撫でる声
嵐のあとは騒がしい……
肌寒く感じる風の音。
肘を隠すこの頃は、
オリオン座が大きく現れる。
忙しない雲の渦が暴れ去り、
澄んだ星空に染まる夜。
渦の残像が隙間風に乗り、
顔を急いで撫でてゆく。
気疲れしたあとの安堵感に、
冷えないようにと頭が動く。
心のノートを開けてみろと、
喋り出した月灯り。
あの子が昔から好きな人、
今は誰も好きじゃない風と。
眠れなかった真夜中の、
問いに困り顔の母の風に。
何も告げずに黙って出て行く、
真夜中に父が立ち去った車の風が。
好きとも言えずに転校した、
照れたあの子の視線が届いた風を。
自分の弱さを隠すため、
傷つけた友人たちの風も吹く……
今の夜空は、
ココもお前も騒がしいと言って居る。
撫でる声