白い太陽、赤い月 Part 3 (小麦と見習い)

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白い太陽、赤い月 Part 3 (小麦と見習い)

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1 小麦と見習い

 半分ほど食んでなくなった麺麭(パン)を手に握りしめて、(まぶた)を閉じる。
 俺が言う、『奴ら』とは、つまり『帝国人』のことである。『帝国』とは……そう、俺にとって、最も憎しみ深く忌々しい、大帝国ガアスアールの人間が、今日このアンナムの村に来るのだ。
 何のために来るのかと言えば、それは無論のこと、税の徴収のために来るのである。それ以外に、奴らがここを訪れる理由はない。徴収以外に訪れたいとも、奴らは(ちり)ほども思ってはいないだろう。
(今日は家にいなければな……。扉を蹴破られて、中を荒らされても困るからな)
 奴らは属州の人間たちを、人間とは思ってはいない。徴税の際に家の中から反応がなければ、何事もなく住居の扉を蹴破って中に侵入し、物色して代わりの物を漁る。それが、この世界では普通だった。また徴税に反発すれば、始めは鞭打ちの刑ほどで済むが、それを何度も行ったならば、いずれは極刑に処されることとなる。実際この村でも、死罪に処させた者がいた。それは、この村にもあるという、『反帝国』を掲げる組織の人間だったという。
(いつかは……俺も)
 いつも帝国兵どもの徴収の際に思う。いつかは、俺も、その反帝国の組織とやらの一員となり、解放戦線に参加しなければ……と。そう思うと、いつも、いてもたってもいられなかった。
(少しは……手がかりを掴めてきたのだが……)
 その反帝国の組織のことである。分かったことは、この村にも確実に反帝国組織と思われるものがある、ということ。そして、俺の剣の師匠でもある、ザイルも、何か関わりを持っている、ということだ。
 ザイルのことについては、やはり何かしら秘密があると、以前から思っていた。武器もろくに持てない(俺はいつもザイルから、木剣で剣術を習っている)属国の人間であるのに、剣術の腕前は素人目に見ても一流であるし、あの歳(恐らく、40半ば)になっても、妻子のいない独り身であるのだ。そして、いつも、この村からどこかへ出かけている。この村に住んではいるのだが、長居するようなところは今まで見かけた試しがない。
(そろそろ、問い詰めてみるか……)
 俺は今月の徴税が終わったあと、剣の稽古の際にザイルを問い詰めてみることにした。
(ひとまず、今は待つだけか)
 俺は、握りしめて潰れかけた残りの麺麭(パン)を、むしゃむしゃと頬張った。

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白い太陽、赤い月 Part 3 (小麦と見習い)

[ファンタジー小説を不定期更新していきます。1パートあたり、1300文字ほどです。ファンタジー系というだけで、特に細かいジャンルなどは決めておりません] 帝国ガアスアールによって支配され、属国となった陶芸の国ミーリアに住む青年ソル。いつかミーリアを解放せんと、故郷アンナムの村にも存在するという反帝国組織に加わろうとするが…

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-10-11

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