休憩四千五百円
夕ぐれの風が前髪を吹かして、低くなった日射しに交じって、目を細めて遠くにみえた
はにかんだお前
今日は天気がよくて、気分がよくて、なれあいすら美しくみえるほど、世界が澄んでる。
いつものようにお前の、小指を俺の小指にひっかけて
簡単にはずれそうなものを、簡単に繋いだ
だらだらと歩くようになったのは
いつからだろう
たまに行く居酒屋に、鳥を焼く匂いが、けむりが、ごまかした
生ビールとレモンサワー
いつも間違えられる
慣れたもんだよ
話すことがないのは俺のほう、でもな
どうでもいい話を楽しそうに話す
お前の顔を見るのは、嫌いじゃないんだよ
あー、求められていることはわかっていて、もとめているものはわからない
とか言って、逆かもな
この店の滑らかに、小刻みに音を鳴らす扉を閉める時が好きだ、暖簾も
くぐれば、なにかを終えたような、気がするから
心に嘘があるとすればこのあたり、居酒屋を出て、右に行くか、ひだりにいくか
顔をみて、確認した。つもりになる
この時間は寒くて、俺のコートのポケットに手をいれてにぎりしめる
それがお前の精一杯の
休憩四千五百円
お前がいつも渡す二千円が、なにを意味するか、俺はわからないよ
安っぽいヒカリのなか、ベッドに倒れこむ
沈んでいく、ある程度まで
今夜も
休憩四千五百円