忘れられていた片隅

フッツ

熱帯魚屋の店の奥に
ひっそりと置かれた水槽の中
チューブが繰り出す酸素に紛れて
金魚は泳ぐ。
小さなオレンジ色に秘められた
ある種の催眠光線
ひらひらと放たれて
深層に落ちていく。
底の底で巡らせる
なぜか妙にリアルな題材
全部知りたいと思う欲望と
知らないままでいる事の必要性
最近、口を開けた虚無空間にはまり込んだ
どっちつかずの混合体。
今、カウンタの数字を0に戻して
雑音を消し、くもりを拭う。
見えてくるガラス越し
水槽の中
複雑に並んだエゴなどすり抜けて
金魚はただ泳ぐ。
忘れられていた片隅に
理想と現実はいつだって同居しない。

忘れられていた片隅

忘れられていた片隅

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
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