ボトルメール

ボトルメール

夏の思い出にボトルメールを皆んなで流した……


夏がもうすぐ終わろうとしている。

この頃になると、高校の夏休みで皆んなで集まって何かやろう!って事になって、世界の誰かの未だ見ぬ人へメッセージを送ろう!となった。
この頃は、インターネットや携帯電話すら無い時代。
宛名と宛先がわかればエアメールで送ればバッチリなのだが……
そこで、友人が名案を口に出す、
空き瓶に手紙を入れて海へ流してみてはどうか?と。
皆、"おーっグッドアイデア!"
と声を揃えて、早速空き瓶の調達に出かけた。ぼくは、中に入れるための便箋と筆記用具を用意する。
大小様々なガラス瓶とコルクの栓が集まった、人数で5人分。
皆に、便箋と筆記用具のボールペンを配る。
ちょっと秘密めたさに書いた内容はお互い隠してそれを瓶に入れ栓をした。
砂浜から丁寧に流す者、返事が来ますようにーえいっ!と、思い切り投げ飛ばす者、先に流した瓶の様子を見て違う場所から流す者、色々な人間の様々なボトルメールが流れていく。
しばらく眺めていると、陽も沈み暗くなって来たので皆その場で解散した、
遠い昔の青春時代の思い出だった……。

あれから20年が経ち、同窓会招集の通知が届く。快く出席し、当時のボトルメールを海へ流したメンバーも揃う。
20年も経てば、面影も無く皆普通のおじさんだ。懐かし話と近況話で盛り上がる、勿論ボトルメールの話も出た。
ふと気がつくと、あの時のボトルメールを流したメンバーが一人足りなかった、ヨシオは欠席かな?と親しかった友人に尋ねると、10年前から行方不明になっているらしい。
奥さんや子供も居るのに未だ見つからないと言う。捜索願も出して居るが、そのまま10年間見つからないらしい。
ぼくもその話を聞いてヨシオの事か心配になった。
宴も終わり二次会にも誘われたが、ぼくは終電に間に合わなくなるので惜しみながらも断り帰路に就いた。

翌週の休日の事、
ぼくは趣味で骨董やアンティーク雑貨を収集する趣味があるので
今日も、休みを利用して行きつけの近所の骨董店へ出かけた。

「何かお宝はあるかなぁー?」

と、店の陳列棚を物色していると
見覚えのある瓶が並んでいる。

「あ、これは……」

そう、ぼくたち数人で思い出作りために手紙を入れ海へ流したボトルメールそのものだった、それもぼくの流したガラス瓶だ。
20年前ともなれば骨董扱いなのだろう、誰かが拾ってここへ売ったんだなぁ、そう思い手に取って眺める。

しかし、記憶ではぼくの用意した便箋の色ではなく薄青い便箋が入っている。ぼくが入れたのは茶色い便箋だった。
おかしいなぁ?と思い気になったので、そのガラス瓶を購入する事にした。
帰宅して早々にコルク栓を開け、中の手紙を見てみる事にした、すると驚いた……

中の便箋には、

"タスケテクレ、S.O.S.
ヨシオ"

と、書いてあったのだった。



終わり

ボトルメール

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高校時代の夏の思い出づくりにボトルメールを皆んなで流した……

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-10-14

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