屍喰らい(限定版)
只今編集中です。原作者がボクの作品なので…作品の無断転用を禁じます。
第一咫「屍謳の君」
約1000年前の事である。この世界には「屍喰らい」と呼ばれる者たちが存在した。彼らは歴史の闇の中で動いて…影の処刑人と呼ばれてきた。そして鬼龍院宗家3代目家基「鬼龍院煉」がまだその名を襲名する前の物語。後に鬼龍院煉と呼ばれたその青年はかつて「屍喰らい」と呼ばれたその一族を歴史の外側へはじき出した。
全ては太鳳の示す道のままに…出逢う事になるだろう?この世の果てに見えた「屍喰らい」たちが見ていた景色に…そして絶望に満ちた「屍の詩」が逕庭門の内側に鳴り響く時彼らは知ることになる。この「詩」の本当の意味と「構築式」の「外側」に存在する「真意」を知ることになるのだ。時は明治3年維新が成り…明治と
いう新しい時代の幕開けを迎えていた頃…1人の赤子がこの世に生を受けた。赤子の名は「有栖川敬斗」有栖川親王家の3男で…天皇家の外孫として生まれたその赤子は1871年3月…洛陽に流された。そして…あやかし渦巻く「京都」の街で「少年」は尊敬と畏怖を周囲に与えて育った。道行く人は言った…あの子は「化け物だ」と。
8つを過ぎた少年はとある日…書庫に籠もり1冊の本を見付ける。これがこの少年の眠った力を呼び醒ます「きっかけ」となった。以降…明治後期まで京都の街で怪現象が続くことになる。この物語は有栖川親王家に生まれながら…その名を継ぐことは無かった。生けながら「屍」と呼ばれた「青年」の悲しき人生の物語である。
??「敬斗さま…また《本》を読まれているのですか?」敬斗「爺か?さまは付けなくて良いって言ったろ!!?僕は有栖川家の三男とは言え…親に棄てられた身…今はただの成宮敬斗さっ!!?」青年は悲しげな顔でそう言うと手に取った本を棚に戻して少し目を細める。その「瞳」は化け物と罵られた少年とは思えない程に安らかで
穏やかな顔をしていた。かつて有栖川と呼ばれたその少年は…生まれながらに特異な異能力を宿していた。それ故に…正式な子供とは認められずに半ば強引に臣籍降下させられたのである。そして彼が《有栖川》の《名》を持っていた事は…ごく限られた一部の者しか知り得ない情報であり…爺と呼ばれた男は青年の数少ない
理解者の1人だった…。それでも…青年には誰にも言えない《秘密》があった。それは長年連れ添った男にも言えない程…《業》が深く…《青年》の心の《内側》に何処までも深く深く《浸透》していたのであるっ!!?仄暗い湖から這い出す様に虚ろな目をした少年は…まだ8つにも満たない…子供だった。生まれながらに宿した力は
恐ろしく…周囲の人々も…そんな彼を疎ましく感じていた。そして…少年の父親と思わしき男もまた同じで…そんな少年に畏怖していた。それ故に男は…彼を自分の子供だとは流布しなかった…四つから…六つまでの年月を薄暗い…座敷牢の様な場所で過ごした…その場所は暗く荒んでいて…蝉の声が何処からともなく聞こえてくるそんな場所だった。そしてまるで初めから
そこに居なかったかの様に扱われた少年の心は酷く…荒んでいた…寵愛を受けて育った…二人の兄とは対象的に…親からも見放されていた少年に…世間を憎むなと言うのは無理だったのかもしれない…それ故に蝉が煩く泣き喚く七度目の晩…今まで溜め込んでいた物が溢れ出すように…一気に弾け飛んだのだ…。その時の波動は
大きな《屋敷》を丸々消し飛ばす程に強大で…全てを仄暗い湖の底に…返す程に…凶々しかった…。まだ《力》の《制御》もおぼつかない…六つの夜…その日少年は初めて《夜空》を見た。《耳》を澄ましてみると…近くからせせらぎの音が聞こえて来る…。その音を肌で感じた
少年の目に涙が込み上げてくる。ふと…辺りを見渡してみると…周囲に人は居なく…何処かの山奥の様であった。無数に散らばる骨と肉。何処からともなく聞こえて来る悲鳴…そこで見た物はこの世の景色ではなかった。そして少年があやかし渦巻く世界の内側で…《屍ノ花》を見たのは…恐らくこれが最初だったのだろう…?
七十七の骸と…何処までも深い月…そこから広がる花畑には…この世の物とは思えない程に…美しい花が咲いていた。その実は白く…朱く…蒼く…骸から咲いているとは思えない程に…色鮮やかだった…そして…世界の中心で蠢く黒くて巨大な何か?その肩の上に座っている…少年の目を今でも忘れられない…その瞳は金褐色に
輝いていて…何処までも白い髪色をしていた。不意に風鈴の音が聞こえて来て…振り返った時には…座敷牢の中に戻っていて…消し飛んだ筈の屋敷が元通りになっていた…。何が起きたかわからない…しかし…少年はこの時悟ったのだ…あれは…この世の景色ではない…と。それから2年余りの年月を…来る日も来る日も少年は
書庫の中で過ごした…。男の父親は自尊心が高く…自分の子供が読み書きすら出来ない事が恥ずかしかったのだ…それ故に近しい幾数人の人間にだけ…秘密を漏らし…少年の世話をさせていた。その為…日に三時間…少年は《書庫》の中に籠もる事を許されていた。来る日も来る日も…書庫に籠もり…眠る時には座敷牢に戻る。
そんな日々をそれから八年も過ごし幾ばくかの時が流れた…。そして…彼が十三の時…全てを決意した男は…とうとう彼を臣籍降下させてしまったのだ…。与えられた名は《成宮》字に深い意味は無い…そうして少年は《有栖川》の名前を棄てて…晴れて自由の身となった…幾数人の従者と幾ばくかの路銀を片手に持って…現在
住まう邸宅に移り住み…今に至る。それが彼がこれまで歩んで来た人生である。そうして懐かしむ様な目で…あの日の事を思い出していた青年に…老人は語り掛ける。??「敬斗さま?どうなされたのですか?」 敬斗「いんや?ちょっと…昔の事を…思い出しててね?」??「昔の事?」 敬斗「うんっ(笑)!!!!?《爺》と…」
敬斗「出会った日の事さ?ねぇ?爺?初めてだったんだ…ボクの事を…怖がらない人間に出逢ったのは…あれが…爺が居たから今のボクがあるだけどね?今でも時々不安に感じるよ。また力が暴走して…人々を怖がらせてしまうのではないか?とね…?」爺「またその様な事を仰っしゃられるのですか?良いですかっ!!?貴方に」
爺「どんな力があろうと関係ございませんっ!!?誰が貴方を軽蔑しようともっ!!?この爺が貴方さまのお側に居る限り…決して…貴方さまを落胆させる様な事は致しませんっ!!?だからご安心下さいっ!!?私が居る限りご心配無用ですっ!!?」敬斗「ははっ(笑)!!?爺らしいね?何だかスッとしたよっ!!?」ガチャンっ♪♪♪使用人「敬斗さま?お客人が参られている様で御座います」
使用人「如何なされますか?」敬斗「通してくれっ!!!?きっと《怪異関連》の《案件》だろう…?」使用人「かしこまりました…」ドンっドンっドンっガチャっ??「ふーん?あんたが成宮敬斗?聞いてた話しと随分違うのねっ!!?」使用人「きさまっ敬斗さまに失礼だぞっ!!?」
??「お黙りなさいっ!!?私を誰だと思ってるの?鷹司治子が嫡女っ!!?鷹司雪芽よっ!!?」敬斗「鷹司?へぇ?初耳だな?彼女に子女が居たなんてね…?」鷹司雪芽「フンっ!!?」鷹司雪芽「知られてないだけよっ!!?良いっ!!?この私は身分の低いあんたみたいな低俗な《蛮族》とは」
鷹司雪芽「訳が違うのっ!!?東山天皇を祖先に持つ…鷹司輔煕の直径子孫!!?」鷹司雪芽「そしてっ!!?いずれこの世界に革命を起こす者っ!!?それがこの私?わかる?」敬斗「ふーん?で?その革命を起こす雪平さんがこのボクに何の様だい?」鷹司雪芽「ゆっきっめっ!!?たくっ!!?」
鷹司雪芽「これだから私の名前一つ覚えられない低俗な輩は嫌なのよっ!!?まぁ良いわっ!!?訪れついでに《用件》だけ伝えてあげるっ!!?夜が終わり《昼》に変わるとある日の《晩》…《神隠し》が起こり《夜》が死ぬ…これは私の《屋敷》に届いたとある《手紙》の一文よっ!!!!?」
鷹司雪芽「そして手紙にはこうも記されて居た…阿修羅門の北側の世界…逕庭門のその先で待つ…とね?」敬斗「逕庭門…?」鷹司雪芽「ええ?ご高名な?《貴方》ならわかるんじゃないっ!!?その言葉の意味が…?」敬斗「フッ(笑)フフフっ!!?それでボクの所へ来たのか?確かにその言葉の意味なら…よく知っている」
敬斗「だけど…キミにその言葉の真意を教えるつもりは無い…これがどういう意味かわかるね?」鷹司雪芽「結構よっ!!?元々そんな物には興味は無いっ!!?あるとすれば…貴方の身体の内側にある凶々しい力が何なのか?ぐらいね?」敬斗「フッフフフっ!!?なるほどキミには…?」
敬斗 「全てお見通しと言う訳か…?良いだろうその依頼この成宮敬斗が責任を持って請け負おうっ!!?だけど覚悟しといてくれ…その結果…何が起きてもボクは一切の責任を取らない…わかってるね?」 鷹司雪芽 「わかってるわよっ!!?そんなことっ!!?だけど覚悟するのは貴方の方よっ!!?私の祖父…輔煕が遺した…遺産は貴方が」
鷹司雪芽「考えてるそれより…よっぽど怖いわよっ!!?」敬斗「フッ(笑)!!?わかっているよ…このボクに任せてくれっ!!?」敬斗「キミの言うそれが…怨念に塗れた呪物だとしても…ボクには関係ない…」《青年》は怪しげな笑みを浮かべてそう言うとニンマリ笑うっ!!?その瞳は
何処までも…空虚な目をしていて…全てを見透かしているかの様だった。そしてこれが後に《屍緋鞠の神隠し事件》と呼ばれる事件への幕開けでもあったのだ。1889年3月とある神社に行ったのを最期にして行方がわからなくなった男性が現れた。当時の《新聞》では《神隠し》と大々的に報じられており《犯人》が誰なのか…
誰にもわからなかった。警察は犯人の行方を追ったものの事件解決へと繋がる決定的な証拠が見付からないまま数ヶ月の《時》が《流れ》…続けざまに…第二第三の《事件》が各地で起きて居た。そして…蝉時雨の声が聞こえ始めたあの夜も…そうで…事件後…鷹司雪芽は…左目を負傷している。そう蝉が咽び泣く…蒸し暑い夜ノ帳〈弓張月〉の〈絵〉が描かれたあの屏風が
この事件をさらに深い物にした。後に鬼龍院宗家現家元〈鬼龍院煉〉はこの時の事を悔いていた…自分にもっと力があれば彼奴を逃がしては居なかったと…次回「陽毬丿姫」
屍喰らい(限定版)
※エブリスタに掲載中の作品の為ネタバレ防止の観点から1話のみの公開に限定しております。ご了承下さい。