撫でる声

撫でる声

嵐のあとは騒がしい……


肌寒く感じる風の音。

肘を隠すこの頃は、
オリオン座が大きく現れる。

忙しない雲の渦が暴れ去り、
澄んだ星空に染まる夜。

渦の残像が隙間風に乗り、
顔を急いで撫でてゆく。

気疲れしたあとの安堵感に、
冷えないようにと頭が動く。

心のノートを開けてみろと、
喋り出した月灯り。

あの子が昔から好きな人、
今は誰も好きじゃない風と。

眠れなかった真夜中の、
問いに困り顔の母の風に。

何も告げずに黙って出て行く、
真夜中に父が立ち去った車の風が。

好きとも言えずに転校した、
照れたあの子の視線が届いた風を。

自分の弱さを隠すため、
傷つけた友人たちの風も吹く……

今の夜空は、
ココもお前も騒がしいと言って居る。

撫でる声

撫でる声

嵐のあとは騒がしい……

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-10-14

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