部署の上に位置している。
その管理課の部長が松永寛二五十五歳で、全てのAランクの会社約十社の業績等を監視しているのだ。
松永部長から十社との取引に対して承諾が無ければ仕入れは出来ない、
B,Cクラスの取引先には松永部長は関与しない。
千歳製菓と取引が始まると、直ぐにAランクの印が点灯して村井課長も庄司も松永部長の承諾を得て動く事に成っていた。

「調査に寄ると新しく名新信用金庫と取引が始まった様だ!名新信用の担当者と千歳の経理が恋愛関係に有る」
「中々、名新信用もやりますね!」
「この担当者の志水誠は、名前とは正反対で別の恋人も居る様で所謂二股男だ!」
「悪い男ですね!経理の女性が可哀想ですね!」
「だが、名新信用が取引を初めてくれた方が、我社には良いと思う!だから当分泳がせる!メインバンクの名愛銀行は地銀で規模が大きいので、将来操作が困難だ!」
「最新の自働包装機に続けて自働充填機も購入する様です」
「まだ、頒布会の仕事は与えては駄目だ!今の設備でフル生産させるまで待つ!」
「判りました!ブロック別の仕事で繋ぎます!」
村井課長と松永部長の打ち合わせはこの様に、月に一度簡単に行われるが方向性は変更が無い。

八月に成ると例年は暇で、有給で家族旅行に行く事が多かった赤城課長も、今年は休み返上で生産に追われる日々に成った。
美沙は信州に行きたいと春先から両親に話していたが、結局お流れに成っていた。
大学の友達と旅行に行きたいと言っても、夏休みの旅行で変な虫が付くと困ると信紀の反対で行けずに不満が募る。
自分の小遣いが無いのが自由に出来ない原因だと、バイトを探しに行くと夜の仕事とか、コンビニに成って昼間ならと反対される。
日々美しく成る娘に心配が尽きない両親、特に信紀は美沙を溺愛している様だ。

新型の機械が導入されても、手作業が多くパートも正社員も汗だくで真夏の工場内を走り廻っていた。
酒田常務も心の中では苦々しく思いながら陣頭指揮を行い、来年の春には逆に自分が取引を始めたキャラクター饅頭の生産で、専務のド肝を抜いてやると密かに思っていた。

その話が京極専務の耳に入ったのは彼岸団子の納品が終了して、社内に安堵感が広がった時だった。
「ご苦労さん!今回も五月と殆ど同じ数字だったね!」宮代社長が京極専務と酒田常務を社長室に呼んで労った。
「はい、売上げが安定していますので、比較的安心して製造が出来る様です!」嬉しそうに答える京極専務。
「専務も常務も今年に成って見違える程の業績アップに貢献しているな!私も安心して会長職に退く事が出来るよ!」
「今後も会長として色々ご意見を伺いますので、宜しくお願い致します」
「今回の作業で他の機械も老朽化が激しく、四月からのキャラクター商品の製造には耐えられないのではと思われますが?」酒田常務の言葉に驚きの表情に成った京極専務。
モーリスの仕事が入ったので、キャラクター商品の製造は見送りに成ったと自分で思い込んでいたので京極専務には驚愕の出来事だった。
「そうだな!他の設備もこの際新しくして、増強すればモーリスで売上げが増加しても当分は大丈夫だろう?」宮代社長の言葉を半分も聞いていない京極専務は「は、はい」と糠返事をした。
酒田常務は心の中で、驚いた様だな!社長の座は私に決まっているのだよ!諦める方が良いよ!と、ほくそ笑んでいた。

京極専務は自分の席に戻ると落ち着かない様子で、赤城課長を呼びつけた。
「モーリスに何とか、頒布会用の商品を入れて貰える様に商談を急いでくれ!」
「どうされたのですか?」
「常務がキャラクター品の納入を決めたらしい!来年の四月から納品だ!」
「外資系のテーマパークの土産品ですね?」
「そうだ!相当な数が売れるらしい!初回で成功したら、徐々にアイテムを増やす様だ!」
「でも外資系は少しの間違いも命取りに成ると聞きましたよ!大丈夫でしょうか?」
「それはどう言う事だ?」
「詳しくは知りませんが、キャラクターの顔とか形が少し崩れると全て返品とか、厳しい様です」
「鼠の顔とかアヒルの、、、、、」その様に口走ると、赤城課長との話を終ってしまう京極専務。

その後京極専務の意に反して、モーリスの企画は中々決まらず、会社にJST商事の吉村課長がアメリカ人を連れてやって来た。
工場長の神崎と酒田常務は最新の自働充填機、包装機を中心に見せて「社屋は少し老朽化ですが、設備は最新式でこれなら二品程度は充分製造出来ます」そう言った。
吉村課長は帰りに「二品決まったら、ジェームスを京都にお願いしますよ!」小さな声で囁いて帰った。
五月の葵祭の時に連れて行けとお強請りをして帰る吉村課長。
今日の外人は品質管理の男性で、ジェームスの指示で工場点検にやって来たのだ。
今回も芸者舞子で接待をして欲しいとの要求の様で、翌日から知り合いに尋ねて準備をして貰う事に奔走する酒田常務だ。

京極専務は酒田常務の行動に焦り始めて、再三赤城課長に商談の催促をする。
だが佐伯は「来年考えましょう!今の御社の設備では頒布会の品物をお任せするのは難しいとの品質管理課の見解です!」と愛想が無い。
この言葉は千歳製菓にプレッシャーをかけて、売上げと社内でのモーリスの立場の向上を画作する作戦だった。
二度の企画は千歳製菓には大きな売上げと利益を残していたので、企画が入らなければ大きな痛手に成る。
設備投資は行ったので、売上げが落ちると直ぐに経営に影響する状態に変わっていた。
京極専務は年が改まると焦りがどんどん大きく成る。
四月の納品の為に、毎週の様にJTS商事の人間が工場にやって来る。
勿論アメリカの本社からも再三製造担当の外国人も出入りして、酒田常務と工場長は大忙しで対応していた。

だがこの状況をモーリスの調査員が掴んだのは、二月に入ってからだった。
商品の製造が始まり営業倉庫に預け始めて、ようやく大口の取引先が出来た事を把握したのだ。
赤城課長には五月のセットは、何としても納入する様にの指示が京極専務から再三飛んだ。
最後は夏のボーナスに影響が出る事を覚悟して、商談に向えの指示が出る程窮地に落ちていた。
二月の半ば、秋に宮代社長が引退して、会長職に就くと正式に朝礼で発表したのだ。
次期社長に付いては九月初旬に発表すると短く言っただけだった。

「困ったよ!宮代社長が今秋引退して会長職に就任すると朝礼で発表したよ!」
「会社も若返るのね!」美沙が笑顔で言う。
「それが、後任の人事を言わなかったので、社内で専務派と常務派に別れて戦線恐々に成って空気が悪い!」
「三十人程の会社で?まるで大会社の様ね!」
「そうだな!忙しく成ってパートも正社員も少し増えたと云っても百人程度なのに、跡目争いは大企業だな!美沙に笑われる筈だ!」
「何故?社長さんは発表しないの?」
「二人の娘に気を使っている様だ!」
「でもキャラクター商品とモーリスで伸びているのでしょう?」
「モーリスも結構儲けさせてくれたから会社は喜んで居るが、その後企画採用が無いから専務はピンチに成っている。俺に対して風当たりが強い!」
「でも不思議ね、去年は立て続けに企画入ったのに、それ以後何も無いのね?」
「それで専務に叱られて肩身が狭いよ!キャラクター商品の生産が有るので、会社は忙しいがこれが終ると最新鋭の設備も人も遊んでしまう、パートも大勢クビだろう?」
「でも私、モーリスって会社好きになれないな!何かお父さんの会社を手玉に取っている様な気がするのよ!」
「お父さんも遊ばれている様な気分だよ!」

翌日モーリスで、松永部長を中心に村井課長、佐伯が集まって今後の方針を話し合っていた。
「今秋宮代社長の引退が決まった様だ!後継には京極専務に成って貰う方が操縦は容易い!酒田常務が選ばれると外資の連中がちらつくので面倒に成る」
「部長!今後どの様に動いたら良いでしょう?」
「去年の秋から企画を入れてないので、欲しがっているだろう?サイドを四十五日に伸ばして五月の節句企画を入れて様子を見よう?」
「キャラクター商品の製造が一端終るタイミングが丁度、五月の節句と重なるので良いのでは?」
「サイド延長は受けるでしょうか?」
「設備にお金が掛ったので、仕事が無ければ困るから受け入れると思う」
「今後は専務を社長にする為に動けば良いのですね!」
「あの男、酒も女も好きだから、操縦し易いので瑠美子を近づけて情報をより多く得る事にする」
「あの北条瑠美子さんなら、あの専務はイチコロですね!」
「来週から専務の馴染みのクラブに送り込む事が決まった!」
「錦三丁目のエデンですか?」村井課長の前に配られた用紙に目を移して見ながら言った。
過去にも堺の中小企業の親父を北条瑠美子は骨抜きにした経緯が有る。
今回二度目の仕事で、前回の実績を買われての登場だ。
年齢は三十三歳で、スタイルも容姿も男好きする感じだ。
知識も豊富で殆どの話に付いていけるので、松永部長のお気に入りに成っている。
「営業課長の赤城はこのままで?」
「あの男は専務の使い走りの様な男だから、気にする必要は無い」
数日後赤城課長はモーリスの本社に呼び出されて、金額が大きいのでサイドを四十五日に伸ばして貰えるのなら、五月の節句の企画を去年と同じ様に実施したいと言われた。
赤城課長は自分の一存で決められないので、本社に持ち帰って返事をすると答えると、夏に水饅頭の企画も秋には彼岸団子の企画も実施すると囁く様に言う庄司。
持ち帰って京極専務に伝えると、二つ返事で了承して褒め称えた。
企画が一つ増えた事でサイドの問題は消えて、これで自分の社長昇格が大きく近づいたと喜んだ。
その喜びはそのまま錦三丁目に向って、クラブエデンの扉を開く事に成った。
上機嫌の京極専務をママの祥子が「専務さん!ご機嫌ですね」と出迎えた。
「仕事で大きな成果が出たので、久々に楽しい気分だ!」
「そうなの?今夜は専務さんが喜ぶ様な新人が入っていますよ!」
「私が喜ぶ様な新人?そんな人居るの?」店内を見廻す京極専務。
席に案内されると、祥子ママが「新人の瑠美子さんですよ!」と連れてテーブルにやって来た。
瑠美子を見た専務の表情は、鳩が豆鉄砲を食らった顔に成っていた。

自分の道

京極専務の好みの女性を調べているので、北条瑠美子は殆ど理想の女性だ。
「どうなさったの?専務さん!」祥子ママに言われて我に返った京極専務。
「ママ!美人の子が入ったね!」
「でしょう?この店でもずば抜けた美人でしょう?」
「本当だ!この様な美人は銀座に行っても少ない!名前は何だった?」
「瑠美子です!横に座っても宜しいでしょうか?」微笑みながら尋ねた。
「勿論!どうぞ!どうぞ!」嬉しそうに席を空ける様に身体を横にやる京極専務。
「瑠美子さんは大阪の北新地のクラブでナンバーワンだったのよ!」
胸の大きく開いたドレス姿で早速京極専務を挑発した。
「千歳製菓の専務さんで次期社長候補なのよ!」
「千歳製菓?」首を傾げる瑠美子に「どうしたの?」と尋ねる京極専務。
「私の母が祖母の家に行った時に、薄皮饅頭の美味しい店が確か千歳屋って聞いていたので懐かしく成りました」
「えっ、千歳屋の薄皮饅頭をご存じなのですか?」
「私は食べた事は有りませんが、母は昔よく食べたそうですよ!」
「今の社長のお父さんが商売されていた饅頭屋ですよ!今の社長が株式会社にされて大きくされたのですよ!」
「これは奇遇ですね!驚きました!」京極専務が大きな喜びを表わした。
「本当ですね!母が聞いたら驚きますわ!でも昨年亡く成りましたのよ!」
情報を松永部長に貰って、嘘の話で京極専務の心を掴む瑠美子。
この日を機会に京極専務はクラブエデンに足繁く通う事に成るが、瑠美子は松永部長からの指示通りに動くのだ。
松永部長はこの様な女性を数人準備するJクラブと契約をしているので、女性を使っての籠絡もお手の物で再三利用する。

三月に入って「赤城課長!神崎工場長から、モーリスとJST商事の仕事を今後とも続けるなら、アイテムの整理をして欲しいとの要望が来ている!検討をして貰えるか?」
「品数を減らすのですか?老人ホームのアイテムは既にぎりぎり迄絞っています。一般向けの商品を減らすと売上げに影響すると思うのですが?」
「そう成れば取引先も減少するのか?」
「当然減ると思いますね!総合食品問屋は一度アイテムを切ると、他社から仕入れますので元には戻りませんが?」
「今の状況では仕方が無いだろう?来年からキャラクター品がもう一つ採用されるらしい」
「すると三アイテムに成るのですか?」
ジェームスを京都の葵祭に招待する事を吉村課長に伝えると、翌日課長から「舞子か芸者と、、な!頼むよ!私も楽しみたいので頼むよ!その代わりにもうひとつアイテムを増やすと言っている」と言われたのだ。
酒田常務は色々な方面に手を廻して、枕営業をしてくれる置屋を漸く見つけて連絡すると吉村課長は大喜びで、来年からアイテムをひとつ増やしましょうと言ったのだ。
その影響が直ぐに商品アイテムの整理の方向に進んでいた。
神崎工場長の直属の上司は酒田常務だから仕方が無いのだが、秋の社長人事の為にも早く実績を強調したい常務の作戦だった。

赤城課長も自宅に帰って悩みを家族に話していた。
「お父さん、もしもよ!キャラクター品もモーリスも無く成ったらどう成るの?」美沙が行きなり不吉な事を質問した。
昨年モーリスの二度の企画で、売上げは大きく伸びたが後半は全く企画が無く苦悩していた姿を家族に見せていた。
「両方無く成ったら千歳製菓は終りに成るだろうな?以前と異なって設備投資にお金を使っているからな!」
「じゃあ、アイテムを少なくするのは駄目なのでは?」
「酒田常務が次々キャラクター品を増やすので、製造も満杯に成っているから仕方が無い!」
「でも取引先も減るでしょう?」
「減るアイテムを取り扱っている取引先は減るだろうな?」
「小さな会社が困るのじゃ無いの?」
「多分介護の商品は売れ無いから、削減される様に成ると思うな!元々それ程売れないからな!」そう言いながら、信紀は小諸物産の社長の顔を思い出していた。
モーリスとの取引には特に注意する様にとの言葉も同時に思い出していた。

翌日会議の席上神崎工場長は、削減アイテム二十品を発表して、営業に現在の在庫及び製造は今年の七月で終了すると伝えた。
事前には聞いてはいたが、赤城課長は意外と多い品目に難色を示したが「赤城課長!この品目の削減が出来なければ、秋以降のモーリスへの納入は困難に成ると思います」と言われて、京極専務が「赤城課長!半年近く時間が有るので、各取引先に理解して貰う様に!」と反論を打ち消してしまった。
会議が終って部下の山下に書類を見せると「課長!これだけ削減すると、小諸物産に納入する商品は一品目だけに成りますよ!」
「仕方が無いだろう!」
「でも一つだけなら、配送ロットに成りませんからどうしましょう?昨今運賃も高騰していますので、、、、、困ります」
「だが、運賃を当社で負担して宅急便で送れないだろう?」
「値上げに成りますから、小諸物産が納得しないでしょう?」
「それを上手に話すのが、営業の腕だ!取引が無く成っても支障は無い」
2001年春、千歳製菓は大きく営業方針の変更を余儀なくされた。
赤城課長の娘美沙は大学二年生に成って、将来の目標をジャーナリストと決めていた。
真実の姿を世間に伝える仕事がしたいと、日に日に思う様に成っている。
父信紀の最近の仕事を見ていると、一層その気持ちが強く成って行った。
小さな会社だが後継者争いの為に、姉妹が争い無理な売上げ獲得に成って、元来信紀が話していた沢山売れなくても要望が有る品の提供。
人の役に立つ商品の提供から大きく逸脱し始めたと感じていた。
添加物の入っていない合成保存料、合成着色で作られていない商品、国産原料で安心して食べられる商品が消されている現状を、目の当たりに美沙は自分の道を見つけた気分に成っていた。

翌日赤城課長は手分けをして、廃盤商品の説明をする為に電話と大きな取引先には営業マン自ら説明に行く事にした。
だが、十社程度は大きな取引先、納得をしていない取引先が残って、順次赤城課長と営業マンが同行して説得に向った。
その中にあの小諸物産も含まれていたので、モーリスに挨拶に行く時に説得に行く事にした。
山下の話では小諸物産の社長、小諸郁雄が大変ご立腹で自分一人では説得出来ないと泣きついて来たからだ。

モーリスの松永部長は、千歳製菓が製造アイテムの削減を始めた情報を掴むと、村井課長に予定の行動で進んでいるが、次期社長問題で酒田常務も有力に成って来たので注意する様に伝えた。
「来週、あの課長が来社しますので、何か言いましょうか?」
「これ以上キャラクター品が増えると、今度は弊害に成る」
「今の状態は部長の思惑通りですね!」
「その通りだ!生産が一杯に成って従来品の削減、そして次には取引先の減少に導くのだが、次期社長に京極専務が就任しなければ作戦は頓挫する」
「部長のお考えは?」
「もう少し瑠美子を専務に近づけてみるか?そして自在に成れば計画の達成は近い」
「でも完全に酒田常務の勢いが増さっている様ですね」
「この辺りで少しブレーキを掛けなければ、社長の座を持って行かれてしまう可能性も有るからな!」
「さじ加減が難しいですね!」
「キャラクター商品が有るので、商品整理が行われたのだ!これからが正念場だ!」
「我々は従来通り、頒布会をちらつかせて行けば宜しいですね」
「そろそろ具体的な試案出す必要が有るだろう?京の宇治茶メーカーとのタイアップ商品を企画して喜ばせてやれ!」
「玉露堂を使うのですね?」
「そうだ!四季の茶とお菓子のコラボだ!富田社長は既に抜け殻の様な男だから、提案は課長の方で決めて作らせれば良い!」
「はい、判りました」
二人は千歳製菓が第二段階に入った事を認識して次の行動に移った。

その計画が決まって直ぐに商談に向った赤城課長と山下。
山下は初めて見る置物と大きな魚に驚きながら商談室で待つ。
佐伯は開口一番「再来年から頒布会に千歳製菓さんも採用に成る事が先日決まりました!」
「えっ、再来年一月からですか?ありがとうございます」
「今回は御社の製造ラインの関係も有りまして、玉露堂さんとのコラボでの企画に成ります」
「玉露堂?」
「京都の老舗のお茶屋さんです!銘茶と季節の和菓子のセット企画です!年間六万八千円で毎月京の銘茶と和菓子の詰め合わせが届くのです!」
「セットはお茶さんですか?」
「いいえ、千歳製菓さんでお願いしたいと思います。茶は冷凍出来ますので大丈夫です」
「判りました!社に持ち帰って段取りを致します」
「今回の企画で良い反応が出たら、その先には本格的に頒布会の仕事を始めましょう」
その後、現状の企画の話で盛り上がり、予定数量より夏の企画は増えるので準備を万全にと、庄司はそう言って笑顔で商談を終えた。

「凄いですね!頒布会決まりましたね!」山下がモーリスを出ると直ぐに嬉しそうに赤城課長に言った。
「だがな!次行く小諸物産の様な取引先が消えてしまうのも考え物だよ!」
「憂鬱です!電話では凄く怒っていましたからね!」
喜びも半分で午後三時に小諸物産に向った二人。

開口一番「モーリスの犠牲に成ったのですか?」小諸社長が恐い顔で言った。
「いいえ、それだけでは有りません!実はキャラクター商品の製造を始めたので、そちらの方が予定の倍以上売れまして、工場が廻らなく成りました!本当に申し訳有りません!」立ち上がって頭を下げる二人。
「それは?何?」小諸社長も虚を突かれた様に成って、拍子抜けに成っていた。
「山下君!お見せしなさい!」
持参した紙袋から小さな饅頭を並べる様に机に置いた。
「アヒルの様に見えるが?何?」小諸社長は手に持って、不思議そうに眺める。
「テーマパークの売店で、箱詰めにされて売るのです!
「ああーこれは有名なアヒルか?」漸く理解出来たのか微笑みだした小諸社長。
その様子を見て赤城課長が「あの様なテーマパークの売れ行きは、私共の予想を遙かにオーバーしていまして、生産が追いつきません!それで今回の様な事に至りました!」
「外資は契約に五月蠅いからな!」
「そうなのです!ペナルティが半端では無いのです!」
「処でモーリスにも商品を納めているのだろう?」
「はい、昨年五月の節句と彼岸団子は納品しましたが、その後は何も決まりません!」
「そうだろう?あの会社は自分本位で取引先の事は全く考え無い!一年分前払いで客に払わせて、製造は毎月させる。その上支払いは半年先だ!儲かって笑いが止らないだろう?千歳製菓さんも二回の取引で終ったのだな!大怪我に成らずに良かったじゃ無いか?」
「は、はあ」小諸社長は怒りが消えて穏やかに成っていた。
「私の仕事の邪魔をモーリスにされたと思っていたので、怒ってしまったが理由が違うなら致し方無いな」
話の成り行きで言い出し憎い二人は、最後までモーリスの話はする事が出来ない状況に成った。
「アイテムが少なくしたのは、君の会社が儲ける為だから今後は小ロットでも送って欲しい!君の会社の商品を待っている老人がいるのだよ!助けて欲しい!」一気に話をされて、結局小ロットで発送する事で話が終った。
「課長!小ロットで送ると、会社に叱られるのでは?」小諸物産を出ると山下が気にして尋ねた。
「何とか専務に話をして今回だけ許可して貰う、君は安心していなさい」赤城課長はモーリスの頒布会を材料に京極専務を騙して、小諸物産を守ろうと考えていた。

夜遅く自宅に帰って話をする信紀に「偉い!お父さんは良い事をしたのよ!」褒め称える美沙。
「そうか?良い事をしたのかな?」
「でもモーリスの商売って絶対に儲かるのね、客から先にお金を徴収して、発注が長いと一年先なの?納入業者には手形で払えば、手元にお金が一杯残るわね!恐い商売!」美沙が信紀の話を呆れて聞いている。
分割払い、クレジット払いは金利上乗せだからもっと儲かる事に成る。
「もしかして、クレジット会社からリベート貰っていたりしたら、もっと儲かる訳わね」美沙は笑ったが、信紀には少し笑えない気分だった。
自分もその片棒を担いでいると思ったら、笑えない気分に成った。

翌日京極専務に昨日の経緯を説明して、小諸物産の社長の口添えが有ったので玉露堂との頒布会が決まりましたと話してしまった。
京極専務は自分がモーリスを訪問した時も、小諸社長はモーリスを知っていたのでその様な話しに成ったと思い「多少の出費は仕方が無い、今後も世話に成る事も有るだろう」そう言って小諸社長が玉露堂との橋渡しをしてくれたと考えたのだ。
京極専務は漸くモーリスとの頒布会の仕事が始まる事を、自分の手柄の様に宮代社長に報告した。
自分が小諸社長に商談に行った時に、機会が有ればモーリスとの取引に力を貸して欲しいと頼んでいたのが実りましたと伝えた。

「玉露堂は天保の時代創業の老舗中の老舗です」
「それはまた、歴史の有る会社だな!我社にも箔が付く!」
「はい、私もそれは良い事だと思いました」
「一度私からも、小諸社長に御礼を言った方が良いね!」
「あ、いいえ!その必要は無いと、モーリスとの関係を表に出したく無い様です!今の仕事が拘り品ですからね!」
「成る程!企業イメージが壊れる?判る気がする!小諸物産に納入していたアイテムも多少削減の対象に成っただろう?悪い事をしたな!」気にする宮代社長。
赤城課長の小さな嘘が、京極専務の嘘で大きく広がってしまう様相だ。

この報告は直ぐに酒田常務の耳に入って、後継争いに危機感を覚えていた。
五月の葵祭が近づいているので、JST商事の吉村課長に頼み込んで、一気にアイテム数を増やして成果を出したい酒田常務。

数日後、上機嫌で錦三丁目のエデンに向った京極専務。
「専務さん!お久しぶりです!お待ちしていましたのに、、、、、」瑠美子が早速席に来て、寄り添いながら甘えた仕草。
「瑠美子さん!どうしたのですか?今宵は?」
「もう直ぐ社長さんに成られるのでしょう?もう少しお近づきに成りたいわ!」
「えっ!」京極専務も飲み屋でもてるのはお金を使わせる為だと理解している。
「そうなのよ!私専務さんの様な男性がタイプなのよ!」
その日甘い言葉を囁かれて、本気なのか?と疑いながら「瑠美子さん!一度温泉にでも行きますか?」酔って来た頃に小声で囁く京極専務。
「良いですわ!是非お願いしますわ!連れて行って下さい!」意外な返事が返って来て驚く京極専務は、後程メールを送ると言って店を後にした。
何回目?タクシーの中で瑠美子と会った回数を数えると、今夜で四回目?そんなに通っていないのに?自分に好意を持っていると解釈する。
自然と顔が緩んで自宅に帰ると、貴代子が「あなた!何か良い事が?お父様から内示を貰ったとか?」嬉しそうに尋ねた。
「まあ、そんな感じだ!」勝手に答えると「おめでとう!良かったわ!これで貴美子の泣く顔が目に浮かぶわ!」
「、、、、、」
「そうだわ!お父様に御礼の電話をしなければ、、、、」
「おいおい、まだ内緒だ!大袈裟にすると常務がモーリスの商品を作れないとか意地悪をするぞ!」
「そうね!今はまだ内緒の方が良いわね!夏の水饅頭、秋の彼岸団子有るからね!でも内定して良かったわ!気分が晴れたわ」嬉しそうに背伸びをする。
「これから出張が増えるぞ!生産アイテムを一段と削減しなければ、モーリスの頒布会品を生産出来ないからな!」
「営業部長としての腕の見せ所だわね!」
頭の中には瑠美子に囁かれた温泉旅行が残っていて、これで内堀は埋めたと細く笑んでいた。

四月の末、ジェームス、クーパーと吉村課長が関西にやって来て、早速接待に向った酒田常務。
今回も二人の遊ぶお金は持ち出しに成るが、妻の貴美子はこれで決めて下さいと現金を手渡す程気合いが入っていた。
それは吉村課長から、今回の京都旅行で満足すれば来年から新規で導入するキャラクター品の本土での販売も夢では無いと囁かれたからだった。
アメリカの本場で導入されると、全世界のテーマパークに納入も視野に入るので力が入っていた。
もしもそれが決まれば、工場の拡張か一番近い工業団地に第二工場の建設が必要に成ると目論み、夢は大きく広がっていた。
昨夜も「モーリスなんて、日本の通販でしょう?貴方の話は世界を見据えているわ!貴吉が社長を継ぐ頃には上場企業に成っているわね」貴美子の夢は大きく広がっていた。
三十日の日からコンパニオン二人を案内に呼んで、京都見物を計画。
二人はコンパニオンと芸者が同一人物だと勘違いして「着物美人!」と酒田常務に苦情を言ったが「明日の昼から来ます」の言葉で機嫌を直して、金閣寺、銀閣寺、清水寺の散策を楽しんで上機嫌に成った。
「明日の昼は川床に案内致します。綺麗処は夜の祇園での食事も一緒です」その様に伝えると「楽しみです!」喜こんだ。

翌日、高雄の料亭に着物を着た芸者二人がやって来た。
この二人は芸者では無く、酒田常務に頼まれた業者がデリヘル嬢にアルバイトをさせていたのだ。
着物自体殆ど着た事が無いので、歩き方はぎこちないが一応練習等はしていた。
着替えの服も予め準備しているので、明日の朝には洋服に着替えて旅館から帰る予定だ。
デリヘル嬢は若くて可愛い子を厳選しているので、一目見ただけで二人は喜んで「ベリーハッピー」と抱きつきそうに成った。
自然の情景をあますことなく楽しめる高雄は、時間をかけて足を運ぶ価値あり!渓谷でとれたばかりの鮎は、まさに清流の恵みそのままで、ひんやりとした川風を感じながら、涼の風情を心ゆくまで堪能出来る。
特に今日は初夏の様な暑さで、高雄の川床は最高のおもてなしに成った様だ。
座り慣れていない二人が食事の後立ち上がれなく成ったが、愛嬌だと喜ぶ。
四季の恵みを生かしたコース料理や、炭火で香ばしく焼き上げた鮎の塩焼きを堪能して、五人はタクシー二台に分乗して京都の寺、神社を少し散策して腹ごなしをした。
夜は祇園の料亭で食事の後、酒田常務を残して二組は別々に消えた。
翌日の昼過ぎ「ジェームスは大変喜んでいたよ!今頃の芸者はサービスが良いのだね!」嬉しそうに話す。
「宜しくお願いします!」と言うと「ジェームスの話では、今年と来年の様子を見て三年後アメリカに納入出来る可能性が高く成ったと話していたよ」
「本当ですか?宜しくお願いします!」電話にお辞儀をしていた酒田常務。
日本のおもてなしは最高だったと上機嫌のジェームスと、吉村課長は酒田常務に今回の御礼を込めてリップサービスを残した。

翌日酒田常務は、宮代社長に大袈裟に三年後には海外に向けて製品を出荷出来そうです。
工場の拡張、若しくは工業団地に新工場を建設する事を考えて頂きたいと報告した。
宮代社長は大喜びで、工場の増設なら隣の保育園を購入か?商工会に打診して、工業団地に新工場か?検討をして見ようと酒田常務の功績を称えた。
その噂は連休中に広がり京極専務の耳にも飛込んで、柏餅とちまきの詰め合わせを発送して上機嫌の時だったのでショックは大きい。

信紀は自宅でこの話をすると「次期社長は酒田常務に決まりね!」美沙が決まった様に言った。
「しかし、千歳製菓が世界の千歳製菓に成るのか?信じられない話だな!」
「モーリスの仕事は完全に飛ぶわね!規模が違うでしょう?」
「日本の仕事は細かくて丁寧だから気に要られた様だが、酒田常務の営業力には脱帽だ」
「社名もCHITOSEに変更だわね!」美沙が笑いながら言った。
「京極専務は苦虫を潰した様な顔をしていたよ!」
「完敗でしょう?仕方が無いわね!お父さんは専務派だから冷遇されるわね」
「それ程大きな会社じゃないから大丈夫だと思うけれど、営業は必要無いって言われそうだ!」
「工場勤務なら、出張にも行かないから事故の心配無いから良いじゃ無いの?」横から妻の妙子が口を挟んだ。
「だが、工業団地に新工場なら大きな設備投資に成るから、増設の方が良いと思うけれどな!」
「隣の保育園を買収するの?」
「工業団地の敷地は二千坪が最低だから、投資も大きい」
「無借金経営だと自慢していたのは遠い昔ね!」
「二十一世紀に飛躍するのかな?」
「お父さんも給料上がって、退職金沢山貰えるかも知れないわね!」
赤城家の食卓も夢の話がどんどん飛躍していた。

翌週半ばやる気の無く成った京極専務は、瑠美子との温泉旅行に行く。
自宅では挽回の為、新規の客の獲得に行く予定だと言ったが、貴美子に負けたく無い貴代子は「貴方!何とか成らないの?妹に負けるのは我慢出来ない!」興奮して怒る。
十一時頃、名古屋駅の新幹線ホームで待ち合わせの二人。
キョロ、キョロと見廻すが瑠美子の様な女性の姿は見えない。
騙されたのか?仕事も義弟に負けて、女にも騙されて最悪だ!一人で箱根の温泉に行くのか?これ程惨めな旅行は無い!どうしたら良いのだ!困った!と思った時、新幹線がホームに滑り込むアナウンス。
「専務さん!私が判らないの?」と半袖で水玉模様のワンピース姿の清楚な感じの女性が京極専務の肩を叩いた。
「えっ、瑠美子さんですか?」驚きの表情に成る京極専務。
「そうですよ!判りませんでしたか?」笑顔で話した時、新幹線がホームに滑り込んで来た。
グリーン車に乗り込む二人、京極専務は意外な瑠美子の姿に気が付かず座席に座ってから「若いお嬢さんかと思いました!」興奮を隠せない。
夜の仕事場で有るクラブでの姿は、派手な服装に目立つ様な化粧に成っているが、今朝の瑠美子の服装と化粧は薄く全く異なったので判らなかった。
京極専務は今までのもやもやとした気持ちが吹っ飛んで、今日から二日間瑠美子と楽しもうと気分を切り替えた。
「でも何だか、今日の専務さん恐い感じですわ?」
「その様に見えますか?義理の弟に社長レースで遅れを取りましてね!困っているのですよ!」
「それが原因だったのね!専務さんに頑張って貰わないと、私も恩恵が無いわ!」
荷物を持ってタクシーに乗り込むと「強羅の(雪華別邸)にお願いします」
しばらくして、登山の様に車がどんどん登って行くので、身体がその度に揺れるので瑠美子が大袈裟に京極専務にもたれかかる。
その度に嬉しそうな顔をする京極専務は、暫し後継争いの事を忘れていた。
半時間程で(雪華別邸)に到着すると「素敵な旅館ね!」嬉しそうな顔をして玄関を入る瑠美子。
部屋に案内されると瑠美子が「専務さん悩み事が有るのですか?暗いから気に成って、何に悩んでいるのか教えて下さいませんか?専務さんの悩みは私の悩みですから!」
瑠美子の今日の目的は専務を社長にする為に、現在弊害に成っている事を取除く事、そして自分の虜にして今後操縦する事が使命だ。
「判りますか?実は、、、、、、、」酒田常務に負けている事を細かく喋った京極専務。
「ありがとうございます。これで私達は身も心もひとつに成れる気がしますわ」
そう言っていきなり京極専務に抱きついてキスをする瑠美子。
その気に成った京極専務に「ごめんなさい!汗臭いでしょう?大浴場に行っても良いですか?」
「部屋にも露天風呂が在るのに!」
「髪も身体も化粧も落したいので、一度大浴場に行かせて下さい!」
「そ、そうなの?じゃあ私も大浴場に行くとするか?」
「浴衣に着替えのお手伝い致しますわ」
背広を脱がせてハンガーに吊すと、ワイシャツのネクタイを緩める瑠美子は、さりげなく専務の股間を握る。
近くで女の臭いを嗅いで興奮気味の京極専務だったが、ここで焦ると恥だと我慢をする。
しばらくして、浴衣姿の京極専務と着替えを持った瑠美子が地下の大浴場の処に向った。
「じゃあ、また後でね!私は少し時間が掛ると思うので待っていてね!」
京極専務が大浴場に消えると、直ぐさま瑠美子は松永部長に指示を仰ぐ為に携帯で電話をした。
「何!アメリカに納入の話まで出ているのか?それは駄目だな!阻止せねば酒田常務に社長の座が転がり込む!」
「どの様に致しましょう?」
「十分後に電話をするので少し待ってくれ!」と電話が切れた。

十分以上経過して漸く電話が有り、松永は製造工程に簡単な細工をするかお客からクレームを出して貰う事で、取引停止には成らないだろうが常務の勢いは止められると教えた。
バスタオルを身体に巻付けて、電話を待っていた瑠美子は直ぐに大浴場に飛込んだ。
しばらくして、大浴場から湯上がり場に行くと「瑠美子さん!遅かったね!待ちくたびれて三杯も生ビールを飲んでしまったよ!」と赤い顔で言う京極専務。
「お待たせしました!でも専務さん!私お風呂で色々考えていたのですが?」
「何を?」
「専務さんが逆転する方法ですよ!」
「えっ、その様な事を心配して頂けて嬉しいですが、気を使わないで下さい」
「駄目です!専務さんには必ず社長に成って頂きたいです」
「ありがとうございます!何か飲まれますか?」
「はい!ビールを一杯飲んだら、夕食ですよね!」
京極専務が生ビールを自分でサーバーから入れて持参すると、御礼を言いながら受け取ると飲み始めて「美味しいわ!先程の話しですけれど、アメリカのテーマパークの会社は少しの間違いでもペナルティを科すと聞きました」
「その話は聞いた事が有りますが、それでは会社が悪く成って意味が無く成ります」
「例えば一度の生産で作る商品に小さな欠陥、例えば鼠の尻尾が少し短いとか、アヒルの嘴が歪むとか?少しの欠陥品をワンロット作るのは如何でしょう?」
「でも社内の検査で判明して、出荷止めに成る可能性も有るから困難かも?」
「それが駄目なら、お客さんにクレームを出して貰いましょう!私にお任せ下さい!」
「えっ、瑠美子さんがそこまで考えて下さるとは!感激です!」
「私には専務さんのままでは、必ず社長さんに!」
「ありがとう、お客さんからのクレームなら会社の被害は少ないかも知れないな!」
京極専務はその後部屋に戻って、一服中に瑠美子に託しても良いのではと考え始めた。
瑠美子は自分と知り合い二、三人に演技をさせると話して具体的に盛り上がった。
その後食事処でも一杯飲んで、部屋の露天風呂に二人で入ると瑠美子の乳房に手を持って行く。
「酔いが覚めて来ました!瑠美子さんは本当に美しい!」そう言いながら、瑠美子の身体と悪知恵に埋もれる京極専務。
気分が晴れた専務は自分の理想に近い瑠美子の股間に顔を埋めた。
瑠美子も素晴らしい演技力で、京極専務に久々の射精をさせて喜ばれた。
翌日夕方自宅に帰った京極専務は上機嫌に変わって、妻の貴代子が驚く程の代わり様だった。

事件は六月上旬、JST商事の吉村課長から酒田常務に連絡が届き、顔色を変えて酒田常務が東京に飛んで行った。
近日中にクレームが発生するニュースは、京極専務の元に瑠美子から連絡が有ったので、毎日注意して見ていた。
慌てて外出する酒田常務を目で見送ると、瑠美子に電話で「今、連絡が届いた様だ!ありがとう」と御礼を言ったが、その後千歳製菓には大きい痛手と成って京極専務は打撃を受けたが、もう後戻りは出来なかった。

新社長誕生

JST商事の吉村課長から酒田常務に下された結論は、クレームの出た日付に製造された商品の全て返品に成った。
日付が三日分に成っていたので、三千箱の饅頭が対称と成った。
販売された商品の回収までは指示が無かったが、倉庫と土産物店の在庫を全て回収に成った。
金額では四百万程度の損害に成ったが、酒田常務の責任論が浮上して京極専務の思惑が的中した。
唯、今後数年間の新製品の納入は見合わせられる事が通達されたのは八月の盆過ぎだった。
この事件で、宮代社長に酒田常務は社長就任からの撤退宣言をして、京極次期社長が九月に決定した。

瑠美子に京極専務は自分が社長に成ったと伝えて喜ばれたが、お互いこれ程外資の対応が厳しいとは思ってもいなかった。
ほろ苦い社長就任レースに勝利した京極専務は、瑠美子に今後この話は永久に口にしないと決めていた。
社長に決まった京極専務にも九月の末に成って、疑念が発生していた。
宮代社長が退任の挨拶を主だった取引先に電話で行ったのだが、宮代社長が小諸物産の社長に御礼の電話をして発覚した。
「専務!小諸物産にモーリスと玉露堂の橋渡しをして貰ったと、私に報告したな!」
「はい、それが何か?」
「小諸社長に御礼の電話をしたら、あの様な会社を自分が紹介する訳無いと叱られたよ!」
「えーー、それは、その、、、担当の赤城課長からその様な報告がございまして、、、、」
「赤城課長?君は自分が、、、と言ったぞ!」恥をかいてしまった宮代社長は怒って言った。
京極専務は自分の手柄にして報告したが、赤城課長は何故?その様な嘘の報告を私にしたのだ!一気に疑念が噴出した京極専務。
営業の山下が戻るのを待って、密かに呼びつけて経緯を聞く京極専務。
問い詰められた山下は赤城課長が、善意で小諸物産に便宜をした事を喋ってしまった。
「何故あの様な小さな会社に課長はそこまで便宜をしたのだ!それもモーリスを目の敵の様に言う小諸社長を助ける為に!馬鹿なのか?」
「専務!送料を貰うのですか?」
「赤城課長に降格して貰って、送料を捻出する!」怒った専務は翌日辞令を発表して、赤城課長を係長に降格してしまった。
前日に山下から事情を聞いていた赤城課長は「露見してしまったのなら、怒られるよな!」と言って自宅に帰っていた。

その夜自宅で「そんな!係長に格下げなの?給料も大きく下がるわよね!」驚く妻の妙子。
娘の美沙は今夜友達と遊びに行って留守。
「幾ら位下がるのかな?三万かな?」
「美沙の学費とか、、、、、困ったわね!貴方の嘘を専務も利用していたのね!」
事情を聞いて呆れる妙子。
「元は自分が悪いのだよ!」
「でも小諸物産って、地域の老人ホームとか介護施設に納品している会社でしょう?」
「身体に良い品物を扱っている会社で、規模も小さいので送料負担に成れば即お客さんの負担が増えるので、、、、、、」
「美沙も言っていたじゃないの、貴方は良い嘘!専務は悪い嘘!なのよ!」
妙子は失意の信紀を慰める。

彼岸団子と月見饅頭のセットの納品が完了した頃、正式に京極専務の社長就任が行われて、会長宮代千歳、社長、京極隆史、専務酒田慎吾、そして常務のポストは空白に成り、今度は二人の息子京極晃と酒田貴吉の就任が近いと噂されていた。
今春から酒田貴吉は研究開発室に席を置き、出向で大手の工場の研究室に修行に出ていた。
一方の京極晃は大学から、大手の食品会社に就職して営業マンとして働いていた。
だが、社員の全てが京極社長の息子は、三年以内に千歳製菓に入社すると思っていた。
その通りで、自宅では今の営業課長が頼りないので、晃が入社して営業課長を担って欲しいと京極社長は事有る事に話していた。
あの事件以来京極社長と赤城係長の関係は完全に隙間風状態、モーリスの担当も息子の晃に託したいのだ。
その内部情報は松永部長の耳にも届いて、息子京極晃の能力と性格、現在の仕事状況もチェックされていた。
京極晃の勤めている食品会社はモーリスとも取引が有り、情報の収集は比較的簡単だった。
晃の性格は自信家で、遊び人、学生時代から複数の女子大生との交際が有り、現在も三人の女性と付き合っている。
「この調査から察すると、早く千歳製菓に入社させて発言力を持たせるのが得策の様だ」
「親に似ない子は鬼の子ですね!」調査書を見ながら話す村井課長。
「瑠美子に填まっている親父と似た様な息子だ!少し傲慢な部分は親父を超えているかも知れない。それと今の担当者の赤城課長はトラブルで係長に降格されて、京極社長の信頼を失った様だ!揺さぶれば息子の入社が早く成るかも知れない!隣の保育園を買わせて工場拡張の段取りで進めてくれ!」
村井課長と松永部長は着々と計画を進めていた。

翌週モーリスに呼び出された赤城係長は、頒布会の商品の納入には現在の工場ではやや小さ過ぎるので増設の予定は無いのか?と聞かれる。
赤城係長は、キャラクター商品が頓挫して工業団地の話は消えた事は知っていたので、増設も新設も予定は有りませんと答えた。
すると佐伯は「頒布会の納入は諦めるのですか?玉露堂さんは既に御社との共同企画で考えていらっしゃいますよ!」
「私の一存では、、、、」
「社長の京極さんに来て頂いて、今後の方針を決定したいのですがお願い出来ますか?」
「は、はい」自分では結論は出せないが、社長に来いと言われて赤城係長では話に成らないと言われてしまった。
益々窮地に追い込まれる赤城係長は試練の時を迎えていた。

翌週、赤城係長を役立たずと罵って、自らモーリスを訪れた京極社長。
工場拡張と引き替えで、頒布会への納入を決めると詰め寄られて承諾をしてしまった。
その話は翌日直ぐに、事務の北川碧から名新信用金庫の志水の元へ連絡が届いた。
「拡張と言っても場所無いと思うけれど?」
「隣ののぞみ保育園を買収する様だわ!」
「えっ、のぞみ保育園?」声が裏返る志水。
ここの保母が志水の本命、今中満里奈が勤めているのだ。
満里奈から情報を貰って、新規の取引先に千歳製菓を選んで融資に成功していたのだ。
通園にも場所的に便利で、園長夫妻に可愛がられて楽しく仕事をしていた。
志水にはとても保育園の買収に手を貸す事が出来ない。

数日後予定通り京極社長から呼び出しが有り、保育園買収の資金の提供を迫られた志水。
支店に持ち帰り上司と相談しますとは答えたが、複雑な心境で支店長への報告を躊躇った。
情報を流してくれた二人の女性を裏切る状況に追い込まれた志水。
だが焦る京極社長は、志水の返事も聞かずに翌日香取支店長に直接電話を掛けて来た。
志水は支店長に問い詰められて「今の社長には資産が無いので報告を躊躇っていました。宮代前社長は個人資産も沢山お持ちで、融資には支障は無いと私も推し進めましたが、、、」と言葉を濁した。
「確かに京極社長には資産が無い、会長が亡くなれば奥さんには多額の遺産が入るだろうが、今の用地買収には会長の保証が不可欠だな!」
「は、はい!それで躊躇っていました!」
「今後は自分の中で置かずに直ぐに報告をしてくれ!採決は本店が行う!」
辛うじて誤魔化したが、今後の成り行きでは満里奈に謝らなければと思う志水。
隣ののぞみ保育園は、島村夫妻が経営をして園児は満杯状態で、千歳製菓に勤務しているパートも十人以上が預けて勤務をしていた。
都心に近く常に予約待ち状態が続いている。
朝夕の園児の送り迎えの時は、千歳製菓の入配送の車とでこの近辺は渋滞する程の混み様だ。
数日後名新信用の本社では香取支店長達が懸念した通り、会長宮代の土地の一部を抵当として差し出せば融資に応じても良いとの結論が出る。
買い主が誰だとは言わずに、五百坪程度の保育園の土地に初めて打診に行った不動産屋に島村は「今の園児さんが通える場所に今より大きな場所を確保して頂けるのなら、お譲りしても宜しいです」と答えた。
「勿論、今より立派な園舎の建設もお願い致します!」と付け加えた。
土地を買って終りには同意せずに、代替え地と園舎の建設を交換条件に出した。
仲介に入った不動産業者から「この近辺に代替え地に成る場所を捜す事が先決ですね!」と言われて銀行からの融資の決定を聞く前に難題が持ち上がった。

そんな最中、酒田専務の元にJST商事の吉村課長が、ジェームスの会社が例のクレームの分析が終って報告書が届いたと連絡をしてきた。
酒田専務は怖々と電話を聞くと、クレームの商品は故意に鼠の尻尾を短くしたクレーマー集団の犯行だと断定されました。
その為千歳製菓さんには何も落度は有りませんでしたとの結果が出ました。
お詫びに国内のアイテムをもう一品追加する事に致しましたと、驚く様な配慮を伝えて来たのだ。
「ちくしょー、もう少し早ければ!」電話が終わって悔しがる酒田専務。
その時、もう一度電話が吉村課長から有り、一度会ってお話したい事が有るのですと東京に近日中に出て来ませんか?の誘いだった。
酒田専務はもう時は遅しと思ったが、吉村課長の意味の有る様な話し方と息子と一度会いたい気分も手伝って日時を決めた。
息子貴吉の出向先に顔を出す予定も入れて、東京に向った専務。
京極社長には、今ではJST商事も大きな取引先なので、前回の失態から挽回して貰いたい。
酒田専務はアイテム増の話を敢えて京極社長には報告せずに東京に向った。
東京に行って増えた事にすれば、面目が立つと考えていたのだ。

夜飲み屋で吉村課長が「これが調査資料の一部なのですが、この部分を見て頂きたいのです」差し出された用紙に、今回クレームを出した十人程の人の住所が書かれていた。
「これは?名古屋の人が多いですね!」
「一部関西に在住の方も居ますが、大阪、名古屋方面の人が殆どなのです!テーマパークに来る事は考えられますが、今回の饅頭のクレームはクレーマーの偽装だった事は研究室の調査で判明しました」
「警察に届けられるのですか?」
「いいえ、その様な事は致しませんが、ジェームスの調査では今回の事件は故意に狙った犯行では?の疑念を持っています。心当たりは有りませんか?」
その言葉に顔色が変わる酒田専務。
その顔色を見て「心当たりが有るのですか?」
「い、いえ!気に成っただけで、我社が何処かに狙われているとしても、饅頭には当社の名前は記載されていませんから、内部事情に詳しい者の犯行ですね!」
「沢山の中からこの品物を狙い撃ちですから、悪質な犯罪ですね」
吉村課長に無理に頼んで、リストの住所と名前を貰って別れると、酒田専務の頭に京極社長の顔がちらちらとしていた。
世界に向けて出荷、工業団地に新設工場と大きな話に、焦った京極社長が恐ろしい事をしたのでは?帰りの新幹線の中でも常にその事を考えていた。

知り合いの探偵社にリストを見せて「この中に我社の関係者とか知り合いが居るか調べて欲しい!」と何も詳細を言わずに頼み込んだ。
「会社の人は多すぎます、もう少し絞って頂かないと探せません!」
「じゃあ、経営陣!」
「会長、社長の関係者で宜しいですね!」
酒田専務はそれで探して貰う様に頼み込んだ。

JST商事のテーマパークへの品種がひとつ増えた事は、現在の生産キャパではもう一段の生産アイテムの減少を余儀なくされる。
だが、京極社長は神崎工場長に、もう一段のアイテム減少と取引先の整理を行うので今の設備で頑張って欲しいと伝えた。
早速神崎工場長はアイテムの削減案の検討に入り、翌週には京極社長に持参した。
その案を元に営業会議が行われたが、赤城係長の発言は完全に無視されて「このアイテムの削減を来年夏迄に完了するので、取引先の整理も同時に行う様に!」と殆ど一方的に決められた。
営業の四人は赤城係長に会議の後「これでは販売には成りません!殆どの得意先は無く成ります」と話した。
「仕方が無いだろう?これでも工場の拡張が無ければ、モーリスの頒布会は受けられない!」
「私達は工場勤務ですかね!」
「JST商事の担当を誰かがする様に成れば、二人で充分だろうな?」
営業の四人は寂しい話をしている。

酒田専務の元に探偵社からの報告書が届いたが、内容は会社の経営陣の関与は全く認められませんが、お客様に共通するのは頒布会での購入が多い方ですと書かれていた。
「頒布会って、モーリスですか?」早速探偵社に確かめると「その頒布会の会員さんが共通点ですね!唯、この様な方はよくクレームを出されますので、頒布会でも同じ様な事かも知れませんね」と答えた。
酒田専務はモーリスの会員が、態々京極専務を社長にする為にクレーマーに?それは信じられない話で、結局闇の中に消えてしまった。

一方不動産屋がのぞみ保育園の代替え地の候補を数カ所提示したが、島村夫妻は中々納得せず暗礁に乗り上げていた。
今の生産量では工業団地に第二工場を建設する事は出来ない。
今の工場をフル稼働させて、頒布会の商品を製造して、JST商事のテーマパーク用をもう一種類増産する。
頒布会開始までに保育園の敷地を工場拡張用地としなければ乗り切れないのだ。
京極社長は妻の貴代子を通じて、会長宮代所有の土地の担保提供を頼み込んでいた。
保育士の満里奈は全くこの買収の話は知らない。
名新信用金庫は今回の融資には消極的で、担保提供が不可欠だと決定していた。
メインバンクの名愛銀行には第二工場新設資金で申し込んでいたので、これも不確実性が高いので消極的だった。
隣の保育園を刺激せずに、秘密の間に話を進めようとしている京極社長。

年が改まって、京極社長は自分が社長としての実績を伸ばしたい。
息子の晃を四月から会社に入れる事を発表したのは、一月の末で本格的に京極家が次期社長も継ぐ体制に入ったと囁かれていた。
面白く無いのは酒田専務、次の社長には自分の息子貴吉に成って貰いたい。
来年には貴吉も戻ってきて、後継争いは第二ラウンドに向っている。
宮代会長は貴代子に頼まれて自分の土地を担保に差しだそうとしたが、妹の貴美子に反対されて宙に浮いてしまった。
当然、遺産を分割するのに担保に入れられて居てはどうする事も出来ないので、知ってしまうと当然反対に成る。
宮代の妻住枝がついうっかりと話してしまったのが原因だった。

二月の末、赤城係長に京極社長が、営業職から四月には現場の作業員に成る様に辞令が出された。
後任は自分の息子晃が営業課長として入社するのが決まったからだ。
自宅に帰って家族に笑いながら言う信紀だが、営業課長から係長、そして今度は現場の主任に再び降格に笑いは暗い。
「何故?お父さんが現場に行かされて、降格なの?」
「それは、商品の削減に反対して、取引先に告げなかった事かな?」
「商品が無く成るのに?」
「それを伝えると、取引が無く成る処が多くて、事実上の取引停止を中々告げられなかったのが原因だよ!」
「それって、事実上はモーリスとJST商事のテーマパーク商品しか作らないって事なの?」
「近い将来はその様に成るだろうな?それも工場拡張が決まらなければ生産出来ない!」
「モーリスとの取引が始まって、お父さんの会社って大きく変わってしまったわね」
「まだ停年まで十五年以上有るから、逆らわずにゆっくり工場で仕事して下さいよ!」妻の妙子が寂しそうに言う。
「そうよ!私も後一年で卒業だから、もうお金必要無いから安心して!」
「美沙就職は決まったのか?」
「まだ正式では無いけれど内定を貰ったわ!ウィークジャーナルよ!当初から行きたかった会社よ!」
「親会社は色々しているから、マスコミ関係には強いな!」
「ニュースの深掘りとか、話題に成る報道が多い週刊誌よ!」

四月に成って京極晃が課長として入社すると、同時に赤城は工場の製造主任に格下げに成った。
だがパート達の間でも赤城は噂に成っていたので、変な目で見られる始末だった。
一方京極新課長は、着任すると早々にモーリスに挨拶に向った。
庄司は早速晃に「頒布会の販売を再来年の一月から、玉露堂との共同企画で始めますので宜しく!」と切り出した。
「はい、判りました!その為の準備は着々と進んでいます」
「工場の拡張でお困りでしたら、我社が援助致しますのでいつでもおっしゃって下さい!」
「いえ、今の処は順調ですので、ご安心下さい!」
初めての商談で援助の話までされたと嬉しそうに帰って報告をした晃に、京極社長はモーリスの援助が有れば銀行に融資を断られても大丈夫だと思い始めた。
宮代の財産を宛てにする必要が無い、これからは自分の力で会社を大きくすると自信が出て来た。
京極社長は息子晃の初めての商談で、融資若しくは出資を引き出した事に営業能力が素晴らしいと褒め称えた。
褒め称えられた事で晃は益々調子に乗って、部下達に早急にアイテムの削減、取引の停止を進める様に指示した。
小諸社長から山下に、今のアイテムが無く成ったら介護、老人ホームの人達が困るので存続させて欲しいとの手紙を預かっていたが、問答無用で取引停止の通達を出した。
大小合わせて三十社以上との取引を年内に終了させる事を決めた。
これで年末には売上げの八割がJST商事のテーマパークとモーリス向けの商品に成る。

信紀の自宅では「工場はアヒルと鼠の山だよ!」
「お父さん!工場内の仕事初めてから、元気が無いわね!」
「元々営業の仕事だったから、工場内の仕事は不向きだって判っていたからな!でもこの五十歳の男を雇う会社は無いかな!」
「来年四月から私も働くから、営業出来る会社に代わったら?お父さんの疲れた顔見るのは辛いわ」美沙にも言われる程、疲れた様子の信紀。
山下が毎日京極課長に偉そうに指示されるのは、取引先の整理の話が大半で本来の営業の話は殆ど無いので、全く仕事をしている気がしないが理由。
信紀は自分も同じ心境で、とても山下に我慢をして仕事をしなさいとは言えなかった。
九月上旬に山下と同じ営業社員が殆ど同時に辞表を提出して、千歳製菓を去って行った。

京極社長はJST商事の担当も京極課長に委ねて、酒田専務には製造と用地買収、工場拡張の重責を受け持って貰う事に一方的に決めてしまった。
二人の営業が抜けた穴は臨時採用で営業、工場作業員の募集を行って補おうとした。
宮代会長は週に一度だけ顔を見せて、もう仕事には口出しは無く成り旅行と趣味の盆栽に殆どの時間を使っていた。
京極社長には、モーリスからの出資話が控えているので、宮代会長の財産を宛てにする必要が無いと殆ど相談は無く成り、報告を簡単にするだけだ。

再来年の正月からの頒布会スタートの為の打ち合わせが始まったのは、肌寒く成り始めた十月半ばだった。
モーリスの仲介で京極課長と玉露堂の社長の富田がモーリスで初めて出会った。
元気の良い京極課長と殆ど名刺を出してからは、村井課長の話に頷くだけの富田社長。
村井課長の作成した提案書では、七対三位で圧倒的に玉露堂のお茶が多く、饅頭はお茶の添え物的な扱いだった。
だが喋るのは圧倒的に京極課長で、商談の最中も晃は富田社長の様子に異常な雰囲気を感じていた。
翌日社長に報告すると、京極社長は笑って「晃!玉露堂さんは何度もモーリスの頒布会を経験しているから、聞く必要が無いからだ!」そう言って自分で納得した。

夕方、モーリスの松永部長が京極社長に、今後御社と関係を強化する一環で出資をさせて頂きたいと申し出た。
増資で資本の増強をお願いしたいと言われたのだ。
現在千歳製菓は資本金三千万で、それを一億に増資して経営基盤を強くして欲しいとの依頼だった。
モーリスに七千万の出資をされると、同時に千歳製菓はモーリスの子会社に成ってしまう。
松永部長は五パーセント未満の出資でお願いしたいので、増資をお願いしますと云う内容だ。
今断ると関係悪化を招くので、頒布会が始まる前には増資しますと答えたが、年内の増資が決まらなければ上層部が頒布会を承認して貰えないと強気に出る松永部長。

一週間後、赤城主任の自宅に会社から手紙が届いた。
「これは?何?」恐る恐る手紙を食卓のテーブルに置いた妙子。
「また、格下げか?次は平社員だな!」信紀も顔が緊張している。
「お父さん、会社では何も言われて無いのでしょう?」美沙も驚いていた。
「だから、恐いのよ!行き成り解雇!」
「まさか!とにかく開けてみて!」
封筒を開いて文章を見る妙子が「増資のお知らせって、えーー七十万も?」
「増資って何だ?」信紀が横から文章を取り上げる。
文章を読んで「昔株主に成って欲しいと頼まれて三十万出したのだよ!だから権利が有る様だ!断れば会社が引き受ける様だ」
「大金よね!当時の三十万って!」
「出したと言うより、賞与の代わりだと言われて株券を貰った!配当が年に一度給与に足されているだろう?あれだよ!」
「五千円程貰っているわね!結婚した時からだわ」
「一億に資本金を増やすので、今三千万だから同じ様に成ると百万か?俺も一パーセントの株主だったのだな!」
「株主って沢山居るの?」
「経営陣以外は殆ど居ないと思う!昔今の社長に嫌味で株主はもっと頑張れとね!確かその時は、京極社長は株を持って居なかったと思う!お父さんの方が社歴は長いからな!」
「でも何故?急に増資に成ったの?またモーリス?」
「株主は当時の社員と、宮代家の人で持っていたと思うな!だから京極社長も酒田専務も持たれてないよ」
「宮代会長と奥様、京極貴代子さん、酒田貴美子さん?他には?」
「神崎工場長も多分持っていると思う、他の人は退社しているから誰かが買い取ったと思うな!ここにも増資に対応出来ない場合は買い取るって書かれている」
「お父さん!これは絶対にモーリスが絡んでいるわね!」
「七十万払うか、辞めるか?難しいわね!今の七十万は大金ですからね!」妙子が困った顔をする。
「殆ど四人が持たれているのでしょう?じゃあ七千万のお金が必要に成るのね」
「本当だな!宮代会長でも七千万の現金は大変だろうな?」
モーリスが揺さぶりをかけて、増資も失敗すれば紙くずに成る事を宮代会長が一番知っていた。
宮代会長は京極社長に対して、今回の増資で社長も専務も多少株を持って欲しいと、自分と妻の増資分を半分引き受けて欲しいと打診した。
五十パーセント所有しているので、約三千五百万程度必要に成る。
だが、社長も専務も自分の増資の分でも四苦八苦に成る金額だった。
モーリスは既に名新信用金庫に引き受けさせる段取りを画策していた。

数日後京極社長の元に、名新信用の理事と香取支店長が訪問して「御社で増資の話が有るとお聞きしたのですが?」そう言って切り出した。
「早耳ですね!実は大手通販のモーリスと今後大規模な取引を始めますので、資本の増強が必要に成ったのです」
「実は本日寄せて頂いたのは、当信用金庫も増資を引き受けさせて頂きたいと思いまして!」
「宮代会長からお聞きに成ったのですか?」
「は、それは想像にお任せ致します!」と答えると京極社長は宮代会長が手を廻したと解釈した。

数週間後、モーリスが五パーセントの株主、名新信用金庫が十二パーセントの株主に入り、神崎工場長が二パーセント、赤城信紀が一パーセント、京極社長と妻貴代子が二十パーセント、酒田専務と妻貴美子が二十パーセント、宮代会長と妻住枝が四十パーセントに配分されて増資の手続きに入った。

「お母さん!七十万も出資したの?」その話を聞いて驚く美沙。
「宮代会長か奥様が亡くなったら、その株の行方で混乱する様な気がするな」信紀が書類を見ながら話した。
「部外者が株主に成ったのは初めてでしょう?」
「そうだな!いつの間にか名新信用が会社に食い込んでいるのが、気に成るけれどな」
「もしもよ、モーリスと名新信用が繋がっていたら、十七パーセントの株主でしょう?社長と専務派に別れたら会社の行方は判らなく成るわね」
「そうか、気が付かなかったが、どちらに行っても三十七パーセントだな」
「そうよ!会長の持ち株次第では過半数に成ってしまうわよ!」
「繋がっていない事を祈るよ!」信紀は美沙の指摘した事が現実に成る様な不吉な胸騒ぎを感じていた。

二千四年の春、美沙は大学を卒業してウィークジャーナル名古屋支店に就職した。
東京本社で名古屋と大阪に支店が在り、福岡と札幌に営業所が在る。
美沙の就職と交代する様に元気が無く成った信紀。
工場内の仕事が体質に合わないのは以前から判っていたが、精神的な疲れが肉体にも波及した様に見える。
四月の半ば、いよいよ京極社長は隣ののぞみ保育園買収のタイムリミットを迎えて、モーリス本社に息子晃課長と一緒に訪れて、買収資金の融資をお願いしていた。
「御社にも当社の株主に成って頂きたいが、五パーセントをお願いすると大変な金額なので、一応千株程度お持ち頂いて関係強化の証しにしたいと思います」
「千株ですか?御社の株価はお幾らでしょうか?」
「昨日の終値で四千五百円丁度ですから、四百五十万に成りますね」
「は、はい!」声が詰まる京極社長。
既にこの一月から支払いサイドは六十日に成っているので、普通の取引先では最長だ。
「それから、頒布会が始まると支払いサイドを百二十日にして頂きたい。お客様に便宜をして差上げる関係でその様に成ります」
「えっ、今の倍ですか?それは当社でも例が無いのですが?」
「今回の頒布会は玉露堂さんとの共同企画ですが、次の企画からは御社独自で企画をして頂きますので、売上げが共同企画の三倍に成ると思って頂きたい」
「三倍ですか?でも百二十日は、、、、、、、、」
「お受けされない場合は、東北の菓子メーカー千成物産に行きますよ!」
「えっ、千成物産とお取引が?」
「最近専務さんが訪問されていますよ!一応は千歳製菓さんが有るのでお断りをしているのですよ!」村井課長は適当に話して追い込む。
「社長!ここはお受けしなければ成りません!千成物産はライバルですから、モーリスさんの好意をお受けしましょう」晃が口を挟む。
すると今度は村井課長が「当社の松永部長が保育園買収費用と、工場拡張の費用で三億程準備していると聞いています」
「えっ、三億!」声が裏返る京極社長。
「あの金利は幾らでしょうか?」
「金利はゼロでも良いのですが、それでは変な事に成りますからコンマ五程度頂き、均等五十年では如何でしょう?」
「えっ、そんな優遇をして頂けるのですか?」
「保育園移転と建設費で一億五千万程度、自社の工場拡張工事と設備等で一億五千万程度だと考えています」
「充分です!唯保育園の用地が?」
「大丈夫です!当社の関係先の工場が丁度空き地に成りましたので、その跡地に移転して頂ければ理想です」
「えっ、その様な空き工場が有るのですか?」
「はい、三年以上空きの状態ですから、直ぐに工事に着手出来ます」
「何から何までありがとうございます」
二人は平身低頭で村井課長を拝む様に帰って行った。

数日後の赤城家で美沙が「初仕事を頂いたのよ!」嬉しそうに話した。
五月の中旬に成って、三人のチームで記事の取材を行うと言った。
「美沙の初仕事は何処で?」
「お父さんの会社の一キロ程向こうに食品工場が在るのよ!違うわ!在ったのよ!だわ」
「食品工場?何を製造していたのだ?」
「練り製品かな?」
「寺崎食品か?」
「それそれ、そこの取材よ!」
「でも既に商売していないと思うが、うちの工場にも寺崎に勤めていた人が働いて居るよ!」
「お父さん!寺崎食品さん良く知っているの?」急に身を乗り出す美沙。

美沙の初仕事

「地元では名士だったけれど、お菓子と練り製品だからそれ程接点は無かったな?でも廃業した会社取材しても何も無いだろう?」
「会社では、この十年間の間に急に廃業した会社の特集記事を掲載する様なの、それで三人が寺崎食品の担当に成ったのよ!深掘り記事で有名だから、全国で同じ様な会社十社を選んでいるのよ!」
「その中のひとつが寺崎食品なのか?」
「そうなのよ!明日から取材を始めるのよ!小南圓先輩とカメラマンの木村亮さんでチームを組んでいるのよ!」
「食品会社十社なのか?」
「違うわ、果物関係の会社、陶器も有ったわ、酒のメーカー、園芸の会社も有ったわ」
「その会社の場所は色々か?」
「北海道の農園から、陶器の会社は九州よ!名古屋はこの寺崎食品だけ!上層部の企画検討会が選別した記事だから、それなりの反響が有るのでしょう?私の様な新人記者には判らないわ」
「兎に角頑張れ!何か役に立つなら協力はするからな!」
元気の無い信紀は疲れた様子で自分の部屋に向った。
「お父さん、益々元気が無いわ!心配」
妙子と美沙が心配そうに奥の部屋に向った信紀を見送っていた。

「何から手を付けますか?」美沙が小南に尋ねる。
「寺崎食品の登記簿の写ししか手元に無いから、この社長の寺崎保さんの行方を捜しましょう?取り敢えず寺崎食品の工場跡に行きましょう」
現地に行くと朽ち果てたスレートの工場、隣には駐車場が在るが入れない様に柵が張り巡らされていた。
三人が柵の外から見ていると、カメラマンの木村は適当に朽ち果てた工場の撮影を始めた。
五十歳の木村と四十歳の小南に比べると、若々しい美沙は行動的で「近所の家に聞きに行きましょうか?」と言う。
「そうね、何か手掛かりが必要ね!」
敷地は一千坪程度の広さが在る様に見えて、反対側には古い住宅が数軒並んでいる。
美沙はその住宅を指さして歩いて行く。
初夏の日差しが三人を照らして、少し歩くと汗が滲む程だ。
「日焼けしますね!」美沙が手で太陽の光を遮る様にして歩く。
「私達の取材はいつも大変なのよ!暑い寒いは常識よ!」小南が微笑みながら美沙に言う。

殆どの家は不在で、一軒だけ老婆が出て来て「何か?」と三人を見て言った。
風体から八十歳は既に過ぎている様だが、言葉は比較的しっかりしている。
「お婆さん!この寺崎食品さんって何故倒産したの?」
「繁盛していたのに急に営業を辞めたのだよ!毎日沢山の車がこの家の前を走って品物を運んでいたよ!」
「社長さんの尾崎保さんは?」
「保さんは亡く成られたよ!もう三年以上も前だ!」
「それで会社がおかしく成ったの?」
「その少し前から、急に暇に成って従業員のパートさんも大勢辞めたのよ!」
「寺崎さんの自宅は?」
「息子さんが一人いらっしゃったが、何処に行かれたのか知らないよ!勤めていた従業員さんに尋ねた方が私より知っていらっしゃるでしょう」
「と、言われても従業員、、、、、」
「小南先輩!私の父の会社にも寺崎食品の従業員さん働かれている様です!父に聞いてみます!」
その後老婆に聞いた寺崎食品の社長の自宅に向ったが、既に息子貢の消息も不明で近所の人は全く知らないと言った。
既に表札は他人の名前に変わっていた。
結局、社長の寺崎保何故亡く成ったのか?病気だった事は判ったが、三人には何か別の事が有る様な気がしていた。

数日後三人が旧寺崎食品の工場跡に行くと、柵を取り払う業者が数人来ていた。
梶谷不動産の看板が設置されて、作業員に尋ねると「この駐車場には保育園が出来て、工場跡地にはマンションが建設される事が決まったのですよ!」
「この土地は元々寺崎さんの物でしょう?」
「寺崎って誰だ?保育園は島村さんって方で、マンションはそのまま梶谷不動産が建設しますよ!」
「梶谷不動産ってこの近くなの?」
「大阪ですよ!」
「遠い不動産屋が持っているのですね!」
それ以上の事は聞く事が出来ずに、三人は夕方信紀の紹介で元寺崎食品のパートだった人二人に会う事に成っていた。
五十過ぎの二人の叔母さんに「いつも、父がお世話に成っています」とお辞儀をする美沙を見て「主任さんにこんなに綺麗なお嬢さんがいらしたの?」驚いて顔を見つめる二人。
小南と木村を紹介すると早速質問を始める小南圓。
寺崎食品の倒産理由を尋ねると「社長のお父さんが病気に成って入院したのを切っ掛けに、一気に坂道を転げてしまいました」
「寺崎さんの家族は?」
「お爺さん、社長さん、奥さん、息子さんの四人家族だったと思いますよ」
「本人が病気なら判りますが、お爺さんの病気で?」
「会社は忙しくて、お爺さんも奥さんも働いていましたから、お爺さんが病気に成ったから看病とで二人抜けたのです」
「高校生の息子さんも時々手伝われていましたね」
「それ程忙しいのなら、人をもっと雇えば良いのでは?」
「それが、社長さん一定の人しか雇わないのですよ!」
「違うわ!雇えないと聞いたわ」町田が横から口を挟んだ。
「そのお爺さんは?」
「亡く成られましたね、その後奥さんとも離婚!一気に仕事が減りました」
「何処の仕事を主にされていたのですか?」
「今の私達と同じですよ!だから因果を感じているのですよ!」
「今の仕事と同じ?練り製品でしょう?」美沙が不思議そうに尋ねた。
「いいえ、販売先が同じモーリスだったのですよ!」
その言葉に美沙の顔色が大きく変わって絶句していた。

お金の融資、工場拡張と次期頒布会と立て続けで優遇をされて、支払いサイド百二十日を受け入れる契約書に調印をしてしまった京極社長。
JST商事のサイドは六十日で、千歳製菓の現金資金繰りは一気に悪化してしまう。
約二ヶ月から三ヶ月分の運転資金の調達を余儀なくされる。

翌日本社に小南が十社の取引先がモーリスなのですか?と尋ねると「まだ全ての調査は届いていないが、二社は殆どモーリスとの取引のみの会社だった」
「寺崎食品の取引は殆どモーリスでしたので、他の七社も判明したら教えて下さい」と頼み込む小南。
東京のこの企画の編集部長小島は、その小南の問い合わせを聞いて「早くも気づいたか?モーリスに知られるのは時間の問題か?」と呟いた。

自宅に帰って「お父さん!紹介して貰ったパートさんの勤めていた寺崎食品も、殆どモーリスの仕事をしていたって知っていたの?」
「えっ、寺崎食品って練り物の会社で、天ぷらとかゴボウ天、かまぼこも作っていたけれど、モーリスと取引が有ったのか?」
「有ったのか?では無くて、殆どがモーリスの仕事だったらしいわ」
「本当なのか?」
「小南先輩が本社に尋ねたら、十社の中で二社も同じくモーリスだって!」
「他の七社は違うのなら、偶然だろう?」
「違うのよ!他の七社の調査報告が届いて無いだけなのよ!私は多分全てモーリスだと思っているのよ!」
「どう言う事だ!それって最近倒産した会社の事情の特集記事では無いのか?」
「私は多分、企画部長は知っていてこの企画を立案したと思うのよ!」
「何の為に?」
「モーリスと云う大企業に食い物にされた中小零細企業ってタイトルが目に浮かぶわ」
「おいおい、美沙恐ろしい事を言わないで欲しい!今お父さんの会社もモーリスとの取引が増大しているのだよ!噂では工場拡張の目処が出来たって聞いた」
「工場拡張?今の工場を拡張って?空き地無いの、、、、、」
「工業団地に第二工場建設って話も有るがな!」
「待って!確かお父さんの工場の横って保育園よね!」
「そうだよ!のぞみ保育園だ!」
「判った様な気がする!ありがとう、明日確かめて来るわ!」
そう言うと自分の部屋に行く美沙。

翌日寺崎食品の跡地に向った三人だったが、作業員の姿は見えず確かめる事は出来なかった。
「あの不動産屋に電話をしてみましょうか?」小南が言うと、直ぐに携帯で看板の電話番号にかけた。
すると「何処の場所でしょう?沢山所有していますので場所は?」
名古屋の住所を尋ねると「マンションは来年建設予定ですよ」
「マンションではなくて、保育園の建設なのですが?」
「保育園の建設は当社では判りません!その様な建設の予定はございません!」で電話が切れた。
「既に持ち主が変わっているのかも?」
「登記簿を見に行くわ!二人はのぞみ保育園の取材に向って!」
美沙の話したのぞみ保育園を寺崎食品の跡地に建てるのなら、モーリスが父の勤めている会社に何か仕掛けているのでは?の疑問を投げかけたからだった。
小南圓は「私達は過去を調べて記事にしなさいと言われたけれど、生々しい現実を取材出来るかも知れないわ!」そう言って張り切った。
全国で三人一組の編集取材をしているので、もしもモーリスの事が取材の中心なら、この生々しい現実は最高の記事に成ると小南は思っていた。

千歳製菓の横の路地にタクシーを止めて、のぞみ保育園に向う二人。
早速カメラのシャッターを押す木村が「結構大きな保育園ですね!」
「五百坪程在りますね!」
鍵のされている扉の前で「すみません!」と大きな声で呼びかける美沙。
少し離れた場所から美沙を見つけて、歩み寄って来たのは満里奈だった。
「何方様でしょう?子供さんに用事でしょうか?」
園児の母親にしては若くて美人の美沙と、中年の木村の二人に怪訝な顔で尋ねた。
「園長先生にお目に掛りたいのですが?」言いながら名刺を差し出す美沙。
「ウィークジャーナル?週刊誌よね!園長先生は外出していますけれど奥様なら」
「奥様にお目にかかりたいのですが?」
話をしている最中に、向こうから島村郁子が美沙に気が付いて歩いて来た。
「どちら様でしょう?」
名刺を差し出す美沙と木村に「週刊誌の記者さんが保育園の取材でしょうか?」
「いいえ、少し向こうの寺崎食品の跡地に建設される保育園は、この保育園ですか?」
「えーー」驚きの表情に成って「まだ何もしていないのに、ご存じなの?何か問題でも有るのですか?」
今度は郁子が不安な表情に成って、もっと詳しく教えて貰う為に招き入れる。
園長室で「率直にお尋ね致しますが、モーリスから保育園建設のお話が有ったのですか?」
美沙の質問に首を傾げて「モーリスって何でしょう?」全く初めて聞いた感じで聞き直す郁子。
「モーリスって会社は大阪に在って、通販とか頒布会をしている大手の会社です」
「はあ、その様な会社は全く存じませんが?」
「保育園の移転の話は何処から聞かれましたか?」
「現場で柵を片づけていた業者に聞きました」
「私は何度か現地を見ましたが、保育園には立地は良いと思いました」
「隣にマンションが建設されたら、それ程良い場所だとは思いませんが、車も多く成るでしょうし、園児には良い環境では無い様ですが?」
「えー、マンションが隣に出来るのですか?聞いていないわ!公園用地に成ると言われたのよ!嘘でしょう?」驚く郁子は、携帯で園長を呼び出し始めた。
「土地は梶谷不動産の所有なのですか?」
「違いますよ!園長の所有ですよ!」
「この保育園の土地と交換されたのですよね!」美沙が尋ねる。
「何か問題でも有るのですか?週刊誌の取材を受ける様な事が?」
「いいえ、私達は寺崎食品の取材をしているのです。すると跡地がのぞみ保育園に変わると聞いたので取材に来たのです」
「寺崎食品さんから土地を買ったのでは有りません、梶谷不動産も知りません!」
「えっ、梶谷不動産では無いのですか?」
「荒井興産って云う不動産屋さんから、譲り受けてここの土地もその荒井興産の持ち物に成る筈ですよ!」
「ここの跡地は隣の千歳製菓さんに譲られたのでは?」
「いいえ、千歳製菓さんは荒井興産に借りる筈ですよ!」
ややこしい話を聞いて保育園を後にする二人は、小南圓と合流して先程の話の裏付けの様な登記簿謄本を目にした。
二千年に寺崎保から、荒井興産の所有に変わっているが最近半分強を梶谷不動産名義に変わっていた。
「今頃、園長が戻って荒井興産に抗議の電話をしているでしょうね、公園だと言われた隣がマンションでは保育園としても予想外でしょうね」
「でも別の会社なのだから、梶谷不動産は話をしないでしょう?」
「騙されたのでしょうね!」
その時、先程の島村郁子が美沙の携帯に電話を掛けて来て「役所にその様な人は居ません!その様に言われました!騙されたのです!記事にして荒井興産を何とか、、、」で横から園長が電話を切った様に途中で切れてしまった。
「のぞみ保育園の土地を買収する為に、偽の役所の職員を仕立てた様だわ!悪質な不動産屋だわ」小南圓が怒る様に言った。
「小南さん!私達はこれからどうしたら良いでしょう?寺崎食品の取材だから保育園は関係無いでしょう?」
「でも第二の寺崎食品に成るのが千歳製菓なら?取材する価値は有るわ!美沙のお父さんの会社だから尚更気に成る」
木村が「梶谷不動産と荒井興産、そしてモーリスとの関係を調べたらどうでしょう?」
「そうね、でも寺崎食品の倒産の謎と息子貢の消息も調べ無ければ駄目よね」
「先輩、私は父の会社も有りますから一人でこの絡繰りを調べますので、二人は寺崎食品を追って下さい」
「えっ、美沙一人で大丈夫?」
「大丈夫です!父に助けて貰います!保育園の事と会社も気に成りますから、今モーリスとどの様な取引に成っているのかを調べて見ます」
「そうよね!モーリスに食い物にされて十社が倒産していたのなら、お父さんの会社も狙われている?」そう話した時、本社から先日の答えが連絡されてきて小南の顔色が一気に変わった。
「美沙!頑張って!」
「どうしたのですか?小南先輩!」
「私達が取材している十社は全てモーリスと取引が有ったのよ!」
「えーーーー」「えーー」二人の声が裏返って叫んだ。
「特集記事も大手頒布会の謎!ってタイトルらしいわ!だから美沙はお父さんの会社を守るって云うか、取材で生々しい姿を記事にするのよ!十一番目に成らない保証は何処にも無いからね!」
「は、はい!頑張ってみます!」
「明日から手分けして、情報を持ち寄って三日に一度話しをしましょう!木村さんは不動産業者の調査、私は寺崎の家族の行方を追うわ!」

翌日、荒井興産の住所に向う木村だが、小さな名古屋駅前のビルの一角に先客が来て応接で大きな声が聞こえた。
「週刊誌の取材の方がお越しですが?」入り口横の応接に行く女子事務員。
扉が開くと「島村さん!来客ですから、少しお待ち下さい!」の声が聞こえた。
小太りの頭の禿げた男が応接から出て来て「ウィークジャーナルの記者さんが、私共に何か?用事ですか?」
「はい、今のお客様はのぞみ保育園の島村園長さんでは?」
「えっ、貴方か保育園に変な話をしたのは?」
「私は保育園建設現場の作業員に聞いた話を、、、、、」
「それが余計な話と言うのですよ!」
「でも市の職員が偽者だったのでしょう?貴方が連れて行ったのでしょう?」
入り口での話が聞こえたのか、応接から島村園長が出て来て「昨日の週刊誌の方ですか?これですよ!この名刺の男は役所には居ない!偽者ですよ!」
「奧の部屋に行きましょう?この場所は迷惑だ!」そう言って二人を応接に連れて行く荒井。
「正直に言おう!私も騙された様だ!申し訳無い!」急に下手になる荒井。
荒井は梶谷不動産が役所の男を連れて来て、公園用地に売って欲しいと交渉に来たと説明した。
自分はその桐谷と云う男を信用して、のぞみ保育園の代替え地として勧めたのですと説明した。
「保育園の横が市の公園なら最適の場所だと、荒井さんが勧めに来たのですよね!」
「そうです!千歳製菓の京極社長に以前から頼まれていまして、捜していましたら最高の立地条件の土地が在り、しかも公園が出来ると聞いて島村さんに案内したのですよ!」
「寺崎食品から荒井さんが購入されていますよね!」
「は、はい」
「最近、梶谷不動産に売却されていますが、公園用地ですか?」
「そうです!丁度保育園と公園なら良いと思いまして売却しました。島村さんに桐谷さんを連れて紹介に行ったのも私です。まさか偽者だったとは?」
「園長!私が一度大阪の梶谷不動産を調べて来ますので、またそれから話し合うのは如何でしょう?」
「私も一緒に行きたい心境ですが、宜しくお願いします」
二人は荒井の説明を半信半疑で聞いて、荒井興産を後にした。
登記簿上は寺崎保から荒井興産に渡り、一部が梶谷不動産の所有に成っている事が判る。
「これはどちらかの不動産屋が嘘をついていると思いますね!」
「でも市の公園とマンションでは大きな違いですよ!既に契約は終ったのでどうする事も出来ないでしょうね!」島村園長は荒井興産を出ると、木村に不安な胸の内を明かした。
「保育園の移転の後にマンション建設に成れば、工事の関係で危険も多いですよね!移転はいつなのですか?」
「平屋の建物ですから、三ヶ月後には完成します!その後旧の保育園の取り壊しも直ぐに始まると思います」
「千歳製菓さんも工場の拡張の予定が有るので、伸ばせないでしょうからね」
「多分難しいでしょうね!」
「何故?ウィークジャーナルの記者さんが、保育園の建設とかの取材をされているのですか?私達の保育園の様な、、、、」
「いいえ、私達は最近倒産した企業の調査を行っているのです」
「寺崎食品さんは三年以上前でしょう?」
「そうですが、我々は本社から数社の企業の取材と調査を命じられて、その中の一社が寺崎食品だったのです!」
「でも、寺崎食品さんとは私達の保育園は全く関係が無いと思うのですが?」不思議そうに尋ねる園長。
「はい、一応は関係無いのですが、もしもこの不動産屋が寺崎食品と関係が有ればと思って調査を始めました」
歩きながら二人は話して、木村は明日大阪の梶谷不動産に取材に行くので、結果を報告する事で別れた。
荒井興産の社長は直ぐさま梶谷不動産に連絡をして、偽の桐谷の事が週刊誌の記者に知れてしまったと話した。
梶谷社長は直ぐに新和商事に連絡を入れて今後の指示を待つ事に成っていた。

その話はモーリスの松永部長の元に連絡が届いて、管理部で緊急会議が行われたのは深夜だった。
「ウィークジャーナルの記者が何故?急に現われたのだ?」
「寺崎食品の跡地で問題が発生した訳でも無いが、保育園の移転問題で何故週刊誌の記者なのだ?」
「明日、その記者が梶谷に来るそうです!」
「沢山のトンネル会社を準備しているので、普通では我社まで辿り付けないのですが、週刊誌それもウィークジャーナルが絡んでくると面倒だな!」
「マンション建設を凍結しますか?」
「ウィークジャーナルの意図を至急調べてから、対策を考えよう!」
「最悪!マンション建設は凍結だ!」松永部長は週刊誌の取材に神経を尖らせていた。

自宅で美沙は父信紀にモーリスとの取引状況を尋ねて「何故?その様な事を尋ねるのだ?」と驚かれていた。
美沙は寺崎食品以外の九社も全てモーリスと取引が有った会社だと説明した。
「何か変な話が無かったの?」
「今は担当離れているから判らないけれど、最初は三十日サイドの支払いが六十日に成ったのは知っているけれど、普通だからな!それ以後伸びたのかは聞いていない」
「他には?」
「モーリスがどうとかより、会社はモーリスと取引をする為に不採算のアイテムを全て製造中止にしたな!」
「今会社の主力はモーリスなのね、もしもモーリスとの取引が無く成れば終りなの?」
「昔は無借金経営だったし宮代会長が沢山の資産をお持ちだから、当面凌げる状況だったが、今は増資もしたので状況は変わっただろう?」
「モーリスの実体に付いてよくご存じの人は居ないの?」
「美沙の週刊誌はモーリスの商売を暴いているのか?」
「そうでもないけれど、その様な雰囲気に成っているのよ」
「あっ、そうだ!神戸の小諸物産の社長に尋ねたら、モーリスの事は教えて下さる!お力に成れずに廃盤に成ったのでお怒りだろうが、多分モーリスの事なら教えて下さると思う!」
「お父さんが左遷された原因の介護関係の会社ね!」
美沙は現状を考えれば一刻も早く真相を掴んで、もし千歳製菓も同じ道を歩んでいるのなら助けたいと思った。

翌日小諸物産にアポイントの為に電話をすると「千歳製菓?既に取引は終った!前の営業課長の娘さんが週刊誌の記者に成って、取材をしたいって虫の良い話だな!それもモーリスの話?面白可笑しく褒め称える記事を書くのだろう?」
「社長さん!父は、父は商品の存続を会社に強く進言して営業を外されました!今会社はモーリスの仕事をする為に、隣接の保育園の用地まで買収しています!父は、父は介護の施設に納入されている御社の商品を最後まで、、、」美沙は勢いで喋ってしまい。
「、、、、、、、」小諸社長は絶句した。
「そうだったのですか?知らなかった!赤城課長さんは、頑張ってくれたのですね!」
「もう課長では有りません!工場の現場主任で元気なく日々過しています!」
「えー、現場の主任に、お気の毒ですね!判りました!明日にでも来て頂ければ私の知っている事はお話します。申し訳無かったとお父さんに伝えて下さい」
翌日話を聞ける様に成った美沙。

一方小南圓は寺崎保の奥さん志乃を岡崎市に発見して向っていた。
実家の近くにひっそりと暮して、名前も寺崎から水野志乃に変わってパートで細々と生活をしていた。
小南はパートの終る時間を見計らって、小さな総菜工場の近くで待っていた。
志乃を捜して話し掛けると、驚いて自転車に乗って逃げ帰ってしまい失敗をしていた。
夜再び自宅を訪れると「週刊誌の方が私に何の用事でしょう?」
「寺崎食品さんの事でお聞きしたいのですが?」
「寺崎とは随分前に離婚していますので、何も存じません!今頃週刊誌の方が寺崎の事を調べて何をなさるのですか?」
「モーリスとの取引をお聞きしたいと思いまして!」
「モーリス?その様な事なら尚更お話は有りません!二度と聞きたく無い名前です!悪魔です!帰って下さい!」
「あの、、、」と言う間も無く、扉を閉め切る志乃。
モーリスと聞いてのあの怒った様子は唯事では無いと思ったが、それ以上何も出来ない小南。
翌日は実家に行って話を聞こうと向うと、老夫婦が庭で草むしり中だったので「すみませんが?」と話し掛けた。
「お孫さんの貢さんはいらっしゃいますか?」
モーリスの話で言うと昨日の様に成るので、小南は作戦を変更していた。
「貢は大阪に去年から仕事で行ったから、ここにはおりませんが何か用事かな?」
「そうですか、ご住所とかは判りませんか?お会いしたいのですが?」
「婆さん!貢の電話番号聞いていたじゃろう?このお姉さんに教えてあげなさい」
何の疑いも持たない老人は簡単に孫の携帯番号を小南に教えた。
早速電話をするが、留守番電話に変わって貢は電話には応対しなかった。
その後二度程掛けてみたが、全く同じで小南の着信に返信も無かった。

小諸物産に行った美沙は、小諸社長に行きなり丁寧に謝られて驚いて応接室に通されていた。
美沙は小諸社長に色々聞く為に、自分の知っている事を全て話す気持ちだった。
「お美しい娘さんがいらっしゃったのですね!」
開口一番小諸社長は美沙が美人で驚いて、いきなり口走っていた。
「ありがとうございます!当社は近日中に特集記事で大手頒布会の謎!ってタイトルの記事が出る予定に成って取材をしています」
「えっ、ウィークジャーナルにその様な特集が出るのですか?これは驚きですね!」
「実は全国で十社選ばれて、我社の記者が取材に行って、その全てがモーリスとの取引をしていたのです」
「十社は御社の方が選別されたのですか?」
「本社の企画部が選んだ最近五年以内に倒産若しくは廃業した業者ですね!」
「じゃあ、私が聞いた話は本当だったのですね!」
「社長さんは何方かにお聞きに成ったのですか?」
「漬け物会社の部長さんでしたが、ご本人もこの商談が最後で退職されると話されました!それを聞いていましたので、商談も上手く運ばなかったと思いますがね」
「その漬け物会社は何処に有るのでしょう?」
「京漬の部長さんで、泉田さんとか言われましたね!」
「その会社は今も有るのでしょうか?」
「はい、今も京都で商売をされていますよ!モーリスにも商品は納入されている様です」
「じゃあ、何も無いのでしょうか?」
「私はそれ以後その部長さんにもお目に掛っていませんので、判りませんが七年か八年まえでしたね」
「小諸社長さんはその話だけで父に取引に注意とおっしゃったのですか?」
「いいえ、その話を聞いたので、私も気に成って調べました。すると部長さんの話された事が実際有りました」
「それはどの様に調べられたのですか?」
「頒布会を数社買いまして、メーカーに尋ねました。すると教えて下さった会社が数社有りまして、実体が判りました」
「態々会員に成られて調べられたのですか?」
「私も取引をする気が有ったのに、反対されて疑心暗鬼に成りましたので、調べる気に成りました。でも調べる方法が無かったので数社の頒布会を申し込みました。赤城さんの近くの会社の品物も有りましたよ!そこの奥さんが確か詳しく教えて下さいました!」
「それってもしかして、寺崎食品さんですか?」
「そうです!寺崎食品の奥様がモーリスとは取引をしては駄目だと!強くおしゃいました!」
「えー、既に寺崎食品は倒産して跡形も有りません!社長はお亡くなりに成っていました。同僚が奥様に取材に行っています」
「本当だったのですね!私の聞いた話が現実に成ったのですね!」
「どの様な話だったのでしょう?」
「奥様の話では毎日家族で仕事をして、ぎりぎりで誰かが病気に成ったらお終いに成ると話されました」
「家族でぎりぎり?確かお爺さまが病気に成られたと聞きました」
「それですね!お爺さんの病気が発端で、、、、お話の通りに成ってしまったのですね」
「それは家族で働いて人件費も節約していたと云う意味でしょうか?」
「多分、モーリスに支払いサイドを伸ばされて、資金繰りが毎月ぎりぎりだったと思います!」
「支払いサイドって通常は何日ですか?商売の事は良く判らないのですが?」
「普通は末締めの良く末払いが普通ですが、聞いた話ですとモーリスは百二十日払いをする様ですね」
「それって半年先にお金を払うって事ですよね!それで寺崎さんは苦しめられて、家族総出で働いていたのですね!家族が病気に成って困難に成ったのですね!」
「だがモーリスを裁く事は出来ないでしょうね!法律に触れる事は何もしていないのですからね!赤城さんの週刊誌で内部告発者でも出れば、実体がもう少しはっきりするでしょうが、我々外部の人間では中々絡繰りが判りませんね!」
「私が必ず暴いて見せます!父の為にも千歳製菓を救わなければ成りません!」
「私が思いますには、千歳製菓は既に相当深みに填まられている様に思いますよ!旧来の商品、取引先が殆ど消滅して回復不可能な状況に陥っている様に思いますね!特に今の社長さん親子は大きな失敗に進まれています!」
美沙は小諸社長が教えてくれた京都の京漬を尋ねて、一度実体を聞いて見る事にした。
同時に明日三人が情報を持ち寄るので、今日の話もする予定にした。

小南は何度も貢の携帯に電話をしたが、全く反応が無いのでもう一度母親に会おうとパート先に行ったが、休みで自宅にも姿が見えない状況に成っていた。
大阪の梶谷不動産に取材に行った木村も、担当者が出て来て「マンションの建設は有りませんよ!工事の者が現場を間違えた様ですね!申し訳有りません!」と言った。
「役所の桐谷と名乗る男が荒井興産の人と一緒にのぞみ保育園に行ったのですが?御社の紹介だと聞きましたが?」
「とんでもない男ですね!当社も騙されました!桐谷は他の当社の物件も役所の公園にしたいと、図面まで持参したのですよ!」と惚けてしまい被害者だと言って関与を否定した。
木村はそれ以上何も話せずに、梶谷不動産を後にした。

救済方法

翌日お互いの情報を持ち寄り検討に入った三人は、現状報告を本社に送って他の取材の人達の情報を貰う事にした。
十社のリストがしばらくして送られて来て
①酪北ファーム  北海道帯広市    農作物
②有田陶芸社   佐賀県有田市    陶器
③松村酒造    福島県福島市    日本酒
④東園芸     高知県高知市    園芸品
⑤寺崎食品    愛知県名古屋市   練り製品
⑥平尾水産    鳥取県境港市    干物、魚
⑦みどり青果   岡山県備前市    果物
⑧丸田工芸    広島県安芸市    工芸品
⑨吉高フーズ   山口県下関市    ふぐ、鮮魚
⑩スタイル日高  東京都新宿区    婦人服
「本当に色々な業種が有るわね」
「この中に小諸社長が買われた会社が有るのか、聞いてみましょうか?」
「そうね、京都の京漬に行くのなら、このリスト見せれば何か判るかも知れないわね!」
「私は、明日もう一度寺崎の奥さんの実家に行ってみるわ!」
「俺は引き続き、建築関係を調べて見る!何処かで荒井興産と梶谷不動産がモーリスと繋がっていると思うからな!」木村はもう少し荒井興産を調べたい気分だった。

松永部長は新和商事の社長新垣を呼びつけて、ウィークジャーナルの記者が嗅ぎ廻っているが、土地関係で唯一危険が迫っているので注意する様に伝えた。
新和商事の表向きは土地のブローカーだが、暴力団関係者ともコネクションが有り過去にも事件を闇に葬った事も有る。

京極社長は保育園の敷地に工場増設が決まり、頒布会納入に目処が出来て上機嫌に成っていた。
唯頒布会開始と同時に支払いサイドが百二十日に成る為、その事だけが気懸かりに成っている。
頒布会開始の二ヶ月前には殆どの取引先は整理されて、千歳製菓はモーリスとJST商事のテーマパーク向け商品の依存が八割に成る予定だ。

翌日美沙は取材の名目で京都の京漬を訪れていた。
大きな漬け物専門の会社で、広報担当の人が応対をして「ウィークジャーナルさんが、私達の会社に取材に来られるのは珍しいですね」そう言って微笑む。
「ここの部長さんで泉田さんって方がいらっしゃったと思うのですが、その方のお住まいとかお判りに成りますか?」
「えっ、当社の泉田部長ですか?数年前に退職した者をご存じでしたか?でもお若い方なののに変ですね?お父様がお知り合いでしたか?」不思議そうな顔をしている担当者。
「御社はモーリスさんとお取引が沢山されているとお聞きしましたが?」
「はい、結構な商品を販売して頂いておりますが、その他の取引先も沢山ございます」
「大変お答え難い質問ですが、支払いサイドは長いのですか?」
「長い方ですね!短いとは言えませんね!先程質問された泉田が部長の時に取引が大きく成ったのですが、泉田部長は苦労されて商談されていました」
「じゃあ百二十日にとかのサイドですか?」
「ははは、百二十日サイドで商売している会社有るのですか?食品は長くても六十日でしょう?勿論モーリスも六十日ですよ!長いでしょう?」
「は、はあ!」美沙は不思議に思った。
商品の説明を聞いて取材の格好だけして、その泉田部長の自宅を訪問する事にした。

泉田元部長の自宅は福知山に有るので、日帰りは難しく成ってしまった美沙。
山陰本線に乗って福知山に向うと、駅前の宿泊場所を見ながらタクシーに乗って泉田の自宅に向った。
京漬の担当者が事前に電話をしてくれていたので、泉田元部長は美沙を待っていた。
田舎の農家で大きな自宅、家の庭先では子供の声が聞こえるので、孫が遊んでいる様だ。
「ウィークジャーナルの記者さんが、この様な田舎まで何の取材でしょうか?それも若い娘さんが一人で?」
美沙は小諸社長の事を話したが、直ぐには思い出さずに「記憶が無いのですが?」
「泉田さんがモーリスでお話に成られた方で、泉田さんの話で取引を控えたとおっしゃいました」
しばらく考えて「ああー思い出しました!介護関係のお仕事?老人ホームとかの方でしたよね!」と漸く思い出した泉田。
「今日お伺いしたのはそのモーリスに付いてお聞きしたいのです。忠告をされていた京漬さんが今もモーリスと普通に取引されているのに驚きました」
「ウィークジャーナルの記者さんが何故モーリスの事を?」
「実は特集でモーリスを取材しているのです」
「頒布会の事を賞賛する記事ですか?その様な記事に私の話を載せて頂くのは遠慮させて頂きます」
「違います!実は我社が特集しているのはこの五年間で倒産した会社で、モーリスと取引が有った会社を取材しているのです」
「何!モーリスと取引をしている会社で最近倒産した会社が十社も有るのか?」
「実は私の父が勤めている会社も最近モーリスと取引を初めて、従来の取引先を削減しているのです。何とか防がないと危ないのでは?と思っていまさす」
「お父さんの会社がモーリスに狙われた?従来の取引先を整理した!それは危険だ!もう間に合わないかも知れないが、直ぐに止めなさい!危険だ!」
「じゃあ、京漬さんは何故モーリスと取引をされているのですか?」
「それは同士が助けてくれたからだ!京漬もモーリスの術中に填まる寸前だった。漬け物協会の同士が助けてくれて、商品を融通してくれたので、京漬は取引先の整理もアイテムの整理もせずにモーリスの商品も供給したのだよ!その為モーリスの過度の条件を全て蹴って公正な取引が続いている」
「工場の増設とかはされていないのですか?」
「モーリス向けの商品はその後増やしてはいないと思う、従来のお得意様向けの生産の為には設備は増強した様だ!」
「切り抜ける秘策が有ったのですか?」
老人は薄らと笑みを浮かべて、遠い昔を思い出す様に天井を見つめた。
「当時私は一般に販売する商品を組合の有志に頼み廻って、製造をお願いして廻りましたが、何処も引き受けては貰えなかった。それで逆の発想でモーリス向けの商品の半分程度を同業他社に頼み込んで製造して頂きました。今もモーリスには当社の商品として納品していますが半分は同業他社の製品です。実際社内ではモーリスの商品を作る事を優先しようの意見が多かったのですが、モーリスに偏ってもしも取引が無く成ったら?と意見を言いまして社長の英断で今の状態を確保したのです。その為京漬け物に関しては、モーリスは他社にも商談する事が出来ずに、その後も京漬が販売をしているのです」
「同業他社の品物が沢山京漬さんから納入されているのですね」
「あの時、当社も同じ様にモーリスの商品を作る為に、一般店の取引を辞めていたら、モーリスの術中に填まり今頃は奴隷に成るか?倒産だったでしょうね」
「奴隷ですか?」
「全国に沢山の奴隷の企業が有ると思いますよ!倒産したのは十社ですが、奴隷はその数倍有ると思いますよ!」
「そんなに不幸な企業が沢山有るのですね!その為にも我々が書く記事は重要ですね!」
「いいえ、その逆も考えられますよ!貴女方に記事でモーリスの売上げが減ると、一気に倒産してしまうからです!」
「あっ、そうだわ!悪い記事が出ると客は買わなく成るので、売上げが急速に減少して奴隷企業は一気に倒産?」美沙は自分達の記事でモーリスの売上げが大きく減る危険に危惧していた。
美沙はこの問題は単なるモーリスの摘発記事では、また被害者が続出すると思った。
駅前のホテルに泊ろうと捜していると、急に携帯が鳴り響き「大変よ!木村さんが交通事故に遭ったのよ!」小南圓の悲痛な声が携帯に響く。
「どの様な事故ですか?身体は?」
「全身を強く打って今、名古屋市内の病院に運ばれたのよ!医者の話では命は大丈夫の様だけれどね!」
「良かったわ!相手は?」
「捕まってないわ!ひき逃げよ!」
「えーひき逃げ?直ぐに帰ります!」
福知山で泊って翌日神戸の小諸社長に会う予定だったが、京都まで出て最終に近い新幹線で名古屋に戻る事にした。
新幹線の中でも美沙は胸騒ぎが止らない。
理由はモーリスが自分達の取材を嗅ぎ付けたので、木村さんが狙われたのでは?の不審が大きく広がっていた。
木村さんが狙われたのは、もしかして土地に関する事で都合の悪い事が有るのでは?もしもそれが原因なら別の部分から、モーリスを攻める事が出来ないのだろうか?
全国の全ての頒布会がモーリスと同じ様な事をしている訳では無いだろう?
我々の記事で窮地に成る納入業者を救えないのだろうか?
美沙は色々な事を考えながら名古屋に向った。

のぞみ保育園には荒井興産が「マンション建設は手違いの様ですよ!ご安心下さい」
「じゃあ。当初の予定通り公園が出来るのですか?」
「いいえ、あの役所の男は偽者で、行方が判りません!」
「じゃあ、安心出来ないじゃないですか!」
「でも梶谷不動産では当面何も建築予定は無い様です!隣も買われては如何ですか?」
「そんなお金は有りませんよ!」
「千歳製菓さんに買って頂きましょうか?」
「えっ、その様な事お願い出来ますか?」
「今、営業倉庫に保管されている様なので、自前の倉庫を持たれると便利に成るのでは?勧めてもらいましよう」
「荒井さんは千歳製菓さんの事よくご存じですね!」
「いゃー、小耳に挟んだのですよ!」惚ける荒井。

だが、実際はモーリスの松永部長が苦肉の策で、冷凍倉庫を作る様に話をしていた。
大量の注文を一度に納品する場合が有るので、常に在庫が必要に成ると言った。
京極社長は既にモーリスとの取引を前提に、取引先も製造アイテムの整理を進めているので後には戻れない。
今後近くと言っても往復のトラック便の費用、倉庫代金を考えると倉庫の建設は非常にメリットが有る様に思えた。
土地は借りて上物だけを建設すれば、比較的安価で倉庫が建てられると持ちかけた。
京極社長は場所が一キロ程度で、のぞみ保育園の転居先と同じだと聞いて一気に乗り気に成った。
その結果、工場増設用地も荒井興産の持ち物、今度の冷凍倉庫は梶谷不動産の持ち物に成る。
着々と罠に落ちていく千歳製菓。

松永部長と村井課長の話では、既に千歳製菓で作らせる品目が想定されて、納入価格も算定されている。
サイドは百二十日、人件費の計算、設備の費用等も計算されている。
勿論京極社長の給料も既に計算されていた。
「宮代会長には引退して頂く事にしよう!」
「宮代会長の財産も頂かなければ今回の仕事は終りませんが?」
「増資で少し使わせたが、まだまだお持ちだからな」
二人は計画通りに進んでいる事を確認していた。
「困るのはウィークジャーナルだよ!調べた感じでは本社の指示で最近我社と取引をしていた会社を調べている様だ」
「だいj大丈夫でしょうか?」
「一番の懸念は例のマンション建設を悟られた事だったが、京極社長に倉庫の建設で切り抜けたので大丈夫だろう!」

翌日木村カメラマンは大腿骨の骨折の重傷だが、それ以外は打撲で全治二ヶ月の診断が出た。
「すまん!当分取材には出られない!」
「大丈夫よ!若いカメラマンの男の子を廻して貰えるから、ゆっくり休んで!マンション用地はもうマンションは建設しない様だわ!」
美沙は昨日の泉田の話を二人に喋らなかった。
他の企業の連鎖倒産が恐かったのだ。

「私、明日もう一度神戸に行きます!それと父の会社と共同企画の玉露堂にも話を聞きに行きたい」
「一月から始まるのよね!千歳製菓と玉露堂の共同企画」
「ネットで調べても、江戸時代から続く由緒有るお茶屋としか書かれていないのです。一般には全く販売していない様なのです」
「格式が高いのね!お父さんの会社の事を守らないとね!新人の三木君連れて行く?」
「事故の事も有るから、ガードマンとして付き合いますか?」

翌日京都の玉露堂に三木と一緒に向うと「当社は週刊誌の取材とかは受けないのですが?」といきなり言われた。
「今度モーリスさんの企画で、名古屋の千歳製菓さんと共同で頒布会をされるそうですね」
その言葉に顔色を変えて「な、何故世間に出ていない事を知っているのですか?」驚きながら答える。
「御社の取引先に付いてお聞きしたいのですが?」
「一般のお客様ですが?それが何か有るのでしょうか?」
「今日は富田社長いらっしゃいませんか?」
「富田は今でていますが、週刊誌の方にお話する様な話は何も有りませんよ!」
「天保年間から続く由緒有るお茶さんが、何故頒布会での販売をされているのでしょう?」
「それは自由だと思うのですが?週刊誌の方に色々言われる事では無いと思いますがね」
事務所にもお茶の香りが漂って、お茶の会社だと誰にでも判るが、事務所の従業員が数人で、机も極端に少ないので、営業の人も殆ど居ないのだと美沙は感じた。
「販売エリアは全国ですよね!」
「は、はい!勿論です!」
「お見かけすると営業の方は少ない様に思うのですが?」
「少数精鋭ですから、これで充分です!」と言った時、社長の富田が戻って来た。
挨拶をすると「どの様な取材?何も特徴の無いお茶屋だよ!」
先程の男が富田社長に耳打ちして教える。
「何処で聞いて来たのよ!まだ誰も知らない企画なのに?またモーリスの宣伝記事を書くのだな?本社の村井課長か?」そう言ってモーリスを疑う。
事実モーリスを絶賛する記事は毎月何処かのマスコミが取り上げる。
「違いますよ!私は千歳製菓で聞いたのです!」
「千歳製菓は喋りだな!今回初めて共同で販売するのに、お口が緩いのだな!確かに千歳製菓との共同企画だが、まだ内容はモーリスから聞いてないので企画内容は判らない!それでも売れる記事を書くのだろう?専門だから?」
「誤解されていますね!私達の記事はモーリスの悪行を暴く記事ですよ!」
「えーモーリスの悪行を暴く?」驚く富田社長。
「五年間でモーリスさんと取引していた会社が十社も倒産しているのです。私達はその謎を記事にするのです!」
表情が大きく変わって「十社もですか?でしょうね!我社も、、、、、」そう言って言葉を濁した。
「どうされました?」
「いいえ、お話する事は有りませんが、二年程前にモーリスを退社した優秀な男が居たのです。名前は安田俊幸って人です。その人を捜せば素晴らしい記事が書けますよ!」
「えっ、その安田って人は何処に行けば会えますか?」
「判りませんが、果物の会社で失敗して左遷されて辞めましたね!私の会社はモーリスにお世話に成っている立場ですから、これ以上は何も申せません」
「もしかして、この中に果物の会社が有るのですが?」十社のリストを見せる美沙。
「みどり青果だったかな?果樹園だったと思うけれど違うかな?」曖昧な事を言う富田社長だが、帰る時に「頑張って下さい!これ以上犠牲に成る会社は見たく有りませんからね!」急に態度が変わった富田社長。
この社長もモーリスの犠牲者の一人だと思う美沙。
「実は会社は歴史が有るが、私が色気を出してモーリスと取引を初めてから、泥沼状態にしてしまった。後悔してもどうする事も出来ないのが現状だよ!実に巧みだ!その内容は安田さんに聞けば判るだろう?頑張って下さい!」そう励まされて玉露堂を後にした。
カメラマンの三木は美沙と同時入社だが転職組で二歳年上、美沙とチームが組めたので良い気分に成っている。
美沙には全く三木は興味が無いので、仕事以外の話はかみ合わない。
「三木君!調べて欲しい事が有るのよ!今から岡山まで飛んでみどり青果の事をしらべて欲しいのよ!」
「大阪支店に聞けば良いのでは?」
「違うのよ!先程の富田社長の話は今の状況の打開に成るかも知れないでしょう?」
「確かに何か奥歯に物が挟まった様な話でしたね」
「ね!今度食事ご馳走しますから、お願い!」両手を合わせて頼まれるともう、めろめろの三木は直ぐに引き受けて岡山に向った。

美沙はその後小諸社長と神戸駅の近くで会う事に成った。
小諸社長が遠方なので気の毒に思って、会社から出て来てくれたのだ。
「態々すみません!」笑顔で挨拶をすると「美人のお嬢さんに田舎まで取材に来て頂いては申し訳有りませんからね」
「京漬の元部長の自宅に行って来ました!」
「流石は一流雑誌の記者さんは違いますね!」笑顔で褒め称えて内容を聞いている。
美沙は泉田元部長の話をして、玉露堂の話も詳しく伝えて知恵を借り様とした。
「取り急ぎお父さんの会社を窮地から救わなければいけませんね!」
「そうなのです!今私の同僚が岡山のみどり青果に向いました」
「玉露堂の話がそのみどり青果ですか?私も果物の頒布会を買いましたよ!確か桃とか梨が送られて来ましたが、みどり青果では有りませんでしたね」
「異なる果実店でしょうね、沢山業者は持っていますからね!」
「その果実店が見つかれば安田さんの行方と、モーリスの内部事情が判る訳ですね」
「父の会社も同業他社に応援を依頼して切り抜けるのは無理でしょうか?」
「モーリスに決まったアイテム次第では可能性が有りますよ!お父さんに聞いて同業他社を捜して貰えば良いと思います」
「京漬さんと同じ手法で逃げるのですね!」
「社長さんが気付けば良いのですが、兎に角アイテムを調べてからに成りますね」
美沙は今後もアドバイスを頂きたいと、丁寧に御礼を言って夜遅い新幹線で帰宅した。

カメラマンの三木は岡山の備前市に行って、みどり青果の跡地に着いて近所に尋ねて歩いたが、住民は「この場所にみどり青果の看板が出来て、一年程で廃業したのでよく判らないです」と答えた。
大阪支店の調査では、武藤と云う社長が一年程この地でみどり青果の営業をして、日本各地から果物を集めて包装して発送をしていたと書いて有る。
倒産後の武藤社長の行方は不明で、モーリスも多大な損害を被ったらしいと記載されていた。
三木から連絡を貰って「少し変ね?」美沙が三木の報告に首を傾げていた。
「何故?変なのですか?大阪支店が調査した裏付けも調べましたが、変な事は何も無いですよ!」
「モーリス程慎重に取引先を調査する会社が、何故一年程の会社と取引をしたの?変だと思わない?創業して直ぐにモーリスと取引して、一年程で倒産すると何もモーリスには得な事が無いわ!その様な事する?」
「お客様への返金とかで、相当な損が発生したでしょうね!」
「三木君!じゃない三木さん!その武藤社長の消息と、働いていた人誰か居ないか調べて貰える?」
「えーー、食事も高級料理にして下さいよ!」
「判ったわ、牛丼の予定だったけれど、奮発するわ!」
「牛丼?それは無いよ!岡山ですよ!それも備前市まで着ているのですよ!」
三木は美沙と一緒に食事が出来る事を期待して調査を続けた。

その日の夜美沙は自宅で「お父さんに相談したい事が有るの!」
「えっ、まさか恋人が出来たと言うのでは無いよな!まだ働き始めて数ヶ月で、、、」
「違うわよ!千歳製菓の事よ!」
「今は廃止商品の作り溜めをして、取引先に迷惑がかからずに取引を他社に移管して貰う様にしているが、どの様な話だ!」
「来年の玉露堂との共同企画の商品は決まっているの?」
「多分決まっていると思うが、お父さんが担当外されてからだから知らないな!それがどうした?」
「モーリスの仕事を他社で製造して貰って分散するのよ!」
「その様な事を何故するのだ!社長も常務も張り切っているのに、難しいしだろう?」
美沙は玉露堂の話、京漬の泉田さんの話を詳しくした。
そして、十社のリストを見せて信紀を説得したが「信じられない!もう間に合わない!」信紀の顔色が変わっていた。
「じゃあ、私が説明しに会社に行くわ!」
「駄目だ!仕方が無い!お父さんが社長に話してみるが、怒るだけだと思う!」
「じゃあ、商品リストだけでも手に入れて、製造して貰える工場捜しましょう」
「美沙の話が本当なら、大変な事に成る!リストが判明すれば当社には利益は無いだろうが、京漬の様に正当な取引が可能に成るな!」
その様には話したが、信紀は美沙の話した事をとても京極社長には話せないと思った。
社長の性格を知りすぎる程知っているので、その様な話を信じる人では無い。
逆に今以上に冷遇を受けて会社を叩き出されるのが目に浮かんでいた。
美沙は自分達の記事が出ると、その時点で大きな売上げ減少が見込めて、奴隷の企業は存続が危なく成る。
一体いつ記事に成るのだろう?各支店から原稿が出た時点で本社の企画部長が校正をするのだろうが、各支店からどの様な記事が集まっているのかは不明だ。
色々な事を考えると眠れない美沙。

翌日信紀は工場長の神崎に、来年度から始まるモーリスの商品アイテムを聞いて置いた方が製造計画を建てられますよと進言した。
神崎は赤城に「流石は元営業さんだ気が利くな!」喜んだが聞きに行く気配は全く無い。
翌日もその次も全く気配が無く焦る事に成る。

岡山でみどり青果に働いていた人を捜すのに苦労して、漸く一人の中年の叔母さんを捜し当てた三木。
その主婦の意外な話に驚くと、その当時何人程で働いていたのか?の質問に二十人程度で殆どがパートで正社員は、武藤社長さんと青木さんって女性だけだったと話した。
二人の消息を聞いても全く知らないと話し、取引先はモーリスのみだったと話した。
パート全員が約一年の契約で働いていたと話して、給料はこの辺りの会社の二割増しで多かったと言った。
倒産を知ったのは契約が切れて一週間後で、それまではその様な気配は全く無く、毎日沢山の出荷で追われていたと話した。
三木は直ぐに美沙に連絡をすると「それって計画的だと思わない?」
「そう言えば、パートの人は別に会社の事を悪くは言いませんでしたね」
「給料を貰っているから、何も不満は言わないのよ!もう一度その辺りを聞いてみて!」
「えーまだ聞くのですか?疲れましたよ!」
「ステーキにするから、頼むわ!」
「ステーキですか?お酒も付けて貰えますか?」
「良いわよ!頑張って!」その言葉で再び調査に向った三木。
三木は結局岡山に二日間調査の時間を要して重要な証人まで、辿り着いていた。

父の信紀も工場長に再び尋ねると「社長もまだアイテムは聞いていないそうだ!」の返事が返ってきた。
既に生産開始まで半年を切っているのに、何故アイテムの連絡が無いのか?信紀も不思議なモーリスの行動だった。
「それ本当なの?社長は知っていて隠しているとか?」美沙が信紀に詰め寄る。
「だが知らないと話しているのに、それ以上聞けないだろう?」
「担当の京極常務は何か知らないの?私に合わせてよ!」
「どの様な事で合わせるのだ!週刊誌の記者だと言っても合わないだろう?」
「常務のスケジュール調べて教えて!」
「どうするのだ!」
「ナンパするの」
「えーー」驚く信紀に平然と言う美沙は、何としても父の会社を救いたい一心だった。

翌日帰った三木をステーキハウスに連れて行く美沙。
「約束だからね!奮発するわ!何か面白い情報掴んで来たでしょう?」
「社長の武藤さんと青木って女性がみどり青果の正社員だったのですが、時々若い女の人がみどり青果に来ていたらしいのです」
「若いって何歳位の人?」
「先ずは一杯飲ませて下さいよ!」グラスを差し出すと笑顔に成った三木。
「はいはい!お飲み下さい!」ビールをグラスに注ぐ美沙。
「今日は特別暑いから、美沙さんに注いで貰うと美味しい!」
一気に飲み干してグラスを再び差し出す三木。
「早く言いなさいよ!」苛々しながらビールを注ぐ。
「美沙さんにはかないませんが、美人で三十歳位の女性らしいですよ!」世辞を言う三木。
「名前は?」
「それはパートさんも知らない様ですね!さっちゃんと呼んでいた様です!」
「さっちゃん?か名字を言わなかったのは何か秘密が有るのよね」
「流石は美沙さん鋭いです」
「先程から、美沙って馴れ馴れしくない?赤城さんと呼べないの?」
そこにステーキ肉が鉄板に置かれて、一気に食い気に向く三木。
「三木君!それだけなの?」
「それだけですよ!パートさん二人目捜すのは大変だったのですよ!」
「青木さんって女性の年齢は?武藤社長の年齢は?」
「二人共五十歳位だと聞きました!」
「自宅は何処なのよ!」
「近いって!朝も早いし夜も遅くまで仕事していたって聞いたから、間違い無いですよ!」
「子供では無いわね、五十歳位で三十歳の子供は先ず考えられないわね!他に誰か良く来た人は?」
「二回程、モーリスの若い男が来た様です!」
「どの様な感じだったの?」
「パートさんの話では三人はとても親しい感じで話していたと聞きました」
「モーリスの若い男?安田さんだろうか?」
肉を食べながら考える美沙を尻目に次々とビールを飲んで食べる三木。
「み、赤城さん!肉お替わり良いですか?」
「えっ、もう食べたの?恐いわ!」食い気に驚く美沙は自分の肉を分け与えて追加を避けた。
すっかり酔っ払った三木は「でも少しお酒が入ると一層綺麗ですね!僕ファンに成ります!」そう言って美沙を困らせる酔っ払いに変わった。
「武藤社長の住所には何も無かったの?」
「登記上は小さなワンルームマンションが住所でしたよ!」
「初めから計画倒産ね!青木さんの住所は?」
「誰も知らないと、武藤社長のマンションの近くも聞き込みましたが、誰も知らないので本当に住んでいたのか?全く判りませんでした」
「すると、武藤社長の奥さんが青木さんって事も考えられるわね!」
「登記する為にワンルームマンションを借りて、本当は武藤社長と青木さんは夫婦だとしたら?」
「会社の登記ではそこまで判りませんよ!赤城さん!歌でも歌いに行きませんか?」
「三木君は呑気よね!私は父の会社が奴隷にされるかの瀬戸際なのよ!歌なんか唄える状況では無いわ!食事が終ったら帰りましょう!」
「えーもう帰るのですか?もう少し楽しみたかったな!」
「この問題を解決させたら、ゆっくりカラオケ付き合うから、もう少し頑張って欲しいな!」
「は、はい!判りました!何をすれば良いでしょう?」
急に元気に成る三木に「私男の人をナンパするから、陰で守ってくれない?」
「えーナンパするのですか?誰を?」
「千歳製菓の常務をナンパして聞き出したい事が有るのよ!」
「お爺さんをナンパするのですか?」
「違うわ!三木君と同じ位の人よ!」
「私と同じ歳で常務なのですか?」
「親父が社長だからね!」
「親の七光りか、その様な男は駄目です!」
「どうしても聞き出したいのよ!常務が担当者だから、必ず知っていると思うのよ!」
美沙の思惑通り京極常務は企画表を村井課長から貰って持っていたが、ライバルの頒布会に知られると同じ様な商品をぶつけてくるので、十一月の製造まで内密にして、ぎりぎりで発表して欲しいと頼まれていたのだ。
その為、社長にも伝えていない京極常務だった。

信紀は気が進まないが、美沙の熱意に負けて常務のスケジュールを調べ始めた。
社内の噂でも女性に手が早いとか、恋人が複数存在するとか噂が多い。
来週東京のJST商事の吉村課長にアポをしている事が、偶然専務の酒田から耳にした。
自分の様に上手に接待が出来るのか?心配でアドバイスをしたと神崎工場長に話しているのを聞いてしまったのだ。
例の向島の芸者の処に連れて行く話が進んでいる様で、来週の金曜日の夜ジェームスと吉村課長を接待する様だ。
信紀は経理の北川碧に過去の領収書で、何処で使ったのかを聞きだして美沙に伝えた。

「東京?新幹線のチケットは会社で準備するの?」
「多分経理で準備すると思うが、美沙新幹線の中で近づくのか?悪い噂の常務だから危ないぞ!」
「そうよ!そんな危険な事はしたら駄目よ!」妙子も反対をするが「絶対に聞き出さないと、千歳製菓は破滅するわ!ガードマン付けているから大丈夫よ!」
「ガードマン?」
「会社の若いカメラマン!」
「一緒に仕事していた木村さん!ひき逃げだったのでしょう?危険な臭いが一杯するわ!」
妙子も危険な事は辞める様に言う。
だが、美沙の決意は固く新幹線の席を調べて欲しいとの一点張りだった。
数日後再び北川に頼み込む信紀。
「赤城さん何故?常務の事を?」と尋ねられて「娘が雑誌の記者で偶然を装って専務に取材したいと言うのでね」
正直に話すと、面白そうだと北川は乗り気に成った。

美沙の作戦

「娘がモーリスの特集記事を書いているので、そこに我社の事を書いてくれるらしい」
「じゃあ、本社に来れば良いのに、社長はインタビューなら直ぐに承諾されるわ!」
「それが、娘の本社からはその様な取材記事は無いらしい、だから娘が我社の為に記事を挟んでくれるらしい!」
「良いお嬢さんですね!でもウィークジャーナルの記者って凄いですね!」
「でもこの話は内緒にして下さいよ!社内に知れると色々問題が出るのでね」
信紀は北川に適当な嘘を言って、新幹線のチケットのコピーを受け取る事に成功した。
「決して危険な事をするなよ!常務は女性関係では噂が有る男だからな!」チケットのコピーを手渡しながら注意をする様に再び伝える信紀。
「大丈夫よ!私がお父さんの子供だと知らないから、上手く聞き取れるわ」
両親の心配を他所に、美沙は翌日早速京極教務の座席の近くに三木と二人分を予約した。
「グリーン車なんて初めてだわ!三木君は私の通路を隔てたB席」
「でも変じゃないですか?混んで無いのにC席に座ると変なのでは?」
「良いのよ!私がナンパするのだから、積極的にチャレンジよ!」
「確かに美沙さんは美人だから、ナンパは簡単でしょうが?不自然ですよ!」
「大丈夫よ!上手に誤魔化すわ!」切符を買って微笑む美沙。

初夏の暑さに美沙は薄着で、下着が透けて見える様な服装で名古屋駅に来て三木はその姿に驚いた。
「美沙さん少し刺激が強すぎませんか?」
「そう?これならナンパ出来る?」
その後ホームで新幹線の入線の風が美沙の髪を乱すし、スカートを大きく巻付ける様な悪戯をする。
二人は京極専務の顔を知らないので、直ぐ側に居たのが判らない。
その様子を少し離れた処で見ている京極常務。

「もう、近くに居るわよ!気を付けて」
「はい!」そう言った時、新幹線がホームに滑り込んできた。
美沙は廻りに目を移して京極常務の様な男を捜すと、自分を見ている男を直ぐに見つけて目を逸らした。
「見られたわ!作戦変更するから、私の言う事に返事だけしてね!」
「。。。。」訳も判らずに新幹線の扉が開くのを待つ三木。
京極晃常務は既に美沙の容姿に興味を持って新幹線に乗り込む。
そして逆に何処に美沙が座るのかを見守っている京極常務。
背中に視線を感じながら座席に向うと「座席間違えたの?十番のCってここよ!」
後ろから追い掛ける様に付いてきた京極常務が「座席を間違われたのですか?そこは私の席です」そう言いながら窓際の席に座って「どうぞお座り下さい!発車しますよ!」と言う京極常務は上機嫌に成っていた。
今日のグリーン車は不思議と混んで、七割の客が座っているので三木も直ぐに座席に座った。
新幹線が動き始めると通路を挟んで美沙と三木が座って「三木君!そこの席は空いているのかな?」
「空いているのでは?車掌さんに尋ねてみて?」
しばらくして車掌が通ると車掌は「次の浜松で乗られます!」と三木に答えた。
美沙は予め浜松からの切符を買っていたのだ。
「仕方が無いわね、本社の会議の資料纏めましょう」
「は、はい」三木は訳も判らず返事をする。
「特集記事で来年のモーリスの頒布会を取り上げるのに、特に新規のメーカーを特集に掲載する事に成っていたわね!」
「は、はい」
その話に驚きながら聞き耳を立てる京極常務。
「でも新規取り扱いメーカーも判らないから、記事に出来ないわね!本社の会議で判るのかしら?」
「は、はい」美沙はいつ京極常務が口を挟むか、その時を待っている。
「新規のメーカーがどの様な品物を頒布会に出すか判れば良い宣伝に成るのにね!」
「ウィークジャーナルに掲載されたら効果絶大ですよね!」三木も漸く判ったのか、焚き付ける様な事を話した。
「あの?」この時初めて口を挟んだ京極常務。
「はい!何か?」
「貴女はウィークジャーナルの方ですか?」
「すみません!話し声が大きくて!」
「いえ、話し声で聞こえたのですが、ウィークジャーナルでモーリスの特集を掲載されるのですか?」
「聞こえてしまいましたね!モーリスと関係が有る方ですか?」
「私は名古屋の千歳製菓と云う和菓子の会社の者です」そう言って名刺を差し出す。
「私達はウィークジャーナルの編集記者です」名刺を差し出す美沙、遅れて三木も名刺を出して会釈をした。
「赤城美沙さんですか?」名刺の名前を読み上げて「先程の特集記事はいつ掲載されるのですか?」
「十一月の初めですかね!毎年モーリスの特集記事を企画するのですよ!」
「先程話されていました新規取り扱いメーカーの記事も載せるのですか?」
「内容が判れば、新規特集記事で大きく取り上げます。普通の倍程の注文が入るそうですよ!」
「記事が出るのは十一月ですよね!」
「丁度、冊子が会員とか新聞に出る前ですね!だから私達の記事が大きな効果が有るのですよ!何故その様な事を聞かれるのですか?」
「実は私の会社、千歳製菓も来年からモーリスさんで頒布会が始まるのです」
「えっ、奇遇ですね!モーリスさんの頒布会に新規ですか?」
「勿論頒布会は初めてです!今回はお茶屋さんとの共同企画ですがね」
「お茶屋さんと云えば、玉露堂さんとの共同企画ですか?」
「えっ、玉露堂さんをご存じなのですか?」
「はい!富田社長に何度か取材しましたよ!」
京極常務はこの話で完全に美沙を信用してしまい、東京から戻ったら名古屋の美沙の名古屋支店にお伺いしたいと話して東京駅で別れた。
「これで商品アイテムは確実に聞けるわね」微笑みながら京極常務の背中を見送った。
三木は美沙の行動に呆れるが、素晴らしい行動力に一層好意を持ってしまった。

数日後美沙の会社に京極常務が訪問したいと連絡をしてきた。
翌日午後一番に会う事決めて、三木と二人で偽の企画書を製作して十一月の原稿を作成する。
京極常務を騙して、十二ヶ月分のアイテムを聞き出す作戦を始めた。
京極晃常務は時間より早く事務所に現われて「赤城美沙さん!いらっしゃいますか?」と尋ねた。
三木と美沙は近くの飲食店で食事を終って事務所に帰ると、既に応接室で待っていた。
「態々お越し頂かなくても伺いましたのに!」
「来て頂くと社内でもまだ極秘の資料を見せられませんので、、、」
「えっ、極秘の資料を見せて頂けるのですか?」大袈裟に驚く美沙。
「但し必ず記事にして頂けるのならですがね!」
「新幹線の中でもお話致しましたが、新規取り扱いのメーカー様を大々的に紹介する企画ですから、千歳製菓さんのコーナーを大きくする予定です。幸い現在他の支店から新規取り扱いメーカーの申請は出ていないそうですよ!」
「モーリスから頒布会の企画はぎりぎりまで秘密にする様に指示が出ていますから、中々新規取り扱いのメーカーは公表しないでしょう」
「じゃあ、何故?」
「十一月なら、公表しても良いからです!ですから私が持って来た資料は絶対に外部に漏れない様にお願いします!勿論千歳製菓の人にも口外無用に願います。売上げの倍増を見込んでお願いに来ました」
「私達もこれで記事が書けますわ!十一月の発売をお持ち下さい」
計画書を受け取って中を見ると、玉露堂のお茶が主で千歳製菓の商品は四割弱の様だ。
「次の年度には当社だけの企画で頒布会をする事に成っていますので、実績を伸ばしてモーリスさんに千歳製菓の存在感を示したいのです。協力は惜しみませんので何でもおっしゃって下さい」
「先程ライバルに露見すると、モーリスが困ると言われましたが、実際このアイテムのライバルは多いのですか?」
「アイテムによって色々ですが、それぞれライバルと呼ばれる企業は有りますね」
「常務さんがライバルと思われる企業を教えて頂けませんか?」
「えっ、ライバルの企業を?」
「その企業の商品を一度買って比べて見たいのですよ!」
「それ程変わりませんよ!甘味が少し異なるとかですね!」
「本当は取材をして記事を構成するのですが、常務さんに教えて頂ければ見本品を取り寄せて、ライバル他社の欠点を記事に書いて御社の商品を褒め称えるのですよ!」
「成る程!その様な事なら喜んで協力しますよ!近日中に色々資料を持って来ますよ!」
「それは有り難いです。取材の手間が省けます」
「お世話に成りますので一度お食事でもお誘いしたいのですが?」
ほら、プレイボーイ野郎早速アプローチだ!と思う美沙。
「それは大変嬉しいのですが、私達は一人でその様な席には行けません!取材は二人一組に成っているのですよ!」
「それなら、三木さんもご一緒にお越し下さい!」
「多分記事に成ると思うのですが、上司の許可を頂かないと確約は出来ませんので後日、またお答えします」
「そうですか、楽しみにしています!赤城さんの様な美しい記者さんになら、何でも答えてしまいますよ!」そう言ってから帰って行く京極晃。
「美沙さんの話術は恐いですね!」三木が呆れて京極常務を見送った。

その日の夕方、愛知県警の刑事が二人名古屋支店を訪れて「ひき逃げの車両から、大阪の暴力団が浮かび上がったのです」
小南圓と美沙が応接に呼び出されて刑事の質問を受けていた。
美沙は荒井興産と梶谷不動産を木村さんは調べて居まして、役所の偽職員の桐谷と云う男も絡んでいたと詳しく話した。
三宅刑事は木村さんからは桐谷の名前も聞いていなかったので、新しい情報だと喜んで手帳に書き込む。
「新和商事って会社に心当たりは有りませんか?」
「知りませんね!それは何処に在る会社ですか?」
「大阪ですが、ひき逃げの車の持ち主が新和商事の車なのです!」
「じゃあ、その会社が?」
「盗難届けが事故の前日出ていまして、一応は関係無いのですが、この新和商事も暴力団系の不動産会社なのですよ!」
「新和商事に桐谷って男が居たら、全容が解明されますね!」美沙が横から言った。
「早速調べて見ましょう?また結果はご連絡致します」

翌日千歳製菓の京極常務が資料を持って再びやって来ると、ご丁寧に「これが来年採用の饅頭の一部です。皆様でお召し上がり下さい」そう言って包を開いて箱を開く。
美沙には何度も食べた饅頭が箱の中に、所狭しと並んでいた。
「これが薯蕷饅頭ですね!」箱の中を指さして美沙が言うと、京極常務が驚いて「薯蕷饅頭をご存じなのですか?これは驚きました」美沙はしまったと思っていたが、気が付かなかった様だ。
「薯蕷とは山芋のことです。丁寧に摩り下ろした山芋を練り込んだ生地で蒸し上げています。白の饅頭は甘露栗をカットした物を入れた黒こし餡、紅の饅頭は小豆の豆が入った白こし餡です」と京極常務が解説の紙を見ながら説明をした。
「ああ、美沙、、、、、」と言いだして、気が付いて言葉を呑み込んだ小南圓。
「これがライバルと呼ばれる会社ですね」A4の用紙を差し出す。
一月の紅白饅頭は越後屋さんの商品が一番近いが、他の会社は少し製造方法が異なっている。
「月別に説明書きをしていますので、よく判ると思いますよ」
「これは有り難いです。文章が書き易いです」
二月はこの鶯餅ですが、類似品の会社が有りません。
三月が三色団子で、秋田県の秋田和菓子が作っています。
と次々と詳しく説明をする京極常務に、美沙はノー天気な男だと思っていた。
自分と付き合いたいので、話のネタを今後も何度も運んで来るだろうと心で笑った。
「四月が桜餅で、秋田和菓子が製造しています。塩漬けの桜の葉を用いた、江戸に発祥した桜餅。
濾し餡を焼いた生地で包んだもので、東京隅田川向島の同名の寺の門前でこの桜餅が作り始められたといわれる花見のお菓子」
「五月柏餅で、これは色々な和菓子屋が製造してライバルが多い商品です」
「六月水無月で、水無月は白の外郎生地に小豆をのせ、三角形に包丁された菓子ですが、それぞれに意味がこめられています。水無月の上部にある小豆は悪魔払いの意味があり、三角の形は暑気を払う氷を表しているといわれています。
「この品物は何処も作っていないのですか?」
「はい、町の和菓子屋さんでは作っていますが、冷凍設備の在る会社は皆無でしょう」
自信作の様に言う京極常務、確かに美沙も一度も口にしたことは無かった。
幼い時から、会社の饅頭を信紀が持ち帰るので殆ど食べたが、この品は記憶に無かった。
「七月は水羊羹で、この品ものもライバルが多いですね」
「八月も水饅頭で、沢山製造しています」
「九月は栗饅頭、十月が栗羊羹、この二品は冷凍で製造している会社は無いと思います」
「十一月がみたらし団子で、秋田和菓子がライバルですね」
「十二月は柚子餅で、12月の冬至に作る柚子餅。桜餅にも使われる道明寺を使ったレシピです。柚子の皮入りで風味がしっかりと味わえる一品です。これは越後屋さんも作られていますね」

京極常務が帰ると美沙は一覧表を作って対策を考え始めた。
一月   紅白饅頭      越後屋
二月   鶯餅        無し
三月   三色団子      秋田和菓子
四月   桜餅        秋田和菓子
五月   柏餅        多い
六月   水無月       無し
七月   水羊羹       多い
八月   水饅頭       多い
九月   栗饅頭       無し
十月   栗羊羹       無し
十一月  みたらし団子    秋田和菓子
十二月  柚子餅      越後屋
「この一覧で見ると、秋田和菓子さんと越後屋さんにお願いして、他も捜せば四品を千歳製菓で作ればいけるわね!」
「作る処を準備してから千歳製菓に乗り込むのですか?」三木が尋ねる。
「でも簡単に引き受けて貰えるでしょうか?納入価の問題も有るしね」小南圓も不安な様に言う。
三人は美沙の千歳製菓を救う事が、スクープに成ると考え始めていた。
モーリスの悪行の暴露の一端が今、真に行なわれ様としていたからだ。
美沙が白板に書き始める。
① 従来の取引先を縮小させる。
② 製造アイテムを極端に減らす。
③ 増資をさせて会社内部に食い込む。
④ 工場増設を迫り、資金を使わせる。
⑤ 冷凍倉庫の建設を強要する。
「以上が、今モーリスが千歳製菓に仕掛けている事ですね、この後どの様な事をするか判らないですが?」
「次回あの常務が来るまでに、生産の目処を付けなければ話に成らないわね」
「秋田までの旅費は出ないから、私一人で行きますので、他のメーカーはお願い頼みます!」
「どの様に言う予定なの?」
「モーリスから注文を受けたのですが、生産キャパオーバーで助けて頂きたいとしか頼めないでしょうね!」
「週刊誌の記者が頼むのは変なのでは?」
「橋渡しだけで、後程正式に千歳製菓の者がご挨拶に参りますので宜しくお願いしますで良いと思います!」
「取り敢えず作れる工場探しが第一歩ね」
「本社への原稿提出まで十日ですから、それまでに目処を付けて起きたいわね!」

小南は重要な話を祖父に聞いて、大阪支店に寺崎貢の現在の仕事と住まいを捜して貰っていた。
祖父母の話では、父親の復讐を考えている様なので止めて欲しいと言った。
だが寺崎貢の行方はその後も判明せず、母親の志乃もパートの仕事を辞めて行方が判らなく成っていた。
小南は母と子が大阪に住んで、モーリスに復讐を考えているのだろうか?
そう考えたが、復讐と言っても個人では無いので、困難な事だと思う。
それなら、モーリスの担当者?当時の担当者を新たに捜しているが、モーリスに取材に行けないので判明しない。

食品は若手の担当者が五人で、上司が村井課長に成っているが、全員五年未満のバイヤーで大阪支店の記者にはそれ以上の調査は頼めなかった。
「優先順位で取り敢えず来週有給使って秋田まで行って来ます!」
「大変ね!運賃も出ないのに!」
「父の会社を守る事とこれ以上の被害者を出さない為にも、報道の使命ですからね」
「かっこ良いですね!」三木が褒め称える。

週末再びやって来た京極常務だったが、三人とも留守で残念そうに帰った。
それを聞いた美沙は既に京極常務は自分に興味を持ったと理解していた。
今後の展開には大いに味方に成る可能性が大きく成ったと思う。
この先京極社長に話をする必要が有るので、一人でも味方が欲しい美沙。

飛行機で秋田の秋田和菓子株式会社に向った美沙。
「ウィークジャーナルの記者さんが私共の会社に取材とは驚きました!それも名古屋支店の若いお嬢様だとは!」
「実は表向きはウィークジャーナルの記者ですが、今日はお願いが有って参りました」
総務部長の吉武が身を乗り出して美沙に「どの様な事でしょうか?」と尋ねた。
「実は私の父は千歳製菓に勤めているのです」いきなり切り出した美沙。
「えっ、我社のライバルの会社にお勤めですか?」
「単刀直入に申上げます。千歳製菓は来年モーリスに商品を納入する事に成りました」
「今も時々納品されている様ですが?」
「来年から頒布会にも納入する事が決まりましたが、生産キャパがございません!一部の商品を助けて頂けませんか?」
「お父様の会社で生産キャパが無いのを、私共の会社で生産するのは難しいと云うより変ですよ!」
美沙は必至でモーリスの商売の方法と、ウィークジャーナルがどの様な記事を書くのかを丁寧に説明した。
美沙の懸命な話に、吉武は社長を呼んで来ると言って席を立った。
しばらくして社長の大泉がやって来て「遠路遙々来られて、奇想天外なお話をされるお嬢さんですが、今の状況では千歳製菓さんは完全にモーリスの奴隷にされますね!先代の社長の宮代さんとは何度か会合でお会いしましたよ!お力に成れるのなら損まで出来ませんがお手伝い致しましょう」笑顔で美沙に言った。
「でもモーリスはもの凄い手法で企業を食い物にするのですね!驚きました!もしも私の会社にも触手が伸びていたら、騙されていたでしょうね」
美沙は今自分の独断なので、正式に千歳製菓から打診が有ると思うと説明すると「お嬢さんの誠意が伝わらなければ、千歳製菓さんもそれまでです!」
美沙は自分が頼みに来た事は内密にして欲しいと頼んで、秋田和菓子を後にした。
後ろ姿を見送りながら「吉武!良いお嬢さんだな!美人で父親想い!父親の会社を必死で守ろうとしている。涙が出たよ!」
「そうです!彼女必死でした!玉露堂の話、京漬の話、寺崎食品の話、全て説得力が有りました!」
「だが、京極社長が頼みに来るだろうか?」
「それも運でしょう!」
「あの子の願いは叶えてあげたい!このリストで他に作れる会社を一応打診して置きなさい」

翌日の夕方、小南と三木を交えて美沙が交渉の成果を尋ねると「難色を示しましたね!秋田和菓子さんが協力されるのなら考えますと言われたわ!」
「色々な会社が生産している製品は値段が合えば作るとの答えだったな!」
「秋田和菓子さんは協力すると言って貰えたわ、後は京極社長がどの様に判断するかですね!それと納入価を聞いて無かったけれど常務に聞いてみますか?」
「何処の会社も納入価が合えばの条件付きですからね!」
早速先日留守の時に来て頂いたお詫びを電話する美沙。
京極晃は予想もしていなかった美沙からの電話に喜んでしまい「何かお困りの事は無いかと思いましてお伺いしたので、別に特別な話が有った訳では有りません」
「私は記事を書く上で重要な事をお聞きするのを忘れていましたので、もう一度お聞きしたいのですが?」
「喜んでお伺いしますよ!」
「実はモーリスと取引をされるのに、利益が充分確保出来るのかの問題です。大量販売ですからそれなりに厳しい価格なのですか?」
「それが、違うのですよ!充分採算に乗る価格です!お持ち致しましょうか?」
「そうですね、記事を書く上で重要な部分ですからね」美沙は京極晃の意外な言葉に驚いていた。
頒布会は充分利益に乗る?それなら何故沢山の会社が奴隷に成って、倒産するの?不思議な話に千歳製菓だけ異なるの?私は余計なお世話をしているの?不思議な感覚に成った。
「赤城さん!明日午後一番でお伺いします!」の晃の声で現実に引き戻される美沙。
「宜しくお願いします」と半ば放心状態で電話を終る美沙。
小南達に話すと「私達余計なお世話をしているの?」
「でも変ですね!和菓子の値段を知らないのでしょうか?」
「その様な事は絶対に無い、販売価格は確かに高いけれど納入価も高い筈が無いわ!それなら苦しめられる会社は無いでしょう?」
「千歳製菓だけが特別待遇?」
「色々な状況から考えてそれは絶対に有り得ないわ」
翌日の状況を見てから、次の行動に入る事にする三人。
本社への原稿の締め切りが近づいていた。

翌日笑顔でやって来た京極常務は態々原価率まで書いて持って来た。
「えー、これって幾ら儲かるかの粗利率の計算ですよね!常務が計算されたのですか?」
「いいえ、社長が持っている原価表を今回の商品に当てはめただけですから、新製品とか従来作っていない商品は予測です」
「これでも先日頂いた売価に換算すると半額ですね」
「そうですが、モーリスさんが運賃を負担されるので、実際それ程は儲かりませんね!梱包資材もモーリスさんの負担に成りますから、二割程度の利益しか残らないと思いますよ!」
「随分健全な商売ですね」
「実は私もその点が不安だったのですが、今年に数回納入させて頂いている商品も充分当社は儲かっています」
「支払いサイドは長いのでしょう?」
「いいえ、普通の六十日サイドですから、本当に良いお得意先ですね」
笑顔で答える京極常務は来年からの百二十日サイドの話を敢えて話さなかった。
良い話で満載にする方が良い記事が書いて貰えると思っていたからだ。
「記事が掲載されたら御礼にお食事をご馳走します!是非三人でお越し下さい!」
何とか二人の食事が希望だったが、先ずは付録付きでも我慢するか?美沙と付き合いたい京極晃だった。

三人はその翌日から原稿の整理をして、記事に纏め上げて数日後本社に送った。
美沙は提出後「納入価が不思議なので一度神戸に行って聞いて来ます!もしも時間が許すなら玉露堂さんにも行きます」小南に話した。
「美沙!もう取材期間終ったから費用も出ないわよ!また有給で行くの?」
「このままでは説得出来ないでしょう?来週の週末休むわ」
その様な話をした夕方、小南圓が支店長に呼び出されていた。
「小南さん!実は本社の小島編集企画部長が、君達三人が提出した記事が非常に興味深いのでもう少し詳しくその後を調べて欲しいと依頼が有ったのだよ!」
「えっ、掘り下げた記事をご希望なのですか?」
「そうらしい、寺崎食品の親子の消息、千歳製菓のその後、不動産会社の実体等だよ!」
「いつまでですか?」
「二弾、三弾と続ける予定なので、十一月までのロングランだ!」
「えっ、それでは取材を続ける訳ですね!」
「そうだ!応援が必要なら後二人は廻せるが?」
「今は三人で頑張ります!木村さんが回復すればお願いするかもですが、当分無理ですよね!」
美沙が有給で取材に行かなくても良い!小南は直ぐに美沙の携帯に連絡をしていた。

翌週から三人は前よりも張り切って取材に奔走する事に成っていた。
社長賞も夢では無いとの支店長の言葉に、三人が別々の取材に出掛けていた。
寺崎食品の小南、不動産屋の三木、そして美沙は日にちを早くして神戸へ向った。
本社の小島企画部長は各支店から集まった資料を見たが、過去の経緯を寄せ集めた様な記事で魅力が無かった。
だが名古屋支店の三人の提出した記事は、これから起る事が記載されていたので、生々しいと小島部長は興味を持ったのだ。

小諸社長に会う為に神戸駅まで来てから連絡をした美沙。
「何か新しい事が判りましたか?」
「今日は社長に是非見て頂きたい資料が有るのです」
「何でしょう?」
「千歳製菓が来年から始めるモーリスの頒布会の資料です」
「えっ、お父様から頂いたのですか?」
「違います!京極常務から手に入れました」
「その様な秘密書類がよく手に入りましたね」
微笑みながらテーブルに広げる美沙。
「この資料を見る限り、千歳製菓は充分な利益が残って普通の取引だと思うのですが?何故この様な事で奴隷に成ったり、倒産に追い込まれるのでしょう?」
「本当ですね!これなら充分商売に成りますね」資料を見ながら話した。
「今納入している商品も、儲かっていると京極常務は話していました」
「何か絡繰りが有るのでしょう?玉露堂の富田社長に尋ねたら判るのでは?」
「夕方にお邪魔させて貰う事に成っているのです」
「私もそれなりに調べて見ましょう、このリスト頂けますか?」
「小諸社長にはお世話に成っていますので、宜しくお願いします」
その後は記事の話と寺崎食品の母親と息子貢の消息と復讐の話をした。
すると「復讐と言ったのですか?それなら当時の担当者ですよね!私が商談に行った次期と重なるのなら、名刺が残っているかも知れないです。捜してみましょう」
「今の担当者は全て若い人ですよね!」
「モーリスは五年も担当者が同じ人はしていないのです。若い人が多い」
「その五年後は何処に配属されるのですか?」
「上層部に成る人、関連会社に行く人様々ですがバイヤーは基本的に若い時だけですね」
「すると寺崎食品の担当者は、既にバイヤーでは無い訳ですね!」
「息子さんと奥さんも会社に復讐は出来ないでしょうね!多分個人に対する恨みではないでしょうか?」
「じゃあ、その人を捜さないと危険ですね!」
「でも警察にも言えませんから、どの様な復讐をするのか判らないでしょう?」
「私も捜してみますが、モーリスに乗り込めないので、、、」
美沙は結局不安が増大しただけで、小諸社長に託して京都の玉露堂に向った。

だが玉露堂の社長は先日の態度とは大きく変わって「記者の方にお話する事は有りません!それに今来客中ですから、お話出来ません!」愛想悪く玄関先で追出される始末。
「唯一点だけお聞きしたいのですが?」
「モーリスさんで儲かるのですか?」
「儲かる、儲かる!今日は駄目だ!」追出す様にされた美沙は、もしかして今の来客がモーリスの人間?態度の急変は都合の悪い人が応接に居ると考えた。
もしもモーリスの人なら近づきたいと考え始める美沙は筋向えに都合良く喫茶店が在るので、待ち伏せをする事にした。
半時間も経たない間に二人の男が玉露堂を飛び出して来た。
年配の男がもの凄く焦った様子で若い男に何か話すと、タクシーを止めて直ぐに乗り込んで走り去った。
若い男はそのまま駅の方に歩いて行く。
美沙はその男の後を尾行しようと思ったが、玉露堂が気に成るのとどうしても絡繰りを聞きたいので、玉露堂に再び入った。
「まだ、いらっしゃったのですか?先程は驚きました!実はモーリスの課長と担当者が急に来られて、千歳製菓さんとの販売数の変更を相談に来られたのですよ!」
「何故ですか?」
「週刊誌に特集記事が掲載されると、千歳製菓の常務さんがモーリスに連絡された様で!」
「何処の週刊誌ですか?」
「大きな週刊誌としか聞いていません!でも村井課長の自宅から電話が有って、急遽帰られたので具体的な事は決まりませんでした」自分の嘘の話をモーリスに喋ったと思う美沙。
それで慌てた様子でタクシーに飛び乗ったのか?何が有ったのだろう?美沙は背中に冷たい物を感じていた。

新たな展開

「この納入価が罠なのですよ!既にモーリスは原価計算を策定して、支払いサイドも百二十日に成っていると思いますよ!」
「いいえ、千歳製菓の常務は六十日だとおっしゃいました!」
「それは今の支払いサイドでしょう?頒布会が始まると同時に百二十日に成った筈です!でも来年の企画は我社との共同企画ですから、納入価を高く設定しているのです」
「何故ですか?」
「魚を魚籠に入れるまで安心しないのが、モーリスの手法です」
「機械の様に商品を作らされる工場に成るのですか?」
「そうです!当社の様に従業員も最小にして、家族に働かせてぎりぎりの生活を強いられるのです」
「えー、それで奴隷なのですね!」
「来年の頒布会を切り抜ければ、京漬さんの様な取引がモーリスと出来るでしょうが?これも同業他社の協力が無ければ実現不可能です!」
「社長は京漬さんをご存じなのですか?」
「勿論知っていますよ!泉田さんの苦労が有ったので奴隷の道を進まなかったのです。私ももう少し早く気付いていたら、今と成ってはもうどうにも出来ません!」
「先程の方は何方ですか?モーリスの村井課長と部下の庄司さんですが、庄司さんは私の会社は初めてで、それで村井課長が紹介も兼ねて連れて来たのですが?あの慌て様は唯事では無いですね」
「課長さんは外でタクシーに乗られましたが、庄司って若い方はそのまま駅に向われました」
「自宅で家族が交通事故かな?顔面蒼白に成りましたからね!確か子供さんは二人で下の子供さんは小学生だと思いますね!子供さんが事故でしょうか?名前を呼ばれていましたからね!」
美沙はこの話を聞いて七年か八年前に村井課長が寺崎食品の担当?の不安が過ぎった。
「村井課長さんって昔寺崎食品の担当をされていませんでしたか?」
「沢山取引の会社が有るので、私も何方が何処の担当課は判りませんね!寺崎食品って数年前に倒産した会社でしたね!」
「そうです!もしかしたら事件に巻き込まれた可能性も有りますよ!」
「えっ、寺崎食品の担当が村井課長なら?事件に成るのですか?」
「まだ実体が判りませんから、何も申せませんが可能性は無いとは言えないのです!寺崎食品の息子さんが復讐を計画しているのです」
「えー!それは大変だ!モーリスに一度聞いて見ましょう?」
「事実は全く判りませんので、大袈裟に言われない様にお願いします」
富田社長は美沙の前でモーリスに電話をして、村井課長が過去に寺崎食品の担当だったのかを確かめた。
どうやら、自社の担当者の様で結構気軽な会話に聞こえた。
一度電話が終わって「調べてくれる様です!この男も村井課長のライバルですから、何か面白い事には直ぐに飛びつきます」
「大きな会社はそれなりに足の引っ張り合いをしますからね!」
その様な話をしていると電話がかかり「村井課長は昔寺崎食品の担当をしていたが、何か有ったのか?」
「尋ねられたので教えて頂きました!何も有りません!」
「何か有るのだろう?」
「えっ、どうしてですか?」
「今日は君の会社に行った筈だが、少し前に早退届けが電話で来た様だ!君の会社で何かトラブルか?身体を壊したのか?それとも家族に何か有ったのか?」
「いいえ、商談を終って帰られました!庄司さんも一緒に帰られました」
「何故?急に寺崎食品の事を尋ねたのだ!教えてくれ!」
美沙は最後まで電話を聞かずに、黙礼をして玉露堂を後に飛び出した。

「小南さん!事件が発生した様です」美沙の携帯の声に驚く小南。
「何が起ったの?」
「モーリスの村井課長の子供さんに何かが起った様です!寺崎食品の元担当者です!」
「えーそ、それじゃ寺崎親子が何かしたのね!直ぐに調べるわ!貴女もそのまま村井課長の自宅に飛んで!」
「自宅知りませんが?」
「判った!調べて見るわ!待っていて」
小南圓は以前に貰った愛知県警の三宅に電話をして事情を話した。
三宅は直ぐに調べて連絡しますが、何か不審な点が有れば直ぐに連絡をくれる様にと念を押した。
事実何処からも何も情報が入っていないので、警察は全く動く事が出来ない。
村井課長は早退以外は何も告げていなかったので、会社も警察に自宅住所を聞かれて家族が交通事故なのか?と思った。
三宅刑事はこの時、所轄に村井と名乗る人が事故等で運ばれたのかも確かめていた。
交通事故では無いが、何かが起っている事は確かの様な気がした。

小南の携帯に連絡が届いてメールで美沙に住所を送る。
大阪府吹田市の住宅街に村井課長の家は在るので、美沙はそのまま京都から向った。
子供?復讐?交通事故は無い?呪文の様に唱えながら新快速で新大阪まで向った。
「あっ、誘拐?」突如口走った美沙。
今の状況で考えられるのは誘拐だ!小学生の女の子を誘拐した可能性が高い!小南に再び連絡をして自分の意見を話した美沙。
「まだ誰も知らないのでしょう?大スクープだわ!本当に誘拐なら大事件よ!犯人は寺崎の母子?」
「村井課長は昔寺崎食品の担当だったのよ!」
「それなら保々間違い無いわね!どうする?」
「確証は無いから警察にも言えないわね!」
「でも三宅さんの携帯聞いたから直接話す?」
「一応教えて!でも誘拐事件だったら、大阪支店の協力で取材に成るわね!」
「美沙!解決したら社長賞に警察から感謝状も出るわよ!」
「そんな事はどうでも良いの、子供さんには関係が無いでしょう?」
「そうだったわ!無事に救出しなければ駄目ね!」
新大阪駅に到着すると、意を決して三宅刑事に自分の推理を伝えた美沙。
「村井茜ちゃん小学四年生だ!学校に尋ねてみるが赤城さんはもう直ぐ自宅に到着ですか?」
「はい、半時間程度で到着出来ると思いますがどの様にすれば良いでしょう?」
「赤城さんの見込みの様に誘拐なら、子供さんが家に居るかを確かめて下さい!その状況によって警察は動きます!学校の状況は直ぐに調べます」
普通電車に乗り換えて吹田に向う美沙。
しばらくして三宅刑事が「村井茜ちゃんは授業を途中で切り上げて、自宅に帰った様だ。家から呼び出しの電話が学校に有ったらしい!」
「内容は?」
「家族の交通事故だ!」
「嘘ですね!誘拐は確実ですね!」
「まだ判らないが、誘拐の可能性が一段と高く成ったな!」
この電話で美沙は小南に一応待機して、大阪支店から応援の要請を頼んだ。

しばらくして閑静な住宅地に到着した美沙は、村井憲一の表札を捜す。
「立派な自宅だわ、でも静かね!本当に誘拐が発生しているの?」信じられない美沙。
深呼吸をしてチャイムを押すと「何方?」男の恐い声がチャイムの向こうに聞こえた。
「私、ウィークジャーナルの記者で赤城と申しますが、お聞きしたい事が有るのですが?」
「今、開ける!ゆっくり入れ!一人か?」
「はい、私一人です!」
「大した女だな!驚いたよ!」
意味が判らず施錠の開く音に、鉄の扉を開いて奧に在る玄関に向った美沙。
玄関先に立って格子戸を開こうとした時、急に戸が開いて男の手が美沙の手首を掴んで引きずり込んだ。
「携帯、ボイスレコーダーを出せ!」恐い形相の村井課長の横から妻の加代が、美沙の持ち物を調べる様に鞄を取り上げて床にばらまく。
「何をするのです!」驚いて起る美沙に「娘を返して!仲間に連絡をして開放して!この様な事までして記事を書くのですか?」加代が必死の様相で言う。
「ガムテープを持って来い!」村井課長が言うと、直ぐにガムテープを持って来る加代。
「何をするのですか?娘さんの誘拐と私は何も関係無いでしょう?」
手首を持った状態で離そうとしない。
ガムテープを加代が持って来ると、美沙の両腕を掴んで動かない様にして「手首を巻付けろ!」
加代が直ぐにガムテープを持って、美沙の両手首にグルグルと巻付けた。
「足首も巻付けて、動かない様にしてから交渉だ!」
「交渉?何の話しなの?」美沙が玄関に転がされて、足首にもガムテープを巻付ける加代。
「誘拐犯の連絡先を教えて貰おうか?」
「何の話しか理解出来ません!私を捕らえて何をするおつもりですか?」
「最悪交換だな!それにしても早い時間で来たのだな!」
「この子、ウィークジャーナルの名古屋支店の子だわ!」鞄から散乱した名刺入れを見ながら加代が話した。
「名古屋支店から態々吹田まで来るとは、私からどの様な話を聞きたいのだ!」
「意味が判りませんが?お嬢さんの茜さんが何者かに誘拐されたのですよね!」
「ほら、加代やっぱり共犯者だ!娘の名前を知っている!」
「私は誘拐とは関係が有りません!解放して下さい!」
「誘拐犯と連絡をして、娘の解放をして下さいよ!主人が何を話せば納得するの?」加代が必死で訴える。
意味がよく理解出来ない美沙は「私が連絡をしなければ警察が来ますよ!」
その言葉に驚きながら、隣の部屋に行く二人は何かを相談している様子。
戻って来ると「警察に言うと娘の命は保証しないのに、お前が帰らなければ警察が来るってどう言う意味だ!」
「誘拐犯が何を貴女達に言って来たの?茜さんはどの様にしたら帰して貰えるか知っているのでしょう?お金?」
「お金なら出来るだけ準備するわ?仲間に連絡してよ!」
「お金の要求じゃないの?」美沙は誘拐したであろう尾崎母子はこの夫婦に何を要求したのだろう?と思った。
子供を殺すのが目的?この夫婦を苦しめるのが目的ならお金でも良いが、寺崎志乃さんは村井課長には恨みを持っているだろうが、妻と娘さんには恨みは無い筈だ!何を求めているのだろう?
「おい!ウィークジャーナルの記者さんは、私に何が聞きたい?いや、何を喋って欲しいのだよ!」
「そうよ!主人から何を聞いて記事にしたいの?それを言いなさいよ!」
「それより犯人と連絡をして、娘の無事を確かめさせてくれ!」
二人が次々と理解出来ない話しを美沙に言う。
「私は犯人とは、、、、、」
「嘘を言わないで!ポストに投函された文面と一緒なのに、知らないなんて言わせないわ!」加代が美沙の近くに来ると、頬を平手で「バシー」と叩いた。
横に倒れる美沙は「その文章を見せて下さい!」
「自分で投函して頃合いを見計らってやって来たのに、文章を見る必要が有るのか?」
「自分で書いた文章でも見たいの?」加代が隣の部屋に行くと、美沙の目の前にA4の紙を広げて見せた。

村井課長!
娘の茜は我々が預かった。
警察に通報したり、騒ぎ立てると直ぐに娘の命は頂く!
解放の条件は、ウィークジャーナルの記者に、自分がこれまでモーリスで行った悪行の全てを告白して記事にして貰え!
三日以内に告白をしなければ、残念だが娘の命は無いと思って頂こう!
ウィークジャーナルの記者が来なければ、名古屋支店の小南圓を自宅に呼んで告白するのだ!
                     モーリスの悪行を正す男

唖然とする美沙、この様な脅迫文の直後に自分が来たならこの様に成ると理解した。
「思い出した!名古屋支店の赤城美沙、小南圓も同じ支店よね!」
「そうですが、全くこの様な脅迫文は知りませんでした」
「私の悪行って何!何を喋れば娘が解放される?」
美沙は、この様な状況に成ってどの様に切り抜ければ良いのか?頭がパニック状態に成っていた。
モーリスが悪い事をしていると思っていないから、悪行を喋る事は多分無い。
でもこの家は誰かが見張っているわ、私がここに来た事を寺崎母子は見ている。
警察が動くと、直ぐに犯人は逃走して娘さんが危険な状況に成る。
どうすれば良いの?と思った時、電話が鳴り響いた。
「今、家に行ったのは刑事?違うわね!ウィークジャーナルの記者ね」
「娘を誘拐した女か?そうだ!ここに居るのはお前の仲間の記者さんだ!娘を解放しなければ仲間の命を貰う!どうだ?交換しないか?」
「馬鹿じゃないの?その女を殺しても罪が重く成るだけよ!何の関係も無い女を捕まえて人質交換?早く悪行をその記者に自白して、娘さんの顔を見た方が良いわよ!」
「何を喋って欲しいのだ!」
「自分がこれまでモーリスで行った悪行だわ!」
「その様な事は何もしていないのに、話す事は何も無い!早く茜を解放してくれ!」
加代は自宅を飛び出して、近所を見廻して突然走り出して、また止ってとぼとぼと帰って来た。
「誰も居なかったわ!犯人は?」帰ると呟く様に項垂れた。
「電話が切れた!」
「会社に相談しましょうか?」
「馬鹿な!何を相談するのだ!子供が誘拐されました!助けて下さいと言うのか?」
「警察に連絡しなければ、ここに刑事が来ますよ!携帯返して下さい!」隣の部屋から美沙の大きな声が聞こえた。
「近くに犯人は居るのは間違い無いわ、犯人は女でしょう?」
「やはり、犯人の仲間だな!何故判る?」
「私が思うには、先程電話してきた女性は寺崎志乃さんよ!」
「犯人を知っている?仲間に間違い無い!」
「馬鹿な事を!犯人の名前を教える仲間は居ないでしょう!」
「貴方!そうよ!この記者さんは仲間では無い様だわ!」加代が横から言った。
「ようやく判った?」
「寺崎志乃って誰だ!そんな女聞いた事無い!」
「貴方の女なの?冗談止めろ!叔母さんの声だったぞ!」
「貴方が昔手を出した女じゃ?」
「馬鹿な事を!安田じゃ無いぞ!取引先の女に情は無い!」夫婦喧嘩の様に成る二人。
「早く私を解放しなさい!警察が来れば娘さんが本当に殺されるかも知れないわよ!」
「信用出来ない!携帯を使える様にするから、警察に連絡しろ!」
手首のガムテープをハサミで切り裂いて、携帯を手渡すが「変な事をすれば、ハサミで突き刺すからな!」
手が自由に成ったが足首が動かないので、美沙には動けない状態が続いた。
三宅刑事の携帯へ繋がると「犯人は寺崎母子の様ですが、村井さんの家を見張って居ますので、近づくと危ないと思います!」
「判った!大阪府警にはその様に連絡する!赤城さんは大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です!」
それだけ話すと村井課長が携帯を取り上げて通話を強制的に終らせた。
「これで、警察は来ないが、私には寺崎志乃と云う女が誰で何を言っているのか判らない!」
「寺崎の名前に記憶が無いのですか?」
「全く記憶に無い!会社にもその様な名前の社員は居ない!」
「沢山悪い事をしているから、記憶にも残って無いのね!」
「私がいつ悪い事をしたのだ!会社の指示に従って仕事をしただけで、人を殺したり強奪をした記憶も無い!人に恨まれる様な事はしていない!」
「寺崎の名前も記憶も無いのは哀しいわね!」
「教えてくれ!寺崎って誰だ!」
「名古屋の寺崎でも判らないの?」
「名古屋の寺崎?名古屋、、、、、寺崎。。。」真剣に考えている村井課長は「寺崎食品か?」
「ようやく判った様ね!」
「貴方!寺崎食品に何をしたの?早くこの記者さんに話して茜を返して貰いましょう!」
加代が必死で言い始める。
「何も無い!確かお爺さんが入院されてから会社の経営が苦しく成って、倒産してしまい我社も大きな損害を被った。私も責任を負った様な記憶が有る」
「被害者は貴方なの?それって逆恨み?」
「その様だ!お爺さんが病気に成ったのをモーリスの仕事だと恨んでいるのだ!」
「貴方!どうするの?茜は返って来ないわ!」泣き崩れる加代。
唖然とした表情で言葉を失う美沙、だが今は娘さんの救出が第一と考えた美沙は「今度犯人から電話が有れば私に代わって下さい!取材が終ったと伝えます!そう成れば子供さんは返すと思います」
「その様な事信じられるか?」
「でもこの近くで見ているのなら、私がここに居る事は既に知っている筈です!私が上手に話しますから任せて下さい!」
「貴方!この記者さんに話して貰えば茜を返してくれるかも知れないわ!お願いしましょう!逆恨みをされているなら、説得しか方法は無いわ」
「私が寺崎さんが納得する様に話しますから、絶対に口出ししないで下さい!それで無ければ茜ちゃんは帰って来ませんよ!」
「そうか!仕方が無い!赤城さんに頼むしか道は無さそうだ!」
既に大阪府警が半径一キロ以内を私服の刑事で、取り囲みいつでも犯人を逮捕出来る状況が進められていた。
だが村井課長の自宅付近には警察関係の人間は近づいてはいない。
状況待ちで、この状態は三宅刑事から一報を受けた時点から行動は開始されていた。

足のガムテープも外された時、電話の音が村井課長の家に鳴り響いた。
「もしもし!村井ですが?」
「ウィークジャーナルの記者に告白しましたか?」
「もう充分喋った!子供を帰してくれ!寺崎食品さんには申し訳無い事をした!頼む子供を帰してくれ!」
「反省したのが本当か、そこに居る記者に電話を替わって頂戴!」
予想通りの展開に表情が和らぐ加代。
受話器を美沙に手渡す村井課長が「宜しくお願いします」と軽く会釈をした。
 「取材は終ったわ!」
「貴女の名前と支店は何処なの?」
「私は小南圓さんと同じ支店の赤城美沙です!」
「小南圓さんの名前を知っているなら、間違い無いわ!そこの男村井は悪行を話した?」
「はい、全て話しました!記事の掲載は少し先に成りますが、必ず掲載されます!モーリスの悪行の全てで社員の発言ですから生々しい!」
「どの様な事を村井は喋りましたか?」
「先ず、企業を奴隷にする方法を話しました!」
「奴隷ですか?モーリスではその様に言っているのですね!」
横で村井課長が怒り始めるが、妻の加代が「辛抱して茜が殺されるから、相手は狂っているのよ!耐えて下さい」そう言って村井課長の身体を押さえている。
美沙は敢えて寺崎食品の事は全く触れる事をしない。
身元が判れば、子供を帰さない可能性も高いので犯人は誰だか判らない事にしている。
美沙は寺崎志乃が納得する様な事を次々に話して、受話器の向こうからすすり泣く声が聞こえる様に成っていた。
「必ず、モーリスの悪行は私が記事にして告発しますから、安心して下さい!」
「宜しくお願いします!」
「子供さんには罪は有りませんから、早く解放してあげて下さい!」
「赤城さんが村井の家を無事に出られたら、解放します!ありがとうございました!」で電話が終わった。
「お前!よくあれだけ嘘を並べるな!」と怒ったが、加代か「娘が帰るなら良いじゃないですか?」と説得する。
「そうだな!記事は架空の話だからな、誰も喋っていない!記者さんの空想だった!俺も興奮していた!ありがとう!手荒な事をして申し訳無かった」そう言って軽く会釈をした。
「そうよ、早く家から離れないと茜が帰って来ませんわ」
今度は追出す様に美沙を家から離れる様に急かす二人。
呆れながら、自分の持ち物を持って「また後日伺います」と言って村井家を出て行く美沙。
自分勝手な夫婦に呆れながら、玄関の扉を開いて外に出て行く。
その様子を車で見ている貢は、携帯電話で志乃に連絡をして直ぐに車を発進させた。

近くのアパートに一ヶ月前から住んでいた志乃は、直ぐに茜を解放すると貢の車が到着するのを待って纏めていた荷物を積み込み逃走した。
ウィークジャーナルの大阪支店のカメラマンと記者が、独占スクープの為に村井課長の家の近くに陣取り茜の帰宅の瞬間を撮影していた。
一時間後、寺崎母子も包囲していた大阪府警に簡単に逮捕されて誘拐事件は決着した。
美沙の活躍が報道され、寺崎親子は寺崎食品が倒産した事に対して逆恨みで村井課長の娘を誘拐したと報道された。
逮捕後もウィークジャーナルが必ず真実を報道してくれる事だけを信じている寺崎親子。
その為、誘拐は計画的に行ったと自供して、寺崎食品が倒産に追い込まれた原因は全てモーリスと担当者の村井課長だと主張した。
モーリスは大阪府警の事情聴取に、公正な取引の上で寺崎食品さんとお付き合いをさせて頂いていましたが、ご家族の病気等が重なって経営が行き詰まった結果で、モーリスにも多大な損害が発生したと説明した。
事実、寺崎食品の頒布会は途中で中止に成り加入者には返金処理がされていた。
大阪府警は寺崎母子の被害妄想による誘拐事件として、起訴する方向で検討に入っていった。

美沙のウィークジャーナルも誘拐事件の報道を優先にして、一躍有名人に成り社長賞を貰える事に成った。
「凄いわ!初年度に社長賞貰えた人美沙が初めてよ!」
「私も誘拐事件が起るとは思わなかったわ!でも寺崎親子、拘置所の中で私の記事を心待ちにしていると思うと、心苦しいわ」
「私達は早く千歳製菓を救って、記事にしましょう!それがモーリスの悪行を暴く事に成るわ」
「私は手が空いたので三木君と不動産屋の線を、、、」
「私は父に今の状況を話して対策を考えるわ」
「まだ、お父さんに話していなかったの?」
「心配して先走ると、全てが水泡に成るから何も話していなかったのよ!でも今回の事件も有ったのでもう限界ね」そう言って微笑む。
「美沙さん、記者として自信を持った様だわ!それに益々綺麗に成ったわ」
事務所を出て行く美沙の後ろ姿に見とれる三木。

その日の朝、京極常務は美沙の行動に酔って報道を見ていた。
「親父!凄いだろう?この女性!」勢い余って自宅で口走り、両親に「晃!知っているの?この女の記者?」貴代子が尋ねた。
「今度食事の約束もしているのだよ!凄いだろう?時の人だよ!それに美人だろう?」
「えっ、お付き合いをしているのかい?」母も驚く。
「お付き合いって言うか、まあそれに近い関係だな!今度は遊びでは無いよ!本気だ!」
「晃の本気はいつもだから、直ぐに他の女の子に移るだろう?」京極社長が茶化す。
「親父!それが違うのだよ!知的美人だから、少しこれまでの女とは違う!」
「何処のお嬢さんなの?」
「多分名古屋の子?かな?」
「ほら、まだ付き合いはしていない様だぞ!相手は有名人に成った美人だ!お前は相手にされない!」
「今日辺り会社に電話が有る!必ず有る!」と自分に気合いを入れる晃。

昼休みに美沙は信紀と千歳製菓の近くのレストランで食事をしていた。
事件の話は既に自宅で話していたが、千歳製菓が今どの様な状況に成っているのかを説明する為に会ったのだ。
「あの親子の事件も判る様な気がするな!恐い会社だな!」
「一応商品を製造して貰える目処は出来たのだけれど、京極社長をどの様に説得するかが難題なのよ!」
「息子に期待している様だが、似てない親子は居ないからな!」
「取り敢えず、常務を会社に呼んで説得して見るわ!お父さんも何か解決策を考えて貰える」いよいよ説得工作に走る美沙に、頭を抱える信紀。
信紀と別れた美沙が千歳製菓に電話をしたのは、昼休みが終った直後だった。
京極常務は朝の余韻が残っていたのか、社内の人に自分はあのテレビで誘拐事件の女性記者と知り合いだと自慢をしていた。
「常務さん!いつの間にあの様な美人記者さんとお知り合いに?」
女子事務員に問われて「取材!取材を受けたのだよ!それで知り合いに成ったのだ!」そう言った時、別の事務員が「そ、その記者さんから、常務に電話です!」告げた。
「ほら、本当だろう!」嬉しそうに自分の席に向って行くと受話器を耳にする。
事務所の人が集まって「本当だった!」と囁き合っていた。
「えっ、明日の午後ですか?はい必ず伺います!」
電話を終ると笑顔で「インタビューかも知れないな!昼から散髪でもして来るか?」口笛を吹く様な感じで外に出て行く京極常務。
「あの様なノー天気常務を好きに成るの?」
「絶対に無い!」
「会社の情報を取られているのでは?」北川碧が言う。
「ウィークジャーナルの記者さんが欲しがる情報が、我社に有るの?」その言葉で社内が爆笑に包まれた。

翌日意気揚々とウィークジャーナルの名古屋支店を訪れた京極常務。
昼休みを外で過した美沙と小南は「あの常務この前と同じで、早く来ているかも知れないわね!」小南が言った時、美沙の携帯が鳴って父の信紀が「美沙、常務を説得するのは辞めた方が良い!それよりお前に会って欲しい人が居る」
「誰?京極常務より頼りに成る?」
「少なくとも常識人だ!明日会って貰える様にお願いしていたら、先程返事が有った」
「何方ですか?」
「宮代会長夫妻だよ!詳しい話はしていないが、千歳製菓の存亡に関わる話だと伝えて有る。会長は誰にも話はされていない!常務に話せば今日中に会社中に知れ渡って、混乱が起る!判ったな!」
「判ったわ!お父さんも一緒に?」
「いや!私が出ると、後で面倒な事に成るだろう?赤城の娘では無く、ウィークジャーナルの記者として面会しなさい!」
「ありがとう!お父さん!」美沙は父があれから片時も忘れる事無く、誰に相談するのが良いのかを考えて居たのだと思った。
電話が終ると美沙が「適当に煽てて帰しましょうか?」そう言って微笑んだ。
小南も「お父さんも必死だったのね!明日二人で会長さんにお願いに行きましょう!」
「そうですね!秋田和菓子さんも会長の頼みなら、直ぐに効いて下さるわ」
事務所に戻ると既に応接で京極常務が待っていると同僚が伝えた。
小南が自分の席に戻ってメールのチェックをして「美沙!見て!本社から十一月最初の本誌にモーリスの特集トップに、新規取り扱いメーカーの紹介として千歳製菓を取り上げるそうよ!」
「えーー、嘘が本当に成ったの?小島企画部長に聞こえたのかな?でもあのノー天気常務には良い手土産が出来たわね!」
「本当だわ!喜んで帰るわね」二人は早速メールをコピーして京極常務に渡す準備を始めた。
「お待たせしました!」小南圓が先に応接に入ると、後から入って来る美沙を目で追うが、付いて来ない。
「あの、み、赤城さんは?」
「コピーの準備をしています。直ぐに参ります」の言葉で安心の笑顔に変わった晃。
「モーリス特集の最初の週に新規取り扱い頒布会メーカーとして、千歳製菓さんが決まりました!」
「えー、本当ですか?最初の特集企画に当社の紹介記事が?」声が裏返る程の喜びを表わす京極常務。
その時、美沙がコピーを持って入って来ると、いきなり立ち上がって「ありがとう!ありがとうございます!美沙さん!」そう言って抱きつかれて、両手の塞がっている美沙は京極晃の腕の中へ「きゃー」思わず声を発してしまった美沙。
「あっ、これは失礼しました!」と慌てて離れた時、ドアが開いて「どうされました?」女子社員が二人飛込んで来た。
「あっ、いえ、何も、何も有りません!」戸惑う美沙。
京極常務も慌てて椅子に座って冷静を装った。
再び戸が閉まると「すみませんでした!喜びの余り興奮してしまいました!」京極常務が美沙に深々とお辞儀をした。
「私も突然で、大きな声を出してしまいました!」そう言って照れ笑い。
「これが原稿のコピーです!まさかこれだけのページを編集部が割いて千歳製菓の事を記事にするとは思いませんでした」
そう言いながら机の上に並べる美沙。
「この中で社長のインタビュー記事の欄が有るのですが、後日時間を調整してカメラマンを連れて取材に参りますので、社長様にご都合を聞いて下さい!同時に工場内の写真も撮影させて頂ける様に配慮願います」
「わ、判りました!父、社長も喜んで協力すると思います!これから帰りまして早速日程を決めさせて頂きます」
その後は記事の内容に話が終始して、上機嫌の京極常務が最後に「当社のお越しの時、お食事を準備していますので、今回は是非ご一緒にお越し下さい!」小南を便宜上誘った常務だが、本心は美沙と食事がしたいだ。
常務が帰ると「私は行けませんので、小南先輩と三木さんは是非ご馳走を頂いて下さい」
「美沙の事を知っている人が居るから困るわね!私達がたっぷりご馳走を食べてきます!」
「先輩!明日持って行く資料を準備します」
「でも本社の部長は何故、千歳製菓を大きく取り上げたのかな?」
「これなら、モーリスの悪行を叩くとの趣旨から逸脱している様に思えますね」
「ノー天気の常務が喜ぶのは判るけれど、これでは売上げが倍増して益々モーリスの頒布会が繁盛してしまうわ」
「次の号から、もの凄い記事に変わるのでしょう?だって私達の取材記事が崖から突き落とすでしょう?」
二人は本社の小島企画部長の意図が判らなく成っていた。

裏工作

翌日小南と美沙は千歳製菓の本社から、五キロ程離れた高級住宅街の一角に在る宮代会長の自宅を訪れた。
「大きな家ね!」
「私一度父に連れられて来た事が有るのよ!子供の頃だけれどね!」
そう話しながらチャイムを鳴らすと、中から上品なお婆さんがやって来て「どうぞ!ウィークジャーナルの記者の方ですね」そう言って微笑んだ。
「お邪魔します!」
「綺麗なお庭ですね!」
広い庭には玉砂利が敷き詰められて、手入れが行き届いた植木が二人の目を和ませる。
「お爺さんは向こうで錦鯉に餌をあげていますよ!」指さす方向には十坪程度の池が見えた。
「いらっしゃい!ここの部屋で話を聞こうか?」
部屋の中から鯉が観賞する部屋がお気に入りの様で、佳枝夫人が縁側にテーブルを置いて準備をしていた。
「さあ、鯉でも観賞しながらお話を聞きましょうか?」
「綺麗な錦鯉ですね!紅白にあれは大正三色ですね」小南が指を指して言うと「おお!錦鯉が判るのですね?」嬉しそうに言う宮代社長。
「あの昭和三色がこの中では一番高級ですね!」
「流石はウィークジャーナルの記者さんだ!錦鯉を見る眼までお持ちだ!」
「以前に錦鯉の取材をさせて頂いて、覚えたのですよ!」
「それでも素晴らしい、この沢山の鯉の中で高級な鯉を言い当てる方は中々いらっしゃらない」感心しながら座敷に上がって行く宮代会長。
縁側の座敷に座ると早速名刺を差し出し「ウィークジャーナルの記者で小南と申します」
「同じく赤城と申します」軽く会釈をする美沙を見て「お婆さん!赤城さんのお嬢さんだ!綺麗な娘さんに成られたよ!」
お茶を運んで来て「えっ、あの赤城さんのお嬢さんだったの?そう言えば面影が有るわね!でも美人の娘さんに、、、お爺さんも私達も歳取る筈ですよね!」そう言って微笑んだ。
「そうだな!この庭で赤城さんと一緒に来た時は小学生だったかな?」
「宮代会長には判ってしまいましたか?小学五年生の夏に家族で伺いました!今日は無理に時間を頂きましてありがとうございます」
「お父さんの話では、当社とモーリスの取引に付いて話が有るとか?先日テレビで誘拐事件が有ったのもお嬢さん?」そう言われて頷く美沙。
「あれは素晴らしかったですね、中々出来ない事を頑張りましたね!あの親子はモーリスに逆恨みをしていたとか?恐い世の中です!」
「実は会長!逆恨みでは有りません!事実なのです!」
「えーー事実?」
「はい、寺崎食品さんはモーリスに奴隷の様に使われて、家族の病気で破綻してしまったのです」
「業界が異なるので殆ど付き合いは無かったが、立派に商売をされていると思っていましたがモーリスの奴隷とは?」
「はい、ここに資料をお持ちしました!ご覧頂きながらお話を進めさせて頂きます」
「結構分厚い資料ですね」
「最初に我社の特集記事で御社の事を数ページに渡り紹介しています。これは十一月最初の週に発売される予定です」
「おお、社長のインタビュー記事も載せるのですな!婿は喜ぶでしょう?この様な事が大好きな男ですからな!」そう言って微笑む。
「この記事が掲載されて、しばらくして頒布会の勧誘チラシが出ますので通常よりも沢山集まると思いますね」
「それは良い事だ!私も社長職を譲って良かったと思える訳だ!」
「インタビュー等は来週会社に訪問させて頂くのですが、今日お伺い致しましたのは、その次のページからの件に付いてなのです」
宮代会長がページをめくると、そこには全国で最近倒産した会社が十社掲載されていた。
「これは、、、、、寺崎食品も、、、、」笑みが消えて絶句した宮代会長。
「そこに記載されている会社の特集が我々の特集の本題なのです!そして取引先は全てモーリスです」
「じゃあ、私の会社の記事は?」
「多分本社は、千歳製菓さんがこれからモーリスの罠に填まっていく姿を追う為に、特集記事を考えたのでは無いかと思っています」
「えー、モーリスはそれ程恐ろしい会社なのですか?」
「はい、でも打ち勝った会社も多数有ります。その次のページは打ち勝った会社の事、それと奴隷として今もモーリスと取引をしている会社を紹介しています。ほんの一例ですが」
そのページには玉露堂の事が書かれて居て「これは来年から共同企画の会社だな!」
「そうです、会長の会社もこの様に成るか、寺崎食品の様な道を選ぶかの瀬戸際なのです」
「えーーー」「えーー」夫婦が声を揃えて発した。
「次のページはモーリスに打ち勝ち、公正な取引をしている会社の例です」
「京漬?漬け物の会社だな」
「次のページには何故その様に成るのか?を記載しています」
「従来の取引先を整理したり、従来の商品を削減してモーリスに特化した結果がこれか?支払いサイドが百二十日?考えられない!我社もこの様な契約に成っているのか?」
「頒布会が始まれば、その様に成る契約を既にされているのでは?」
「馬鹿な!仕入れは早い物で三十日、長くても六十日なのに、販売を百二十日にしたらお金が幾ら有っても間に合わん!」
「来年までは千歳製菓さんの思った値段で買って貰えますが、その翌年から原価計算までモーリスが牛耳り納入価を決定してしまいます」
「それは商売では無い!窃盗に近い!」怒る宮代会長。
「それを合法で行うのがモーリスの商法です!それで先日の寺崎親子の事件が発生したのです。でも親子の主張は却下されて、誘拐と云う大きな罪だけが親子に襲いかかるでしょう」
「な、なんと、、、、、」
「お爺さん!千歳製菓も露と消えるのですか?」そう言って涙ぐむ佳枝夫人。
「いえ、それで我々は千歳製菓さんに、京漬の道を歩んで頂きたいのです」
「どの様にすれば良いのですか?この老人の力で出来る事なら何でも、、、、」
「もう色々な同業者には話していますので、来年の頒布会の品物の製造を各社にお願いに行って頂きたいのです」
「えー、既に話をして頂いたのですか?」手廻しの良さに驚きの表情に成る二人。
「会社で!社長を叱らねばならん!」
「お待ち下さい!モーリスの手法の逆手を取る段取りが次のページです」
数社の和菓子メーカーの名前と生産をお願いする商品名が記載されている。
「先ず会長さんには、私と一緒に秋田和菓子さんに行って頂いて、生産をお願いして頂きたいのです。その後順次電話でお願いされるか、出向いてお願いして頂きたいのです」
「判った!来週にでも行こう!」
「私が社長のインタビューをしている時に、別の話を纏めて頂きたいのです」小南が言った。
「生産に目処が付けば、社内の商品アイテムの整理の中止、従来の得意先の整理も中止にして下さい!これは会長が神崎工場長か、酒田専務に極秘で伝えて下さい!モーリスに絶対に悟られては失敗します」
「一番不思議で、不安な事は各社にお願いして単価が合うのですか?我社の負担に成りませんか?」
心配顔の宮代会長。
「大丈夫でした!先日来年の頒布会の納入価を常務に見せて頂きましたが、充分可能な価格でした」
「晃は君達の味方なのですか?それなら期待出来ますね!」
「いえいえ!違いますわ!美沙の美貌に惚れて喋ってしまったが正しいと思います」
「そうでしょう?あの子がその様な事をする筈無いわ、昔から遊び好きで派手な事が好き、女の子の友達も後が、、、、、」住枝が口籠もる程有名らしい。
「失礼ですが、常務の重責を担うには難しいと思いますね!」小南も追い打ちを言う。
「価格の面で問題無いのは、再来年の布石なのだな!それでは老骨に鞭を打ってお願いに向う事にするか?」
「是非お願いします」
「こんなに美人のお嬢さんと一緒に旅行に行く気分だな!」
「呑気な事を、お爺さんが作った会社が無く成りそうなのですよ!赤の他人の方がこの様な事に力を貸して頂いて申し訳有りません」佳枝が二人に深々とお辞儀をした。
「これで完全に助かる保証はございません!既に借り入れも膨大に膨れ上がっているから、立て直しが大変だと思いますが、父を初めとして社員一丸で頑張る他無いと思います」
「本当に良いお嬢さんだ!ありがとう!よく教えて下さった!ありがとう」
「ありがとうございました」住枝も深々とお辞儀をした。
「呉々も次期が来るまで内密にお願いします」
二人が帰るのを見送ると「赤城君のあのお嬢さんが会社を救ってくれるとは!考えてもいなかったな!」
「本当ですね!内の孫と一緒に成って会社を建て直してくれたら、最高の死に土産に成りますね!」
「貴美子の子供か?」
頷く佳枝だが、宮代会長は二人の孫の嫁には夢のまた夢だと笑った。

翌週同じ車で名古屋支店を出て、美沙を会長宅で降ろすと千歳製菓の本社に向う小南と三木。
本社の前では京極常務が苛々しながら待っている。
車を玄関横の駐車場へ誘導しながら、社内の美沙の姿を捜している常務。
今日は社長に紹介もする予定で、昨夜話すと母の貴代子が一緒にやって来て、社長室で待っているのだ。
千歳製菓を一躍有名にしてくれたウイークジャーナルの美人記者は、既に貴代子の中では大きな存在に成っていた。
晃の嫁には最適だが、今日本人をその目で見て気に要れば身上調査をして、本気で晃の嫁として考えると昨夜決まっていた。
晃はお互いが好意を持っていてまだ関係は無いが、抱き合った事は有ると話したからだ。
「あの?み、赤城さんは?」車から降りる二人に尋ねる常務。
「今日は、私達二人ですよ!美沙は別の取材に行きました!私達だけで充分ですよ!」
「あ、赤城さんが、、、、、、」おろおろする常務。
「さあ、参りましょう」
カメラを首に二台引っ掛けて「先ず玄関先も一枚写しましょう」三木がカメラを早速構えて、シャッターを切る。
「インタビューは社長室で?」
「は、はい!でも赤城さんは、何故?食事の準備も、、、、、」
「僕大食漢なので、大丈夫ですよ!」
「困るなー困るんだよ!」
「何が?」
「いやー、お袋が、、、、、」
「えーお母様もいらっしゃっているのですか?」
小南はノー天気な常務が母親に美沙の話を自慢したのだと直ぐに判った。
今日の食事会は美沙の品定めの場でも有る様だと思う。
二人は社内に入って、スリッパに履き替えて社長室に向った。
女子事務員が見かけると会釈をして、珍しそうにしている。
社長室に二人が入ると「ようこそ、いらっしゃいました!」立ち上がって出迎える京極社長。
散髪をして、三つ揃いの背広を着て背筋を伸ばして軽くお辞儀をした。
貴代子も同じく立ち上がって出迎えたが、目的の女性を捜して入り口を見ている。
その時、常務が入って来て扉を閉めると「晃!あの子は?どうしたの?」と尋ねる。
貴代子に駈け寄って耳打ちすると「段取りが違うじゃ無い!」恐い顔に成って、直ぐに笑みを取り戻した。
「貴方のいつもの、、、、、」今度は小声で晃に怒る。
「先に工場内の撮影をさせて頂きましょうか?」
「そうですね、私が案内を致します!」京極社長が自ら三木を率先して案内する様だ。
「取り敢えずお茶でもどうぞ!」
テーブルにお茶が運ばれて、二人が腰掛けて「この度は素晴らしい企画をして頂きありがとうございます」
「いえいえ、常務には度々取材に協力して頂きましてありがとうございます」
「息子でお役に立ちましたか?」
「はい、大変助かりました!常務の協力が無ければ、今日の日は無かったと思います」

その頃飛行機に乗り込む寸前の美沙が「今頃、御社に取材に伺っていますね」
会長に話すと「馬鹿な話を大袈裟に喋っているのだろう?大馬鹿者が!」
「でも、その常務のお陰で色々私達は情報を頂きました」
「笑えない話だな!大泉さんどの様な顔をするかな?五年ぶりだ!」
曇り空を見上げて宮代会長は、暗い顔をしていた。

「晃!どう成っているのよ!」三人が出て行くと急に怒り始める貴代子。
「僕も美沙が来るのを楽しみにしていたのに、急な取材で秋田に飛んだらしい」
「秋田?お父さんが今日から秋田に行くと言っていたけれど、偶然なの?」
「お爺さん、秋田に行ったの?一人で?」
「友達と一泊二日の旅行だと、お母さんがぽろっと言ったのよ!」
「まあ、お爺さんと美沙の接点は何も無いから、偶然だろうが世の中狭い気がするよ!でも今日お母さんに見て貰って気に入って貰えたらって言うか、絶対気に入ると思うけれど結婚を前提にお付き合いをしようと思っていたのに残念だ!」
「名古屋の何処の子かも知らないのでしょう?我社にも赤城って昔から叔父さんが一人居るわ」
「ああ!あの営業課長で仕事が出来ずに、工場の主任まで格下げされたおっさんだろう?本当に営業出来なかった様だよ!モーリスでも時々話題に成ったよ!小さな取引先を守る為に嘘まで報告したって、親父が怒っていたよ!同じ名前でも月とすっぽんだな!」
工場の写真撮影の間、言いたい放題の親子だ。
しばらくして三人が戻って来ると、コーヒーをテーブルに並べて、いよいよインタビューが始まった。
予め質問事項を渡されていたので、京極社長はそれに答えるだけなのだが、内容は自分の自慢話が大半で小南には聞き苦しい話の連続だった。
中でもこれからモーリスと二人三脚で売上げを十倍にしたいと話した時には、思わず笑ってしまった。
本当にモーリスの実体を知らないノー天気親子は、インタビューが終っても「隣の保育園の取り壊しが来月始まるので、工場が大きく拡張される」と上機嫌で話した。
移転の保育園の横には冷凍の保管倉庫の建設も今月末には始まるので、少々の注文増には対応出来るとも話した。
小南は直ぐにでも帰りたい気分に成っていたが、昼食の準備が近くの料理店で準備されているので、インタビューを終って向う事に成った。
懐石料理の店では貴代子が小南に「今日来られる予定だった赤城さんって、社内ではどの様な評判ですか?」
「五月の連休明けから取材を一緒にしていますが、今年入社の新人とは思えない活躍です」
「先日の誘拐事件でも活躍されていましたね」
「彼女はあの事件で新人として初の社長賞、そして来週は大阪府警から感謝状も頂けるそうですよ!」
「そうなのですか?モーリスに逆恨みした近所に在った寺崎食品の親子の犯行だったのですよね!」
「確かこの近くですよね!」
「その跡地に冷凍倉庫を建設予定です!」京極社長が話した。
その後も京極社長は自慢の様な話に終始して、今後モーリスと一緒に当社が大きな会社に成ると話した。
貴代子は話の隙を見ては美沙の事を小南から聞き取ろうと必至で、常務は美沙が来なかったのが相当ショックか、殆ど喋らずに飲んで食べるの連続だった。

その頃ようやく秋田の空港に到着した美沙と宮代会長は「流石に東北だ!もう肌寒い!」と開口一番言った。
秋田和菓子に到着したのは三時過ぎで、出迎えた吉武総務部長と大泉社長にいきなり深々とお辞儀をして「この度は厄介なお願いにこの爺がやって来ました!」と言った。
「お久しぶりでございます!会長!お元気そうで、赤城さんから全ては聞いていますので、ご安心下さい!」
「本当にお恥ずかしい話で申し訳有りません!」
「もしも、話が私共でも騙されていたと思います!実に巧妙で悪辣です!この様な会社は業界が結束してこそ対等に話が出来るのです」
一月   紅白饅頭      越後屋
二月   鶯餅        無し
三月   三色団子      秋田和菓子
四月   桜餅        秋田和菓子
五月   柏餅        多い
六月   水無月       無し
七月   水羊羹       多い
八月   水饅頭       多い
九月   栗饅頭       無し
十月   栗羊羹       無し
十一月  みたらし団子    秋田和菓子
十二月  柚子餅       越後屋
「この頂いた資料の中で三色団子、桜餅、みたらし団子、それに水羊羹は我社で製造させて頂きます。水饅頭も私共が懇意の業者が手伝って貰えるので大丈夫です。越後屋さんは如何でしたか?」
「越後屋さんには、来週お邪魔させて頂こうと思っています」
「そうでしたか?会長がこの様な田舎までご足労頂いたので、内々には越後屋さんにも打診させて頂いていますので、宮代会長が来られた事をお伝えすれば、協力して頂けると思います」
「大泉社長、何から何までありがとうございます」
「先日、赤城さんから切実なお話頂きまして、千歳製菓さんがお願いされるのなら協力致しましょうと、約束させて頂きました。今日宮代会長にお越し頂き、千歳製菓さんの真意が理解出来ましたので、協力させて頂きます」
「社内ではモーリスを欺く為に誰にもまだ話していません!明日帰りましたら専務達には内密に話す予定です」
「モーリスに悟られると、手を打たれますから来月末までは内密が良いと思います」
「頒布会の応募が始まれば、モーリスもお客様第一に成りますから、簡単には止める事が出来ません!私達の特集記事が出ますので、この企画の数字は通常の二割増しから三割増しに成ると思われます」
美沙はモーリスの販売量の予測を書いて大泉社長に見せた。
「確かに凄い数字ですね!この数字を毎月生産すれば、他の仕事は出来ませんね!我社も臨時出勤をお願いしなければ乗り切れません」
「今おっしゃった品目をお願いしても、御社にご迷惑はお掛けしませんか?」
「大丈夫ですよ!パートさんも久々に仕事が多いと喜ぶでしょう?」
「そう言って頂いて嬉しいです!宜しくお願いします」
宮代会長も肩の荷が降りた気分で大きな溜息を吐いていた。
「会長、商売の話はこれ位にして、美人のお嬢さんも一緒に美味しい物を食べに行きましょう」大泉社長が急かす様に会社を出て行く。
もう外はいつの間にか暗く、東北の冬の様相で冷たい風が吹いている。

美沙は小南に電話でお互いの状況を報告し合った。
小南からの常務親子の表情とか仕草を聞いて、大笑いをしてしまった美沙。
「こちらは大成功ですよ!宮代会長が頼みに行った事は良かったようです!今からご馳走を食べて明日帰ります」
「私達は愛知県警の三宅さんが、例の新和商事が部分的にモーリスと繋がっている様だの情報を頂きましたので、取材に行きます!」
「気を付けて下さいよ!暴力団系でしょう?」
「桐谷がこの新和の男なら、モーリスの犯行の決め手に成るのだけれどね!」
その後料理屋でお酒が入ると、昔話に花が咲くが美沙には殆ど判らない話で二次会に宮代社長は向ったが、美沙はホテルに戻って酔いも手伝って眠ってしまった。
翌日吉武部長と大泉社長が空港まで車で送って、宮代会長と堅い握手をして空港を後にした二人。
「改めて、ありがとう赤城君の努力で話がスムーズに進んだ!遠路来た甲斐が有った!」
「これからですよ!会長は今日神崎工場長に話されるのですね!」
「今晩自宅に二人を呼んでいる!君も来て貰えたら助かるが?」
「神崎工場長は私をご存じですから、まだ内密の方が良いと思います」
「そうだな!赤城君の名前を出すと、お父さんに迷惑が、、、、」
「父には会長がおっしゃった話をして置きます」
二人は一応の成果を感じていたが、これから本格的にモーリスと戦わなければ成らないので安心は未だ未だ先だと気を引き締めた。

夜八時過ぎ酒田専務と神崎工場長は宮代会長の自宅を訪れていたが、二人は誰にも言わずに来いと言われていたので自宅で対面して驚いた。
「専務!」
「工場長!」
「我々二人か?」
「その様ですね!」廻りを見廻して確認して言った。
「夜分来て貰って悪かったな!」
「我々だけですか?」
「そうだ!二人に重要なお願いをしたいが、今から話す事は絶対に内密にして欲しい」
「これは、主人のお土産ですよ!」住枝夫人が二人にいぶりがっこの包を手渡した。
秋田の漬物と言えば、この「いぶりがっこ」燻り、つまり大根の燻製の漬物です。
「秋田に行かれたのですか?」土産の包を見ながら話す酒田専務。
「そうだ!秋田和菓子さんに行って来た!」
「えっ、今頃秋田和菓子さんに、昔一度私と伺いましたね!もう二十年程前ですね!」
神崎工場長が懐かしそうに言ったが「会長!何故今頃?」
すると宮代会長は来年の頒布会のリストを座敷机に置いた。
「これは?」酒田専務が手に取って見るが、何の事か理解出来ない。
まだリストが社内には公開されていないので判らないのだ。
「何処かの頒布会のリストですね!我社と同じ様な事をするのですね!」
「専務!そのリストは来年の我社のモーリスで採用されるリストだ!」
「えーその様な物はまだ知りません!来月初めに発表されると聞いています!何故会長が?」
「それに、越後屋さんと秋田和菓子の名前が書いて有りますが?どう成っているのですか?」
「書いて有る会社で製造して貰う!その為に秋田和菓子に行って来てお願いしてきた」
「えー、当社の頒布会の品物を他社に作らせるのですか?当社はどうなるのですか?」
「鶯餅、水無月、栗饅頭、栗羊羹の四品だけを製造する!他は秋田和菓子さんと越後屋さん、そしてその他の製造工場にお願いするのだ!」
「何故です!工場の拡張工事も始まりアイテムの整理も、取引先の整理も進めているから、生産は増強出来ます!」
「それが罠なのだ!これを読んで見なさい!」
モーリスに潰された会社のリストと、京漬の紹介、玉露堂の紹介を見せる宮代会長。
用紙を見る二人の顔から血の気が引いて行くのが手に取る様に判る。
「こ、これは会長!我社は罠に填まったのですか?」
「その様だな!だから京漬さんの方法で切り抜ける事にして、秋田に行って来た。だが、これからはモーリスに悟られたら、邪魔と無理難題を押しつけて来るだろう、明日から元営業課長の赤城君に秘密で、取引先を訪問させて取引を続けて頂く様に営業をさせる!京極社長には内密にな!赤城君には既に私が話をしたので、明日からは工場には入らない!」
「この様な重要な事を赤城主任に話しても大丈夫ですか?」
「明日から赤城課長だ!だがそれは私達だけの話だが、極秘で頒布会の注文が十二月から始まるので、その時期まで内密だ!」宮代会長の気迫に驚く二人。

その日の夜、美沙は信紀に宮代会長の意図を説明して、明日から営業に全国の取引先に行く様に伝えた。
「お父さんは再び営業課長に戻れるのか?」
「そうよ!工場内の仕事は嫌いだったでしょう?明日から頑張って取引先を引き留めて!」
「だが営業の常務に問い合わせが行くと、直ぐに露見してしまうだろう?」
「口止めは必要だけれど、別の工場で生産出来る事に成りますので、十二月中旬までは先方との約束が有りますので内密にお願いしますと言って欲しいのよ!」
「即ち、今の商品のレシピーで他の工場で委託生産を行うと言えば良いのだな」
「そうそう、全く同じ品物を、他社で製造して千歳製菓の品物として販売すると説明をすれば良いのよ!本当は違うけれどね!」
「値段も変わらなければ、取引先は新たな品物を仕入れる必要が無い!秋田和菓子を初めとした協力会社は千歳製菓から流れていく商品の納入を断るから、お父さんの営業は上手く運ぶと思うわ!」
「既に他社に流れた商品も流通が止る事に成るのだな!」
「そうよ!秋田和菓子の大泉社長が、関係先に今日連絡してくれたと思うわ」
「秋田和菓子の影響力は大きいから、八割は維持できそうだ!」
「小諸社長の商品も作ってあげてね!大変お世話に成ったのだからね」

今日から大阪に出張の三木と小南は、新和商事の周辺と梶谷不動産の関係先を調べていた。
夜遅く小南から美沙に電話で「新和商事とモーリスに繋がりが有りそうよ!でも会社としてでは無く、新地のクラブに社長の新垣が行きつけの店が在るのだけれど、そのクラブの常連客にモーリスの松永って部長が居るのよ!」
「名前は?」
「北新地のクラブJって、大きな会員制のクラブよ!」
「そのクラブを見張れば大きな魚が引っかかるかも知れませんね!」
「今も三木君が見張っているけれど、中には入れないから中々客までは判らないのよ!」
「遊び人の世界ね!常務とか社長なら何か知っているかもね!」
「でも大阪の北新地には行かないでしょう?」
「常務が接待でモーリスの人と行った可能性は充分有ると思うわ」
「社長も何度もモーリスに行っているから、可能性有りだわね」
「常務に体当たりして見ますか!」
「気を付けてよ!美沙に飢えているから襲われるわよ!」
「木村カメラマンもう直ぐ退院でしょう?もう歩けるって電話が有ったから手伝って貰いましょう」
「もう三ヶ月だもの、本人次第よ!無理させたら駄目よ!」
「明日自宅に行って来ます!
いつの間にか夏が過ぎて、秋に成っている季節!今月末には特集記事の掲載された本誌が印刷を終る。
来月初めには店頭に並んで、千歳製菓と玉露堂の頒布会の注文広告が中旬には新聞に折り込まれて、一斉に注文が全国から集まる事に成る。
来年一月から各会員に商品が発送され、越後屋から千歳製菓に紅白薯蕷饅頭が納品されて、玉露堂のお茶とセットされて発送する事に成る。
その様に成れば千歳製菓は鶯餅の生産が余裕を持って製造出来る。

翌日赤城信紀は自宅から宮代会長の自宅に出勤。
「今日からこの部屋を使って、全国に営業をして欲しい!大きな取引先には直接訪問して理解して頂く様に頼む!それにしても君の娘さんは素晴らしい!先日の誘拐事件でも活躍したが、我社の為にここまでしてくれる人は居ないだろう!ありがとう!」
「口五月蠅い娘ですが、正義感は人一倍ですから、親の口から言うのも変ですが頼りに成ります」
その後赤城課長は、小さな取引先を中心に廃止アイテムの撤回と、取引継続を連絡して喜ばれた。
明日以降、大きな取引先にも出向いて話をする為に出張に成る。

美沙は常務に秋田のお土産を渡したいと誘いをすると、常務は自分に土産を買ってきてくれたと大喜びで、午後会社の近くの喫茶店に来ると言った。
クラブJの事を尋ねるのが目的で、千歳製菓から少し離れた喫茶店に木村カメラマンも一緒だとは知らない。
浮き浮きした気分でやって来た常務は、木村カメラマンの顔を見ると急に不機嫌な表情に成った。
「ご紹介します!私達の会社の木村カメラマンで、先日までひき逃げで入院されていまして、来週から復帰されて私達のグループで仕事されますのでご挨拶に来ました!これキーホルダーと財布です」そう言って差し出すと機嫌が直って笑顔に変わった。
秋田の話を少ししてから「常務さんはモーリスの担当ですから、接待も多いのでしょう?」
「いいえ、私が商談するバイヤーは若いので、接待には全く応じません!と云うより禁止されている様で、課長さんとか部長以上の方は社長が時々接待をしている様ですね」
「接待は大阪の北新地とか?」
「社長の知り合いに新地の人がいらっしゃる様で、紹介されて行ったのは聞きました」
「社長さんは飲みに行かれる事が多いのですか?」
「名古屋にも行きつけのクラブが在る様ですよ!そこのホステスさんが元新地の人だったのかな?社長の特集でもされるのですか?」
「判りますか?トップの人脈を別の企画で有るのでもしも話題性が有るのなら、取上げられるか検討中ですね!」
「社長喜びますよ!その様な記事に出るのが好きですからね」
「常務の性格はお父さん似なのですね!」
「僕は父程目立ちたがりでは有りませんよ!」
「一度名古屋で結構ですから、その様な夜の世界を見て見たい気がしますわ!」
「えっ、行きたいのですか?僕が案内しましょうか?」
「一人は少し恐いので女性二人でも宜しいですか?」
「何方でしょう?」嫌な表情に成る。
「小南ですよ!駄目ですか?」
「はい、大歓迎ですよ!小南さんと美沙さんですね!」
「出来ましたら、社長の行きつけのクラブに行きたいですね!」
「お任せ下さい!」有頂天に成った京極常務だ。

潜入へ

翌日大阪から戻った小南と美沙は三木と木村を交えて、お互いの情報の交換と今後の対策、そして本社に提出する原稿の話を一日中話し合った。
①ひき逃げの犯人が今も見つからないが、新和商事とモーリスの一部の人間が繋がっている様だ。
②北新地のクラブJに新和の社長もモーリスの上層部は客として行くので、店内では交流が有る可能性は高い。
③岡山のみどり青果の情報は途切れた状態で、モーリスのバイヤーだった安田との関連は不明。
④偽の役所の職員、桐谷が新和の人間の可能性が残るが不明。
⑤千歳製菓の実情をいつ本社に報告するか?
モーリスを欺く為に、小島企画部長にも内密で進めている作戦だから、四人は多少後ろめたい気分だ。
だがこの計画が成功すると必ず賞賛されると信じている。
「クラブJに何か秘密が有る様な気がするけれど、どの様に探れば良いのか判らないわね」
「ホステスとして潜入するのは?」
「私は先ず採用されないわ!美沙なら大丈夫だけれど、マスコミに顔が出てしまったから面接で駄目ね!」
「そうだった!私マスコミに顔出たのだよね!少しだけれど!」
「それに潜入が敵に見つかったら殺される可能性も有るわよ!木村さんも殺されかけたでしょう?」
「そうね、暴力団が裏に居るから恐いわね」
「でも方法が無いわね!取り敢えず常務に探りを入れてみるわ」
「一応千歳製菓は何とか成りそうだから、早く警察を動かしたいわね!」
四人の話は続いた。

数日後美沙は小南と一緒にクラブエデンの近くの寿司屋に居た。
勿論上機嫌でエスコートしているのは京極常務で「親父が自分の記事が出るのなら、エデンを紹介すると言って、店で待っているそうですよ!」
「えっ、社長が?」
「ここへも同席したいと言ったのですが、断りました!僕と美沙さんの中に親父が入ると嫌ですからね」
でも寿司屋のカウンターには、母親の貴代子が陣取って様子に聞き耳を立てていた。
ちらちらと見ながら「何処かで見た様な子だわ、、、、」と考え込んで「テレビで見たのよね!あの子が惚れる筈だわ、美人ね!後は家柄だわね!将来の社長夫人だからね!」独り言の様に言う貴代子。
常務は如何にも小南圓が余分だと思いながら、話を仕事以外の事に移そうとする。
美沙の趣味とか家庭環境を尋ねると「父は営業の仕事をしていますが、小さな会社です!でも社長さんが代わられて干されて工場の仕事に成りました」
「営業から工場内の勤務ですか?大変でしょうね?時間がもの凄く長く感じると思いますよ!」
「元気が有りません!父が可哀想です!」
「けしからん社長だな!美沙さんのお父様を苦しめる何て!能力を見抜けない間抜けな社長だ!」そう言って怒って見せる。
小南は笑いを抑えるのに必死で、太股を自分で抓って我慢していた。
「父には能力が有るのでしょうか?私には有る様には見えないのですが?」
「それは社長が見抜けないのでしょう?最近社長に成ったのでしょう?」
「そです!社長の義理の息子さんで二代目です」
「それは益々駄目な男だ!二代目で養子!最悪ですね」
常務は自分で勝手に養子と決めて話してしまう。
「また機会が有れば常務さんに、その社長を査定して頂きたいわ」
「判りました!是非!」
「その時は一緒にお願いしますね!この辺りでもよく飲まれている様ですよ!」
「見かけたら教えて下さい!僕が苦言を言って上げます!」
「頼もしいわ!」と言った時、貴代子が常務を呼んでいた。
トイレに行く振りをして席を立つと、小南が一気に大笑いをした。
「美沙!面白すぎだわ!お腹が痛い!私もトイレ!」追い掛ける様に向う小南。
直ぐに戻って来て「向こうのカウンターの女性と話をしているわ!常務!」
「気にしない!多分母親同伴よ!父親も来ているのだから一家総出よ!」そう言って笑う美沙。

しばらくして三人は父親の待つクラブエデンに向った。
貴代子とは大昔に会っているのだが、父の京極隆史とは一度も会って居ないので多分判らないだろうと思っている美沙。
「大きなお店ね!」
「高級なお店って感じだわ!」
二人は怖々入ると、黒服がやって来て「京極様のお連れの方ですね?」と直ぐに案内をした。
大きなボックス席に女性と二人だけで座っていた京極社長が、立ち上がって二人を出迎えた。
「息子から噂には聞いていましたが、噂以上の美人さんだ!晃には勿体ないな」
そう言いながら自分の隣に座らせる。
渋々常務派横に座って、小南は社長の反対側に座った。
「こりゃいい!両手に花だ!」上機嫌の京極社長」
既に酔っ払っているのか頬が赤い。
前の椅子に先程の女性、瑠美子が座って三人に挨拶をする。
「このお嬢さん達がウイークジャーナルの記者さんで、小南さんと赤城さん!この店のナンバーワン瑠美子さんだ!」と紹介して軽く会釈をする。
「この瑠美子さんが元大阪の新地のホステスさんですか?」美沙が早速確かめる様に言った。
「そうだ!北新地でもナンバーワン、この店でもナンバーワンだ!」
「お綺麗な方ですね」
「赤城さんも素晴らしく美しいお嬢様ですわ!息子さんとはお似合いですね」
「えっ!」驚く美沙に「恥ずかしいな!」頭を掻きながら照れる常務。
想像はしていたがいきなり言われて動揺する美沙に追い打ちを喋る瑠美子。
「ご結婚は来春ですか?」
「け、結婚!」美沙と晃が同時に驚いて声をあげた。
「ご冗談でしょう?その様なお話は全く有りません!」美沙が慌てて否定する。
「まあ、今夜は先日の御礼と社長のプライベートの取材とか聞きましたが?」余りに美しい美沙に社長が直ぐに話題を変えた。
まだ、この娘と晃は全く何も進んではいないな!この子なら私が欲しい位だ!と心の中で思う社長。
「はい、モーリスとのお取引を円滑に行う為に、この様なクラブでの接待も何度かされたのでしょうか?」小南が尋ねた。
「そうですね!一、二度お連れしました」
「地の利が有りませんから、大阪で接待の時はどの様な場所に?」
「この瑠美子さんが北新地のホステスをされていたので、ご紹介して頂いたのです」
「有名なクラブJでしょうか?」
「その通り!流石は一流記者だ!違うね!クラブJを知っているのだね!瑠美子はその店のナンバーワンだったのだよ!」
「名前は存じていますが、一度も行った事は有りません」

北新地のクラブJ
新和商事が裏で経営している高級クラブで、その中にJクラブの組織が存在してホステスを使って企業の秘密等を調べるスパイの様な組織が有る。
美女を並べて身体で誘惑するのが主な手法に成っている。
新和商事は暴力団との関係も有り、難しい仕事を闇の中で始末する事も有る。

「社長さんはそのクラブJでは何方を接待されました?」
「庄司君の上司の村井課長とか品質管理の課長の飯田さん、営業部長の安永さんも一度位で二回ですよ!流石に高級クラブですから、この店の倍程ですから簡単には接待出来ませんよ!」
噂に聞く松永管理部長の名前が出ないのは、この社長は一度も会って居ない様だと思った美沙。
一時間程で小南と美沙はタクシーでクラブエデンを後にした。
一緒に帰りたい常務は社長に呼び止められて、そのままエデンの中に名残惜しそうに消えた。

翌日から原稿を纏めて送る為に、机に釘付けの二人。
木村と三木はその間に、保育園と冷凍倉庫の工事現場の見学に向い、意外と早い工事に驚いて戻った。
「冷凍倉庫は既に八割完成ですね、保育園も来月中頃には開園出来る様です」
「すると来月末には工場の拡張工事が始まるわね」
「二ヶ月程度で拡張工事は終ると聞いたから、鶯餅には充分間に合うわね」
「モーリスの悪行の決め手が無いわね!」

数日後本社の小島企画部長から、この文章では使えない!モーリスの悪行が決定的で無い。
これでは追い詰められない!十社の情報も曖昧でインパクトに欠ける。
第一弾は予定通り、モーリスの特集で新規採用の紹介記事で千歳製菓を使うが、十一月十五日までに、もう少し鋭い記事を送って来なさい!と強い調子で命じられた小南。
「駄目だって、ひき逃げがモーリスの仕業だとか、千歳製菓の回避の手法を書けば納得するのだろけれどね」
「千歳製菓の事を書けば、モーリスの反撃で終りに成るから書けませんね!」
「みどり青果の事も不明だから、難しいわね!」
「最後は私がクラブJに潜入する以外に手段は無いわね!」
「本気なの?危険よ!確かに美沙なら採用は間違い無いと思うけれど、二十日程で探れる?それに顔が直ぐに相手に判る可能性が有るわ」
「それなのよね!面接で判らなくても店で客とか他のホステスに見つかれば終りなのよね!」
「危ないわ!暴力団の巣かも知れないのよ!」
「先日少し変だと思った事が有るので、それも調べたいと思うのよ!」
「何が変だったの?」
「クラブエデンに行った時、クラブJのナンバーワンだった瑠美子さんって紹介されたでしょう?」
「それが?綺麗な人だから当然ナンバーワンでしょう?話し方も客の扱いも上手だったわ!」
「それなのよ!何故北新地で一番のクラブJのホステスが、格下のエデンに勤めるのよ!あの瑠美子ってホステスは京極社長の情報をモーリスに伝える係ではないのか?と思ったのよ!」
「そうね、クラブエデンは名古屋でも一番のクラブでは無いから、成る程それは充分考えられるわ!美沙は偉い!」
「私の友達の妹の名前を使って潜入しようと考えて居るのよ!」
「えー段取りが凄いわね!」
「大学四年生で奨学金の返済で、四月まで働きたいと言うのよ!問題は私が見破られたら終りなのよね!」
日曜日、美沙は意を決して行きつけの美容院に向った。
普段セミロングの黒髪をポニーテールにしているが、美容院で二ヶ月に一度程度切り揃えるだけだ。
ストレートにしてシャンプーが終ると「バッサリ切って、茶色に染めて欲しいのですが?」
「えっ、美沙ちゃん!何か有ったの?失恋?でも茶に染めるとお父さんもお母さんも怒るわよ!」子供の時から行きつけの美容師が驚いて尋ねる。
「いいの!切って!」
「切るのは良いけれど、染めるのは止めたら?」
「だめ!時間が無いの!今日しか日が無いのでお願いします!」
五十センチ程の黒髪を短く切ると言い出した美沙に驚きながら「これ位?」「これ位?」と尋ねて櫛で位置を決める店主に「そこの雑誌下さい」と髪型の掲載された本を手に取り「これにして下さい!」と茶色のショートボブのモデルの写真を指さした。

月曜の朝、ウイークジャーナルの名古屋支店が騒然と成っていた。
「な、何?美沙なの?」同僚の女性が驚く髪型に変身していた。
「本気なのね!確かに判らないわ!これは参りました」小南がお辞儀をした。
「小悪魔的な美しさですね!」三木が惚れ直す様な言葉で湛える。
昼前に「じゃあ、大阪に行って来ます!先ずは面接パスしなければ駄目ですが、必ず潜入します。メールで連絡をしますので宜しく!」
「住まいはどうしたの?」
「マンスリーマンションを契約しました!これが住所です!FAXも付けましたので、これが番号です」小南に手渡す美沙。
昨夜自宅では母の妙子が髪型に驚いたが、千歳製菓を救う為に大阪に行くのだが、先日の事件で顔が知られているから仕方が無かったと泣きながら説得した美沙。

小南は三木に陰ながら見守って欲しいと、直ぐにマンスリーマンションを捜していた。
三木は喜んで行くと言うが、美沙に見つかれば駄目だから陰に隠れてボディガードを頼んだ。
一日遅れて三木も大阪に向う事に成ったが、夕方美沙はクラブJに乗り込んでいた。
「インターネットのホステス募集を見て来たのですが?」
開店前で黒服が数人店の掃除と片付けをしていた。
「インターネットの募集は、ネットで申し込んで案内が届くのだけど知らなかったの?」
チンピラの様な男が美沙に言った。
「でもねえちゃん可愛いな!幾つ?」
「大学四年で二十一歳です」ミニスカートに薄手のセーター姿、化粧は濃い目の美沙。
「もう直ぐマネージャーが来るから、頼んで見たら良い!別嬪だから採用されるだろう?」
しばらくしてマネージャーの黒木が外車を乗り付けてやって来た。
店の側に立っている美沙を見つけて「誰だ?」と掃除の男に尋ねた。
面接の女だと聞いて、ネットで申し込めと追い返せ!と言ったが美沙が黒木の方を向いてお辞儀をした事で「待て!連れて来い!」に変わった。
美沙の笑顔に黒木は直感と美人だ!を見ていた。

小さな部屋に案内されて「ネットで申し込まずに直接来るとはな?書類選考で面接に成っているのだよ!」
「すみません見落としました」
履歴書を見ながら「名古屋の出身で、大阪の大学に?」
「はい、アパートに住んでいます!桜木絢奈です」
「もう就職決まっているの?」
「はい、大阪のKKPに四月から就職します。実は奨学金を少しでも早く返済したいので、五ヶ月だけですが働きたいのです」
「五ヶ月だけなら難しいな!クラブはホステスと客の関係が強いので、四月以降も週に一日でも働けるのなら採用を決めても良い!」
「本当ですか?土曜日だけでも良いでしょうか?」
「日曜と祭日は休みだが、土曜日は忙しい!」
「それじゃあ、土曜日に働きます!それまでは毎日働かせて下さい!」
「それは良いが、一応履歴書の確認をするので、返事は明日に成る」
黒木は可愛くて小悪魔的な美しさに採用をする事で、前向きに検討する事にした。
翌日、新和商事の調査員が住所と身元の調査を簡単に電話で行って、桜木絢奈は確認された、
クラブJのママ、籠谷沙紀子とチーママ森田洋子は履歴書の写真を見て、お互いに可愛くて小悪魔的な美人だと賞賛した。
特に沙紀子は「糀谷専務の好みかも知れないわ」と言った。

翌日黒木マネージャーが「調査はOKでした!明日から入店させますか?」
「明日は専務が来られるから、丁度良いかも知れないわ!」そう言って微笑む。
直ぐに携帯に連絡がされて、美沙に採用の知らせが届いた。
美沙は直ぐに小南に採用が決まった事を連絡して、店用の携帯を新しく持って居ると番号を伝えた。
美沙は常に警戒態勢で、ボイスレコーダー二個、携帯電話二台、身元の判る物は全てアパートに置きクラブJに入店した。
開店前に、ママの沙紀子とチーママ洋子の面接とドレス選びが行われて「写真より実物の方が数段可愛いわ」と褒められた。
「名前は絢奈のままで行きましょう、可愛いからぴったりだわ」
でもドレスでいきなり美沙は驚いてしまう。
大きく胸と背中が開いた物を着る様に指示されて、これなら上半身裸?と戸惑いを見せた。
「今日のお客様はとても大事なお客様なのよ!だからお客様の好みの洋服でおもてなしするのよ!気に入られたらチップを貰えるかも知れないわよ!」
でも殆ど胸の谷間が見えるわ、困ったな!戸惑いを隠せない美沙。
開店前にホステスに紹介された美沙は、お辞儀をするのにも気を使う気分だった。
「今日の大事なお客様の相手させられるのでしょう?」年齢が近い入店一ヶ月の綾乃が、早速話し掛けてきた。
「大事な客って?」
「あのモーリスのお偉いさん!糀谷専務!爺さんだけど直ぐに触るのよ!だからその様なドレスを着せられたのよ!」
「えっ、モーリスの専務?」
「月に一度程しか来ないのよ!触られない様に頑張るのよ!と言ってもそのドレスじゃあ駄目だわね!チップ貰う方に力を入れた方が良いわ」
美沙は初日から大物の登場に興奮して、トイレでボイスレコーダーのタイマーをセットして、腰の部分に巻付けていた。
胸の谷間に入れたら一番録音は簡単だが、触りに来た時に見つかれば全て終ると思った。
多少触られても、重要な話が聞けるのなら我慢しなくては潜入した甲斐が無いと思う。
長い黒髪を短く切って、茶色に染めての決死の潜入なのだ。
小南からは緊急電話はここにしてね、直ぐに急行してくれるからと三木の携帯番号を教えていた。
美沙には見た事の無い番号で、携帯と同じ様に全く異なる携帯を三木に持たせていた。
小南も美沙の覚悟の潜入を応援しているが、見つかった時の用心を考えていたのだ。

九時に成って「もう直ぐいらっしゃるわ!今夜は私と洋子さん、千津さんと絢奈さんの四人ですが、途中洋子さんは抜けますので、千津さん頑張ってね!新人の絢奈さんのカバーをお願いね」そう言われて呼ばれた千津も同じ様な大きく胸と背中が開いたドレスを着ていた。
「千津さんはお気に入りだから大丈夫よ!千津さんを手本にすれば良いのよ!」洋子に教えられる美沙。
その直ぐ後、杖を付いた白髪の老人が眼光鋭く入って来た。
直ぐ後ろを貫禄の有る男が下部の様に付いて来る。
「いらっしゃいませ!専務さん!部長さんもご一緒でしたか?」そう言って出迎える沙紀子と洋子。
糀谷専務が沙紀子ママに耳打ちをすると、ママが黒服を呼んで奧の個室に案内する様に指示をした。
「後一人お見えに成るわ!少し遅れて来られる様です!」と黒木マネージヤーを呼んで伝えた。
「あの新人入れない方が良いですよね!」
「来られたら出す様にすれば良いでしょう!専務のお気に入りの娘に成るから最初はご機嫌を取りましょう」

美沙は今まで着けた事の無いヌーブラに戸惑いながら、お呼びがかかるのを待っていた。
人は服装とかメイクで多少性格も変わるのだろうか?化粧を濃い目にして髪を染めているのが大胆に成れる気がしている。
今目の前にモーリスの専務が、入店初日から出会った幸運に心臓が高鳴る美沙。
もう一人も部長だと聞こえたので、相当上席の人なのだと考えて居た。
その時洋子が「千津さんと絢奈さん!付いて来て!」と言って二人を先導して歩く。
「あの専務はお触りが好きなので触ってくると思うけれど、多少我慢すればチップを頂けますから我慢してね!特に今夜は個室ですから大胆かも知れないから覚悟して接待して下さい!千津さんは心得ているから大丈夫ですが、絢奈さんは適当に拒否しながらで充分通用するわ、でも最後は折れるのよ!」
「は、はい」とは言ったが、電車の中で痴漢に胸を触られた記憶が蘇る美沙。
その時は大声で相手の腕を掴んで「この人痴漢です!」と叫んだ記憶だった。
我慢出来るかな?紐の無いブラジャーも心配だけれど、、、、
「いらっしゃいませ!」個室の扉を開いて入ると、結構大きな部屋で十名程が座れる豪華な造りに成っている。
中央の大きなソファーに座る白髪の老人は、沙紀子ママからおしぼりを貰って顔を拭いている。
「ご紹介しますわ!専務さん!今日入った新人の絢奈さんです!大学の四年生で三月までは殆ど毎日の出勤で、四月から就職されると土曜日のみの出勤に成ります!」
「可愛いでしょう?」ママが専務に言うと絢奈が「この仕事初めてで何も判りませんが、宜しくお願いします」と深々とお辞儀をした。
専務は目の前に絢奈の胸の谷間が目に入って「おお!若々しい美人だな!横へ座れ!」そう言って自分の右側に座る様に言った。
千津は左に必然と座って、絢奈の横に松永部長が座ると絢奈は挟まれる様に成ってしまった。
先程は反対側に座って居た筈の松永部長。
美沙はこれの方がボイスレコーダーには声が充分に入ると内心喜んでいたが、この座り方は専務が絢奈を気に入ったと云う合図だった。
「松永!今夜はこの部屋にして良かったな!」嬉しそうに笑顔に成る専務。
このお爺さんが糀谷専務で、隣が松永管理部長か?もう一人誰が来るのだろう?モーリスの人間では無い様な気がする。
「さあ、何が飲みたい?」専務が女性達に尋ねる。
「私はビール」洋子が真っ先に答える。
「私は白ワイン!貴女方は?」ママが尋ねる。
「千津はいつもの酒だな!」専務が言うと頷く千津。
「絢奈さんは強いの?」
「いいえ、弱いですから、それ程飲めません!」
「じゃあ、千津と同じカルーアミルクを作ってやれ!お子様向けだ!」専務が笑いながら黒服に頼む。
自分達二人は高級なウイスキーが既に運ばれて来て、水割りを作る準備を始めた。
「カルーアミルクって?」全くお酒に疎い美沙が気に成って尋ねた。
「コーヒー牛乳の様な物よ!甘くて美味しいわ」千津が教える。
カルーアミルク
コーヒー牛乳のように甘くて柔らかく飲みやすいカクテルです。
口当たりが良いので、お酒の弱い方でもぐいぐいといけてしまいますが、アルコール度数は決して低くはないので注意する飲み物だ。
早く酔わせて遊ぼうと考える専務は、皆の飲み物が届くと「乾杯!」と自ら発声してグラスを重ねた。
「どうだ!美味しいだろう?」一口飲むのを見て尋ねる専務。
八十歳位の年齢だと思うが、元気溌剌でモーリスの闇の部分の最高責任者だった。
新和商事との唯一のコンタクトはこのクラブJを使って行われる。
通常は松永部長だけなのだが、二ヶ月に一度程度は専務もお楽しみを兼ねてやって来るのだ。
いつも個室は殆ど使わないが、今夜は特別に使うと言う。
何か重要な案件が有るのだと、沙紀子ママは既に感じ取っていた。
「飲みやすいだろう?アルコールも少ししか入っていないから、多少飲んでも大丈夫だ!」そう言って勧めると、千津が一気に飲み干して「専務さんお替り頂いても良いでしょうか?」空のグラスを上に上げた。
「千津はこのカクテル好きだったな!どんどん飲みなさい」
「はい!ありがとうございます」
しばらくして直ぐにカクテルが届くと、飲み始める千津。
「絢奈さんも負けずに飲みなさいよ!」不気味な笑みを見せる専務。
千津のカクテルとは見た目は同じだが、酔いが廻る薬が混入されていた。
個室の中は異常に乾燥して温かい設定に成り、喉が渇いて飲み物が欲しく成る様にされている。
専務が絢奈を気に入った様なので、急遽色々と準備をした黒木と沙紀子ママ。
糀谷専務が喜べば自分達の評価が上がる。
上手く運べば瑠美子の様にJクラブの所属にして、色々な仕事をさせる事も出来ると考えていた。
「専務!私もお替り頂きます!」白ワインを飲み干してママもお替りを頼むと、洋子も負けじとグラスビールの注文をした。
しばらくして「今夜はペースが早いぞ!」松永部長が言って、机の上に一万円を数枚積み上げた。
三十枚は在る様に見えるが、それが何なのか?意味が判らない美沙。
「今夜のチップはこれだけだ!専務を喜ばせば貰えるぞ!」と松永部長が言う。
「新人!早く飲まないと駄目だろう?千津はもう三杯目だ!」
さり気なく背中に手を廻して肩甲骨に触れる専務。
急に触られてドキッとして、背筋を強ばらせる美沙。
その様子に初心な女だな!本当に水商売の経験が無い様だと感じ取る。
美沙もどの様な事がこれから起るのか?肝心な仕事の話は全く無いがもう一人の人物が来てからなのだろうと思っていた。
誰が?来るのだろう?と思った時、グラスを持って飲まそうと専務が美沙の口元に持って来た。
「さあ、飲みなさい!」
「あっ、は、はい」と口を少し開くと、一気に流し込まれる。
「うぅ、げぼ」慌ててハンカチで押さえる美沙。
「少し飲めた様だな!美味しいだろう?早く酔ってチップを貰いなさい」
「酔ったら頂けるのですか?」
「そうだな!酔うだけなら一枚だな!」
「専務、千津苦しく成って来たわ、少し背中を緩めて頂けます?」
そう言って専務にドレスの背中を向ける千津。
「そうか、苦しいのか?」背中のジッパーを少し下げる嬉しそうな専務。
「二枚だな!」松永部長が一万円札を畳んで、千津の前に置いた。
「ありがとうございます」正面を向くと、胸の谷間が大きく開いて専務の方から良く見える様に成った。
専務の左手がその谷間に消えるのに時間は掛らなかった。
「専務さん!もっと優しく」千津が言い始めると、洋子は席を立って黒服に「あの子に二杯目を持って来て!」小声で言って個室を出て行った。
殆ど一杯を飲まされた美沙は身体が暑く成って、喉が渇いている事を感じていたが、まだ酔っ払っている様な気分には成っていなかった。
「千津!もう二枚追加だな!」胸を揉みながら専務が言うと「ありがとうございます」笑顔で言うが、既に千津の片方の乳房が時々見え隠れする程専務が触っている。
「新人!お前は苦しく無いのか?」
背中から腰の辺りまで右手で触る専務に「いゃーエッチ!」と言って立ち上がる美沙。
「まあ、はしたないわ!絢奈さん!専務さんにお尻を触られた位で騒いでいたら、千津さんの様にチップ貰えませんよ!」ママが窘めるが、怒ってはいない。
この様に焦らされるのを楽しんでいる専務を知っているからだ。
もう直ぐ酔いが廻って、専務の自由に成るから喜ばれるのは決まっていたからだ。
二杯目が運ばれて来ると、千津も暑いので再び注文する。
ママは時計を見ながら、もう一人が来る前にこの絢奈を部屋から出さなければいけないが?大丈夫か?と心配になり始めていた。
「さあ、二杯目が来たわよ!喉が乾いているでしょう?早く飲みなさい!」グラスを持って絢奈に手渡す。
「おおーようやく二杯目か?一気飲みをしてみろ!一枚やるぞ!」
一杯飲んでたいして酔わない様な気がして、絢奈は「一気で飲んだら一枚貰えるの?」そう言って微笑む。
「そうだ!やるぞ!就職祝いだ!」
一杯飲んで自信が出来たのか、怪しまれない様にする為にもここは相手の懐に飛込む気分で小さなカクテルグラスのカルーアミルクを飲み干した美沙。
「おおー良い飲み方だ!一枚差上げなさい」
松永部長が一万円を畳んで絢奈の前に置いた。
「ありがとうございます」笑顔でカクテルグラスをテーブルに置いた時、急に目眩がした美沙。
「あっ、目が廻って、、、」テーブルにもたれかかる美沙。
「一気飲みして、目が廻ったのか?」
「は、はいーーその様です!」
「少しここに、、、、」そう言って自分の膝の上に絢奈の身体を俯せに寝かせる専務。
「ありがと、、、、」既に目が廻って動けない美沙、話し声が遠くで聞こえる。
「苦しいだろう?」背中のジッパーを少し下げる専務。
その時「社長がお越しに成りました!」黒木が伝えに来た。
「千津さん!もう良いわ出なさい!」
「この娘は?どうしましょう?」黒木が尋ねると「もう酔っぱらって何も聞こえない!私の膝の上で眠らせて置け!」専務が間髪を入れずに言った。
これから遊ぼうと思っていた糀谷専務は名残惜しいのか、今度は美沙を膝の上に仰向けにして乗せて新垣社長を迎え入れた。
「新垣君!久しぶりだな!」
「専務!ご無沙汰しています!その子は?」
「大丈夫だ!酔っぱらっているから、何も聞こえない!」そう言いながら緩めて広がった旨の谷間に手を入れる。
「うぅ、いゃーだめ!」無意識に口走っていると思っている専務。
美沙は辛うじて意識が残り、新垣の名前を確かに聞いていた。
「大丈夫ですか?」新垣社長が覗き込む。
「心配いらない!大学生で薬の入ったカクテルを飲ませているから、酔っている」
「頼まれていたみどり青果の件ですが、やはりお宅の安田が絡んで居た様です」
「予想していた通りですね」松永部長が言った時、専務の手がヌーブラーのセンターホックを指で外していた。
ヌーブラが緩んで「あっ、あぅ」声が出る美沙。
「警察が例のひき逃げの車の件で再三来ましたが、盗難届けを先に出していましたので大丈夫かと思います」
「安田の行方を続き追ってくれ!」その後はJクラブの話に移って三人は何処かの会社を陥れる事を相談していた。
糀谷専務の手は美沙の乳房を覆って揉み始めていた。

残された会話

「うぅ、あぅ」専務の手が美沙の乳房に触れて声が出て驚く二人。
「桐谷は何処に匿った?」
「関係先で事務の仕事をさせています。村中工業です!」
「絶対に見つかっては駄目だ!使い道が無く成れば消せ!危険だ!」
乳首を弄くる専務の指に「あっ、あっ」再び声が出る美沙に二人が覗き込む様に見る。
「可愛い娘だろう?殆ど男を知らない様だぞ!」そう言う糀谷専務の手は、衣服からはみ出した美沙の乳房を揉みながら揉み上げていた。
「専務そろそろお時間です!」松永部長が時計を見て言うと「この娘は私の専属にしよう!」そう言ってママを呼ぶ。
沙紀子ママが入って来て「まあまあ!専務さん!楽しまれたのですね!」乱れて胸を露出させた姿を見て言った。
「この子は良い子だ!私専属にするぞ!大事にして置いてくれよ!」笑顔で言いながら、ゆっくりと自分の膝から美沙の身体をソファーの上に寝かせた。
胸元は大きく広げられて、辛うじてドレスの布で隠れているだけだった。
「また近日中に来るよ!今夜は次の約束が有る、この子が居る事を知っていたら、約束をしなかったのに残念だ」そう言って個室を出て行った。
新垣は専務が出て行くと、美沙の眠りを確かめる様に顔を近づけて調べると「本当だ薬が効いて何も聞こえていない様だ!」安心した様に個室を出て行く。
沙紀子ママは乱れた胸を整えて、そのままの状態で眠らせて閉店時にアパートまで送る様に黒木に指示した。
千津が「あのお爺さんに気に入られたら、恋愛も出来ないよ!嫉妬深いからな!おっぱいを舐める位しか出来ないのに、好きなのよね!」そう言って同僚に話した。
四万しかチップが貰えなかったと、残念そうに言う千津。

深夜に成ってようやく目覚めた美沙は、自分の服装とか身体の異常を調べたが別に異常は無く、頭が少し痛い状態だった。
酔っぱらった処までは覚えていたが、それ以上の記憶は無い。
身体に巻付けていたボイスレコーダーの無事を確かめた時、個室に沙紀子ママが入って来て「起きたの?カクテルを一気飲みして倒れたのよ!小さい器だと油断したのだわ、今後は気を付けてね!」
「すみませんでした!」
「黒木が自宅まで送ってくれるから、着替えて来なさい!具合が悪かったら明日は休んで良いわよ!」
「はい、頭が痛いのでお言葉に甘えさせて頂きます」
美沙は茶髪の頭を押さえながら更衣室に向った。

自宅に帰ってボイスレコーダーを再生して、自分が薬を飲まされて眠っている時に、胸を触られた事実が判り直ぐに風呂場に駆け込んだ。
乳房の色が変わる程石鹸で擦って、自分の失敗を悔やんだ。
唯、酔っぱらった事で重大な事実を掴めた事は確かだと、潜入したのだからこの程度で終って良かったと思った。
短い髪を洗い湯船に浸かって、色々な事を思い出そうとしたが、新垣社長が入って来た時までしか思い出せなかった。
その後ボイスレコーダーを再三聞きながら、昨夜の話を纏めながら眠ってしまった美沙。

翌日再び歯を食いしばりながら、自分の嗚咽を聞きながら昨夜の事実を纏めて小南に電話をした。
今回の潜入初日で得た事実
①偽の役所職員の桐谷は村中工業に勤めている。
②クラブJはモーリスと新和商事の秘密の連絡場所
③モーリスの闇の仕事のリーダーは糀谷専務と松永部長。
④みどり青果にはモーリスの元社員安田が関与している。
⑤Jクラブと云われる組織は得意先を陥れる為に使われているらしい。
⑥ひき逃げの事件は新和商事が行った様だ。
今回判明したのはこれ位ですね!
小南にFAXを送ると「凄い事実が判明したのね!大丈夫?怪しまれてない?」
「大丈夫よ!ちょっと酔っぱらったけれど、今度は大丈夫よ!」
「気を付けないよ!緊急の電話番号忘れないでよ!」
「大丈夫よ!一発発信出来る様に登録して有るから、近い時期にまた糀谷専務が来るようだから、もう少し探ってみるわ」
「取り敢えず本社には役所の偽職員の潜伏先と、Jクラブの存在をレポートにして送るわ!小島企画部長の驚く顔が見えるわ!髪を切って潜入取材は大きな成果だったね!」
「もう少し頑張るわ!」
「来週第一弾の記事が出るわ!でもそれはモーリスのCMの様な記事だからね!第二弾が楽しみよね!」
その日の夕方記事に纏めて小南がメールで本社の小島企画部長に送った。
小島企画部長からは必ず自分宛のメールで送る様に、強く言われていた小南。
内容が他の職員に露見すると困るのが理由だった。
モーリスの暴露記事を内密で作りあげるのが絶対条件のスクープに成るからだ。

夜遅く小島企画部長が小南の携帯に電話をしてきて「もの凄いスクープ記事を手に入れたな?この続きが有るのか?」
「他にも有りますが今取材中です」
「このスクープを知っているのは君と誰だ?」
「この記事を取材したのは赤城です!今は私と赤城しか知りません!」
「そうか、それなら絶対に誰にも喋るな!モーリスに知られたら終りだ!赤城はどの様にしてこのスクープを手に入れた?」
「はい、大阪のクラブJにホステスとして潜入して、このスクープを手に入れました!」
「何!クラブに潜入しているのか?大丈夫か?」
「はい、まだ見破られてはいません!」
「充分注意する様に伝えてくれ、相手は暴力団も背後に居る様だぞ!」
「はい、充分注意をする様に伝えます」
「ご苦労だった!また新しい事実が判明したら直ぐに連絡をくれ!」
小南はこのスクープはモーリスの根幹を揺さぶるだけの事実だと改めて確信した。
小南は小島企画部長が大いに喜んだ話を美沙にした。
美沙は「潜入取材の成果が認められたのね!髪を切った甲斐が有ったわ」
「来週第一弾が発売されるから、ノー天気親子有頂天に成るわね!お父さんの方は順調?」
「順調らしいわ、殆ど毎日心配して電話を掛けてくるわ」
「そりゃそうでしょう、箱入り娘がいきなりクラブに潜入取材!それも茶髪にして驚かない方がおかしいでしょう」
「みどり青果の事も判るかも知れないから、もう少し頑張ってみるわ!専務のあの様子なら来週位に来るわ!もっと大きなスクープ待っていて!」

一週間が過ぎ去り、モーリスの特集記事の号が発売されて松永部長も上機嫌で記事を読んでいた。
「この記事を読めば、千歳製菓の売上げが三割は増えますね」
「もしかしたら五割増加も知れないぞ!村井課長も災難に見舞われたが、その様な記事は何処にも書いて無い!先ずは目出度し目出度しだな」
「はい、私も心配はしていましたが、娘の誘拐は寧ろプラスに成った様で安心しました」
その様な話をしている時に「部長!お電話です!」女子事務員が内線で呼んだ。
「誰なのだ?」
「名前は部長に話すと言われています!悪戯電話でしょうか?」
そのまま電話を取ると「松永さんに買って貰いたい記事が有るのですが?」
「君は誰だ!」
「そうですねJクラブとでも名乗りましょうか?」その言葉に松永は凍り付いた。
「何を幾らで買えと言うのだ!」
「メールで部長宛に送りますよ!アドレスは最初がmatunaga@でしょう?金額は一億です!駄目なら週刊誌に売りに行きます」
「馬鹿な!一億なんて払えるか?」
「そうでしょうか?ご覧に成れば直ぐに支払いたく成りますよ!今日は良い記事が出ましたが、来週は吹っ飛ぶ様な記事に成りますよ!ははは」
電話が切れると村井課長が唯ならぬ様子を見て「どうされたのですか?」
「いや、悪戯電話だ!気にせずに席に戻りなさい」
直ぐにパソコンのメールを調べるが、何も受信はしていない。
だがJクラブの事を知っている人間には間違いが無いと、顔が硬直する松永部長。
その時メールが届いて、部長の顔が蒼白に変わるのに時間は必要無かった。
「先程の方から電話です」
「ご覧頂きましたか?一億払う値打ちが有るでしょう?お支払い頂ければこの事実を知っている者を教えますよ!現金で準備して下さい!」
「いつまで待つ?」
「来週ですね!月曜日にしましょう。受け渡し場所は払う意志が決まれば連絡下さい!メールに返信頂ければ大丈夫です!それでは糀谷専務とご相談下さい」
「ま、まて!」と言ったが既に電話は切れていた。
松永部長は直ぐに糀谷専務に電話をするが、今日は自宅に居るので出社は無いと秘書が言った。
松永部長は急いで車を飛ばして糀谷専務の自宅に向った。

「どうしたのだ!慌てて何か一大事か?」
「専務大変です!Jクラブと名乗る男が、この様な記事を買って欲しいと言って来ました」
「Jクラブ?記事を買え?」
「幾らだ?」
「一億だそうです!」
「何!記事を見せてくれ!」
ノートパソコンを立ち上げると、そこにはJクラブの存在、桐谷と云う偽の役所職員が今村中工業に隠れていると書かれて、他にも有るが今回はこれだけで充分だろう?と書いて有る。
「この様な事実が表に出れば、我社は終りです。土地転がしの事実も露見してしまいます」
「Jクラブの存在を知っているのは誰だ?」
「黒木マネージャー、新垣社長、沙紀子ママ、洋子さん、それ以外は私達だけです!派遣されているJクラブ所属の女達も多少は知っていますが、その様な事を話す筈が有りません」
「松永!私でも新垣社長から聞くまで桐谷の職場は知らなかったのだぞ!この男両方を知っている?誰だ!」
「あの時、新垣社長と私と三人でした!ママもチーママも聞いていません!社長が誰かに喋ったのでしょうか?」
「それは絶対に無い!松永!もう一人あの部屋に居たぞ!」
「ホステスの絢奈ですか?」
「そうだ!あの可愛い女だ!まだクラブに勤めて居るか確かめろ!ライバルの手先か、警察?警察がホステスには成らないな!」
松永部長が黒木マネージャーに尋ねると「毎日出勤している様です」
「そうか!スパイなら、これ以上の何かを掴もうとしているな!」
「一億の要求男とグループでしょうか?」
「違う可能性も有るな!今日脅迫してきたのにまだ働いたら危険だろう?」
「では、関係無いのでしょうか?」
「一応ママに連絡して監視させろ!持ち物にも注意だ!先日の時は完全に薬が効いて意識が殆ど無かったのは間違い無い!」
「すると録音でもしていたのでしょうか?」
「その可能性が一番高い、三人しか知らない事を知っていたのだからな!」
「もし、彼女の仕業ならどの様に致しましょう?」
「中々可愛い女だから、殺すには惜しいだろう?新垣に始末させれば良いだろう?」
「薬漬けで海外ですね!」
「この様な場合は暴力団の力が一番だ!だがあの脅迫男が誰なのか?それを確かめなければ、夜も眠れないだろう?」
「仲間で無い可能性も有るとおっしゃいましたが?」
「もし彼女が犯人なら、情報を流した人物は知っているだろう?」
「成る程!自白させるのですね!」
「手荒な事をして品物に傷を付けたら駄目だ!あの娘なら高く売れる!」不気味な笑みの専務。
美沙に危険が迫っていた。

運ばれた美沙

「あの女が情報を流したかの確認が一番だ!至急調べろ!」
「はい、持ち物と行動を監視させます!」
「泳がせて脅迫男との接点を探れ!」
「お金は用意しますか?」
「準備はして置け!あの女が仲間なら、交換出来るが違う場合は厄介だ!」
直ぐに沙紀子ママに指示が飛んだ。

早速クラブで更衣室を監視する洋子とママ。
ポーチの中に入っていると目星を付けると、洋子とママの連携プレーでポーチを置いてお酒の交換に行かされる絢奈。
洋子と一緒に席を立つと、ライターを捜す振りをしてポーチの中を調べて「有った!」と小さく叫んだママ。
二人が戻ると直ぐに松永部長に連絡して、次の指示を待つ事に成った。

「やはり、専務の予想が的中でしたね!どう致しましょう?」
「脅迫男との関係を調べなければ、交換も出来ない!」
「簡単に自白しますか?」
「我々の本丸に潜入する様な女だ!普通では口を割らないだろう?それにもし脅迫男と仲間で無い場合は喋れないだろう?」
「それではどの様に致しますか?」
「中之島病院に放り込め!院長に頼んで置いた!」
「精神科ですね、吉高フーズの社長を入院させた病院?」
「あそこなら、自白させる薬も有るので真相が判る!その後は新垣に頼んで海外に売り飛ばせ!知り過ぎは命取りだ!可愛いので油断した!糞!」舌打ちする専務。

松永部長から沙紀子ママに指示が伝えられて、明日の土曜日の夜中之島病院に連れて行く事に成った。
何も知らない美沙は、今夜もモーリス関係の客が無かったと肩を落として帰って行った。
近所に住んでる三木は、アパートの灯りを見て安堵の表情に成って眠った。

翌日の昼間、松永部長のメールに「お金は新大阪駅の新幹線中央改札の一番右に鞄に入れて持って来い!私はハンティングの帽子にサングラス姿で受け取りに行く!小細工をすれば直ぐに記事に出る!桐谷を始末しても証拠は残るから、諦める事だ!他にも沢山の悪事の証拠は握っているから、一億は安い!」
直ぐに松永部長は糀谷専務に相談に向かった。
「確約の証拠を貰わなければ払えないと伝えろ!あの女の情報以外に何か持っているな!」
「女の話で揺さぶりますか?」
「それもしてみろ!」
松永部長はメールで確約の証拠を要求して、情報源を知っていると伝えた。
「漸く判ったのか?その女は差し上げる!煮て喰おうが焼いて喰おうがお好きに!」
返信は馬鹿にした様な文章で、益々怒る糀谷専務。
「信用以外に無い!安心したら良い!一億貰えば、その女意外に情報を知っている人間を教えるから、好きな様に処分すれば良い!」
再びメールが届いて「信用する以外無い様だな!この男も相当な悪者だ!あの様な若い娘に恐ろしい仕事をさせて、自分は一億を手に入れて逃げるのか!」
糀谷専務も脅迫男に呆れる。
「あの女は予定通りにするのですね?」
「脅迫男との接点が必ず有るから、明日実行だ!知り過ぎているだろうから、色々聞いてから始末するのだ!」
「新垣社長にも詳細を伝えますか?」
「今後の事も有るから、全ての段取りを話して準備をさせろ!」
数日後には一億を支払う準備をして、専務は会長に許しを得る為に報告に向かった。
会長は「全てを任せていますから、揉み消して下さい!」
それだけ言うと闇の資金の出金を許可した。
長年闇の部分を任せていたが、過去にはこの様な大金の出金は無かった。

土曜日の夜、仕事が終わるとママが「今夜もご苦労様でした!売り上げ達成が出来たので乾杯しましょう!皆さんには、金一封が出ています!」
「はい、シャンパングラスを持って下さい!」
「嬉しいわ!金一封って幾らなの?」
「久しぶりね」
封筒とシャンパングラスが洋子の手で配られる。
「一万だわ!ありがとうございます」口々に言って嬉しそうに「乾杯!」と大きな声で言うと、一気に飲み干す。
「帰りましょう!」
「詢奈さんは、今夜も黒木が送ってくれますからね!」
「いつもすみません!」
タクシーで帰る日は半分程度で、何度も送って貰っているから全く怪しまない。
ホステスが部屋をでると、何だかんだ急に睡魔に襲われる美沙、今夜は酔う程飲んで無いのに疲れ?と思ったが先日の酔いを思い出し、薬?専務の所に連れて行かれる。
咄嗟に思った美沙は携帯の緊急電話のボタンを押した。
「もし、もし」聞き覚えの有る声が聞こえたが、声が小さく成っていく。
「たす、、け、、」
「どうした!直ぐに向かう!待っていろ!」
「、、、、、、」
その後は全く聞こえ無くなった。
三木は近くのコンビニで夜食を食べていたのを、放り捨てて飛び出して行った。
「美沙!」叫びながら走るが、信号は無情にも赤に変わった。

「眠った様だわ!運びましょう?」
着替えてからの、乾杯に成っていたのでもう誰も居ない。
黒木が美沙を抱き抱えて、通用口から出て車に運び込む。
その時、向こうに三木の姿が見えるが、車は助手席にママが乗るのを待って発進した。
「あの車か?」
そう思ったが、まだ店に居るかも知れないと通用口を叩くが、反応は無かった。
「ママ、誰か店に来た様ですが?」
ミラーを見て黒木が言うと「変な酔っ払いでしょう?女の子の帰りを待つ男がいるのよ!」
そう言って笑った。

精神病院

「この子も大胆な事をするから驚きだわ!モーリスと新和商事の悪事を暴こうとして、一億円を揺すったらしいわ!」
「暴力団を揺するとは、この可愛い顔にそれ程の度胸が有るのが驚きですね!」
「でも見破られたら地獄行きだわ!もう二度と戻れないわ!」
「吉高フーズの社長は、狂い死に成ったでしょう?中之島病院に入れられたら終わりよ!」
「この子は可愛いから、新垣社長に売り飛ばされるわね」
「東南アジアですね!薬漬けにされてSEX奴隷として売られるのですね」
「可愛いから命が助かるけれどSEX人形だわ!毎日毎日男に抱かれて麻痺してしまう!売られる前に避妊手術をされるから、妊娠の心配も無くなるのよ!」
「怖いですねー」
「何も考えられないから、ある意味幸せかも知れないわ」
中之島病院と云っても中之島に在る訳では無く院長の名前で、高槻の外れで殆ど疎外された場所に在った精神病院だ。

三木は異常事態を小南に連絡して小南は三宅刑事に伝えると、車のナンバーの一部と車種で緊急配備に入って、一時間後検問が始まった。
検問は高槻には無く、既に東の空がぼんやりと明るく成った頃、車は中之島病院に到着した。
裏口には看護師が二人連絡を貰って車椅子を準備して待っていた。
黒木が美沙を抱き抱えて車から、車椅子に載せると看護師が「入院患者さん、お一人お預かり致しました!病名は色情狂ですね!こちらにサインをお願いします!」
そう言われて沙紀子ママが「そうなのです!男を見たら直ぐに裸に成るのです!」
そう言いながらサインを終わる。
「確かに入院手続きは終わりました!ご苦労様でした!」
車椅子を押して病院の通用口から入って行くと「ガチャン」と鉄格子が閉じられる音がした。

「何故あの様な事を尋ねたのでしょう?」
「多分入院患者を受け入れるのに、必要なのでしょう?警察が万が一捜しに来ても、色情狂の若い娘を預かった事に成るのでしょうね!」
「色狂いは男女同じ程居る様ですね」
「男性の方が世間では多い様に思われていますが、女性も多いのよ
その様な話をしながら二人は帰って行った。

「中々可愛い子だわ!」車椅子の美沙を見て言った。
「久しぶりに楽しめそうだわね」
「パジャマに着替えさせて、身体を調べておきましょう」
静内真紀子と秋山秀美は、車椅子から美沙を抱き上げて薄手のセーターを脱がせる。
キャミソールの肩紐を横に落とすと、白のブラジャーに包まれた胸の谷間を見て「綺麗な乳房の様だわ」
直ぐに背中のホックを外すと、肩紐も外して前に落とした。
「ほら、綺麗な乳房で乳首も小さい」
「遊んで無い様な乳房ね」そう言いながら、下から揉み上げる。
「うぅ」急に声が出る美沙。
「感じ易い体質かも?」
今度はスカートのジッパーを下げて、スカートを直ぐに腰から足先に脱がせてしまい。
キャミソールを同じ様に脱がせて、パンストの腰の部分にハサミの先を入れる。
二人の看護師はこの病院での段取りを聞いている様で、他の看護師とは異なる様だ。
新垣が送り込む看護師と医師が数人がいる様だ。
パンストを切り刻む様につま先から抜き取りパンティ一枚にした。
「あのパンツ、持って来て!」机の上に有る大き目パンツを指差した。
「さあ見てあげるわね、不妊手術以外にも手術が必要なら、先にしてもらわないと時間がかかるからね」
そう言いながらパンティに指を入れて脱がし始めた。
「この子、男が居ない様だわ!これ見て!」
半分ずり降ろされたパンティの下から、全く手入れのされていない陰部には黒々とした陰毛が覗いていた。
「本当ね!もしかして処女なの?」
「その様な娘がクラブに潜入して、新垣社長を苦しめたの?」
「これからは、自分のした事を悔やみながら、腰を振る様に調教してあげるわ!」
パンティを足首から脱がせて抜き取ると「秋山さん!足を持って広げて貰えますか?」
秋山は美沙の右足を持って大きく引っ張って広げると、美沙の陰部が剥き出しに成った。
「ほら、肛門迄一杯生えてるわ!」そう言いながら、陰毛を指で掻き分けて「クリトリスは完全包茎ね!手術の必要有りだわ!」
「あっぁっ」声が出る美沙。
「感じ易い様だわ!次は俯せにして臀裂を広げて貰える」
美沙の身体を俯せにして、秋山がお尻の肉を大きく広げると、綺麗な肛門が呼吸をしている様にひくひく動いた。
「大丈夫の様ね!この子お尻も使えるわ!調教次第で二穴SEXね」
秋山が大き目のパンツを履かせて、パジャマの上着を着せる。
膝までしか丈の無い、スカートを巻き付けてマジックテープで留めた。
「検査はおわったは!病室に行きましょうね」
再び車椅子に乗せられて、鉄格子の有る部屋にそのまま入ると、ベッドに抱え上げて横にした。
「今日は院長先生の診察から、始まるよ!もう少しお休み!お嬢さん」
二人は鉄格子を閉めて病室を後にした。
「あの子の身体は、多分男を知らない処女だと思うわ」
「検査表に書く?」
「確実では無いから、可能性大にして置くわ」
① 処女の可能性大。
② アナルは調教次第で充分使える。
③ 陰毛は濃くて手入れ無し。
④ 乳房は形が良くて感度も良い。
⑤ クリトリスは完全包茎で、手術の必要有り。
総合的に見て、スタイル、感度、顔、身体のパーツ全て一級品です!
調教次第で高級娼婦で、特別なプレーも可能な逸材です!
静内真紀子の検査結果が新垣社長に送られた。

翌朝、新垣社長は資料を待って、専務にお伺いに向かった。
「中々の結果だな!生かして置くなら海外以外考えられないので、重要な話を院長が聞き取り次第始末に入れ!美人だから金に成る!金持ちの好き者に売れば良い!早速打診しなさい」
「はい!判りました!溝端先生と金田先生にお願いする予定です!」
「あのサド女医さんか?良い成果が出るだろ」
新垣社長が二人の先生に、許可が出たので病院に向かう様に指示したのは十時過ぎだったが、溝端淳子医師は既に病院に着いていた。
静内真紀子から、早朝FAXが送り付けられて面白いと、わくわくしてやって来たのだ。
元々新垣社長が、今回の事件と今後の方針を伝えたので準備はしていた。
「もう、病院に来ていますよ!早速始めて良いのですか?手術をすれば二週間程度は治癒の期間が必要ですから、早目に行った方がその後の調教がスムーズに出来ると思いますね!」
「静内の報告では処女の可能性大と書いて有るが?」
「もしも処女なら、社長にお願いする事にしましょうか?」
「私が地獄行きの切符を切る必要が有るだろうな!」そう言って思わぬ役目に嬉しそうに言う新垣社長。
改めてその様な初心な娘が何故、潜入調査をしたのか?不思議で揺すっている男との関係が理解出来なかった。
経緯はともかく、モーリスと新和商事の秘密を掴まれた事実は変わらないので糀谷専務の判断は正しいと思った。

精神鑑定検査

「今日早速手術をおこなって、本人の自信を砕いてしまいましょう!処女の検査もしますので報告します!」
「院長の診察で何者なのか?どれ程の情報を掴んでいるのか、脅迫男との関係を調べるのが一番だ!」
「判りました!連絡します」

十時すきに美沙はようやく目覚めて、周りを見渡して鉄格子を目にする。
そして自分の服装を確かめて「何?」大き目のパンツに驚くが、体調の変化は無い様に感じた。
ここは何処なの?鉄格子を持って「誰か!居ないの?」思わず叫んだ。
監視カメラを見ている看護師が食事を準備して向かった。
看護師の姿を見て「ここは病院なの?」恐る恐る尋ねた。
「桜木さん、お目覚めね!お腹空いているでしょう?食べなさい!」
「何故、病院に鉄格子が有るの?出して下さい!」
「ここは精神的に障害の有る人の病院ですから、隔離の病室に成っているのですよ!」
「私は何処も悪いところは有りません!出して下さい!」
「今朝運び込んだ方からは、精神障害が発作的に起こると聞いています」
「誰ですか?誰が連れて来たのですか?私は何処も悪いところは有りません!」必死で訴えた。
「それは、もうすぐ院長先生の診察が有りますので判断されます!とにかく食事をしてお待ち下さい!発作的な病気はいつ発症するか判りません!」
それだけ話すと踵を返すので「待って!」叫ぶと振り返って「半時間後に診察が有りますので、先ずは食事をしてお待ち下さい」それだけ言うと姿が遠くに成った。
「ちょっと!」叫ぶが全く無視されて、仕方無く食事をして待てば院長に話すと出られると思う美沙。
昨夜シャンパンで乾杯して、薬が混入していた事は明らかだが、誰の仕業なのか?そしてこの病院は何処に有るのだろうと考えながら、食パンを食べて牛乳を飲む。
お腹の空き具合から、昼近いと推測した。
先日の様にあの専務に身体を触られた形跡は無い。
しばらくして先程の看護師が食器を片づけに来たので「私の持ち物は?」と尋ねた。
「何も持たずに、道ばたで倒れて居て起き上がり錯乱状態だったと、救急隊員の方が話されました!」
「私救急車で運ばれたのですか?」
「裸足で服は泥まみれでしたと聞きました!」
「えっ」美沙は全く記憶が無い話で困惑した。
でも先程、桜木と呼ばれたので桜木を名乗るのが良い様だわと思った。

またしばらくして「桜木さん!院長先生の診察ですよ!」二人の看護師が鉄格子を開けて入って来ると「手を前に出しなさい!」と言う。
手を出すと「えっ、何をするの?」手錠が差し出した右手首にはめられた。
「病室から出る時は、必ずしなければ出せません!暴れると危険ですからね!」
「私は病気では有りません!」美沙が訴える。
「行きましょう!」無視して歩き始める。

囚人の様に連れられ診察室に入ると、看護師が数名居て「色情狂で入院された桜木さんです!」と背中を見せている院長と呼ばれる男に告げた看護師。
「色情狂って?違います!何かの間違いです!ここは何と言う病院ですか?」
「ここは中之島病院と云う精神的に障害の有る人が入院する所だが?」
そう言いながら身体を正面に向けた。
細身の神経質な感じの院長は「椅子に座りなさい!発作的に発症するらしいが、今は正常の様だな!」
「何処も悪く有りません!気が付いたら病室にいたのです!」
「そうですか?では質問を色々して、写真も見て反応を見る事にしましょう?検査室に連れて行きなさい!」
検査室は薄暗く、大き目の椅子が中央に置いて有り「その椅子に座りなさい!院長の質問に答えて、目の前のスクリーンの写真を見て脳の反応を、横のグラフに表示される数値で検査をおこないます」
「はい」検査をすれば自分が正常だと証明されると思った。
椅子に座る美沙の腕を、肘置きにベルトに固定して血圧を測る様な物を巻き付けた。
「院長先生!準備で来ました」
「名前を言って下さい!」
少し考えて「桜木絢奈です!」と答えた。
「仕事は?」
「大学生です!」横のグラフが動く。
「他に何か仕事かバイトをしていませんか?」
「北新地のクラブJでバイトをしています」
「目的は何ですか?」
「奨学金の返済です!」そう言った時、大きく針が動く。
「何か隠していますね!」
「いいえ!何も隠していません!」再び大きく針が動く。
院長が操作してグラフの針を動かしているのだ。
「変ですね、正直に答えていませんね!次は写真を見て何をしているか答えて下さい!色情狂の検査です!」
いきなり前に男性自身のアップが映し出された。
「あっ」顔を横に向けて驚き顔に成って、頬が赤く成った。
グラフの針が大きく動くと「早く答えて下さい!」
「ぺ、ペニスてす!」グラフの針が動いて止まらない。
「もう少し正確にお答え下さい!」
「男性の方のペニスです!」
「次!」
画面にSEXのアップ写真が映し出されて、動揺しながら「もう辞めて下さい!」大きな声で言う美沙。
「もう一度質問します!グラフJで働いている目的は何ですか?」
「奨学金の返済です!他に何も有りません!」
再びグラフの針が大きく動くと、今度は画面に女性の性器が大きく映し出されて、針が大きく動いている。

婦人科の恐怖

「辞めて下さい!私は病気では有りません!」
「いいえ!確かに色情狂の症状が認められます!入院加療が必要です!」
「違います!助けて!」必死に訴える美沙。
検査が終って院長が「溝端先生の治療を受けて下さい!連れて行きなさい!」と言った。
「いゃーー助けて!」
暴れる美沙を四人の看護師が椅子から立たせて、両脇を抱えて検査室から連れ出す。
「いゃーー助けて、私は病気では有りません!」大きな声で振り返りながら訴える。
「みなさん、全員その様に言うのよ!早く治療を受けて完治して下さい!」
「違うの、私は病気にされて連れ込まれたのよ!病気では有りません!」
「溝端先生の手術を受ければ落ち着くわ!」
「手術?何の手術?何処も悪く無い!」腰を落として抵抗する美沙。
「もう直ぐ着くから、歩きなさい!」美沙の尻を押す。
二人の看護師は、事情を全く知らないで静内と秋山の指示に従っているだけで、美沙を本当に色情狂の患者だと思っている。
確かに若い子でもこの病の子は居て、時々入院してくるので院長が診断すれば間違い無いと思う。
「可愛いのに可哀想ね、早く治療をして普通に成りなさいよ!」お尻を押しながら言う。
女性専用手術室と書かれた部屋が美沙の目に飛び込むと「いゃーー助けて!何処も悪く無いーー」思い切り暴れる。
男の看護師が急遽呼ばれて、二人がやって来て「暴れるのよ!お願いします」二人の男性が「大人しくして!」そう言うと、抱え上げて部屋の中に連れて入った。
「ご苦労様!手術台にそのまま載せて貰えますか?」溝端医師が既にマスクに、ゴム手袋を履いて準備が終わっていた。
「いゃー手術は必要有りません!助けて!私は何処も悪く有りません!」
「静内さん、猿轡を!」既に静内と秋山もマスクと手袋付けて助手の準備が終わっていた。
二人の看護師に、ご苦労様と言い部屋から追い出した。
手術台に載せると「さあ、暴れないで口を開きなさい!やかましいから迷惑なのよ!」
麻酔をして全ての処理をするのは、簡単だが身体が覚え無いので敢えて局所麻酔で、クリトリスの表皮を全て剥いてしまうのだ。
徐々に身体が諦めて順応すれば、次の調教に進み完成させる予定だ。
今度は口を真一文字に閉じて抵抗する美沙。
この時既に両手はベルトで拘束されて、両足も膝の部分が樹脂の固定具に載せられ革のベルトが巻き付けられていた。
足が閉じているのでそこに神経が向いて無い美沙。
鼻を摘まれて苦しく成って口を開くと、タオル生地で作られた猿轡が口に押し込められた。
「うぅ、うぅー」静内を睨み付ける美沙。

その頃、美沙の危険を知った小南と木村が急いで大阪にやって来た。
少し遅れて三宅刑事も若い刑事を連れて、大阪府警に挨拶に行って捜査状況を尋ねていた。
確かに、車は高速で移動して高槻のインターチェンジで降りたのですが、二人の姿が監視カメラに写っていたが赤城美沙の乗っている姿は確認出来なかったと話した。
高槻インターの近くに在るラブホテルに入った事も確認されていた。
大阪府警の聞いた二人の話では、ホステス達は殆どがタクシーで帰り、数人は彼氏かご主人が迎えに来たと話した。
月曜日にひょっこり来るのでは?彼氏と遊びに行っているのでしょう?と微笑んだ沙紀子ママに、大阪府警はそれ以上聞けないのも事実だった。

緊急携帯電話のJPSも、店の近くで電源が切られて所在不明に成っている。
「僕はあの黒木の車に乗せられていたと思うのです」
「でも監視カメラに美沙の姿が無かったのでしょう?」
「それは眠らされていたから、後部座席が写って無かったのです!」
「でも二人はラブホテルで確認されて、昼前に出たと大阪府警が調べている」
「今日位に美沙の家族に連絡しなければ、心配するでしょうね!」小南が言う。
「何故急に美沙さんが狙われたのでしよう?」
「私もそれが気に成っているのよ!潜入が露見したら彼等はどうする?」
「桜木って名乗っているので、判らないと思うのだけど!」
「僕は高槻インターの近くに何か在るか、調べてみます」三木は高槻に執着していた。
小南は自宅を調べて何か残していないかを調べると別れた。
木村はグラフJでの動きを調べる事に成った。

美沙が手術台に拘束されると、男性看護師に「ご苦労様!もう大丈夫よ!若い女の子の恥ずかしい部分の手術だから、外して貰えますか?」溝端医師が男達も追い出して「これから桜木さんが色情狂だと自分で確信させてあげますからねー女三人だけだから、恥ずかしく無いよねー」
静内がパジャマのスカートに成っている腰のマジックテープを毟り取る様に外した。
「生理はいつ来るのかな?」大き目のパンツのお腹を抑えて尋ねた。
「先生に答えなさい!」
「来週位?」
美沙は怯えながら頷いた。
「そうなのねー良い子だわ!私の理想の筋書きね!」そう言って喜ぶ。
手術をすると十日程度は、間を空ける予定だったので理想的だと思う。
その間に、院長が情報を聞き出して、調教に弾みがつくと考えていた。
「桜木さんは、処女なの?」尋ねるが返事をしない美沙。
答えると何か別の事をされるかもしれないと思うと答えられなかった。
「もうこの様な、不細工なパンツは脱ぎましょうね!」
ハサミを手に持って動かして見せる。
「ううぅーー」大きく首を振る美沙。
ハサミの先を腰の部分に入れると「ジョキ、ジョキ」と切り裂き、笑みを浮かべる。
「ううぅーー」切り裂かれて「や、め、てーー」と辿々しく言葉にして、必死の美沙。
ハサミが今度は左の腰の部分に入れると「ジョキ、ジョキ」と切り裂くと陰部に乗せられた布の様に成ったパンツ。
秋山が確認すると、手術台を上昇させるボタンを押し押した。
「うぅ、や、め、てーー」と首を大きく振って抵抗を見せようと力を入れる。
容赦なく手術台は上昇して、必死で閉じ様と力を入れてもどんどん広がって、載せられていたパンツはひらりと陰部から落ちた。
美沙は力尽きた様な表情に成っていた。
「静内さん!手術に邪魔な物が沢山有るわ、処理する準備して下さい!」
そう言いながら尻に挟まったパンツを引っ張って抜き取った。

羞恥プレー

手術台の横にカメラとモニターが運ばれて、無影灯が点灯されて、美沙の黒々とした陰毛を照らした。
「先生準備出来ました!」
「桜木さん!そのモニターを見なさいよ!貴女の中が映るわ!」
「うぅ、うぅーい、やー」
「先生!注射を先に!」静内がシャレーに載せて差し出す。
「忘れていたわ!色情狂を調べるには、この注射が不可欠なのよ」
「うぅーや、め」と言った時、左手が美沙の陰毛を指で掻き分けて、注射針が突き刺さる。
「い、たいーー」猿轡から、痛みを訴える美沙は、目尻から涙が溢れた。
続けて大陰唇の左側も同じ様に搔きわけると、注射針が突き刺さり「い、いた、いたた」再び痛みに苦しむ美沙。
「もう少しよ!頑張って!」
「ゆ、るして」涙を流して言うが、容赦なくクリトリスの上に同じ様に針が刺さる。
「あぅーーーー」と声を出して痛みで気絶してしまった。
「感度が良いので痛みで、気を失いましたね」静内が微笑みながら美沙を見ていた。
気絶すると、手早く後三箇所に注射をした溝端医師。
秋山看護師が剃毛道具一式をワゴンに載せて運んで来た。
日本剃刀、タオル数枚、ハサミ、刷毛、シェービングカップ、洗面器、ポットが載せられていた。
「起こして!」静内が水の付いた布で美沙を目覚めさせた。
驚いて目をパチパチして、我に返って恐怖の表情に成った。
「痛かったけれど、暑く成って来たでしょう?ここ!」そう言って陰毛の上を触られて、今までに無い感触に驚く美沙。
「さて、中を見せてあげるわ!静内さん広げて下さい!」
「はい!」静内が美沙の大陰唇を両手で押さえてながら左右に広げて始める。
生まれて初めて陰部を広げられた感触は、恥ずかしくて怖いので「あぅーだ、め!やめてー」と口走る。
タオル地の猿轡が唾液で隙間が出来た様だ。
ピンクの肉片が見えて、小さな膣口が光って見える。
感じて愛液が少し出ている様だ。
先程の注射で陰部が感じ易く変化して来たと思う溝端医師。
小さな膣口に、細いカメラを挿入すると画面に美沙の膣内が映し出された。
「思った通りだわ、貴女処女だったわね!」
「うぅ、た、す、けて」自分の膣内を見せられて顔を背ける美沙は、恥ずかしくて耐えられなかった。
「処女だったので少し治療の方法を変更します!」
そう言いながらカメラを膣内から抜き取り、広げていた静内が手を離して安堵の表情に成った美沙。
「今から手術を始めましょう!先ずはこの邪魔な物を剃り落として綺麗にしましょう!」
「いゃー」首を大きく振って懇願した。
この様な姿でライトに照らされているだけでも耐えられないのに、毛を剃ると言われて耐えられない恥ずかしい気分に成っている美沙。
「少し足を上に上げて、鏡で自分のまんこを見せてあげるわ、変わる部分を覚えて置きなさい!」静内が手術台の調整ボタンを操作すると、美沙の両足が一層上に上がって「あっ、や、わぁー」股間に手鏡を入れて角度を合わせると、美沙は自分の肛門から、陰毛の生える陰部を目にして驚いて声を発して、目を外らせた。
「良く見るのよ!ここがどの様に変わるかをね!」秋山が美沙の頭を押さえて
見せた。
「うぅーーーゆ、る、、」
しばらく見せて羞恥責めをされている美沙。
処女だと判ったので徹底的に辱めて諦めさせる責め方だ。
その時、横から静内がシェービングクリームを泡立てて、刷毛に浸けると美沙の肛門に塗りつけた。
「ひぃー」驚いて声をあげて、顔を動かすが秋山に押さえられて、無理矢理見る様にされた。
「どんな気分かな?」刷毛先で肛門を突く様にされて「ひぃーーやめてーー」と叫ぶ。
肛門の周りが白く盛り上がると、鏡を静内に渡して先の細い日本剃刀を持って美沙に見せる。
直ぐに美沙の尻肉を左手で持つと、剃刀が白いクリームと一緒に産毛を剃り取って行く。
「あぅ、いゃー」の声で美沙の羞恥心は最高だった。
直ぐに剃り終わると、上に上げられていた足を下ろして元の位置に戻った。
既に美沙の股間は暑く成り、特にクリトリス付近からIライン全体が火照りを感じて、息を吹きかけられても声が出てしまいそうに成っていた。
その状態は既に三人には読み取られている。
これから最高の羞恥心を味合わされる事に成るのは明らかだ。
「色情狂だと思い始めたか?」
「うぅーーーち、が、います」
「これ以上に、乱れなければ違うかもしれないわね、誤診だと院長に報告するわ!でも我慢出来ずに乱れたら、手術が必要に成るからね」
「は、、い」美沙は自分でも初めての経験だから判らない。
ポットの湯が洗面器にそそがれて、タオルを浮かべる秋山。
シェービングカップで泡立てる静内。
「下腹の陰毛上にクリームの付いた刷毛を落とすと、そのまま刷毛を動かし下腹部の黒い陰毛が白く盛り上がる。
変な気分に成っていたが、耐えられない程では無いと思う美沙。
しかし、再びシェービングクリームを刷毛に浸けて、クリトリスの近くに落とされると「ひぃーーーだめーー」大きく頭を振って足をばたばた動かした。
そのまま刷毛は大陰唇の右側を肛門の方迄一気に塗り込み白く盛り上がる。
静内が再びカップに刷毛を沈めてクリームを浸けると、今度はクリトリス付近から大陰唇の左側を一気に移動して、白く盛り上がる程塗りあげられた。
「ひぃーーあ、あ、し、み、、、る」足をばたばたさせて、頭を大きく振って我慢が出来ない美沙。
ハッカ液がクリームに混入しているので、火照る陰部への刺激は我慢出来ないのだ。
「どうしたの?変に成っているのでしょう?淫乱色情狂は間違いない様だわ!蒸らして!」
「うぅーーち、ちがーう」必死で訴えるが、次の瞬間秋山看護師が熱いタオルを畳んで白く盛り上がる部分を覆った。
「ぎゃーーーわわわわ」ハッカが染みるのと熱いタオルの刺激が陰部を覆って、身体が一瞬硬直の様に伸びた。
しかし、熱さに慣れた時に中指で美沙の割れ目を擦り付けられて感じてしまう。
「今度は感じてしまったのね!淫乱色情狂の典型的な状態だわ!手術をして治療しましょうね!」
「うぅーーー」首を振るが、既に力が無く成っている。
いたぶられて、羞恥心を増強させられて、抵抗にも限界が近づいている美沙。
タオルを陰部から取り除くと、白い肌にひじきか岩海苔が付いた様に成り、少し中央が開き隙間が見えている。

剃毛プレー

今、再びクリームを塗って「ジョリ、ジョリ」皮膚を伸ばして剃り始める溝端医師。
美沙は観念した様に目を閉じて奥歯を噛んで耐えている。
「ジョリ、ジョリ」大きな音が手術室に響いて、美沙は恥ずかしさで顔が真っ赤に成り耐えている。
不気味な笑みを浮かべて、白いタオルの上に剃り取った陰毛を載せている。
下腹部の黒い陰毛を剃り落として、恥丘から大陰唇が残っている。
「静内さん、残りの部分にクリームをお願いします!」
刷毛に一杯クリームを浸けて、クリトリスの近くに刷毛を落とすと、美沙は目を見開いて「うぅーーー」と声を出す。
「淫乱色情狂だわね!我慢出来ないの?」
「うぅーーーし、みーああーああーーーだだーー」刷毛をクリトリスを刺激して、大陰唇から小陰唇を刺激されて、もう我慢が出来ない美沙。

その頃、新大阪駅に新和商事の面々が明日の下見に来て、脅迫男を捕らえる段取りを話していた。
その日の夕方、松永部長のパソコンに「新大阪駅で新和のごろつきを一人でも見かけたら、別の人間が直ぐにマスコミに送り付ける!吉高の話も付け加えて!素直に渡せば安田の連絡先も教える!」のメールが届いた。
直ぐに専務の部屋に向かい「専務、この男吉高の話も安田の事も知っていますよ!新和に手を引きせて安田の連絡先を聞いた方が得策ですよ!」
「その様だが、院長に連絡しておいた方が良いな!中之島病院に手が廻る恐れが有る!仲間の女なら、捜しに行くか警察に通報されると面倒だ!」
松永部長が院長に連絡すると「あの女は、今改造調教に入り手術をしていますが?」
「敵は吉高の事を知っている様だ!充分気を付けておいた方が良い!警察、仲間が捜しに行くかも知れない!」慌てて院長に言った。
「判りました!完全な患者にして判らない様に致しますのでご安心ください」
「任せてあるので、新垣社長と連絡を密にして、始末まで気を抜くな!」
「明日からの段取りも決めていますし、今日の手術で素直に成るでしょう」院長は専務に安心する様に伝えた。

手術室では、刷毛が美沙の一番感じる部分を絶えず刺激して動き、痙攣を起こす程もがき苦しみ感じていた。
陰部に注射された効果で異常に感じて、ハッカ入りのクリームがクリトリスと小陰唇を刺激したのだ。
「も、う、ゆる、してーー」猿轡の中で弱々しく言う美沙。
刷毛の動きが止って、日本剃刀を持って左手で皮膚を伸ばして「ジョリ、ジョリ」と音を立てて剃り始める。
腰を押さえる秋山看護師、身体を動かして「あーうぅーた、す、けーて」と一層感じてい美沙。
「じょり、ジョリ」と剃り上げられてクリトリスが顔を見せた。
するとそれを剃刀の背で突く「きゃーーーー」急に叫ぶ美沙。
「身体に電気が走った様ね!」微笑む溝端医師。
直ぐに大陰唇の右側を剃るが、いきなり皮膚を指で伸ばすので小陰唇に指が入る。
「うぅ、うぅーーーや、め、てーーーー」首を大きく振る。
「感じるの?」そう言いながら「ジョリ、ジョリ」音を立てて剃り落していく。
横の白のタオルの上には黒々と美沙の陰毛が山積みに成っていた。
今度は左側の大陰唇を同じ様にして「ジョリ、ジョリ」剃られると、もう美沙の身体から抵抗の気力が消えていた。
「もう、抵抗出来ない様だわ、その道具を頂戴!フィニッシュよ!」
剃り上げられてつるつるに成ると、小さな電マを持って力無く広げた無毛のクリトリスの側にあてる。
「あぅ、あぅーーーーーー」急に大きな声で目を見開いて叫ぶ美沙。
今まで味わった事の無い刺激に本当に痙攣を起こして、力無く呆気なく人生で初めて逝ってしまった。
「麻酔!」横溝医師が言うと麻酔の注射器を差し出す静内。
クリトリスの近くに注射針が突き刺さると「うぅー」痛みで声が出るが、二カ所目三カ所目に成ると感覚が無く成った。
麻酔の効果が出ると横溝医師がメスを持って、美沙のクリトリスの切開を始めた。
「ピンクの綺麗な豆が見えて来たわよ!」
「、、、、、、、」
既に放心状態で辛うじて目を開き無影灯の光をぼんやり見つめている美沙。
しばらくして「終ったわ、眠らせて頂戴!」の言葉で、静内が美沙の腕に注射をしてしばらくすると、目を閉じて眠ってしまった。
大人のおむつを履かされて手術台が降ろされると元のスカートを巻付ける。
ストレッチヤーに乗せられて、鉄格子の病室に戻された。

同じ頃松永部長が明日新大阪駅に現金を運ぶ事が決まり、新和商事の関係者は手を引く事に成った。
吉高の事と安田の一件を知られているなら、簡単には手出しが出来無い。
お金を渡して安田の居場所を捜す事が先決だと糀谷は考えた。
脅迫男は、捕らえている女からヒント位は得られると考えている。
果樹園の娘に憐れみと愛情を感じた安田が、モーリスを裏切ってダミーのみどり青果を作り一年間騙した事実は巧妙で、逃げられてから糀谷専務達は判ったのだ。
行方を追ったが今も判らない。
だが安田が社内の秘密に精通している事も事実だった。

半年以上前、ウィークジャーナル本社に手紙が届いて、小島企画部長の手元に偶々手紙が封を切らずに届けられた。
その中にはモーリスを調べて記事にして頂きたい!最近でも十社程度の会社が倒産に追い込まれてきます。
その会社を調べて頂ければ、私に判らない事も判るかも知れません!
モーリスに世間から制裁を加えて下さいと、十社の名前と住所が書かれ、その中の一社吉高フーズの社長さんは意味不明な亡くなり方です!お調べ下さい!必ず貴社の大スクープに成ると思います。宜しくお願いします! 安田俊幸と書かれていた。

小島企画部長は、全国に広がっている倒産している会社を簡単に調べると、面白い記事に成る可能性が有ると考えて、各支店に詳しく取材をさせる事に成った。
その中で名古屋支店の取材は、今正に餌食に成る千歳製菓の取材が入っていた。
小島企画部長は、名古屋支店の取材に期待をしていると、意外な事実迄掴み犯罪の匂いがするだけでは無く、モーリスを揺する材料に成ると考え始めた。
潜入取材迄して決定的な事実を掴み、モーリスから恐喝で一億を手に入れ様としていたのだ。
この恐喝が無ければ美沙が捕らわれる事は無かった。

裏切りの果て

小島企画部長は、安田からの訴えを逆手に取って携帯の番号を聞きだして、時々連絡を取り合っていた。
安田俊幸はそれでも警戒をしていて、自分の住所も小島部長には言わなかった。
週刊誌に暴露されて、裁判に成れば堂々と証言台に立たせて貰うと言うだけだった。
噂は聞いていても、事実を掴んでいない安田はウィークジャーナルの組織力で悪行が暴かれると期待していた。
翌日、小南は赤城の家に美沙の失踪の事実を伝えた。
信紀も妙子も絶句して、髪まで切って潜入取材だと言ったのですが何処に?と尋ねた。
小南は大阪のクラブに潜入したのですが、消息が昨日から判りませんと伝え、警察も動いていますので発見出来ると思いますと説明した。
だが二人は大阪まで行くと言うのを、誘拐されていたら騒ぐと殺される可能性が有るので、落ち着いて待っていて下さいと説得した。
土曜日の夜誘拐されているので、今日は月曜日に成っている。
暴力団に誘拐されたなら、既に強姦されている可能性は極めて高いが、無事で救出されたら良いと希望を持つ二人。
小島企画部長にもこの事実を伝えて、会社としての態度を聞くべきだと小南は本社に電話をした。
だが、小島企画部長は本日有給で休みですと、事務員が言って小南は他の人に話すと広がると思って諦めた。

日曜日から高槻に入っている三木と三宅刑事が合流したのは、月曜日の朝だった。
三木は黒木と沙紀子ママが、ラブホテルに入った時間が少し変だと三宅刑事達に話した。
北新地の店で自分が車を見た時間から測っても、一時間以上ラブホテルに入っている時間が遅いと主張した。
「三木さんは二人が偽装の為にラブホテルに入ったとお考えですか?」
「はい、店から高槻に来て赤城さんを何処かに連れて行ってから、ラブホテルに来たと考えます」
「赤城さんが二人に殺害されたとは考えませんか?」
「殺害する理由が無いのと、時間も無いと思われます。多分監禁されていると思われます」
「潜入取材が見破られた可能性が高い訳ですね」
「簡単に預けられる場所、監禁出来る様な処でしょうね!」
「潜入して重要な事を探り宛てたのですか?」
「僕は内容まで聞いていませんが、小南は赤城さんから情報を貰って本社にスクープとして送った様ですね」
「どの様なスクープか教えて頂く必要が有りますね!小南さんは?」
「小南は新和商事に探りに木村と一緒に行きました」
「その様な場所に?大丈夫ですか?」
「ウィークジャーナルの記者として行きますから、大丈夫でしょう?夜会いますからお聞き下さい」

昼十二時に新大阪駅に一億円の現金を入れたバッグを持って松永部長が訪れていた。
中央改札の中で新聞を広げて、顔を隠す様にして待っている小島企画部長。
誰も尾行が無いのを確認すると、改札に近づいて行く小島。
ハンテング帽子にサングラスの男を捜している松永部長。
中央改札の中から「松永部長!」と肥をかける小島部長。
後ろから声をかけられて驚いて振り返る松永部長に「これが情報だ!バッグを貰おうか?」
バッグを柵越えで渡す松永、受け取ると封筒を手渡す小島は直ぐにホームの方に急いで行った。

特別病棟

 
丁度昼頃長い眠りから目覚めた美沙。
昨日の責めが身体に残っている様な、気怠さを感じて起き上がるとトイレに急ぐ。
自分の身体がどの様に成ってしまったのか?パジャマのスカートを脱いで「何これ?」大人のおしめに先ず驚いて、恐る恐るおしめを脱いで無毛に成っている陰部に再び驚く。
詳しく見て赤く肥大している部分が、手術の跡だと直ぐに判った。
異常に刺激を感じていたので判ると、クリトリスが剥き出しに成ったと理解した。
そのショックは大きく、何故この様な手術をされてしまったのか?この病院へ連れて来られたのは潜入取材がモーリスに知られてしまった?その為この病院に閉じ込められた?美沙はこれまでの経緯を分析して、シャワーを浴びて昨日の悪夢を忘れ様としていた。
「あぅーーーー」シャワーの水滴が陰部に刺激を与えて思わず声を出して、しゃがみ込む美沙。
目覚めた事を監視カメラで確認した看護師が、食事を運んで来たのは美沙が風呂場から出て来た時だった。
昨日の看護師では無くこの病室の担当の様だ。
病室にはシャワールームとトイレが常備されて一応生活には困らない。
名札を見て「貴女昨日も食事届けて下さったわね!吉永さんっておっしゃるのね!」
「今朝は普通ですね!手術を受けたので治られたの?発作的な病気だから、変化が多いのですよ!」
「本当にこの病院は精神病院ですか?女性専用の診察室が在る様ですが?」
「この病院は特に女性の患者さんを中心に受け入れています。桜木さんの様な性的な患者さんも多いのですよ!その為婦人科の先生が来られます」
「私は、、病気では、、、、、」と口籠もる美沙。
「昨日はどの様な手術を受けられたのですか?今日は院長の検査が有る様ですよ!」
「えっ、また?」目の前にサラダとトーストそしてコーヒーが並べられて、空腹の美沙は直ぐに食べたいが「昨日の看護師さんはここの病院に常にいらっしゃるの?」
「静内さんと秋山さんは溝端先生が連れて来られたのよ!院長が桜木さんの治療の為にね」
「えっ、あの先生と看護師さんは私の為だけに?」
「そうですよ!ですから桜木さんは何方かお偉い方のお嬢様か?って看護婦の仲間では話しているのですよ」
その時、吉永のイヤホンに「余計な事を喋るな!」と院長の声で驚いて「また!」と言って直ぐに美沙の病室を後にした。
食事をしながら、美沙は自分の為だけにあの女医と看護婦は来た?これは明らかに監禁されていると思うが、では何故昨日の様な手術をしたのだろう?疑問が次々と湧いてくる美沙。

小島企画部長は新幹線のトイレで鞄の中身を確認して、思わず笑みを溢していた。
自分が犯人だと誰も知らない!馬鹿な新人記者が大スクープを取って来たことで大金が手に入った。
今後は安田を上手くモーリスの連中が始末してくれたら、全ては闇の中に消えると帽子を脱ぎサングラスと付け髭を外すと、グリーン車の自分の席に戻って行った。

封筒を受け取った松永部長は糀谷専務の元に急いで、封筒の中身を確かめる。
安田俊幸の携帯番号が記載されて、検討を祈りますとワープロで記載されていた。
「専務!安田と犯人は連絡をしていたのですね!」
「その様だな!だが携帯に電話をしても直ぐにあの男と異なる事が判明してしまいますね!どの様にしましょうか?」
「方法は有る!この番号から持ち主の住所を割り出すのだ!」
「判りました!早速手配を致します!」
「安田を捕まえればこれ以上の混乱は起らないだろう?あの潜入した女に脅迫男の手掛かりを吐かせたらお金も取り戻せる可能性も有る」
「売り飛ばす準備は進んでいる様ですが、肝心の情報は未だに皆無です」
「お金を持ち去った男の年齢と特徴は?」
「五十代後半でしょうか?中肉中背でひ弱な感じで運動系の感じはしませんでした。髭とサングラスで表情は判りませんが、上り方面に行った事は確かです」
「髭、帽子、サングラスでは殆ど人相は判らないな!事務系の奴だな?」
「あの大学生との接点が問題ですね!必ず知っている男だろうと思います?」
「今日自白しなければ薬を使用する事にしなければ駄目だ」

その頃三宅刑事と三木は別れて、高槻のラブホテルから半時間以内で美沙を監禁出来る様な施設を捜していた。
ナビと地図を見ながら捜すが一般の家に監禁されていたら、捜す術は無いが二人が簡単に預けるのなら何か施設では?と思う三木。
一般の家とかに監禁するのなら、この様な高槻まで来る必要が無い様に思う。
「病院か!確か眠らされていたな!」急に閃く三木は三宅刑事に連絡して、北の方の病院を調べて見ますと言った。
個人病院以外の入院設備の有る病院を順番に捜し始めた三木。

信紀と宮代会長は一応出来る事を全て完了してから、京極社長に談判に行く予定にしていたが、予期せぬ自体に深刻な表情に変わっていた。
月曜日、信紀は宮代の自宅に電話をして、娘が行方不明に成った経緯を話していた。
宮代会長は心配して、事件が解決するまで自宅に待機しても良いと伝えていた。
宮代会長には、自分の会社の為に身を呈して働いてくれた美沙に感謝をしながら安否を気遣った。

「桜木さん!院長先生の診察ですよ!」吉永がもう一人の看護師と一緒に鉄格子の病室に迎えに来た。
「この病院には今、何人の患者さんが入院されているのですか?」
吉永は先程の件が有るのか喋らないが、もう一人の看護師が「この病棟には重症、軽症の患者さん合わせて三十名の女性が入院されていますよ!」
「勿論私は重症ですよね!」笑みを浮かべて言うと「はい!早く治って下さいよ」そう言って右手に手錠を填めて鉄格子から連れ出す。
「この病棟?他にも有るのですか?」
「本館には男女の患者さんが五十人程入院されていますよ!この病棟は女性専用で、患者さん同士の接触は殆ど有りません」特別病棟なのだと理解した美沙。
厳重な警戒体制は女性専用だからなのか?他に理由が有るのか?注意深く観察しながら廊下を歩く美沙。

自白剤

先日の診察室に連れて行かれた美沙は前回と同じ様に、椅子に座らされて腕に器具を巻付けられる。
「昨日の手術で少し変化が有るか調べて見ましょう」
「名前は?」
「桜木絢奈です」
「職業は?」
「学生ですがバイトで、クラブで働いています」
今日は全く針が動かない。
「バイトの目的は何ですか?」
「奨学金の返済です」この時針が大きく動く。
「正直に答えなければ、今日の検査は終りませんよ!」
「、、、、、、、」
「例の薬を持って来なさい!」
「はい!」いつの間にか看護師が秋山と静内に変わって、最初に居た看護師が消えていた。
「あっ、貴女達は!」
「昨日は結構頑張っていましたね!今日も頑張れるかな?」
「何をする気なの?」
「この部屋は防音装置が完璧で、幾ら騒いでも外には聞こえないのよ!」
「そうだ!これから尋ねる事に正直に答えるのだ!」
「この注射を打たれたら隠していても、自然と喋ってしまうのよ!それでも駄目なら向こうに有る電磁波を貴女の脳に刺激して尋ねるのよ!そう成れば全てを喋るのよ!」
「何者?私をどうするの?」恐怖の表情に成るが腰にベルトを巻付けられて動けない。
「院長!注射を!」
「やめてーー」美沙の抵抗も虚しく、注射針が腕に突き刺さる。
「薬が効いて来てから質問をするから、正直に答えるのよ!あの電磁波の機械は使う事に成るけれど別の時に使いたいのよ!」そう言って不気味な笑みを見せる。
目の前のモニターに一人の女性が同じ様に椅子に座らされている画像が映し出される。
頭には電磁波の器具が鉢巻きの様に取り付けられているが、頭の各所にパットの様な物が貼付けられている。
「この様にして調べるのですが、坊主に成らないと駄目なのよ!判る!貴女の短い髪も剃り上げられるのよ!判った?」
「えっ!」驚きの表情に成る美沙だが、注射の影響で頭がぼんやりと成っていた。
「院長!そろそろ薬が効いて来たと思います!」
「桜木さん!モーリスと云う会社を知っていますか?」
「モ、モーリス?」抵抗を見せる美沙。
「それでは、新和商事を知っていますか?」
「し、しん、わ」そう言って大きく首を振る美沙。
「これは葛藤しているのです。もう少し薬が効くと認める筈です」
「クラブJは知っていますか?」
「はい、私のアルバイト先です」
「そこに勤めた目的は何ですか?」
「し、し、せん、に、し、せ、、」
「潜入ですか?」そう言われて頷く美沙。
「誰に頼まれたのですか?」
「じ、じぶ、、んのいしで、、、す」
「自分の意志で?その様な事をして何が有るのですか?誰かに頼まれたのでしょう?」
「じぶん、、、できめ、、ました」
意味不明の答えに戸惑う院長と二人の看護師。
「どの様な話をクラブJで手に入れましたか?」
「J、、ク、ラ、、ブ、ひ、き、にげ」
「他には?」
「しんわ、、し、ょうじ、、、きり、、たに、、、むら、、なか、、」
「もう有りませんか?」
「クラブ、、、、Jの、、、、し、、ごと」
「聞いた話を誰かに伝えましたか?」
「こ、、、み、、、なみさん」
「小南と云う男ですか?何処の誰ですか?」
「おん、、、な、、、な、、ご、、や、し、、、、」
「女で、名古屋市の人ですか?」頷く美沙。
「変な話が多いですね!自分の意志で潜入した!小南と云う名古屋の女に情報を伝えた?小南が脅迫男の女の可能性が有るな?」
「脅迫男は名古屋の人間ですね!」
「もう少し聞いてみよう!」
美沙の近くに行って「もう一度尋ねる!潜入は誰に頼まれた?」
「じ、ぶ、ん、、の、、いし」
「何故自分の意志で行った!」
「ち、と、せ、せいか、、どれい、、モーリ、、、スから、、、、あく、、ぎょ、、う」
三人は美沙の言葉に驚いて離れると「モーリスが千歳製菓を狙っている事を知っている様だな!」
「これは重大な秘密を知っている可能性が有る様ですね?」
「これ以上聞き出すには、電磁波を与えて薬を投与しなければ自白は難しい!専務にお伺いをしよう!一度病室に戻せ」
しばらくして、夢遊病の様な美沙を車椅子に乗せると吉永看護師に部屋に移動させる様に指示をした。
「お、、、、わ、、つたの?」検査室を出ると吉永看護師に辿々しく尋ねる美沙。
「治療が大変だったのね!夕方迄眠れば元気に成るわ」
「あ、おね、、がい、、がある、、の!」
「何?欲しい物でも有るの?どの様な食べ物?」
「ノート、、、、ペ、、、ン、、、が欲しいの」
「判ったわ、その程度の物なら大丈夫だから、後で食事の時に持って行くわ」
それだけ喋ると美沙は疲れて眠ってしまった。
吉永看護師は治療の影響だろうと、ベッドにもう一人の看護婦と一緒に、美沙を横たえて病室を後にした。

中之島病院の闇

中之島院長は今日美沙から聞き取った事実を糀谷専務に報告した。
「何!千歳製菓の事も知っているのか?クラブでは話さなかったぞ!名古屋の小南と脅迫男、そして千歳製菓?全て名古屋の関係だな!もう少し聞き出せないのか?」
「これ以上に成りますと、電磁波と薬の併用にしなければ困難です!」
「あの小娘が知っている事を全て聞き出せ!」
「でも、新和の新垣さんには、外国に売ると聞いていますので坊主にして、器具を取り付けるのに抵抗が有るのですが?」
「本当なら始末しなければ駄目な女だ!売るのは次の事だ!取り敢えず全て聞き出せ!髪は直ぐに生える!」
「は、はい!判りました!早速準備に取りかかります」
新和の新垣社長にも直ぐに連絡をして了解を貰うと、新垣は「溝端先生にさせれば、責めの一環としてマゾ女にするのに利用するだろう?既に買い手は決まったので大丈夫だ!坊主の方が喜ぶ金持ちだから支障は無い!」そう言って笑った。

夕方に成ってようやく正気に戻った美沙は、差し入れで貰ったノートに、この病院に入れられた事を、記憶を頼りに書き始めた。
勿論、クラブJでの出来事から書き始めたが、最初に潜入取材を見破られた様だが、事実を知っている人は小南さん以外誰も居ない。
質問された内容を朧気に覚えていたので、ノートに書き始めた。
書き終わるとベッドの隙間に入れて、見つからない様にした。
冒頭、自分はモーリスと新和商事の悪事を知りすぎたので、殺されるかも知れないのでこのメモを残しますと書き始めた。
薬を注射されて、色々聞かれた様ですが質問で、この病院と新和商事、モーリスが連携している事は確実です。
でも小南さんから誰かに漏れた可能性?もしかしたら小島企画部長の裏切りかも知れません!私にはそれしか思いつきません!と書き。
今後薬と自白装置で全てを喋ってしまうと思いますが、モーリス、新和商事、中之島病院、クラブJ,そして小島企画部長が罰せられる事を願います!記憶の確かな内に書き置き致します。
お父さんお母さん、同僚の反対を押し切って潜入取材をした事をお許し下さい!とこれまでの経緯の最後に書き残した。

その頃大阪で、小南、三木、木村、そして三宅刑事と新人の町田刑事が集まって今後の捜索方法と、情報を話し合っていた。
三木が「高槻で赤城さんを直ぐに受け入れるのは、病院では無いでしょうか?大きな病院で入院施設が在る処です!この前も薬を飲まされたので、今回も薬を飲ませて病気だと運び込んだのでは?」
「でもそれなら翌日には気が付くから、美沙が喋るでしょう?」
「喋れない状態か?喋っても相手にされない病院?」
「まだ眠らされている?」
「でも眠っているのでは意味が無い様な気がしますね」
「連れ込むには眠っている方が良いが、その後も眠っていても病院なら症状が判るでしょう?」
「判りました!明日高槻周辺の病院に土曜日の深夜か、日曜日の早朝運び込まれた若い女性は居ないか?調べさせます」三宅刑事が大阪府警と京都府警に頼み込んだ。
「それから、小南さんが赤城さんから貰った情報は本社の小島企画部長に伝えられたのですね」
「はい、そうですが、大変重要な情報だと喜ばれました!多分次回の特集に掲載されると思いますが、小島企画部長には美沙の失踪は報告していませんので、記事を止めて頂こうと思っています」
「当然だな!記事が出ると殺される可能性が高いだろう?」
「どの様な情報だったのですか?教えて頂けませんか?」三宅刑事が尋ねた。
「美沙が拉致されたので、この情報が原因だろうと思います」
そう言い始めて小南はモーリスの闇の部分を仕切るのが、糀谷専務で部下に松永部長、そして新和商事の新垣社長の三人が繋がっている事実を話した。
「新和商事と梶谷不動産、荒井興産も関係が有るので、土地転がしも充分考えられる!この情報を赤城さんが掴んだのですね!」
「そうです、他にも掴もうと潜入を続けたのが、、、、、、、」小南は絶句した。
「ひき逃げ事件については?」
「それも新垣社長が一部話した様です!」
「新垣を引っ張りたいが、肝心のボイスレコーダーが無ければ証拠には乏しい、聞いた本人も行方不明だから、証言は小南さんの独り言で終る」
「自宅に探しに行ったのですが、二台とも無かったのです!」
「クラブJの何処かに隠して居るのかも知れませんね」
「もし、敵に渡っていたら?」
「赤城さんの正体を聞く為に責められている可能性が有りますね!」
「急いで新和商事に家宅捜査は出来ないのですか?」町田刑事が言う。
「何処に捕まっているのか判らない状況で、踏み込むと証拠を隠滅する為に殺すかも知れない!」
その時、三宅刑事の携帯に京都府警から、高槻の近くに精神病院が在るとの連絡が入った。
その病院は女性専用の入院設備も整って居るので、可能性が有るのでは?との見解だった。
京都府警は数年前にこの病院で亡くなった吉高フーズ社長、吉高孝吉さんの件も話した。
「その社長は今回の事件にも関連が有る人です」
「もう一つ不可解な事は、吉高さんの娘さんが面会に来た後、消息不明で今も行方が判らないのですよ!」
「年齢は?」
「確か二十六歳のお嬢さんで、結婚も決まっていて新郎に成られる方と同行して病院に伺いましたが、お父様と面会の後帰られたで、その後の行方は判りません」
「その方のお名前と連絡先判りますか?」
「後藤俊さんで住所は広島の方ですね!」そう言って携帯の番号を教えてくれた。
電話が終ると「繋がりましたよ!」そう言って電話の内容を皆に話した三宅刑事。
明日、朝から中之島精神病院に行く事にした。

自白

翌朝三宅刑事は、京都府警に教えて貰った後藤俊に連絡をして事情を聞こうとしたが、仕事中で昼休みまで待って欲しいと言われた。
一刻も早く中之島病院に行きたい小南達、だが迂闊に飛込んで美沙の命が危険に晒される事も避けたい。

その頃美沙は朝食の後、吉永看護師に「十時から検査と治療が始まる様ですよ!」
「あの、生理用品は有りませんか?」
「えっ、判ったわ!直ぐに持って来て予備もトイレに置いて置くわ」
食事の途中に再びやって来て、トイレに予備を置いて帰った。
美沙はこの吉永は普通の看護師で、院長をはじめとして溝端先生、秋山看護師、静内看護師の四名は新和商事と関係が有ると分析してノートに記載をした。

しばらくして美沙を連れに秋山看護師が病室にやって来たが、男性の看護師二人が同行しているので暴れるだけ無駄だと思う。
素直に付いて歩くので拍子抜けの秋山看護師。
「桜木さん!生理に成ったのですか?」
治療室に入ると、静内看護師と溝端医師、そして院長が待ち構えていたが、抵抗も無く検査用の椅子に座って腰にベルト、両手首も簡単に固定された。
直ぐに男性の看護師二人が部屋を出ると「今日は素直だね!」院長が不思議そうに言った。
美沙はこの部屋に居る四人が新和商事と繋がっていると考えていた。
「諦めた様だな!今日は色々な質問に答えて貰おうか?」
「聞きたい事は、私が録音したボイスレコーダーの隠し場所、私が誰かでしょう?」
「もう一つ聞きたい大事な事が有る!」
「他に聞きたい大事な事?」
「一億円を強請り獲った男との関係だよ!」
「一億円を?いつ?」初めて聞く話に驚く美沙。
「お前がクラブJで録音した内容で強請って、一億円を獲った男だよ!」
「昨日?」
情報は小南と小島企画部長しか知らないなら、俄かに信じられない美沙。
沙は自分が一億円強奪男の仲間に成っている事に衝撃を覚えたが、小島企画部長の犯行は自分の推理の範疇で証拠も何も無い!
もしも最初から強奪が目的なら、自分がした事は何だったのか?虚しさが込み上げる。
「自分が今どの様な立場か判る?」
「私は一億強奪の男とは関係有りません!」
「関係無くても我々の秘密を知り過ぎたのよ!男なら殺されるが、貴女は可愛いから外国に売られるのよ!」
「えっ、それって!」
「だから、既に手術をしたのよ!好き者が居て既に売れたらしいわよ!」
「そんな、、、」
「この病院で昔も手術と調教をして一人売り飛ばしたのよ!モーリスの関係でね!親父の入院を不審に思って調べに来たのよ!中々の美人だったわ!」
「その人って吉高フーズの社長さん?」
「よく知っているわね!無駄話は終わりにして、院長始めましょうか?」
「ボイスレコーダーの隠し場所と、一億円を獲った男を教えて貰おうか?」
注射器を持って秋山看護師が美沙に近づく「これが何か判る?」バンダナの様に成った物に複数の電機のコードが付いている。
「これはお前の頭に弱電流を流して、拒絶している言葉を吐き出させる装置で、前回の注射と併用すれば隠し事を全て喋ってしまうのだよ!諦める事だ!」院長が目の前に機械を持って来て話した」
「でもね、脳に直接低電流を流す為に素肌に付ける筆様が有るのよね!判るでしょう?」
そう言いながらワゴンの上に電気バリカンと剃髪道具を載せて、静内看護師が運んで来た。
それを見て驚きの表情に成って「やめてーーゆるしてーー」
「素直にボイスレコーダーの場所を白状しなさい!それと強奪した男は誰なの?」
「、、、、、、」美沙はどの様に喋るのが良いのか?ボイスレコーダーの隠し場所を喋ると直ぐに調べに向うだろう?小島企画部長の事を喋って、もしも違っていたら?その様な事を考えていると「ガーガー」と電機バリカンを動かして脅す。
「やめてーー」怯える美沙だが、直ぐに秋山看護師が腕に自白剤を注射してしまう。
「うぅ」この注射が美沙の思考力を奪ってしまい、計画的に話す事が出来なく成ってしまった美沙。
「前回より少し薬を多くしたので、拒絶する行動が少なく成ったと思うがどうかな!」
「うぅ、うぅ」美沙は目が廻る様な状況に成って天井を見上げ、床を見たりしている。
「クラブJに勤めた目的は?」
「モ、モーリスと、し、しん、わの、せってん」
「中々頭が良いな!録音したボイスレコーダーは何処に隠した?ここに連れて来られた時には無かったが?」
「か、んけい、しゃが、、こないときは、かくしている、、、」
「その場所は?」
「、、、、、、」
「仲間の男は誰だ?」
「み、、き、、、きむ、、ら」
「二人か?」
「、、、、」頷く美沙。
「三木と木村が仲間なのだな!」
「は、はい」
「何処に居るのだ!」
「な、ごや」
「名古屋なら、話が合いますね!新大阪から東京方面に逃走した様ですから」
溝端医師は昨夜、新和商事の新垣社長から今後の対策等を話合っていた。
勿論、美沙を買い取る男の要望も溝端医師に伝えられて、今夜の尋問で殆ど聞き出す事に成っていた。
携帯で院長が状況を松永部長にも伝えて、仲間が二人で三木と木村だと伝えた。
「証拠品の隠し場所を早く聞き出せ!私の声も専務も新垣社長の声も残っているので、警察も動き始めているので、急げ!」と電話口で怒鳴っていた。

剃髪

「ボイスレコーダーの隠し場所は?」
「、、、いえ、、く、ら、ぶ」
「はっきりしませんね!始めますか?」
「そうだな!この器具を付けて尋ねたら、隠す事が出来なく成るから、はっきりする!始めなさい!」
項垂れた美沙の頭を持って秋山看護師が支える。
電気バリカンを手に持った溝端医師が「ガーガー」と音を立てて美沙の頭に近づけると「や、めてーーーー、うぅ、あぅ」急に反応を始める。
頭を持つと額から電気バリカンの刃が入る。
「ガーガーガー」一気に中央から刈り始めると、直ぐさま頭頂部までバリカンが移動して、茶色の髪が美沙の頭から滑り落ちる様に、肩から胸に散乱して落ちた。
「わあーーー」の声にもバリカンを止める事は無い溝端医師。
頭を押さえられているので身動き出来ない美沙は、朧気な思考回路で抵抗するが、電気バリカンは勢い良く動く。
直ぐに見る影も無い無惨な頭に成った美沙。
静内看護師が横でシェービングクリームを泡立てている。
「も、う、やめてー」
「もう髪は無くなったわよ!もっと綺麗に剃り上げてあげるわ!これで身体中の毛が無く成ったでしょう?」
「、、、、、」
「馬鹿な事をするからよ!新和商事の社長は恐い人なのよ!香港マフィアとも親交が有るのよ!貴女も吉高の娘と同じ様にマフィアに売られる運命なのよ!」
「う、られる?」
「美人の女は幸せよ!吉高の娘も今頃は楽しく過しているわ!」
そう話していると、静内看護師がシェービングクリームを美沙の頭に塗り始める。
「うぅーーうぅーー」顔を振るが、見る見る間に頭は白くクリームで盛り上がる。
秋山看護師が蒸らす為にタオルを洗面器に浸けて準備をしている。
やがて頭が白く盛り上がる程クリームが塗られると、蒸しタオルをターバンの様に巻付けて蒸らす秋山看護師。
「桜木さん、綺麗に剃ってあげるからね!そうすればボイスレコーダーの場所は直ぐに喋れるわ」
「いえ!、、、、、く、らぶ!」口走るが曖昧で判らない。
二台のボイスレコーダーは自宅とクラブJの両方に隠して有るが、それが頭の中で区別が出来ない美沙。
男の仲間と質問されても、同僚と勘違いしているので三木と木村を口走っていたのだ。

その頃ようやく後藤俊から三宅刑事に連絡が届いた。
「昼休みでは有りませんが、時間が空きましたのでお話します」
「助かります!」
「実は二人で病院に厚子さんのお父さんに会いに行ったのです。もう既にお父さんは廃人の様な状況で僕達の話が判らない様子でした。院長が娘さんだけなら多少は心を開くかも知れませんとアドバイスを受けて、自分は面会の場所から移動したのです。しばらくしても厚子さんが戻らないので面会の部屋に戻ると、帰られましたと看護師が言うので携帯に連絡したのですが、電源が入っていないと繋がりませんでした」
「それでどうされたのですか?」
「何度も携帯に電話をしたのですが、連絡が出来ませんでした。新幹線の指定をお互い持って居ましたので、新大阪駅に向いましたが結局厚子さんは現われませんでした」
「その後は?」
「警察に連絡をしたのですが、大人の失踪は殆ど調べて貰えません!翌日再び病院を訪れましたが、その後は連絡が無いと言われて捜す術を失いました。二ヶ月後お父さんも亡くなられて葬式に成りましたが、厚子さんの姿は有りません!お兄さんも捜されていた様ですが行方は判らず今日に至りました。あの病院に何か有るとしか考えられないのですが、誰も動いては貰えませんでした」
「判りました!私も今から知り合いを捜す為に乗り込むのです。何か判りましたら連絡致します」
「彼女がどの様に成ったのか?それを教えて頂ければそれで結構です。今妻と子供が居ますので、昔の話を聞かせたく無いのです」
既に随分時間が経過している事を感じた三宅刑事は、御礼を言って中之島病院に向う事にした。

「後藤さんも苦しんだ様だが、吉高親子はモーリスの悪事を知りすぎたのと、娘さんが美人だった事が命取りに成った可能性が大きいですね」
「美沙も美人だから、同じ様な道でしょうか?」
「新和商事がモーリスの手先で働いているのは確かだ!」
京都府警のパトカーが赤色灯を廻しながら、高速道路を疾走していた。

「ジョリ、ジョリ」白く盛り上がるクリームを短い頭髪と一緒に剃り上げる溝端女医。
もう完全に精気を失って身を任せている状態の美沙。
質問が無い状態では、半分眠っている様に見える。
「院長!この様な状態でも低電流を流せば質問に答えるのですか?」
「答える!脳が生き返るのでな!」
「ボイスレコーダーの行方と、強奪犯の詳しい潜伏先を聞き出すのですね」
「沢山聞く事は不可能だ!薬と電流の併用は脳の機能を壊して、白痴化を招く恐れが有る。
「ジョリ、ジョリ」と剃り進んで、美沙の頭は青く光る部分が多く成っている。
しばらくして「中々可愛い感じに成ったわね、坊主も魅力的だわ」自画自賛の溝端女医。
「この器具を頭に巻付けて貰えるか?」
静内看護師が美沙の頭に巻付けて、横の機械とコードを繋ぐ。
「じゃあ、始めるか?」
機械のスイッチが入れられると「あっ!」急に起きる様な仕草に成る美沙。
「先ず名前は?桜木絢奈か?」
「、、、、、、、、うぅ、うぅーー」そう言ってから、頷く様な仕草を見せる美沙。
「ボイスレコーダーの隠し場所は何処だ!」
「ぼ、いす、、、いえ、、、クラブ、、J、ロッカー、、のてん、、、じょう」
「クラブJのロッカーの上に貼付けて居るのか?」
「、、、、、」頷くと今度は「い、、、え」と口走る。
「これは抵抗しているのだ!直ぐにクラブJを捜させてくれ!」自信を持って言う院長。

病院の捜索

「仲間の三木と木村の居場所を詳しく話せ!」
「じ、た、く?」
「そうだ!」
「し、ら、、ない」
「勤めて居るならそこでも良い!」
「な、ご、、やし、、、、」ウィークジャーナルの名古屋支店の住所を喋る美沙。
院長がその住所を書き留めた時、室内の内線電話が鳴り響いた。
「なに!警察!何用事だ!」
「桜木絢奈さんって患者がこの病院に入院されていませんか?と言われていますが?今治療中の患者さんですね!」
「そ、そうだが、、、、しばらく待たせて、何も言うな!」
「大変だ!警察が来た!直ぐに地下室に連れて行って隠せ!」
二人の看護師と溝端女医が美沙を車椅子に乗せると、治療室から秘密のエレベーターに向う。
院長は慌てた様子で治療室から、玄関に向って急いだ。
院長と溝端女医の関係者しか真実を知らないので、他の看護師とか関係者は喋る可能性が有るので慌てていた。

院長が三宅刑事達の処に行くと「この病院に桜木絢奈さんと云う若い患者さんが土曜日に運び込まれたと思うのですが?」
「その様な患者居たかなあ?」惚ける様に言う。
「調べさせて貰っても宜しいでしょうか?」
「どうぞ!患者に刺激を与えない様にして下さい」
そこに静内看護師と秋山看護師がやって来て「ご案内いたします!」
「広いですから、三組に分れて捜されるのが良いと思います」
院長の組には三宅刑事と木村カメラマン、静内看護師は町田刑事と小南、秋山看護師には京都府警の刑事と三木が一緒に成って、捜索が開始された。
異様な雰囲気に驚かされる三組の人達。
三宅刑事と木村は院長に連れられて、一般病棟の方に向った。
残りの二組は女性専用の病棟に向う。
「気を付けて下さい!色情狂の患者さんは若い男性を見ると危険な行動をしますので!」
「えっ」驚く京都府警の刑事。
目に付いた部屋を指さし「ここは治療室ですね!見せて貰えますか?」三木は先程迄美沙が居た部屋を見せて欲しいと言った。
驚いた秋山看護師も、見ても何も無いから大丈夫だと思って扉を開いて電気を灯した。
だがそこには無惨な美沙の刈り取られた髪が散乱していた。
「あれは何ですか?女性の髪ですよね!どの様な治療をここではされるのですか?」
「看護師が掃除をしていない様ですね!先程女性の患者に低電流治療を行っていた様ですね」
「低電流治療?」
「そうです!この器具で脳に刺激を与えて正常化するのですが、髪が邪魔に成るので坊主に剃ってこの器具を頭に被らせるのです」
「それで、髪を剃るのですか?」
「はい!」
「その患者さんは何処に?」
「ご覧に成られるのですか?」
「はい、是非どの様な感じか見たいと思います!」
三木は不安を感じて尋ねると「601号室の患者さんの治療を昨日して、掃除をしていなかったのね!」咄嗟に嘘を言って急場を凌ぐ。
三木は散乱した髪を足で踏んで靴底にさり気なく付けた。
「じゃあ、601号室に参りましょう」
三木は秋山看護師の目を盗んで、靴底の髪を数本ポケットにしまい込んだ。

しばらくして三十代の女性の部屋に連れて行かれた三木達は、その悲惨な姿に驚きながら「もういいです!」完全に狂った感じの女性は三木達を見ると、パジャマを脱いで鉄格子に近づいてきて奇声を発したのだ。
頭は剃髪姿で哀れな姿だった。
「お疑いは晴れましたか?今この様な治療の女性はこの人だけですが、多い時は数人居る事も有りますよ!順番に見て行きますか?」
そう言って隣の病室から順に見せる秋山看護師。
一時間以上かけて、隅々まで調べたが美沙の痕跡を捜す事が出来ずに、三宅刑事達は病院を後にするしか方法は無かった。
「ご納得頂けましたか?」
「はい、今日は帰らせて頂きますが、またお聞きに来るかも知れませんので宜しく!」そう言って三宅刑事達は中之島病院を後にした。
「悲惨な病院でしたね!」
「見るのに何か変な気分に成りました」
「三木君の病室は女性の患者でしょう?どうだったの?」
「いきなり丸坊主の裸の女性に会いましたよ!私が覗き込むと奇声を発してパジャマを脱ぎ始めるのです。驚きました」
「丸坊主の女性?」
「そうですね!低電流で脳に刺激を与えるのに、坊主にされていましたよ」
「そうなの、惨いですね!」
「多分色情狂でしょうね!」
「でも美沙がここに居ないと成ると何処に連れ去られたのでしょうね?」
「新和商事の関係先でしょうか?モーリスにはその様な場所は無いので、村中工業の様な会社かも知れません!今後は新和商事関連の捜査を進めます」三宅刑事は乗り込んだ精神病院で成果を出せなかった事にショックを感じていた。
それは小南達も同じで、この病院に間違い無いと思っていただけに精神的な疲労は大きかった。

「咄嗟に601号室の患者を思い出して助かったわ、散髪の髪が散乱していたのには驚いたわ!」
「まあ、当分は来ないだろう?もう聞く事は無いので、溝端先生の腕の見せ所ですな!」
そう言って微笑む院長。

厚子の失踪

美沙が地下室から病室に連れ戻されたのは、小南達が帰って一時間後だった。
「吉永さん!今日は低電流治療をしたので、疲れていますので点滴でそのまま眠らせて下さい」
車椅子に項垂れて殆ど意識の無い美沙を運んで来た秋山看護師。
「点滴の後、明日から食事の中にこの薬を入れて下さい!薬で渡すと飲まない可能性が有りますからね!」
「はい、判りました!」
「この薬を一週間飲ませたら、もう少し軽度な治療の病院に転院させますから、吉永さんの仕事はそれまでです。坊主に成っているので錯乱したら困りますので、鬘を被せて安定させて下さい」
「はい、その様に致します」
二人でベッドに美沙を横たえて、坊主の頭に鬘を被せて点滴を始めた。
美沙はしばらくして本格的な眠りに入っていた。

翌日、糀谷専務と新垣社長が、結局ボイスレコーダーは発見されたが、何も録音されていなかった事実に、名古屋の男に上手に騙されたとの結論に成っていた。
そして、美沙の喋った住所に行った新和商事の連中が、ウィークジャーナルの名古屋支店だったと連絡をして来て、溝端女医は急に美沙の事を思い出して「あの女はウィークジャーナルの記者ですよ!何処かで見た記憶が有ったのですが思い出せなかったのですよ!」
「するとあの女は記者で特ダネを掴む為にクラブJに潜入取材をしたのか?」
「その様ですね!だから自白で自分の名古屋支店の住所を喋ったのです」
「脅迫男との接点は?」
「無いのですよ!」
「脅迫男は安田の情報で強請って来たのか?」
「我々は全く関係の無い供述を聞こうとしていたのですね!」
「ウィークジャーナルの記者でも知りすぎたので、予定通り始末してしまえ!」
「今、生理中ですので、社長に引導を渡して貰ってから、吉高の娘と同じ様に調教をして売れる様に致します!」
「だが時間はそれ程無いぞ!先日もここに警察が来たのだろう?地下室が見つかる事は無いと思うが、用心はした方が良い!」
「安田の住所を見つけたのですが、ダミーの住所でどうやら名義を作った様です」
「中々用心深い男だな!強奪男の仲間だから、それも当然だな!兎に角早く安田を始末する事だ!」
「専務村中の桐谷から漏れる事は有りません、自首させましたので大丈夫です」
「まあ、役所の職員を名乗っただけだ!罪は軽い!」
四人の話合いは隅々に渡っていた。

その日の朝から食事の中に薬が混入されて、それを知らずに食べる美沙。
人体改造が始まっていたが、その様な事が判る筈も無い。
「桜木さんは転院する様ですよ!」
「何処に?」
「治療が進んで良く成ったので、軽度の精神障害の病院だそうですよ!」
「いつ?」
「一週間程らしいわ」
もう自白の薬は使わない様だ!でも自分が何を喋ったのか?全く判らない。
吉高の娘さんの様に外国に連れて行かれるのが、一週間先なの?それまでに脱出しなければ、だがこの吉永看護師に訴えても無駄な気がする美沙。

翌日三宅刑事が後藤から厚子さんの写真を提供されて、小南がもう一度あの病院に行って厚子さんの事を知っている看護師が居たら尋ねたいとの思いを話した。
何か美沙の行方と関係が有る話が聞けないか?小南も必死だった。
誘拐されてから五日、両親の不安も限界に達していた。
今は無事で帰って来る事だけを願っている。

中之島病院の院長室で「まだ何かお疑いでしょうか?」
「今日は別件で参りました!この写真をご覧頂いて、ご存じの看護師さんにお話をお伺いしたいのですが?」
院長に後藤俊と吉高厚子の写真を見せる三宅刑事。
院長は直ぐに判ったが、惚けた様に「随分昔に見た様な気がするが、どう云う人ですか?」
「吉高フーズの娘さんと婚約者だった方です!」
「ああ、思い出しました!綺麗な娘さんでしたね!」
「院長さん!綺麗な娘さんは覚えていらっしゃる?」小南が口を挟む。
そして「この娘さんも綺麗でしょう?ご存じ有りませんか?」美沙の写真を差し出す三宅刑事。
「何方の写真ですか?初めて見る顔ですね!」微動する事も無く答える院長。
「数人の看護師さんを集めて頂けますか?吉高厚子さんの事をお尋ねしたいのですが?」
院長は直ぐに秋山と静内を呼ぶが、他は比較的若い看護師を数人呼ぶ事する。
勿論、吉永看護師と女性病棟の看護師は入れない。
しばらくして待合室の横の小部屋にしばらくして集められると、写真を数枚机に並べて「ご存じの方はこちら側にお願いします」十人以上の看護師が順番に写真を見て数人の看護師が、見た事が有ると場所を移動した。
「この男性と女性をご覧に成られた方は挙手を!」
八人の看護師全員が挙手をした。
「この女性をご存じの方は?」美沙の写真を指さすと誰も手を上げる事は無かった。
三宅刑事は諦めて「この二人をご覧に成られましたか?」
「このお嬢様は二度程お見えに成られて、一度はお兄様とご一緒で二度目がこの男性だったと思います」
「この病院に来られた後、消息不明なのですが心当たりは?」
「はい、思い出しました!」静内看護師が手を上げて言う。
「二人で来られて、お父様と二人きりで話すと気持ちが和むと院長の発案で、男の人が待合室に行かれました。その後娘さんとお父様が二人でお話をされましたが、しばらくしてお嬢様が泣きながら病室を出られて、そのまま帰られてしまいました。お父様の病状に思い詰められていた様でした」失踪する素地は有ったと言った。

厚子の調教①

「父がこの様な状態に成ったのは、その薬が原因では有りませんか?」強い調子で言う厚子。
黒いストレートの髪を後ろで結んで、清楚な服装の厚子は看護師静内と秋山が父吉高孝吉に注射をしている現場を目撃してしまった。
「何を根拠にその様な事をおっしゃるのですか?」
「後藤さんを呼んで来ます!父の転院も考えさせて頂きます!」
一度は一緒にこの病室に二人で来た後藤と厚子。
何かを喋りたい様な仕草の父孝吉を見た院長が「二人ならお話が出来るのでは無いでしょうか?」とアドバイスをした。
それは薬の影響で喋らない筈の孝吉が何かを訴える仕草を見せたので、急遽二人を遠ざけて注射をしている時に厚子が戻って来て驚いた二人の看護師。
病室を出て後藤の居る待合室に戻ろうとした時、院長が戻って来て行く手を遮った。
部屋に押し戻される厚子に「何処に行くのですか?見なくて良かったのに戻られるのが早かった様ですな!」
「貴女方は、モーリスの手先?」
「お父さんも知りすぎたので、入院されました!お嬢様も少し知りすぎた様ですね!」
「きゃー、た、うぅ」いきなり背後から口を塞がれる厚子。
「中々の美人だな!新垣社長に連絡をして、始末の方法は考え様!地下室の檻に放り込んで指示を待て!」
「うぅ、うぅーーー」口を手で塞がれて、身体を押さえられる厚子。
秋山看護師が口を押さえている時に、首筋に注射針が突き刺さって、急に意識が飛んで倒れた厚子。
静内看護師が注射針を首筋から抜きながら「もう二度と戻れないからね!」そう言って不気味な笑みを溢す。
その後、後藤は厚子の戻りが遅いので、孝吉の病室にもう一度入れてくれる様に頼んで、病室を捜したが厚子の姿も無く孝吉は眠っている。
「お嬢様は、お父様の病状に思い詰められた様子で病室を出られましたが、後藤さんの居る待合室に行かれたと思っていました」秋山看護師が驚いた様に言った。
「新幹線の切符を持って居ますから、駅で会えると思います。お世話に成りました」後藤俊はお辞儀をして病院を後にした。

地下室に運ばれた厚子は二時間後、新垣社長と溝端女医が一緒に訪れて地下室で「中々の美人だな!先生この女なら売れそうだ!今丁度香港筋から日本女性でマゾ調教をした女を依頼されていたのだよ!最適だ!」
「もう知りすぎたので、世間には戻せないと考えていたのですよ!親父と同じ様に狂い死にさせるかと、考えて居たのですが思わぬ美形なので社長をお呼びしました」院長が揉み手をする様に言った。
「院長の判断は正しかった!顔とスタイルは一級品だ!マゾの性質を持っているか?それはこれから先生に調べて頂く!」
鉄格子の部屋のベッドに横に成って眠っている厚子を覗き込んで話す三人。
「何時に起きるのだ?」
「もう一時間程は起きないと思います」静内看護師が部屋の中央のマットを準備しながら言う。
「身体を調べましょう?連れ出して服を脱がせて貰える?」
「はい!」
静内看護師と秋山看護師の二人に車椅子に載せられて、マットの奧に有る婦人科用の診察台の側に運ぶ。
診察台は、普通の婦人科の診察台を改良した様で、下半身が通常の診察台より大きく上に上がる仕様に成っている。
アナル調教も出来る様に造られているので、排便も出来る様にカバーが付けられている。
「全て脱がせますか?」
「全裸にして診察台に乗せて頂戴!」
車椅子からマットの上に降ろすと、俯せにしてワンピースのジッパーを一気に降ろす静内看護師。
セミロングの黒髪を束ねている留め具を外すと、大きく黒髪が広がる。
「結構長い髪ね!艶も有って綺麗わ!」上から見下ろして言う溝端女医。
自分はパーマのとても綺麗とは言えない髪だから、嫉妬の様に言ったとその場の女性達は思った。
厚子の腕をワンピースから抜き取り、仰向けにする二人。
腰の部分までワンピースを一気に降ろすと、腰を少し持ち上げてワンピースを抜き取る。
ベージュのキャミソールを捲り上げる様にすると、パンティストッキングに指をかけて秋山看護師が脱がし始める。
「中々色も白いしもち肌だな!」新垣社長が中腰に成って、キャミソールの胸元を触る。
「社長さんも手伝って下さい」
するとポケットから小さな折りたたみのナイフを取りだして、キャミソールの肩紐を切る。
「乱暴ですわね!」溝端医師が微笑むが、サド気質の女医にはそれが良い様だ。
今度は胸の中央にナイフの刃先を入れると、キャミソールを一気に切り裂いて腰の処まで切り裂いた。
「中々の切れ味だ!」嬉しそうな新垣社長。
ベージュのブラジャーとパンティが新垣の目に飛込むと、我慢が出来ないのか?ナイフでブラジャーの中央を切り裂く。
白くて弾力の有る乳房が支えを失って、弾ける様にブラジャーから飛び出した。
「パンツもこれで切り裂いてやろう!」
場所を移動してパンティの腰の部分を左手で持って、ナイフの刃先を入れると一気に切り裂く。
右側を切ると今度は左側を切り裂いて、布切れが陰部に乗っているだけの状態に成る。
「ご開帳!」そう言って左手で布切れに成ったパンティを指で弾く様に取除いた。
「多くも無く、少なくも無く良い感じの毛並みだわね!じゃあ診察台に乗せて、奥まで調べて診ましょう」
三人に抱き抱えられて、残り僅かな布切れを身体から取り払い診察台に乗せられた厚子。
「途中で気が付いて暴れると困るから、拘束はして下さい」
両手を頭の上でパイプに縛り付けて、腰は革のベルトを巻付ける。
両膝は金具に乗せられて同じくベルトで拘束されてしまう。
頭上の無影灯が、上半身と下半身を照らし始めると、診察台が上昇を始めて大きく両足が開かれて行く。

厚子の調教②

「先ずアナルが使えるかを調べて見ましょう?大きく上げて下さい」
厚子の足が大きく上げられて肛門が無影灯の光に照らされて、息をしている様に動く肛門。
指で押さえながらいきなりその肛門に指を差し入れる溝端女医。
「うぅ」窮屈な姿勢の厚子の口から声が漏れる。
ゴムの手袋の指先にはローションが塗られているのか、スムーズに人差し指が吸込まれた。
第二関節まで挿入すると、指を動かして様子を診て「大丈夫ですね!少し便が溜まっている様ですが使える様です」
「それは良かった!今回の買い主は少し性器に自信が無いのか、両方使える女性を希望しているので良かった!マゾの気質が有るかだな?」
「基本的に女性はマゾですから、余程の事が無いとサド気質は少ないです」
「女医の様にですね!」新垣社長が微笑みながら言った。
「静内さん!浣腸の準備をして頂戴!」
「えっ、いきなり浣腸をするのか?」
「気が付いた時に諦めさせるには、屈辱的な事が良いのですよ!この女のお尻は処女ですから、精神的にもダメージが大きいのですよ!」
「流石はサド女医の異名を持たれる先生だ!面白い!初めて下さい!」
「金田先生に来て頂いて、縄の責めもして貰いましょう!この白い肌に縄が食い込み蝋燭が垂らされるのも見て見たい」
「変わった婦人科医だ!縄が好きでいつの間にか責める事に快感を覚えたらしい!」
「でも、金田の腕は一流ですよ!不妊手術には素晴らしい腕をお持ちです。勿論この女にも施すのでしょう?」
「勿論だ!買い主はゴムを使うのを極端に嫌がるからな!金田先生の手術は不可欠だ!」
「結婚間近の様だったが、これだけの美人だから、男性経験は豊富か?溝端女医?」
「身体を見た感じでは、遊んでない様ですね!乳房も崩れていませんし、性器の黒ずみも有りませんので経験豊富では無いでしょうね!まだ中は診ていませんが、クリトリスは完全包茎ですね」陰毛を掻き分けて診るとその様に話した。
「じゃあ、今日直ぐに剝いてしまうのか?」
「当然ですね!今日本人に屈辱を与えて、諦めさせるのが良いと思っています」
「それも面白いですが、散々調教してからステップアップさせるのは?」
「この女の体調に合わせましょう?生理に合わせて手術を行いましょう」
勝手な計画を話していると、大きな浣腸器二本に薬を注入してワゴンに載せて運んで来た。
「新垣社長に引導を渡して貰う前に、充分恥ずかしい思いをさせてやりましょう」」
「金田先生は明日お越しに成るので、今日の緊縛ショーは無しだな!」
携帯に連絡が届いて残念そうに言う新垣社長。
「鏡も準備して、大きな声を出してもこの地下室は防音設備が完璧だから、聞こえないので安心だ!今頃彼氏は一人で広島に帰っただろう?婚約者が大股開きで糞を垂れ流しているとは思いもすまい!」
鏡が届くと厚子が目覚めると自分の股間が見える位置に鏡をセットする溝端女医。
診察台にはアングルが色々付けられていて、カメラとか鏡を据え付けられる様に成っている。
この地下室で過去に五人の女性を調教して、売り飛ばしているが表面上は狂った病人に成っている。
だが今日の厚子は過去に無い美人で、依頼を受けている理想に近い女だと新垣社長は喜んで居る。
「充分辱めて、社長の特別な物で落して下さい!」
「俺の物は特別大きくて、この女は驚くだろうな!」
「社長は何年前に手術をされたのですか?」
「五年前だ!長くして亀頭を太くしたのだ!少し不安だったが、勃起薬と併用すれば恐ろしい程に成ったよ!殆どの女は失神してしまうな!」
それは気持ちが良くて失神しているのか、痛みで失神しているのか判らないが本人は自分の物に自信を持っている。
「例の注射をしておきましょう、自分が異常に感じる事に驚くので調教として最高です」
「はい!」
直ぐに静内看護師が先の長い注射針の付いた注射器を持って来た。
「陰部に打つから陰毛を掻き分けて、最後に小陰唇も広げて中にも注射しましょう」
「先生!痛みで目を覚ましませんか?」
「大丈夫でしょう?目は覚まさないでしょう?」
静内看護師が厚子の股間に両手を持って行くと、陰毛を押し広げる。
「ね、綺麗なまんこでしょう?」そう言いながら長い注射針を、クリトリスの近くに突き刺すと、抉る様に注射針を押し込む。
「あっ、うぅ」厚子が痛みで声を発するが目覚める事は無かった。
直ぐに次の場所に突き刺して、同じ様に抉ると「うぅぅー」先程とは異なる声を発する、
左右の大陰唇に二カ所ずつ注射が終ると「広げて!」と指示をする。
大陰唇を両手で持って左右に大きく広げる静内看護師。
その様子を覗き込む新垣社長は「ピンクだな!」嬉しそうに言う。
そのピンクの肉片に長い注射針が突き刺さると「あぅ、うぅ、うぅーーー」声が大きく成る厚子。
「目を開きました!」秋山看護師が言うと「半分夢の中よ!何か判らないわ」
同じ様に二カ所に注射が終ると、注射器を抜き取り厚子の顔を見ると、再び目を閉じているが目尻から涙がこぼれ落ちている。
「痛みは判ったのね!でも殆ど遊んでないわね!調教の楽しみが増えたわね」
「社長!糞の臭いを嗅ぐ前にコーヒーでも飲んで待ちましょう」
院長がいつの間にかコーヒーを準備して、テーブルに置いていた。
院長は年齢の影響も有るのか?女性の調教には殆ど興味を示さない。
精神病の患者を診察していると、自分も変な感じに成ってしまうと時々ぼやく事も多い。
「溝端先生もどうぞ!」
コーヒーのテーブルに呼ぶ院長。
「今日は薬を飲まれて来たのですか?」
「電話を頂いて直ぐに飲みました。もう股間がむずむずしているのですよ!先生の調教の前に頂きたく成るかも知れませんな!」そう言って笑う。
診察台の近くには剃毛道具も運ばれて来て、準備が整い時間を見る溝端女医。
「目覚めると既に股間は火の点いた枯れ草の様な状態ですよ!自分でも驚く程感じてしまうでしょう!」そう言う溝端女医は不気味な笑みを溢していた。

厚子の調教③

丁度コーヒーを飲み終わった頃、金田医師が電話で「社長が美人だと言うから、用事を断ってそちらに行く!手術を今日は行わないだろう?」
「先生が来られるなら、後日に成りますね!クリトリスの手術は女の生理に合わせてするそうですよ!」
「それなら私も同じ時にしましょう、一緒にすれば時間の節約にも成る」
訳の判らない理屈を言いながら、今から半時間程で行くからと電話が切れた。
「金田先生が私の言葉で我慢出来ずに来る様です!今日は楽しいパーティーになりそうですな!」新垣社長が電話を終って話した。
「じゃあ、マットの方の滑車の状態も点検しましょうか?」院長が立ち上がって、天井の滑車から縄を垂れ落して巻き取りの状態を調べている。
しばらくすると数本の縄が天井から垂れ下がって「正常に動いている様だ!」そう言って微笑む。
マットの上に縄が数本丸めて秋山看護師が置いた。
細い紐の様な物も纏めてその中に入っているので、金田医師の縄プレーには支障は無い様だ。
静内看護師が「そろそろ目覚める様です!」と厚子の様子を見て言った。
三人がテーブル席を立ち上がって、診察台の方に向うと鏡の位置を微妙に調整している静内看護師。
診察台の股間の部分に溝端女医が入って、胸の左右に新垣社長と院長が立って様子を見る。
頭の処には秋山看護師が立ち、広げられた左足の横には静内看護師が立っている。
「お目覚めね」溝端女医が厚子に声をかけると「あっ、ここは?」と言うと同時に自分の股間が目に飛込んで「きゃーー」と大きな声を出した。
「ここは婦人科の手術台なのよ!」
手と腰、そして膝が固定されて動けない状況が理解出来て、目で横の院長と見知らぬ男の姿に驚く厚子。
「知りすぎたので、お父さんと同じ様にしてしまおうかと思ったが、意外と美人だったので生かす事に成ったのだよ!」院長が見下ろしながら言う。
「私をどうするの?父は貴方方に薬を盛られたのよね!犯罪をしている病院だったのね!」
「お前は美しいから今からもっと美しくして、海外に売られるのだよ!」
「えーーー放して!」
両手を揺さぶる厚子だが、全く動かない両手と身体。
「恥ずかしい部分を大きく広げて何が言いたいの?これから綺麗にして海外にお嫁に行くのよ!」
「そうだぞ!大富豪の女に成れるのだから喜ばなければな!」
「いゃーーー私には婚約者が居ます。その様な海外に行けません!放して下さい!」
「貴女の意志は関係無いのよ!今から身体を綺麗に整えて、売れる身体に改造してから行くのよ!」
「いゃーー、ゆるしてーーー帰らせてーーー」
「ここが何処か判るわよね、自分でしっかり見た事無いでしょう?静内さん見せてあげなさい」
静内看護師が大陰唇を両手で押さえながら、左右に開くと「きゃーーーーやめてーーー」
異常に感じる厚子だが、その様な事をされた事が無かったのと、男性とのSEXでもこれ程の距離で自分の性器を見る事が無いので驚いた。
陰毛の上から左右に開かれて、小陰唇が口を開いてピンクの肉片まで目に飛込むと「いゃーー、ゆるしてーーー」そう言って大きく顔を横に向ける厚子。
「見るのよ!」秋山看護師が厚子の頭を持って鏡の方に向けて押さえつける。
「ゆるしてーーーたすけてーーー」
「見え難い?そうね、邪魔な物が一杯生えているわね!綺麗にしてあげましょう」
「えーーーーーーそんな事は絶対にいやーーー」この時厚子の頭には後藤俊に見られるから困ると思っていた。
これから始まる恐ろしい事の想像すら出来なかった厚子。
「厚子さん!これは何だか判る?」ワゴンの上から手に持ったのは手動のバリカン。
この様な物で刈り取る事は出来ないが、屈辱と恐怖を与えるには充分な効果が期待出来た。
厚子はバリカンで刈れると思うので、恐怖に怯えて「いゃーーやめてーー」大きな声で騒ぐ。
「幾ら大きな声を出しても、誰も助けに来ない!ここは秘密の地下調教室だ!諦める事だ!」院長が恐い顔で言う。
「ギーギーギー」溝端女医が手を前に出して音を出して厚子を怖がらせる。
「いゃーーたすけてーーゆるしてーーー」の声が一際大きく響く。
溝端女医がバリカンを右手に持って左手で厚子の下腹部を押さえる。
白い肌にバリカンの冷たい金属の腹が触れると「いゃーーーーーーーーーーー」身体を大きく動かそうとするが、頭だけが大きく動いて長い髪が診察台から滑り落ちて大きく広がった。
「ギーギーギー」バリカンが動き出すと、僅かな陰毛が刃先に引っかかって刈り取り始める。
「ほら、刈れているわよ!」そのバリカンの動きが異常に敏感に感じている厚子。
感度が異常に上昇して陰部が暑く成っているのは判っているが、薬を注射されたとは思ってもいない。
「もう、ゆるしてーー」
「既に散髪が始まっているのよ!ほら?」左手で刃先の陰毛を摘まんで厚子の胸の上にふりかけの様にばらまいた。
「いゃーーやめてください!」
再び腹を押さえつけて「ギーギーギー」とバリカンを動かして僅かな陰毛を刈り取って、指で摘まんで同じ様に胸にばらまいた。
バリカンで感じない部分を刈られていても厚子は異常な興奮を感じて、既に濡れ始めていたのだが知られない様にしている。
マゾの血が騒ぎ出しているので、この様に拘束されて人に見られると興奮してしまうのだ。
自分でも夢の中の願望だったが、現実に今起っている事は夢の中の世界と同じだった。
初めてSEXをしてから、急にその様な妄想を夢見る事が有る。
実際のSEXの相手は大学四年生で、彼氏は直ぐに就職して東京に行ってしまったので自然消滅。
だがその時に軽く手首を縛られてSEXを初めてした感覚が、その後も夢として残っていた。
後藤俊とのSEXは特別な感覚は無く、優しくて思いやりが有るので婚約をしたのだった。

厚子の調教④

この様な恥ずかしい思いをするのは元々願望の中に潜んでいた厚子。
だが本心とは別に気持ちは拒絶を現して、依然として大きな声で騒いでいる。
「もう、ゆるしてーー」その声を現す様に、胸には少しずつ陰毛が増えて白い肌に印象的に成っていた。
「ほら、鏡を見てご覧なさい!禿げの様にまばらに成っているわね!静内さん剃毛の用意をして頂戴!綺麗につるつるにしてあげましょう」
「えーー、もうやめて!そんな事をされたら、、、、」
「お嫁に行けない?大丈夫よ!中国の富豪に嫁げますよ!」
「いゃーーーー」頭を大きく振って嫌がる厚子。
静内看護師が早速シェービングクリームを泡立てて準備を始めている。
「可愛い子供の様にして貰うのだな!もう二度とお前の股に毛が生えそろう事は無いだろう?」
新垣社長が厚子の乳首を指で摘まみながら言うと「やめてーーーーーー触らないで!貴方が私を売り飛ばすのね!鬼!院長はお父さんを廃人にして、今度は私を、、、、、」唇を噛む厚子。
「口では文句を言うが、乳首が立ってこりこりしてきたぞ!」
「やめてーーーけだものーー」
「後で俺が獣の味を教えてやるから、もう少し待っているのだな!」
「貴方に襲われるなら舌を噛んで死ぬわ!」
「それは勇気が有る話だ!上手く死ねなかったらどうする?」
「、、、、、、、ああーーああーー」急にシェービングクリームは刷毛に浸けて塗られて、声が出てしまった厚子。
「ほら、白く成っているぞ!」
「いゃーーー剃らないで!」
下腹部から恥丘がクリームで盛り上がり「動くと大事な処が赤く成るわよ!」溝端女医がお腹を押さえながら、日本剃刀を持って「ジョリ、ジョリ」と音を立てて剃り始めると「やめてーーーー」大きく頭を振って叫ぶ厚子。
長い黒髪が大きく乱れているが、下半身は不思議と動かさない。
傷が付く事を恐れている様だと溝端女医は見抜いている。
「いゃーーやめてーー」叫ぶが剃り取った陰毛を半紙に載せて、厚子の見える場所に置く。
「ほら、こんなに剃れたわ!」
目を逸らそうとすると秋山看護師が頭を持って「よく見ておきなさい!もう二度とこんなに剃られる事は無いのだからね」
「、、、、、、、」
「そうよ!生えたら直ぐに剃られるから、伸びないのよ!判る?」
再び「ジョリ、ジョリ」大きな音を室内に響かせて剃り始める横溝女医。
手首に付けた集音マイクが剃刀の音を捕らえて、スピーカーから流しているのを厚子は知らないので、恥ずかしさが倍増していた。
「ジョリ、ジョリ」の音を聞きながら、奥歯を噛んで目を閉じて耐える様に成った厚子。
その様子を見て微笑む静内看護師はシェービングカップに、ハッカ液を数滴落して再び泡立て始める。
恥丘までが綺麗に剃り上げられて青白く光ると、半紙の上に陰毛を剃刀から指で移して盛り上げる溝端女医。
残された陰毛が口髭の様に大陰唇と、クリトリスの付近に黒く濡れている。
「何か光る物が見えていますよ!お嬢さん!」急に溝端女医が膣から溢れでている愛液を見て言うが「、、、、、、、、、」何も言わずに目を閉じて聞こえない事にしている厚子。
その時内線が鳴って院長が「金田先生来られた様だ!」
「意外と早かったわね!まだ剃毛も終ってないのに!」そう言って微笑む溝端女医。
「ひぃーーーーーーーーー」の声に全員の視線が厚子の身体に注がれた。
静内看護師がクリームを浸けた刷毛で、クリトリスから大陰唇に塗り初めて、ハッカ液が陰部に流れ込んで一気に刺激を感じた様だ。
「やめてーーーたすけてーーもえるーーー」
「何処が燃えるの?はっきり言ってご覧!」
「、、、、、、、、、、ひぃーーー」再び左側の大陰唇に刷毛が新たに動いて奇声を発した時、金田医師が入って来た。
「おお!剃毛中か?中々美人だな!沢山胸毛を置いて、既に乳首が立っているじゃないか?」そう言って覗き揉む。
頭の禿げた助平婦人科医を絵に描いた様な風貌で、女性に絶対もてないタイプだろう。
この金田医師がこの様な道に進んだのは、患者が一度診察して貰ったら、二度目は遠慮したい医師だったからだ。
殆どの患者が次回は別の医者に行くと言うのだ。
別に最初は変な診察をしていなかったが、その様に見られるので変な方向に進んでしまった様だ。
だが腕は一流で特に避妊手術の腕には定評が有る。
「どれどれ、心音を聴いてやろうか?」
聴診器を耳に近づくと「やめてください!」睨み付ける様に金田医師に言う厚子。
「助平に見えるのか?これでも私は婦人科医だぞ!お前の子宮の中まで器具を入れて掻き回してやるのだぞ!」
「いゃーーそんなのは絶対にいやーーー」
「そう言われても、私は医者だからなあ!」聴診器を乳房に押し付ける様にして「おお、高鳴っているな!」微笑みながら言う。
「ジョリ、ジョリ」
「ひぃーーやめてーーもえるーーたすけてーー」
左側の大陰唇の部分を左手で皮膚を引っ張りながら剃り始める溝端女医。
「ジョリ、ジョリ」
「あっ、あっ、ひぃーーあっ、あっ」声がうわずり感じ始める厚子。
「ジョリ、ジョリ」
「あっ、あっ、あぅ、、」大きく頭を仰け反らせて、足の指を伸ばして嗚咽に変わっている。
指が膣口に時々入っているのが、刺激を強くしている様だ。
左側を剃り終わると、直ぐに右側を「ジョリ、ジョリ」と剃り始める。
「あっ、あっ、うぅ、あっ」目を閉じて両手に力が入り、つま先にも力が入って伸びきる。
「ああーーああーーだめーーーだめーーかんじちゃうーー」急に大きな声を出す厚子。
ローターをクリトリスにあてて刺激を与える静内看護師。
剃毛とローターの刺激に完全に伸びきる身体仰け反る頭。

厚子の調教⑤

陰部に注射をされて、通常これ程感じないのだが完全に逝ってしまった厚子。
これまで後藤俊とのSEXでは一度も逝かなかったのに、剃毛プレーだけで逝ってしまった自分が恐かった。
ぐったりした厚子の陰部に残っていた陰毛を綺麗に剃り上げて、タオルで拭き取ると身体の上に置いた陰毛の山を取除く。
「綺麗なまんこに成ったわ、次は違う部分も綺麗にしましょう?足を上げて!」
「、、、、、何!いやーやめてーーおろしてーー」両足が大きく上に上がって厚子の肛門に無影灯の光が照らされた。
「な、なにを、、、するの?もうゆるして、、」
「これが何だか判るかい?」溝端女医が浣腸器を持って股間から横に出て厚子に見せる。
「あっ、そんな!便秘では有りません!」怯える厚子。
「先程調べたら便が溜まっていましたよ!静内さん準備を宜しくお願いします」
静内看護師が手袋を履いて、指先にクリームを塗りつけて厚子の股間に入った。
「な、なにを、、、するの?いやーーやめてーーーー」
直ぐに肛門の近くを指でマッサージを始める静内看護師。
「あっ、うぅ、いゃーーーーーーーーーーーーー」の大きな声と同時に静内看護師の指が厚子の肛門に滑り込んだ。
「あっ、うぅ、いゃ、いやーやめてーーだめーだめー」
「剃毛で逝ったのに、今度はアナルで逝くの?好き者だわね」
指を動されて微妙に感じてしまう厚子は「あぅ、うぅ、うぅーーーや、め、て」
「おいおい、少し感じているのか?」新垣社長が嬉しそうに言う。
金田医師はマットの上に置いて在る縄の中から、細い紐を持って来て厚子の頭の処に行く。
髪の毛を纏めて掴むと細い紐を巻付けて、早くも緊縛の準備を始めていた。
「あっ、うぅ、いゃ、いやーやめてーーだめーだめー」
「何が駄目なの?気持ちが良いの?」
「いやーーもうやめてーー気持ちわ、る、いーーー」
「そうなの?静内さん代わって、気持ち良く無いらしいわ」
浣腸器を持って静内が股間を代わるのを待つ溝端女医。
太い浣腸器の先にクリームを浸けて、股間に入るとまだ緩んでいる厚子の肛門にいきなり浣腸器の先を差し込む。
「うぅ!」
そのままポンプを押し込んで、注入を始めてしまう溝端女医。
「うぅ、いゃ、いやーやめてーーだめーだめー」どんどん液体が肛門から注入されて、厚子は直ぐに膨満感に成って来た。
「いゃーー、ゆるしてーーー浣腸!もう入らないから、ゆるしてーー」
「子供の分量で何を寝惚けた事を言うの?」直ぐに一本の注入が終る。
既に二本目を準備して待っている静内看護師が手渡して、再び厚子の肛門に突き立てる。
「うぅ!いゃーー、ゆるしてーーー浣腸!もうだめーーー」
初めての浣腸なので、それ程簡単に注入出来ないと思っている溝端女医。
「おお、下腹が大きく成って来たな!」新垣社長が剃りたての下腹部を手の平で撫でる。
「やめてーーーたすけてーーもうだめーー苦しい!」
顔が汗で光り始める厚子は膨満感と同時に便意を感じ始めていたが、逆に押し込まれて苦しい状況に成っている。
「もう、ゆるしてーーーくるしいーー」
「そろそろ、限界の様だわ!アナルキャップを準備して!」
アナルキャップが何の事か厚子に判る筈も無く、浣腸器で押し込まれるのが終って苦しさが止った。
その時「ぎゃーーーいたいーーーーたすけてーー」の叫び声と同時にアナルキャップが厚子の肛門に押し込まれて、苦痛に悲鳴をあげていた。
「あしを少し降ろして、準備をして下さい」
ようやく足が少し下げられて、窮屈な姿勢を解放されたが、下腹部が大きく膨れている厚子。
直ぐに「あ、あのトイレに行かせて下さい!」
腹痛が始まり便意が始まって、最初は物静かにトイレを要求した厚子。
「我慢しなさい!」
「、、、、、」苦痛が小刻みに訪れるので、直ぐに「トイレに行かせて下さい!」
「我慢!」
「だめートイレに行かせてお願い!お腹が痛いの」
涙と汗が噴き出して、身体が小刻みに震える厚子。
必死で我慢しているのでは無く、我慢させられている事が判らない厚子。
アナルキャップが無いと、直ぐに糞謝に成っているが詰まって出ない状態だ。
「お、ね、が、い、、トイレ、、、、、、、」
「そのまま出しても大丈夫よ!綺麗に受け取って貰えるから出しなさい!」
「いゃーーーートイレに行かせて、、おねがい、、、、」
「そんなに苦しいのか?」再び汗が噴き出した下腹部を手で触る新垣社長。
「静内さん、トイレに行かせてあげて!」
「はい!判りました!」
「吉高さん!外すわね」静内看護師がアナルキャップに手を伸ばして、少し緩めるのと「どばーーーー」と音がしてキャップが飛んで糞が勢い良く噴き出した。
「あっ、、、、、、、、、、、」糞謝をしてしまい泣き出した厚子。
「可哀想にな!間に合わなかったわね」
「美人の糞は臭うな!」
泣いている厚子は完全に出し切るまで、二度、三度と糞が飛び出してようやく終った。
直ぐに便器に蓋をして別の部屋に移動させて、消臭スプレーを糞謝する二人の看護師。
消臭が終ると濡れたタオルで股間を綺麗に拭かれているが、その間も泣いている厚子は完全にショック状態に成っていた。
もう抵抗する気力も無く成ったのを見据えて、手を外して膝の固定を外すと診察台を下げる。
待っていましたと金田医師が、放心状態の厚子の身体を抱え上げて、マットの方に抱いて行く。
こんな男の腕に抱かれる事は絶対に無い筈の厚子は、浣腸のショックから身を任せていたのだ。
マットの上に置くと直ぐに後ろ手にして、縄を手に巻付ける金田医師。
手早い動きに、我に返る厚子は「な、何を、、するの?」と言った時、既に後ろ手に結ばれてしまい乳房の下に縄が巻付けられていた。

厚子の調教⑥

金田医師は手早く乳房の上下に縄を巻付け終ると、天井から垂れ下がった縄に厚子の髪の毛に結んだ細い紐に縄を結び着ける。
結び終るとマットから立ち上がって、横の柱に在る縄を巻き上げるスイッチの処に移動する。
「もうゆるして」そう言いながら立ち上がる厚子は、地下室の出口の方向に行こうとする。
その時、縄を一気に巻き上げるスイッチを押す金田医師。
立ち上がって入り口の方に行こうとした厚子の身体を、髪の毛が引っ張られて動けなく成って立ち上がってしまった厚子。
今度は座り込む事も出来ない状態に成ってしまった厚子。
無毛の陰部をライトに照らされても、動くと髪の毛が痛くて移動が出来ない。
「どうしました?恥ずかしく無いのですか?」
「縄を解いて下さい!」
そう言っている時、マットの向こうで新垣社長が背広を脱いで、ワイシャツを脱ぎ上半身が裸に成っている。
その背中には般若の刺青が見え隠れしていた。
「新垣社長がお前を可愛がって下さるらしいぞ!」
そう言われて、マットの中に入って来た新垣社長の刺青をライトの下で見て驚きの表情に成った。
「金田先生!俺の物をいきなり咥えると壊れたら大変だ!少し慣れさせて貰えるか?」
「おお、そうだった!忘れる処だったよ!」
天井から垂れ下がった縄を一本手に持つと、厚子の前に行き左の膝に結び付け始める。
「やめてーー何するの?もう許して下さい!充分虐めたでしょう?」
そうは言っても身動き出来ない厚子は身を任せるしか術は無い。
「中々良いおっぱいだな!」新垣社長が縄で縛られて飛び出した乳房を下から揉みあげる。
「いゃーやめてーー」
「嫌と言われたら尚更したく成るのが俺の性分でな!」
今度はその乳房に口を持って行くと一気にしゃぶりつく。
「あ、っ、やめ、てー」身体を動かせないので、顔を動かす事も出来ない厚子。
その間に左の膝に縄を巻き付け足首にも縄を結び付けていた金田医師。
横溝女医がバイブを準備して、マットの横に持って来たが厚子には見えない角度だった。
アナル用のバイブも準備されているので、前も後ろもこれから使える様に調教される様だ。
「あっ、やめてー」乳房を吸われて感じる事を拒否する事に必死の厚子。
だが次の瞬間厚子の努力を消し去る事を溝端女医が言った。
「さあ、この注射を一本打ちましょうか?恥ずかしさが消えないと楽しく無いでしょう?」
「いゃーー注射を打たないで!」
後ろ手に縛られて動けない二の腕にアルコールの冷たい感触が有ると同時に、注射針が突き刺さって「うぅ」と言う厚子。
「直ぐに効くからね、社長に可愛がって貰いなさい」
金田医師が巻き上げるスイッチを押すと、左の膝が引っ張り上げられる。
微妙な角度を調整して、髪を引っ張っている縄とのバランスを考えて痛く無い様に調節する。
「やめてー」左足がマットから浮き上がって恐怖と苦痛が身体に伝わり始める。
「ほら、足が開いてつるつるのまんこが見えるぞ!」新垣社長が中腰に成って下から覗く。
「見ないでーーー」片足立ちに成って、身体を支えるのに困る厚子。
金田医師が後ろ手の縄に天井の縄から垂れ下がったフックに引っ掛ける様に、秋山看護師に指示をする。
後ろ手の縄に異なる縄が引っ掛けられると、髪に力が加わらないので痛く無い。
背中の縄に力が加わると、スイッチさえ入れたら厚子の身体は宙に上がるのだが、敢えてその様な事はしない。
先程の注射で身体が火照って、全裸でも全く寒さを感じる事は無い。
どんどん左の膝が引っ張り上げられて、陰部が剥き出しに成って縄の動きが止った。
「丸見えだな!ピンクの肉まで見えているぞ!」
「いゃーー見ないで!」
「こんな物を食べた事有るのか?」バイブを持って見せる新垣社長。
「いゃーーその様な物使った事有りません!」
「知っているのだな?どちらにする?」
両手にバイブを持って見せる新垣社長。
持っているのは一本がそこそこ太い物で、もう一つにはイボイボが付いていて先端が動く様だ。
「どちらも美味しそうだろう?俺の物はこれよりも大きいからな、先ずは慣らさなければ入らないのだよ!」
「どちらもいりません!」
「大きく股を開いていても強気なお嬢さんだ!これを食べさせてやろう」
イボイボの付いたバイブを右手に持って「さあ、これを食べてみましょうか?」
中腰に成ると左手で厚子の大陰唇を広げる様に指を入れる。
「うぅ、や、め、てーー」
「嫌がるのにお嬢さんのここは濡れていますよ!」
バイブの先端を広げた大陰唇の中心部に擦りつけながら、滑り込ませる。
「ああーや、め、、、、、、だめ、だめ」イボイボが膣口に吸い込まれる様に入って行くと、直ぐにスイッチを入れて先端部分を動かし始めた。
「ああ、いゃ、だめーーーだめーー、動かさないで、、、、」
金田医師が近づいて来て、厚子の乳房を揉み始めて半開きで嗚咽を発している唇にキスをした。
絶対に女性にキスをして貰えない金田医師は、この様に縛り上げて動けない女性にキスをして、舌を絡ませてディープなキスをするのを喜びにしているのだ。
「うぅ、あっ」舌を絡ませて厚子の嫌がる顔を両手で持って、口がべとべとに成るまで舐めている。
陰部に挿入されたバイブの動きに息が荒く口を開くと、自由に吸い舐める。
「ああー、あっ、あっ」声を出しながら、バイブが奥まで入れられてモーター音を高くして、動きを大きくする新垣社長。
厚子はこの様なバイブを使われたのは始めてで、薬の影響も手伝って完全に感じてしまって声が絶え間なく出ている。
口を吸い、乳房を揉みながら好きな様に遊ぶ金田医師。
新垣社長がバイブを秋山看護師に持たせて、自分はズボンを脱ぎ捨てて裸に成っていた。

厚子の調教⑦

新垣社長が全裸に成ってマットに戻って来ると、股間には大きなペニスが天井を向いて勃起状態に成っている。
「秋山さんもう良いぞ!」そう言われて秋山看護師がバイブを股間から抜き取ってマットから出て行く。
金田医師も厚子の身体から離れると、新垣社長が吊り上げられている左足を抱き抱える様にして、厚子の身体を持ち上げる。
右足がマットから離れるのかと思う程だが、下から突き上げる様に自分のペニスを厚子の愛液が垂れている部分に持って行く。
「天国に送ってやろうな!」乳房に口を持って行くと、強い調子で吸い上げる。
「あぅ、うぅ、うぅーーー」陰部にペニスの先端が入り、異様な大きさを感じる厚子だが見えない。
「ああーああーーや、、、いゃーーーーこわ、、、れ、、るーー」先端が膣口に入ると口走る厚子だが、新垣社長はもう興奮しているので収まらない。
「ああーーああーーだめーーーだめーーいた、いた、いた、うぉーーー」下から突き上げる様に大きなペニスが厚子の中に入って、痛みと同時に過去に無い圧迫感を感じている。
「ああーああーーや、、、いゃーーーーこわ、、、れ、、るーー」
「少し動かしてやろう」
下から突き上げる様に腰を動かし始める新垣社長。
髪の縄は完全に緩められているので、厚子は大きく仰け反って「ああーああーーや、、、いゃーーーーこわ、、、れ、、るーー」を繰り返しているが、もう嗚咽だけに変わっている。
一層大きく突き上げ始めた新垣社長の腰の動きに「あーああーああーーーだめーだめーーー」の言葉を残して意識が無く成っている。
子宮口を責められて完全に逝ってしまった厚子の身体を、尚更下から突き上げて自分も逝こうとしているが、やがて反応の無い厚子に飽きたのか「気絶して面白く無いな!」そう言って厚子の股間から元気の有り余るペニスを抜き取った。
「社長!ゴムを着けずに射精すると妊娠してしまいますよ!余計な手術はごめんですよ!」
溝端女医が微笑みながら言う。
ようやく新垣社長が厚子から離れると、金田医師が縄を少し緩めて右足の膝にも縄を巻付け始める。
静内看護師がトレイに載せて、アナルパールとアナル拡張器、そして極太のバイブを持って来た。
項垂れた厚子の右膝に縄を巻付け終ると、金田医師が項垂れた厚子の口に布を押し込み日本手拭いでその上を多い後頭部で強く結んだ。
これからは何も言わせずに、二穴調教に取りかかる為だ。
これから何度か逝きながら気を失い徐々にSEXの虜に変わっていくからだ。
気を失った状態で右足も吊り上げられ初めて、気が付く厚子は「うぅ、うぅーー」猿轡で声が出せない事を知るが、膝が引っ張られて直ぐにM字開脚状態に成った。
「新垣社長の物で気絶したから、このバイブ位が丁度良いかもね」
下から極太のバイブを見せる溝端女医。
「うぅ、うぅ、うぅ」大きく首を振る厚子。
「でもね、今回はこれなのよ!」アナル拡張器を「カチャ、カチャ」言わせて見せる。
厚子はそれが肛門用の物だとは判らなくて、膣に入れる物だと思って首を振る。
ローションを一杯入れた入れ物に肛門拡張器を入れて、滑りを良くして取り出す。
静内看護師が早速クリームの浸いた人差し指で、厚子の肛門を触り始めた。
「うぅ、うぅ」先程も一度触られたが、今回は随分剝き出された様に感じている厚子。
丁度和式の便所に入っている感じで、肛門も膣も剥き出し状態で無防備だ。
「うぅ、うぅ」マッサージが終ると、指をゆっくりと挿入される。
一度入れられたので、感覚が残っているのと不安が無いので比較的簡単に入る。
「先生!良い感じです!」
「浣腸も終ったから、すっきりしているのね」
アナル拡張器を近づけると、指を抜き取る静内看護師。
滑る様に挿入されるアナル拡張器は、徐々に広げられてしまう。
肛門から空気が入る感覚に「あっ、あっ」と首を振る厚子。
横からアナルパールを持って、今度は秋山看護師が拡張器の中に滑り込ませる。
「うぅ、うぅうぅーーー」首を振って驚きの表情に成る厚子。
肛門からの異物の侵入は初めての経験で表情が引きつる。
自分がアナルに興味が有るのかも判らないので、違和感だけが大きく増幅されている。
このアナルパールはスイッチを入れると、振動と同時に動き始める仕掛けに成っているのだ。
「うぅ、うぅうぅーーー」首を振って嫌な素振りだが、逃げ場も無い状況。
その時顔を見上げて秋山看護師がアナルパールの電動スイッチを入れた。
「あぅ、うぅ、うぅーーー」急に大きな声で反応を始める厚子、アナル拡張器をゆっくり抜き取ると、肛門筋がアナルパールを咥え込んで尻の中を掻き混ぜる様に動き始める。
「まだ刺激が少ないでしょう?これを前に入れたらどう成ると思う?」
極太のバイブにローションを塗り込み、無毛の陰部をこじ開く様に挿入を開始した。
この様に成ると、アナルパールの動きとバイブの動きが連動して膣の側面を刺激する。
「狭いでしょう?前と後ろから入れられて皮膚一枚が擦れる刺激はどう?」
「うぅ、うぅうぅーーー」首を大きく振って感じ始める厚子はもう我慢の限界を超えていた。
狂った様に頭を振って「うぅぅぅーーーうぅーーーうぅーーー」声を発して、しばらくすると仰け反り足先を伸ばし、気を失って項垂れた。
「逝った様ですね!この刺激は身体が完全に覚えたでしょう」
気を失った厚子は全裸の状態で鉄格子の部屋に入れられて、睡眠薬を注射されて眠った。
この日を最初に毎日の様に溝端女医達の責めが続き、薬の影響も手伝って徐々に慣れる事に成った。

その十日後、厚子の生理に合わせてクリトリス包茎の手術と、不妊手術が本人の知らない間に行われてしまった。
その日から十日後から再び責めが始まったが、今度は以前よりクリトリスの刺激が増え、完全にSEX依存症の様に求める様に成ってしまった。
吉高厚子は麻薬依存症にされて、海外に売られたのは最初の調教から二ヶ月後だった。

地下室へ

美沙はノートに色々な思いついた事を書き綴った。
数日間は何事も無く過ぎ去るが、毎日媚薬の混入された薬を飲まされている美沙。
「SEXの経験が無い女でも効果は有るのか?」
「女ですから、必ず効果は有りますよ!いきなり社長の極太ペニスを咥えさせるには、半分放心状態の様な時で無ければ無理ですが、女としての機能が充分潤う必要も有るのですよ!」
「処女の女とは、私も自分のペニスを手術してから初めての経験だ!慎重に頼むぞ!」
「来週土曜日を予定していますが、社長の予定は大丈夫ですよね!」
「勿論だ!他の用事は全て断るぞ!」
「丁度手術から十四日ですから、馴染んでいる頃ですから充分解してから犯せば大丈夫だと思いますよ!」
溝端女医と新垣社長は美沙の生理が終れば、一気に吉高厚子と同じ様に調教に取りかかる予定にしている。

小南達も必死で美沙の行方を捜索していた。
一億を強請り獲った小島企画部長に、安田俊幸は何故記事が掲載されないのだと電話をしたのは、丁度その頃だった。
小島企画部長は、当社の記者が捕まって行方不明に成っているので、今記事を掲載して犯人がモーリスの関係者の場合危険に成るので控えていると答えた。
小島企画部長には最適な言い逃れの材料を提供した事に成った。
安田は新和商事が絡んでいると、危険だと思うと同情してしばらく待つと言った。
警察も表だっては動きが取れず躊躇している。
毎日の様にクラブJには問い合わせをするが、失踪、無断欠勤としか答えない。
三木と小南はなおも中之島病院が怪しいと思い、看護師の帰宅に合わせて様子を聞く地道な事をしていた。
女性病棟の看護師の殆どが院内の寮に住んで、吉永看護師も二交代で勤務をしている。
二人が接触したのは普通病棟の看護師が殆どで、美沙の写真を見ても知らないと答える。

「いよいよ明日ね!早く治って元気に成ってね!」吉永看護師に言われて美沙は「ありがとうございました。お世話に成りました」と御礼を言った。
「何処の病院に転院か聞いていますか?」
「桜木さんの地元で名古屋の病院って聞きましたよ!」
「それは嬉しいです。地元なら両親にも会えるかな?」
「こうして話していると、何処も悪い様には見えないのにね!不思議よね!」
「何処も悪く無いわ!って言うと悪いって言われるのよね!」そう言って微笑む美沙。
二交代で夕方には吉永看護師が交代するので、二人は今挨拶をしたのだ。
この時吉永看護師は、本当にこの桜木絢奈は病気では無いのでは?の疑問を持っていたが敢えて口には出さずに別れた。
夕食には睡眠薬が混入されて、美沙は完全に眠ってしまった。
深夜、秋山看護師と静内看護師の手で車椅子に載せられて、地下の鉄格子の部屋に移動させられた美沙。

翌朝目覚めた美沙は部屋の造りは同じだが、少し異なる事に気が付く。
檻の外がカーテンで仕切られて、向こうが見えない状態だった。
監視カメラを見ていた静内看護師が、溝端女医に連絡をした。
朝食を運んで来たのは今まで一度も見た事の無い看護師で、美沙は「この部屋何だか変よ!いつの間に変わったの?」
「、、、、、、、、、、」何も言わずに食事だけを置いて「食べて、置いた、方が、良いわよ」と変な言葉で言い残してカーテンの向こうに消えた。
病院を変わるのでこの部屋に移されたのだろうか?その様に考えたが取り敢えず食事をしてから何か判るだろうと思った。
部屋の造りは全く一緒で、ベッドにトイレ、シャワールーム、テレビが在るので退屈はしない。

食事が終った頃を見計らって先程の看護師が片付けに来た。
「この部屋もの凄く静かね!何も聞こえないわ!もしかして地下室?」
「、、、、、、、、、」その言葉に若干の反応が有る。
美沙はこの部屋が地下室で、何か秘密の部屋の様な気がした。
吉永看護師はこの地下室の存在を知らないのだろう?本気で転院だと思っていた様だ。
あのノートが小南さんか警察の手に渡れば、私がこの病院に監禁されている事が直ぐに判るが見つけてくれるだろうか?それが心配な美沙。
しばらくして、カーテンが大きく開かれて地下室の中が初めて美沙に見えた。
「ここが何処判るか?」そこには今まで見た事の無い不細工な男が立っていた。
「金田先生!いきなり言うと驚きますわ!」溝端女医が横から顔を出して言った。
「あっ」久しぶりに会う女医は美沙の股間を剃毛して、クリトリスを剝いて頭も坊主にした変態女医に驚く美沙。
「今日から、貴女の色情狂の治療をして下さる溝端女医と金田先生だ!」院長が横から伝える。
「私は病気では有りません!」
「いいえ!病気よ!私が治してあげるわね」
「違います!病気は貴方方でしょう?」
「それは私達の治療でよく判ると思うわよ!静内さん達患者を診察します!病室から連れ出して下さい!」
「はい」いつの間にか三人の看護師に増えている。
朝食を運んで来た看護師は、日本人では無い様な雰囲気が有る。
中国人の看護師の様に思う美沙。
中国人の買い主が商品(美沙)の下見を兼ねて、調教の実態を調査に来た様だ。
「さあ、出るのよ!」三人の看護師に半ば引きずられる様に連れ出される美沙。
病室から見えなかった部屋の設備が目に入って恐怖の表情に変わった美沙。
婦人科の診察台に、横には奇妙な診察台が在るが何に使うか美沙には判らないが、肛門科の診察台を改良した責め具だった。

全てを知られて

もうこの女に何も聞く必要は無く、唯調教をして売り飛ばすのみなのでこの場の全員は気楽な気分だ。
ボブの鬘を着けているので、美沙の可愛さはそのままで金田医師には責めるのには良い女だと涎が出る程だった。
二十二歳の美沙が処女で有る事実はこの場の全員が把握している。
「手術の経過を確認するので、婦人科の方へお願いします」
「いゃー離して、何処も悪く無いわ」
そう言った時に地下に新垣社長が入って来て「良いタイミングで来た様だな」
「これから診察をしますので、しばらくお待ち下さい!」
新垣社長を見て笑顔で言う溝端女医。
「判ったよ!充分診てやってくれよ!何しろ立派な物をご馳走するのだから、充分お腹も空いてないとな!」不気味な笑いを見せて離れた椅子に座る。
三人の看護師に金田医師が加わって、軽々と美沙の身体を診察台に乗せてしまう。
「暴れると痛いわよ!直ぐに気持ち良く成るからね!」
素早く両手を万歳の様にして、手首を結び付けてしまう看護師達。
「離して下さい!何処も悪く無いです!」気丈に訴える美沙。
「悪いか?悪く無いか?は私が判断します!患者が口を出さない様に!これ以上口を挟むとこれをしますよ!」革で作られた猿轡を見せる。
「、、、、、、、、、、」睨み付けるだけで声は出さない美沙。
秋山看護師がスカートに成っている布のマジックテープを引きちぎる様に外す。
そのまま二人で美沙の腰を浮かせて、一気に引き抜いてしまった。
大きめのパンツと上半身は同じ様に、マジックテープの上着が素肌に着ているだけだ。
直ぐに膝を金具の上に載せて、革のベルトで拘束をする。
美沙もこれだけの人数が居たら抵抗をしても疲れるだけで、怪我をする可能性も有るので暴れる事も自重した。
「心音を聞ける様に胸を開いて下さい!」
秋山看護師に指示をする溝端女医。
マジックテープの上着を直ぐに左右に引き美沙の胸が露わに成ってしまう。
恥ずかしそうに顔を背ける美沙の首の処をカーテンで遮り「恥ずかしいでしょう?」そう言う静内看護師。
見えない恐怖を美沙に与えるのと、色々な器具を使える利点も有る。
もうひとつ大きいのは新垣社長達が横で見学する事が出来る事だ。
ブラジャーもこの病院に入れられてから一切していない。
「心音は?」
聴診器が美沙の乳房の下にあてられて、聴いている様に移動するが、実際は秋山が気を逸らす為に動かしていた。
金田医師と新垣社長が美沙の下半身に集まり見学を始めていた。
「診察台が動きますよ!このパンツ要りませんね」いきなりハサミを入れて切り始める溝端女医。
「あっ!」声を出すのと同時に「ジョキ、ジョキ」と切られて、足が開かれるのに合わせて腰から引っ張り抜いた。
「いゃー」小さく声を出したが、容赦なく足は広げられて無影灯の明かりに照らされた。
「もう毛が生えていますね!手術の部分は綺麗にピンク色に成っていますね!最高の感じに成りましたよ!バイ菌と臭いがしなく成った筈です」
「臭い?」
「そうですよ!クリトリス包茎の場合、臭いとバイ菌が繁殖し易いのですよ!それと女性としての感度も良く成るのです」
「先生!綺麗に剃りましょうか?」
「そうね、綺麗にしましょう、準備をして下さい!」
「えっ、また剃るのですか?」
「そうよ!貴女は今日から調教を受けて、外国に嫁に行くのよ!」
「えーーそんな事!」
「雑誌の記者が潜入取材で知りすぎたのよ!」
「えっ」
「驚いた様ね、ウィークジャーナルの記者って事は既に判っていたのよ!美人だったので命は救われたけれどもう元の仕事には戻れないのよ!」
「新和商事とモーリスそしてこの病院は繋がっていたのね」
「今頃判っても仕方無いわよ!大きく股を広げて動けない状態では、私に身を任せるしか術は無いのよ!」
「犯罪は既に警察に知られていますよ!この様な事は止めて自首して下さい!吉高フーズの社長も貴方方がここで、、、、」
「お喋りはこの辺りにして、赤城美沙の調教を始めます!」
「えっ」名前を言われて美沙は全てを知られていると思い、今更の様に無謀な潜入取材を後悔していた。
「感度検査を行います!器具を付けて下さい」
秋山看護師が美沙の乳房にお椀の様な器具を被せる。
その器具にはコードが付いて、横の機械に接続されている様だ。
「な、何をしたの?」
「ブラジャーだわ!気持ちが良いかもね」
「先生!クリームを塗っても?」
「初めて下さい!ごま塩の様な陰毛は汚いわ」
「うぅ、うぅ」歯を食いしばり、目を閉じて耐える美沙。
前回の剃毛を思い出してしまう美沙は、塗られる刷毛の動きに敏感に反応していた。
毎日飲まされていた媚薬の効果が既に美沙の身体を完全に蝕んでいる。
「どう?気持ち良いでしょう?」
「、、、、、、、あっ、あっ」クリトリスの付近を刷毛が撫でると我慢が出来ない美沙は声が出る。
刷毛は再びクリームを浸けて、大陰唇を下に移動すると「あっ、だめ、しみ、、、あついーー」
ハッカ液の混入されたクリームは小陰唇から、膣を刺激して熱さを感じていた。
美沙の陰部が白く盛り上がると「じゃあ、剃ってあげるわ」日本剃刀を手に「ジョリ、ジョリ」と下腹部から素早く剃り始める溝端女医。
短い黒い陰毛は直ぐに剃り上げられて、白い肌をライトの光に輝かせている。

幻覚

固唾を呑込み眺めている新垣社長と金田医師。
今日新垣社長が美沙を強姦すると、明日にでも不妊手術をしてしまう予定に成っている。
自分もこの子とSEXがしたいと思っている金田医師。
本当は新垣社長が強姦する前に手術をするのが良いのだが、その時点で処女膜は完全に破壊されるので新垣社長の楽しみが消える。
「ジョリ、ジョリ」大陰唇の皮膚を引っ張り剃刀が動くと「あっ、あっ」小さな声が漏れる美沙。
「随分濡れて来たわね!秋山さんスイッチを入れて!」
「あっ、あっ、いゃ、あっ」乳房への刺激が始まると、もう我慢の限界が超えていた。
今までこの様な刺激を受けた経験が無いのと、薬の影響は美沙の身体を完全に変えていた。
電気の刺激と同時に乳首を吸われている感覚は、処女の美沙を狂わせるには充分だ。
膣の廻りの皮膚を引っ張りながら剃刀を動かすと、一層声が大きく「ああーーああーこわい」の声が聞こえて、逝きそうに成っていると思う溝端女医。
剃り終えると一気に逝かせてやろうと、小さな電マを持ってピンクのクリトリスに近づける。
「ああーーああーーだめーーーだめーーかんじちゃうーー」
「ああーああーーーいっち、ち、ち」美沙は乳房の刺激とクリトリスへの電マでもう我慢が出来なく成っている美沙。
「この刺激は耐えられないでしょう?」電マの出力を上げられて「ああーああーーだめーーだめーーたすけてーー」
「うぅ、わぁー」の言葉を残して逝ってしまって、大きく仰け反って放心状態に成った美沙。
「どう?クリトリスの刺激は?」
「、、、、、、、、、、」言葉が無い美沙。
「カーテンを外して、胸の器具も必要無いわ!」
秋山看護師が胸の器具を取除くと、美沙の乳首が硬く勃起しているのがよく判った。
「社長!この子の感度は抜群でしょう?」
「陳さんどうです?逸材でしょう?」
「本当ですね、若いから長く使えますと御主人さまも喜ばれます」
流暢な日本語で微笑みながら言う。
放心状態の美沙は覗き込まれている数人の顔が識別出来ない程の衝撃だった。
「社長の出番ですが、このままではSEXが恐怖に成りますから、例の薬を吸わせましょう。静内さん準備して下さい」
「はい」
乳房への刺激する器具を片づけて、異なる器具を運んで来る静内看護師。
酸素マスクの様な物がその機械から伸びているので、ガスを吸わせる事が判る。
美沙はようやくその器具を目にして「な、何!やめてー」怯える。
「社長が赤城さんの処女を頂きたいと言われているのですが、社長の物が大変大きいので恐怖に成ると困りますのでね!」
「いゃーやめてー」目の前に般若の刺青をした男を見て怯える。
「社長に処女を差上げれば貰えば思い出に成るわよ!」
「いやです!死んでもいやーー」
「そうね、死なれたら困るわね!ガス!」の一言で、静内看護師がいきなり美沙の口と鼻にマスクを押し付ける。
「いゃーー、うぅう」
「さあ、一気に吸込みなさい!」
ガスを吸込んでしまう美沙は、徐々に目の力が無く成って来る。
「もういいわ!充分吸った様だわ」
マスクを取除かれて、大きく息をしているが視点が定まっていない美沙。
「診察台から降ろして、向こうのマットに運んで下さい」
手首の拘束を外して、診察台を下げて膝の拘束も外すと診察台から、新垣社長自ら抱き抱えてマットの方に運ぶ。
「変な、、、気分、、、」美沙が新垣社長の手の中で呟く様に言った。
「天国に送ってやるよ!」
「て、んごく?雲のな、か?」
麻薬で造られたガスは美沙を雲の中へ誘ったのだろうか?使った溝端女医も使う人によって色々な症状に成ると思っている。
ガスの効果の有る時間の記憶は殆ど残らず、女性の気分はSEXを求める様に成る事は実証されている。
処女の美沙に効果は有るのか?それは判らないが新垣社長の極太のペニスを咥えさせるには、全く意識が無いか?この様な薬で誤魔化す意外に策は無い。
痛みも霧の中に消し去り、処女を失ってからの調教でSEX好きにしてしまう予定だ。
その様な事にはお構い無しの新垣社長は美沙の強姦しか考えていない。
マットに美沙を横たえると、自分は直ぐにズボンを脱ぎ始める新垣社長。
マットの上部に金属の棒が在り、そこに美沙の両手を拘束する秋山看護師。
美沙は全く抵抗せずに身を任せている状態。
目は天井を見つめて、時々笑みを浮かべるので、夢の中に居るのだろう?溝端女医は離れた場所で観察をしている。
ズボンを脱ぎ捨ててトランクス一枚でマットに戻って来ると、直ぐに美沙の頭を持って「口を開け!」と命じる。
美沙は抵抗を示さず小さく口を開くと、直ぐに顔を近づけて自分の舌をねじ込む様に入れてしまう。
「うぅ、うぅ」舌を絡ませられて苦しそうにする美沙。
キスの経験が少ないので、この様な荒々しい事には抵抗を示す。
「先生!キスは駄目だな!反応が無いぞ!」顔を上げて溝端女医に言う。
「社長!それは無理よ!その子は処女ですよ!その様なキスには反応しませんよ!」
「俺の物を舐めるのは出来るか?」
「アイスクリームだとでも言えば舐めて貰えるかも知れませんよ!」
それを聞いた新垣社長は直ぐにトランクスを脱ぎ捨てて、美沙の身体に馬乗りに成って大きなペニスを持って「少し頭を持ち上げてくれ!」秋山看護師に命じる。
秋山看護師が美沙の頭を持ち上げると「アイスクリームだよ!舐めなさい!」手に持ったペニスを美沙の顔に近づける。
「、、、、、、」目で目の前のペニスを見ているが、焦点は定まっていない。

処女喪失

しばらく見つめていた美沙が新垣社長のペニスを長い舌を出して、ぺろりと舐めた。
「おお!美味いか?」ペロペロと舐め始めて嬉しそうな顔に成った新垣社長。
大きなペニスの側面を舐めて、亀頭を舐める美沙だったが急に「溶けないわ!」徐々に大きく成るペニスに違和感を言い始めて止めてしまった。
「社長!残念ね!もう無理ですよ!」
溝端女医に笑われて、諦めて立ち上がると「今度は俺が舐めてやろうか?」
そう言うと美沙の身体に覆い被さり、乳房を掴み乳首を舐め始める。
「あっ、あっ」急に反応をする美沙に「おお、感じる様だ!」そう言うと嬉しそうに乳房を揉み上げて乳首を舐めて吸う。
「ああー」声を出して目を閉じると、一層感じ始める美沙。
ガスの影響でSEXに対して抵抗が無く成っている様だ。
新垣社長に荒々しく乳房を揉まれて、舐められて吸われて美沙は処女とは思えない興奮で「ああーああーーああーーーいいーーー」と声を出して悶える。
「静内さん達でその子の足を持って大きく広げて、抵抗出来ない様にして下さい!最後の抵抗をするかも知れません!それは処女の防衛行動を無意識にする可能性が有ります」
「大丈夫でしょうか?社長のペニスが大きいので、正気に戻りませんか?」静内看護師が喘ぎ声を聞きながら尋ねた。
「社長も心得ていらっしゃるから、上手に咥えさせると思うわよ!」
美沙は新垣社長の前戯で、徐々に身体が順応して喘ぎ声が大きく成っている。
「そろそろ、入れたく成った先生!良いか?」溝端女医を見て訪ねる。
「社長!焦らず仕留めて下さい!看護師に手伝わせますからね」
美沙の乳房を荒々しく揉んで舐めて吸っていた新垣社長が美沙の身体から離れた。
美沙の目の焦点は定まって無く、放心状態で疲れた様にマットに身体を投げ出した状態。
それでも足は閉じて無毛の恥丘が見える程度で、性器は両足に固く守られている様に見える。
「流石に生娘だな!あれだけ乳房を刺激しても足を開かないな!殆どの女ならだらしなく足を開いてマン汁を垂れ流すのだがな!」微笑みながら言った。
「充分愛液は出ていると思いますよ!」
「そうか?看護師さんに手伝って貰うか?」
マットの上に二人の看護師が上がって、美沙の横に近づいて左右に座ると、二人が美沙の足首を持った。
「社長!愛液を充分出さないと、痛いからSEXに恐怖を覚えますから気を付けて下さいよ!」
「判った!丁寧に愛撫してやろう!始めてくれ!」
足元に全裸で立つ新垣社長はペニスを殆ど勃起状態で立つ。
左右の看護師が美沙の足首を持ち上げて、左右に引っ張る様に広げる。
「あっ、いゃー」小さく抵抗の声を出す美沙。
どんどん足を広げられて「いゃー、やめて」抵抗の言葉を残しながら一杯広げられて、新垣社長が股間に入っていきなりピンクの豆を両手で、大陰唇を持って押し広げる。
「あっ、あっ、いゃー、だめー」
「おお!マン汁が一杯でているじゃないか?」
そう言うと顔を近づけて広げて覗いている小陰唇を、舌を出して舐め始める。
「あっ、あっ、あっ、だめ、いゃーー」
「ペチャ、ペチャ」音を立てて美沙の小陰唇を舐める新垣社長。
「あっ、あっ、だめ、いゃーーいゃー」感じるのか声がうわずって身体をくねらせる。
新垣社長の舌が今度はピンクの豆を長い舌を出して、舐めると「いゃーーだめーーだめーー」大きな声を出す美沙。
新垣社長は徐々に小陰唇を広げて、クリトリスから尿道、膣口を交互に舐め始める。
美沙は大きく頭を振って「ああーーああーーだめーーーだめーーかんじちゃうーー」
「い、いっちゃうーーー」と言い始めると急に舐めるのを止める。
「どんどんマン汁が出て来るな、そろそろ食べさせてやるか?」
美沙の腰を持ち上げると同時に両足を少し引っ張り上げる二人の看護師。
新垣社長がペニスを挿入し易い体位にする。
大きなペニスを広げた美沙の小陰唇に擦り付け始める。
「ああーああーーーいっち、ち、ち」既に逝きそうに成っている美沙だが、大きなペニスの先が少し挿入されると「いやーー」と急に腰を引く様な仕草を見せる。
だが三人に身体を押さえられているので、逃げる事は不可能で「あっ、い、い、いた」
新垣社長の大きなペニスが徐々に膣を押し広げて侵入してきて痛みを感じ始める美沙。
一気に押し込まない新垣社長は、ゆっくりゆっくりとペニスを押し込んでいく。
「あっ、いゃー、だめー」美沙の声が大きく成っている。
「先生!この子小さいので窮屈だが大丈夫か?」確かめる様に尋ねる。
「一気に押し込んで下さいよ!名器で締まっているのかも知れません!」
「そうか?名器か?」
腰に力を入れると少し入ったペニスを一気に押し込む新垣社長。
「い、いたいーーーいたーーーたすけてーーーーーーー」
「どうだ!これが俺のペニスだ!」
「ぎゃーーーーーーーーいたいーーーー」の言葉と同時に美沙の目から涙がこぼれ落ちる。
痛みで意識が無く成るのと同時に、新垣社長が一気に奥までペニスを押し込んでいた。
「気を失ったか?」
そう言いながら、腰をゆっくりと動かし始める新垣社長。
「締まって良い感じだ」
しばらくすると腰の動きを少し早くして真剣な顔の新垣社長が「うぅ、、」の言葉を残して「しまった、出してしまった」と口走った。
「社長!危ないですよ!妊娠の可能性が有りますよ!」
「大丈夫だろう?明日手術すれば?」
「それはそうですが、気を付けて下さい」
マットの上には美沙の処女の証の血痕が残されて、新垣社長のペニスにも血痕が付いていた。
完全に気絶している美沙をマットから、抱き上げて肛門科の診察台に載せてしまう看護師達。
次の責めを行う予定の様だが、しばらくしても目覚めない美沙だった。

アナルバイブ

美沙の身体を溝端女医は、あの極太の新垣社長のペニスで傷が無いかを調べてから中出しの為膣洗浄を行った。
その後美沙は猿轡を付けて肛門診察台に俯せに拘束されている。
両手はパイプに拘束され、足は少し開かれた状態で同じ様に拘束されている。
太股の内側には血痕が残り、処女を乱暴に破壊された事を物語っていた。
「少し休ませませる為に麻酔をしました、コーヒーでも飲んで待ちましょう」
新垣社長はシャワーを浴びる為に美沙の鉄格子の部屋に入っていた。

その頃吉永看護師が交代で出勤してきた。
いつもより一時間も早く出勤してきたのは、美沙の事が多少気に成っていた。
着替えもしないで病室に向うと既に美沙の姿は無く「転院したのね!」独り言を呟くとロッカールームへ着替えに行った。
看護師の服装に着替えて出て来た時、奧の機械室の扉が開いて新垣社長が出て来た。
ボイラーとか空調の部屋から背広を着た新垣社長の姿に違和感を思い、美沙の病室の片付けに向う吉永看護師。
片付け始めてしばらくして、ベッドの隙間に挟まっているノートを発見した吉永看護師は読み始めると、直ぐに顔色が変わる。
読み終わると吉永看護師は美沙を捜すよりも、警察に通報する事を考えて玄関に向った。
携帯で話すにしてもこの病院の誰が味方で、誰が敵なのかが判らないので、外に出てから電話をしようと思って外に出た。
その時再び新垣社長が駐車場から派手な外車で帰る処に出会った。
吉永看護師は急にナンバーを書き留めて、病院の敷地を出てから携帯の緊急電話のダイヤルを廻した。

地下室では「新垣社長が急用で帰ったが、もう直ぐ気が付くと思う!」院長が時計を見ながら言った。
「うぅーうぅ」猿轡から苦しそうな声を出す美沙。
股間に丸太が突き刺さった様な痛みを感じながら、動けない身体を動かそうとしている。
「目が覚めた様ね!夢から覚めたかな?」
「うぅ、うぅー」
「下腹部が痛いのでしょう?便が溜まっているのよ!今から浣腸をしてすっきりさせてあげるわ」
浣腸器を秋山看護師が美沙に見せると、溝端女医に手渡す。
「うぅ、うぅー」大きく頭を振って訴えるが、静内看護師がクリームを指に浸けて美沙の肛門の近くをマッサージを始めた。
「うぅ、うぅうぅーーー」
直ぐに指を肛門に滑り込ませる静内看護師。
新垣社長が帰ったので、金田医師は楽しみが無く成り不妊手術を今日中に行う事に成った。
新垣社長が急用で帰る時「俺が中出しをしてしまったので、先生今日中に不妊手術をして、緊縛責めは後日にしましょう」と言い残していたのだ。
金田医師も今日この娘とSEXをする気分に成れない。
何故なら自分のペニスの倍程の大きな物で突き破られた女に挿入する気分に成らないのだ。
浣腸が終ってお尻の具合を調べてから、手術の準備に取りかかる予定の金田医師。

浣腸器の先が美沙の肛門に突き刺さって、液体が体内に吸込まれ出した。
苦痛に歪む美沙の顔、もう殆どガスの効果は消えて股間の違和感と、肛門から押し込まれる浣腸の液体に顔を歪めている。

京都府警の緊急電話に吉永看護師の悲痛な通報がされて、直ぐに愛知県警の三宅刑事に連絡が届いた。
小南達に連絡が届いたのは、吉永看護師が通報して僅か半時間後だった。
京都府警の刑事達は三宅刑事の到着を待たずに、緊急出動をして中之島病院に数十人の刑事と警官が向った。

浣腸器が二本目に成って少し入れると、美沙はもう受け付けなく成っていた。
「始めてだからこれ位で限界ね」
アナルキャップをする予定だったが、サイズが大きく初めての肛門浣腸には不向きな大きさだった。
その為浣腸器を差し込んだ状態で、しばらく我慢させる事に成っていた。
「うぅ、うぅうぅーーー」首を大きく振って腹痛を訴える美沙。
秋山看護師が便器の準備をして、溝端女医の指示を待つ。

吉永看護師は電話で通報したので、警察が到着するまでにこの病院の何処かに美沙が監禁されている場所を見つけ様と考えていた。
先程の外車の男も何か関係が有るのでは?と考え始める。
ロッカールームの奧に在る機械室?確かあの外車の男も機械室から出て来た。
吉永看護師は恐る恐る機械室のノブを廻したが、鍵がされて開かない。
ここの鍵は誰が持っているのだろう?吉永看護師が直ぐに事務所に尋ねると、院長が管理しているとの返事が来るが院長の姿は見えない。
京都府警のパトカーが数台中之島病院に向っている。

「ドバー-」大きな音で糞謝が始まっている美沙は、もう半泣き状態に成っている。
携帯用の便器に一杯の糞が排泄され「可愛い子の糞は特別臭いですな!」金田医師が嬉しそうに鼻を指で摘まみながら美沙の近くに行く。
排便が終ると濡れたタオルで汚れた部分を拭き取る秋山看護師。
太股に流れた血痕も綺麗に拭き取られて、肛門の中まで拭き取られた錯覚に成る美沙。
泣き続けていると「泣いている場合では無いのよ!これを入れてあげるから気持ちがよく成るわよ!」
アナルバイブを持って、肛門に近づけるとローションをバイブに流して滑りを良くしている。
美沙の肛門に滑り込ませる様に挿入を始める。
「うぅ、うぅうぅーーー」首を大きく振って異物の侵入を拒否する。
「力を入れると痛いのよ!力を抜きなさい!」「バシー!」白い尻を叩く溝端医師。
その一瞬の隙に一気に押し込まれてバイブが肛門に突き立てられた。

救出

「うぅ、うぅうぅーーー」アナルバイブが動き出して、初めは気分が悪いだけだったが、徐々に変な気分に変わって来る美沙。
「ああー、あっ、あっ」声が出て来る。
溝端女医がクリトリスに小さな電マをあてて刺激を始めて、美沙は気持ちが良く成ってしまった。
本当は膣にも挿入するのだが、まだもう少し時間の経過を見てからだと考えている。
「ああーああー」猿轡から大きな声が漏れ始めて、完全にアナルが馴染んでいると思う溝端女医。
「予想通り前も後ろも使えそうですね!今日は手術をして次の責めは新垣社長が来られる時にしましょう」
一気に逝かせる溝端女医は両方の出力を最高に上げた。
「ああーああーーーいっち、ち、ち」の言葉を残して力無く項垂れたのは直ぐだった。
「診察台に運んで貰えるかな?」金田医師が放心状態の美沙の身体を診察台の方に移す様に指示をした。
三人の看護師に抱き抱えられて診察台に横たえられると、猿轡を外す秋山看護師。
「もう、ゆるして!」か細い声で訴える。
「次の手術で今日は終りよ!安心して」
「し、手術?」か細い声で尋ねる美沙。
「そうよ!SEXで子供が出来ると困るでしょう?だから出来ない様にして貰うのよ!」
「えっ、いやー」起き上がろうとするが既に両腕はパイプに固定されて動かせない。
「大丈夫よ!あの金田先生は不妊手術が得意なのよ!」
「いやーー手術はしないでーーー」必死に成る美沙だが、既に膝も金具に載せられて革のベルトが巻付けられていた。
「麻酔をするから痛く無いわ、今度気が付いたら全て終っているわ」
「いやーーたすけてーーおねがいーーーたすけてーー」暴れるが金田医師はマスクをして、手袋を填めて大きなクスコを手に持って「これで子宮を開いて手術をするのだよ!」
「カチャ、カチャ」と音を立てて怯えさせる。
確かに普通のクスコの倍程の大きさで恐ろしい!その様な物が身体に入れられると思うと恐怖で一杯だ。
「やめてーーーたすけてーー」
手術台を上昇させると、自然と美沙の両足が大きく広げられて股間に金田医師が入る。
全裸で固定されている美沙は「たすけてーーー」の大きな声を上げる。
その時「院長!外にパトカーが数台来ていますが?」サイレンの音に外を見た看護師が携帯に連絡してきた。
「警察のパトカー?直ぐ行く!また何か問い合わせか?」
そう言いながら地下室を出て行く院長。
「何か有ったのでしょうか?」
「院長が上手に追い返すわ!先生は手術を始めて下さい!」
院長が機械室から出て来る処を偶然見てしまった吉永看護師。
「あっ、院長だ!」院長は慌てた様子で機械室を出ると玄関の方に急いで向う。
吉永看護師は機械室の扉を開いて中に入ると、壁の方にエレベーターを見つける。
直ぐに携帯電話で京都府警に電話をする吉永看護師。
機械室の奧に在るエレベーターの存在を伝えると、そのまま乗り込み地下に向った。

「たすけてーーーーーー」
「麻酔をするからね」美沙の腕に注射針が突き刺さると、麻酔薬が注入される。
「たすけてーーーーーー、た、す、、、、、、」麻酔の効果で直ぐに意識が消える美沙。
「手術を始め様!」
金田医師が美沙の開かれた膣にクスコを挿入して、徐々に押し込みネジを巻いて広げる。
その時扉が開いて、吉永看護師が入って来たが誰も気付かない。
人の気配がしたが、院長が戻って来たと思っていた。

その頃病院の玄関先に十数人の警官と刑事が入って来て「ここに赤城美沙さんが監禁されていると通報が有った。速やかに彼女を連れて来なさい!」
そこへ院長がやって来て「誰ですか?赤城美沙って?知りませんが?その様な患者さんは居ませんよ!前にも捜されたでしょう?」
「今回は看護師さんからの通報です!間違い有りません!何処ですか?」
「捜して見て下さい!その様な女性は居ませんよ!」
その時、外から一人の刑事が走って来て「警部!機械室からエレベーターが在るそうです!」
「院長!機械室に案内して貰いましょうか?」
「えっ、き、きかい、、、」驚く院長はその場を動かない。
「何方でも結構です!機械室に案内を!」
一人の看護師が案内役を引き受けて「こちらです!私達は一度も入った事が有りません」
そう言いながら警部達を先導して向う。

地下室では「この様な場所で何をしているのですか?」吉永看護師の声に驚いて見る五人。
「吉永看護師!貴女が何故ここに?」驚きながら尋ねると、これから始め様としていた手術を中断して吉永看護師の方に近付いてきた。
「警察がもう直ぐここに来ますよ!貴方方の悪事は露見しましたよ!」
「えっ、先程の警察が?」そう言うと、五人は直ぐに吉永看護師を押し退けてエレベーターの方に向う。
三人程度しか一回に乗れないのに、溝端女医と二人の看護師は乗り込んで逃げる。
金田医師と陳は取り残されて、次のエレベーターを待つ。
吉永看護師は「可哀想に恐ろしい手術をされる処だったのね!」股間からクスコをゆっくり抜き取って手術台を下に降ろし始めた。
エレベーターは中々降りて来ない。
機械室で逃げ様とした溝端女医と静内看護師、秋山看護師が暴れて、溝端医師が再びエレベーターに立て籠もってしまった。

「手伝いなさいよ!手術をしているのが警察に見つかると罪が重く成るわよ!」金田医師はその言葉に驚いて「そうだった!私はまだ何もしていない!強姦も手術もしていない!そうだ!罪は無い!見ていただけだ!」急に開き直ると、吉永看護師を助けて美沙の身体を手術台から降ろして、ベッドに運び吉永看護師が美沙にパジャマを着せる。

悪の崩壊

「大丈夫ですか?」上の階から大きな声が聞こえる。
「京都府警です!吉永さんは無事ですか?」
「はい、私も赤城美沙さんも無事ですよ!」
吉永看護師も大きな声で答える。
しばらくして、エレベーターが動き出して溝端女医が京都府警に逮捕され、地下に刑事が降りて来た。
「赤城さんは?」
「大丈夫ですが、麻酔で眠らされています!肉体的にも傷害が有ると思われますので別の病院に移送して入院お願いします」
金田医師も陳も直ぐに刑事に逮捕された。
警部が直ぐに救急車の手配をして、関係者は全員拉致監禁暴行の現行犯で逮捕に成った。

しばらくして美沙は救急車に乗せられて、吉永看護師に付き添われて総合病院に向った。
地下室から刑事達が出て、院長達が逮捕されてパトカーに乗った時に三宅刑事がやって来た。
「三宅刑事!意外と早かったですね!」
「ご苦労様でした!彼女は?」
「先程府立の総合病院に向いましたが、麻酔で眠らされていて意識は戻っていません!」
「身体は大丈夫ですか?」
「強姦暴行をされた様です!ここの看護師さんの通報で新和商事の新垣の車も確認されましたので、今逮捕に向っています」
三宅刑事は小南達に美沙の病院を連絡して、京都駅から病院に向う様に連絡をした。
小南は美沙の両親を伴って、新幹線の中で連絡を聞いた。

「クラブJのマネージャーさんですか?愛知県警の三宅です!事情をお聞きに伺いますのでお待ちを!」
「えっ、警察!」そう言うと直ぐに電話を切る黒木。
クラブJにもその頃大阪府警が踏み込んで、黒木もママも逮捕された。
病院を利用した誘拐監禁、背後のモーリスにまで手が届くか?と思われたが、糀谷専務は警察が向かった時既に自殺を図り救急車で病院に運ばれた。
松永部長は三木と木村を捜しに名古屋に向い留守。

夜に成って病院に駆けつけた両親だが、美沙は麻酔で眠った状態だった。
翌朝、美沙の目覚めと同時刻、糀谷専務は同じ大阪市内の病院で亡く成った。
全ては自分一人が行った事で、モーリスは全く知らない事だと遺書が残されていた。
「お父さん!お母さん!心配させてごめんなさい!子供が、、、」この言葉が美沙の最初の言葉で泣き出した。
「大丈夫よ!吉永看護師さんが助けて下さったのよ!」
「えっ、吉永さんが?」泣きながら言う美沙は、自分が手術をされなかった事を知って、両親に抱きついて泣いた。
「良かったわね!坊主にされたけれど、髪は直ぐに生えるからね」
黙って頷くと再び母の胸に顔を埋めて泣いた。
敢えて強姦の話は出来なかった妙子。

その後しばらくして落ち着いて小南に美沙は色々と話した。
「美沙!良かったわね!」小南は美沙に抱きつきながら言った。
「先輩!ボイスレコーダーは?」
「見つかってないわ!クラブJの方には何も録音されていなかったって、刑事さんが」
「家の冷蔵庫の裏に箱に入れてガムテープで留めているのよ!」
小南は木村カメラマンと三木の二人に探しに行く様に指示をした。
「糀谷専務は美沙が救出された事を誰かに聞いて、自殺してしまったわ!」
「本体に被害が及ばない様にしたのね!一億円はどう成ったの?」
「一億円って何?」小南が驚きの表情で尋ねた。
「その糀谷専務から一億円を強請り取った男が居るのよ!」
「えーー」
「その男が私達を裏切ったから、私が捕らえられてしまったのよ!」
「誰なの?」
「多分小島企画部長だと思うわ、だって小南さん以外に今回の事を知っている人は部長だけでしょう?」
「そ、そうだわ!裏切られたの?私達?」
「多分利用されたのだと思うわ、あの倒産した十社の資料を手に入れて私達に調査させたのよ!」
「美沙が意外な情報を掴んだので、モーリスを逆に強請ったのね?」
「多分そうだと思うわ、こんな病院に入院してられないわ、糾弾しなければマスコミの使命が損なわれます!」いきなりベッドから降りる美沙。
そこへ母の妙子が入って来て「美沙!何しているの?まだ安静が必要ですよ!」
「そうだった!夜だわね!小南先輩本社に知り合い居ませんか?密かに調べて貰いましょう?」
「そうね、想像だけでは犯人に成らないわね!」

翌日、美沙を残して小南達は名古屋に帰って支店長に相談する事にした。
支店長は元東京本社で仕事をしていたので、知り合いも多いだろうと考えたからだ。
翌日の新聞には小さくモーリスの糀谷専務が死去とだけ書かれて、事件の実体は全く報道されなかった。
心筋梗塞の病名が美沙には違和感だったが、モーリスの事件が表に出ると奴隷企業の倒産が見えるので、この報道に異論を唱えるのを敢えて控えた。
その日の事情聴取でも美沙は一貫して、モーリスの企業自体は悪く無い。
亡く成った糀谷専務と松永部長、新和商事の裏の組織が不幸な企業を作っていたと論じた。
松永部長は名古屋駅の新幹線改札口で、警戒中の警官に捕まり大阪府警に移送された。
だが糀谷専務が亡くなった事実は全く知らなかった。
警察が精神病院に来た時、地下室に居た溝端医師は糀谷専務に連絡していた。
糀谷専務は会長にお伺いを立てて「君の処で全てを止める様に!」と言われて自殺をしたのだった。
同じ様に逮捕された新垣社長、村中工業に隠れていた桐谷も逮捕されて、お互い罪を認めたが全て糀谷専務の指示だったと自供した。
勿論松永部長も同じ様に言ったが、既にモーリスは昨日付けで懲戒解雇処分を発表して、社長のお詫び会見が午後から手回し良く行われて、被害を最小限に食い止める。
全ての罪を糀谷専務に押し付けて、記者会見は簡単に終了した。
病院でその様子を見ながら、歯ぎしりをする美沙。

岡山駅の偶然

だがこのモーリスよりも悪い奴が小島企画部長かも知れないと思うと、もう美沙の我慢は限界に達していた。
同じ様に怒りに燃えていたのが安田で、ウィークジャーナルにモーリスの暴露記事が掲載されずに翌週に成り小島企画部長に電話をしている安田。
小島企画部長は、モーリスの裏組織が安田を始末すると思っていたから「社員が人質に成ったので、掲載出来なかったのだ!次かその次には必ず!」と弁解をしていたのだ。
それが急転直下の逮捕に成って、小島企画部長には意外な展開に成っていた。
しかし、モーリスが一億の被害届けを出す筈も無く、一億円強奪事件は完全に闇の中だ。

翌日美沙が「このままでは一億を手に入れた人間だけが得をするわ!許せない!」
朝から病室で騒いで両親が困り果てる。
安田もモーリスの記者会見を見て、何かが社内で起った事は確かだと思って再び小島企画室長に電話をしていた。
小島部長に目障りな存在がこの安田と救出された赤城美沙だ。
モーリスに捕らわれていたのなら、当然自分との関係で詰問されている筈だ!一億円強奪犯は誰か?を既に知っている可能性が大きい。
小島部長はこの二人の始末を真剣に考え始めていた。

小南は逆に名古屋支店長に小島企画部長の人となりを聞き、東京の本社で信頼出来る人の紹介を頼んでいた。
支店長は赤城の誘拐監禁事件と関係が有るのか?と何度も尋ねたが小南はもう少しはっきりしてから話すと誤魔化した。
この事実が表に出るとウィークジャーナルも痛手を負うことに成るので、小南も迂闊に話す事が出来ない。
紹介して貰った女子事務員の加納はもう会社では古株で、殆どの事に精通している女性だった。
小南は小島企画室長の行動を細かく聞くと「何か有るでしょう?月曜日休んでいたのだけれど、火曜日は上機嫌で気持ち悪い位だったのよ!それが水曜日に成ると独り言が多くて、携帯電話を受けてから落ち着かないのよ!何か有ったの?」
「携帯電話?」
「時々掛って来るのよ!するといつも落ち着かないのだけれど、水曜日は異常に落ち着かなかったわ」
「相手の人誰か判る?」
「一度相手の名前を電話で言いそうに成って、私の顔を見た事が有るのよ!やすって言っていたわよ!」
「ありがとう、それで充分です!」
小南は電話の相手が安田俊幸だと確信した。
早速美沙に電話をして、予想通り小島企画室長は安田さんから、情報を得て記事にする事を考えたが、自分達の取材で面白い話を掴んで気が変わったのだと思った。
美沙が両親に「前より可愛いと思わない?」黒髪のショートボブの鬘の顔を鏡の中に見て、病院を退院したのは三日後だった。
「お願いだからもう危険な事は止めてね!」母の声を後ろに早速モーリスの本社に乗り込む勢いの美沙。
美沙はモーリスと交渉するか?小島企画部長の一億を巻き上げるか?安田の居場所を捜すか?選択肢に迷う。
その時、三宅刑事が「新和商事の新垣社長が持って居た手帳に安田俊幸って人の住所が書かれているのだが、これは今回の事件に関係が有る人ですか?」
「えーー」美沙は既に選択肢はひとつだと笑みが溢れていた。
でも新和商事の仕事の速さに驚くと、小南に岡山に向う事を告げて両親の制止も聞かずに向った。
もう少し遅れたら、新和商事の連中が安田さんを抹殺していたと思うと背中が寒く成る美沙。
西大寺だから、元のみどり青果の場所に近い住所に成っている。
安田さんに色々な事を聞けば、全ての事が判明するのは間違い無い。
同じ時、東京から飛行機で小島企画部長が岡山に向ったらしいと小南が連絡してきたのは、新幹線に乗り込んで直ぐだった。
事務の加納が探偵気取りで小島部長を監視していたので、小南に直ぐに電話が掛ったのだ。
小南も三木と木村を連れて直ぐに新幹線に乗り込み岡山に向う。

京都府警と大阪府警は取り調べで、吉高厚子さんの人身売買を突き止め、父孝吉さんも中之島病院の監禁病棟で殺されたと認定したが、それはモーリスとは関係無く新和商事の独断だと主張した。
暴力団と香港マフィアの仕事で、モーリスの糀谷専務の関与は無いと自供した。
吉高厚子さんの行方がその日から捜索されたが、簡単には発見出来ない事は想像出来た。
事実発見されたのは半年後だったが、吉高厚子は華僑の資産家の愛人で日本に帰る事を拒否したのだ。
三宅刑事は名古屋の管轄のひき逃げと詐欺の容疑者、桐谷及び梶谷不動産の関係者を逮捕する段取りを着々と進めていた。

美沙は新幹線の中で新聞記事を読みながら事件の進展が、モーリス本体に及んでいない事に安堵感を持って読んでいた。
これでモーリスが被害を受ければ奴隷企業は沢山倒産して、喜べない事態に成るからだ。
新幹線の中で落とし処を何処にするのが一番良いのだろうか?奴隷企業の事を知らないなら、モーリスの悪事を糾弾して完了だが?苦慮する美沙。

昼過ぎに岡山駅に到着して小南達との合流を待つ美沙。
同じ頃岡山空港に小島企画部長も、安田俊幸を巧みに呼び出して会う事に成っていた。
「今がチャンスです!糀谷専務の死亡とか松永部長が逮捕された今が糾弾する時期です。詳しい話を聞かせて下さい!」
「部長さんだけならお会いしても構いません!妻も一緒に行きたいのですが宜しいでしょうか?」
「奥さん?」
「はい、みどり青果に変更する前のみどり果樹園の娘さんです」
「詳しいですね、是非ご一緒にお越し下さい!」
「岡山駅の中央改札にしましょうか?お互い顔を知りませんので?」
「駅に着いたら電話をしますので、宜しく!」と打ち合わせをしていた。

安田は妻の由貴を連れて岡山駅の待合室で連絡を待っていた。
偶然は恐ろしい、美沙も同じ様に小南達の到着を待つ為に待合室に入って来た。
お互い顔を全く知らないので、全く会っても判らない。
美沙が村井課長の事件の姿なら判ったかも知れないが、当時とは全く異なる髪型は人相を変えてしまった。
待合室に妻の由貴を挟んで安田と美沙は座って、お互いスマホを見ながら時間を待っていた。
小南達の到着まで約一時間弱、安田は美沙を綺麗なお嬢さんだが、二十歳前かな?と思っていた。
横に妻が居るので、それ程目を移す事は無いが気に成る可愛い子。
その時、安田の携帯に着信が有ったのか話し始めた。
「もしもし、小島部長さんか?三時に中央改札ですね!」の話声が聞こえる。
美沙の耳が大きく会話を聞き取ろうとした。
小島部長?もしかしてウィークジャーナルの?この人は安田さん?色々な事が頭を駆け巡る。
この様な偶然が有るのだろうか?幸運に心が躍った。
電話は直ぐに終ったが、三時は小南が到着する時間と殆ど同じだ。
今の自分を証明する物を何も持っていない美沙は、話し掛けて怪しまれたら元も子も無い。
由貴が「小島企画部長三時に来られるの?何処でお話したら良いのかしら?」尋ねる。
「駅前のホテルで話をする事に成るだろうな」
「あの?すみません!」美沙が堪らず口を挟む。
「は、はい」驚く二人。
由貴は急に声をかけられて驚き、安田の方は可愛いお嬢さんが急に話してきた事に驚いていた。
「な、何でしょうか?」
「もしかして、モーリスにいらっしゃった安田さんでしょうか?」
「は、貴女は?」
「私はウィークジャーナルの記者で、赤城美沙と申します!話が聞こえてしまって、すみません!」
「えっ、ウィークジャーナルの記者さんが何故?」
「今からお会いに成る方は東京本社の小島企画部長でしょう?」
「貴女が本当にウィークジャーナルの記者さんなのか?」
不思議そうに見ながら、もう立ち上がり場所を移動しようとしている安田。
「貴方、ちょっと待って!」
「どうした、早く行こう!」
「この女の人知っているわ!間違い無いテレビに出ていた!」
由貴が口走って逆に安田の腕を引っ張って、座り直しをさせた。

痛手を残して

安田は妻の由貴を連れて岡山駅の待合室で連絡を待っていた。
偶然は恐ろしい、美沙も同じ様に小南達の到着を待つ為に待合室に入って来た。
お互い顔を全く知らないので、全く会っても判らない。
美沙が村井課長の事件の姿なら判ったかも知れないが、当時とは全く異なる髪型は人相を変えてしまった。
待合室に妻の由貴を挟んで安田と美沙は座って、お互いスマホを見ながら時間を待っていた。
小南達の到着まで約一時間弱、安田は美沙を綺麗なお嬢さんだが、二十歳前かな?と思っていた。
横に妻が居るので、それ程目を移す事は無いが気に成る可愛い子。
その時、安田の携帯に着信が有ったのか話し始めた。
「もしもし、小島部長さんか?三時に中央改札ですね!」の話声が聞こえる。
美沙の耳が大きく会話を聞き取ろうとした。
小島部長?もしかしてウィークジャーナルの?この人は安田さん?色々な事が頭を駆け巡る。
この様な偶然が有るのだろうか?幸運に心が躍った。
電話は直ぐに終ったが、三時は小南が到着する時間と殆ど同じだ。
今の自分を証明する物を何も持っていない美沙は、話し掛けて怪しまれたら元も子も無い。
由貴が「小島企画部長三時に来られるの?何処でお話したら良いのかしら?」尋ねる。
「駅前のホテルで話をする事に成るだろうな」
「あの?すみません!」美沙が堪らず口を挟む。
「は、はい」驚く二人。
由貴は急に声をかけられて驚き、安田の方は可愛いお嬢さんが急に話してきた事に驚いていた。
「な、何でしょうか?」
「もしかして、モーリスにいらっしゃった安田さんでしょうか?」
「は、貴女は?」
「私はウィークジャーナルの記者で、赤城美沙と申します!話が聞こえてしまって、すみません!」
「えっ、ウィークジャーナルの記者さんが何故?」
「今からお会いに成る方は東京本社の小島企画部長でしょう?」
「貴女が本当にウィークジャーナルの記者さんなのか?」
不思議そうに見ながら、もう立ち上がり場所を移動しようとしている安田。
「貴方、ちょっと待って!」
「どうした、早く行こう!」
「この女の人知っているわ!間違い無いテレビに出ていた!」
由貴が口走って逆に安田の腕を引っ張って、座り直しをさせた。
「村井課長の子供さんの誘拐事件を解決した人よ!」
「あっ、そう言えば確かに、だが何故ここに居るのだ?」
「実は安田さんと小島企画部長を捜しに来たのです!」
「えっ、僕達を?」
「はい、ここでは大勢いらっしゃるので、横のホテルのロビーに行きませんか?」
「まだ時間が有るので大丈夫だ!」
三人は直ぐに待合室を出て、隣接するホテルに向う。
「半時間しか時間は有りませんが、説明して貰えませんか?」
美沙は事件のあらましを説明すると、二人は驚愕して「どうすれば良いのですか?」
「私はモーリスの奴隷に成っている企業を助けたいのです。私が名乗り出ればモーリスは大きな打撃で倒産するでしょうが、同じ位多くの企業も倒産すると思うのです。それで小島部長には一億円を困っている企業に寄付させるのです。そして安田さんと一緒にモーリスに乗り込んで交渉をしたいと思っています」
「赤城さんはそれ程の痛手を負ってもまだ皆さんを助けるのですか?」
「はい、私の父の会社も助けたいし、奴隷企業も全て助けたいのです。モーリスには普通の取引をして貰いたいのです。一億円は僅かかも知れませんが、奴隷企業には改善されるまでの運転資金の足しには成ると思います。安田さん協力して下さい」美沙の必死の願いに感動した安田夫妻は、自分達の力で公平な商いが取り戻せるなら協力すると誓った。
安田夫妻がこの場所に小島企画部長を連れて来ますと言って、駅に戻って行った。
小南達に経緯を話してホテルのロビーに来る様に電話をした美沙。

しばらくして何も知らずに安田夫妻と一緒に、ホテルのロビーにやって来た小島企画部長。
「あの人も安田さんの?」美沙を見て怪訝な顔の小島企画部長。
機会を見て安田夫妻の始末まで考えていたので戸惑いの表情に成った。
「御社の名古屋支店の赤城さんですよ!」
「えーー、なごや、、、赤城」
「私の顔はご存じですよね!」
「少し雰囲気が、、」
「部長の裏切りで精神病院に拉致監禁されていました!」
「裏切りって何の話しだ!何の話しか判らない!」
「部長!モーリスから一億円を強請り獲ったでしょう?」
「知らない!私は何も知らない!」逃げ腰に成っている。
「部長!お金をモーリスとの取引で困っている企業に寄付するなら、今回の事には目を瞑りましょう!もし嫌なら警察に直ぐに連絡しますが?」
振り向いて逃げる体制に成った小島部長の前に小南達がやって来て「部長!諦めた方が良いですよ!」三人が前を塞いだ。
「刑務所に行くか?元の企画部長のままで過ごせるか?よく考えたら直ぐに判ると思いますがね?」
男三人に囲まれては逃げる事は不可能だと思った小島部長は「本当に罪に問わないのか?」
「それはお約束します。でも私達と一緒にモーリスの本社に行って貰います」
「えっ、お金を返すのか?」
「いいえ、三人でモーリスを脅しに行くのです。部長が一緒なら直ぐに記事に成ると思うので、モーリスは私達の条件を飲むと思うからです」
「赤城君はモーリスで犠牲に成った企業を救うのか?一億をこの場に居る、、、、、それは無いな!」
諦めた様に言うと小島部長は、数日後に一緒にモーリスの本社に行く事を承諾して、一億も小南に渡すと約束した。
「犯罪者から、善意の部長に代わられましたね!良かったです!」小南は笑顔で小島部長に言った。
安田と小島部長、美沙と小南の四人で乗り込む事を決める為に喫茶店で話会った。
小島部長も完全に諦め、安田は自分の思いがようやく実現されると喜んだ。

翌日、宮代会長は美沙からの報告を聞き、一緒に千歳製菓に乗り込む事に成った。
数日間の美沙の苦難の事を全く知らない京極親子は「会長が何故赤城さんとご一緒で?」社長が言うと息子の晃が「お父さん!会長が仲人を、、、、美沙さん急に髪が伸びて可愛く成られましたね」嬉しそうに言う晃。
社長室にもう一人、信紀が入って来て「赤城君!今は会長の話が有るそうだ!用事なら後にしなさい!」信紀に怒る京極社長。
「馬鹿者!お前達はもう少しで会社を潰すところだったのだぞ!判っているのか?」
怒る宮代会長に鳩が豆鉄砲食らった様な二人。
「赤城君親子の活躍で我社か救われたのだ!土下座をして御礼を言いなさい!」
「お、や、こ?ですか?」晃が驚いて尋ねる。
「そうよ、馬鹿な社長に格下げに成った父です!それからこれは鬘よ!」そう言ってボブの鬘を外した美沙に「えーーーーーーー」「あっ、、、、」二人が仰天の表情に成った。
宮代会長が経緯を延々と話すと、二人は項垂れ肩を落して「会長!申し訳有りませんでした!」と深々とお辞儀をして謝った。
「私じゃ無い!赤城部長親子に御礼を言いなさい!」
「ぶ、部長?」
「当然だろう?千歳製菓の最大の功労者だ!」二人は深々とお辞儀をして赤城親子に謝った。

数日後、モーリスの本社に乗り込んだ四人に、社長は穏便に収めて頂けるなら今後は契約を見直す事で納得をした。
取材の内容を書いた文章と安田の存在、そして美沙に行った糀谷専務達の事が細かく書かれた原稿を見せられては納得する以外術は無かった。
四人が帰ると竹田会長に報告に向った社長は「当分は自重だな!糀谷が居なく成ったので、もう昔の様な手荒な商売は慎め!業績が相当落ちるが致し方無い」と諦めた様に言った。

だが正月からの頒布会は予想以上の売れ行きで、通常の約二倍の注文が殺到した。
それはモーリスの頒布会を湛える記事を、ウィークジャーナルが特集で数週間掲載したからだ。
モーリスの利益の落ち込みを完全に補い、関連企業も大いに潤って千歳製菓の頒布会も上々のスタートを切れた。
美沙は強姦された事実を記憶していなかったのが幸いで、元の元気な姿に戻っていた。
赤城家では「お父さんが部長で、京極晃係長を使っているの?大丈夫?ノー天気な息子?」
「それが、最近は私にお父さんって呼ぶのだよ!お前の武勇伝に完全にいかれた様だ!」
「えーー私あの様な変な男嫌よーーーーー」と大笑いの平和な赤城家に戻っていた。


                    完

                    2019,11,10

甘い城

甘い城

頒布会の大手モーリスは、売上を求めて次々協力会社の構築を求めているが、犠牲に成る中小企業も多かった。 大手のマスコミ週刊誌ウィークジャーナルがモーリスの特集記事を掲載する。 同社の記者赤城美沙が次々悪行を暴いて窮地に落ちるモーリスは、恐ろしい計画を実行して逆に、、、、エロ作品の金字塔かも知れませんよ!

  • 小説
  • 長編
  • 成人向け
  • 強い性的表現
更新日
登録日

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted