不在

嗚呼、なんと、なんと口惜しいものか。

言葉は心の具現かな、心は言葉の具現かね。

操るべくを見誤る、黒い意識に苛まれ。

怜悧な日々が眼を覗く、研いだ刃先が煩わしいな。

言葉は私の傀儡か、私が言葉の傀儡よ。

どうか純水をやって呉れ。

人間、性格というものは治療すべきものではないと思わぬか、私は思わぬ。

脚は有る程、人を包むと思うかね。否、私は思わぬ。

曲線が判らなくなった時、天からの声で目を醒ます。

「お前さん、お前さんよ。いかで視認できぬ類に拘泥するか、其の迷妄さたるや。」

愈々、私は狂ってしまった。

自身の解れを見過ごしたツケだ。

まだ見続けたいものは在るか。否、既に失せたさ。

便りは疾うに海底万里。

天を仰げば宇宙が鈍色。

不在

不在

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-10-17

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