仙界の宮楼

兎禅國

天宮

 李蔦は字を白扇と言い、萊州の生まれであった。その容貌は、整って巷では専らの噂であった。昼時から、庇の下で寝ていると、李蔦を訪ねて呼ぶ者がいた。裏手に廻って見てみると、異人僧の容貌をした醜い老婆が呼んでいた。老婆は、酒壺を渡して居なくなってしまった。李蔦は、訝しながら庇下に戻り、酒壺の蓋を開けた。開けるや蘭奢の香しき匂いが広がった。李蔦は、蘭奢を放つその酒を呑まずにはいられなくなって、全て呑んでしまった。飲むや否や、気は薄れその場で寝てしまった。
 目が覚めると、薄暗い牀に女と伴に寝ていた。女は目を覚ました。李蔦がその女の顔を覗くと、美しい婦女であった。李蔦は言葉を交わさずその女とねんごろになった。李蔦は 、女に事の仔細を聴いた。女は仙女で、李蔦を愛しく思い下界より仙界に連れて来たと言った。李蔦は、殊に仙界に入った事に悦んだ。仙女は、仔細を話すと暗い部屋から出て行ってしまった。また夜が来ると、此の暗い李蔦の部屋に戻ってくる。この様な事が、四日続いた。李蔦は思う事あって仙女に「外に出してくれ、若しくは灯りをくれ。」と叩頭して懇願した。仙女は、部屋に灯りを燈す事だけを許した。次の日になると、若い腰元が灯りを燈しに来た。李蔦は、仙界に来て二人目の仙女に話しかけた。だが、腰元は直ぐに部屋を出てしまった。だが、日を重ねる程に、諧謔を楽しめる程となった。ついに、李蔦は腰元に手が付いた。
 その夜、仙女が戻って来て、李蔦に宴安を催するため部屋から出してやろうといった。李蔦は、悦んで外に出た。部屋から出ると、天を突く高楼が幾重に重なる天宮が目に入った。宴卓に連れてかれ、席に座った。そうすると、仙女は食事を持って来させて、李蔦に食べさせた。李蔦が食べ終わるや、仙女は声色を変え、腰元との不義を責め始めた。仙女は、李蔦が今食べた物は、腰元だと教えた。李蔦は、発狂して倒れた。仙女は、倒れた李蔦の皮を剥ぎ、醜い老婆の皮を縫い付けて下界に落とした。醜い老婆となった李蔦は、莱州を逃げて姿を消してしまった。    

仙界の宮楼

仙界の宮楼

仙界に連れてかれた李蔦の人生は如何に!

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-10-12

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted