永久愛物語2 -神の誕生祭3-

やっと更新しました。
ここまで長かったです。

「おいおい…サリックは大丈夫かよ?あいつ、じーさんだろ?」
マリンが不安げにサリックを見つめる。すると、キーマが横から話し掛けた。
「あいつはじーさんじゃないぞ。俺らと同い年だぜ」
「……嘘だろ!?あんな話し方」
「まー確かに話し方はじーさんっぽいし顔が帽子で隠れているから分かりづらいけれど、まだまだ若いよ。120いってないし」
「本当かよ…」
うなだれているマリンを見てキーマとローズは笑った。一方、圭人は唖然とした。
「ひ、ひゃく!?」
「あ。でも人間で言う10歳位なんだよ」
開いた口が塞がってないわよ、とローズは圭人の口を指差した。

「ふむ、中々の強さじゃがワシの体裁きには追いついてないのぅ」
巨人に変身した化け物の攻撃を易々と交わし続ける。
「これで終わりじゃ」
サリックは上へ跳び、落ちる勢いで巨人を突こうとした。が、背後に違和感を感じ、振り返った。
「!?」
そこにいたのはもう一体の巨人だった。巨人はその太い腕で力任せにサリックを殴り飛ばした。サリックの体は吹っ飛ばされ、洞窟の壁に激突した。仕返しをしようと前に出たが、一体目の巨人に上から両腕で地面に叩きつけられた。
「サリック!」
「危ない!」
飛び出そうとするローズを圭人が抑えた。巨人が雄叫びを上げている。圭人達が固まっているとどこからかのんびりとした声が聞こえた。
「いやー、スマンスマン。地面にめり込んだトンファーを引っこ抜くのに夢中だったのじゃ」
「心配させておいてそれはない!」
「だからスマンと謝っているじゃろうが、ローズ殿」
サリックの体はほとんど無傷であった。その姿を見て巨人が襲いかかってきた。しかし何食わぬ顔で巨人の攻撃を防ぐ。向かってきたもう一方の腕に飛び乗り、肩まで走ってからそのまま降りる。
「先ほどまで1体だったのが2体居る、と言うことは分裂したか幻覚のどちらかじゃな」
サリックは2体の巨人から平等な距離の位置に立った。2体ともサリックの方に向かって走っている。
「ならば一気に消すには同時攻撃が必然じゃな。よし、お前等に取って置きを見せてやろうぞ」
トンファーをそれぞれの巨人に向かって突き出した。巨人の体からはとても大きな針が出ている。針の元を辿るとサリックのトンファーから出ているものだった。
「絡繰りトンファーじゃ。どうじゃ?」
キーマはサリックの企みを持った笑みに呆れた。
「相変わらず、江戸文化好きだな…」
「今江戸時代じゃないよ…」
圭人が言うとサリックは納得の表情を見せた。
「成る程!だから馬ではなく車が走っており、サムライもトノサマも城も無いのか!やっと疑問が解けたのぅ、ありがたいのぅー」
「…キーマ、こいつの口調はもしかして江戸文化とやらからきているの?」
「…そうだ、マリン」
あんなに殴られたりしたクセにすました顔をするサリックを見て、ローズは胸を撫で下ろした。
“”
知力の時と同じ様に水の塊の中に光が入った。
「今度は緑色の光だ」
「これで二つ目か、やったね!」
「おいおい、喜んでいないで早く行こうよ。俺、早く帰りたいんだよ」
マリンがだるそうな目を圭人に向けた。
「そ、そうだね。先へ進もう」
圭人達が洞窟の道をを歩いていると、ローズの何かやらかした様な叫び声が聞こえた。
「どうした?」
「こ、この祠…蹴って壊しちゃった…」
ローズの手のひらには粉砕した祠だったものが乗っていた。
“我の、祠…を壊し、崩した、のは誰…どいつだ”
「うわああああぁぁぁぁ!!!!?」
今までで一段と大きな化け物が出てきた。
「マリン!圭人君を連れて逃げろ!いっそ洞窟から出ても構わん!」
「あいよ了解!おい人間、キーマが帰って良いって言ったから帰ろう!!」
「せめて洞窟の入り口に居ろよバカー!!!」
「てか、お主等帰り方知らんだろ…」
「手伝ってよ!!」
ローズは既に雷やら風やらを召喚し、化け物と戦っていた。サリックはトンファー、キーマは斧を取り出した。一足早くサリックは前に出て化け物をなぎ払おうとした。が、化け物は砂のようになってサリックを囲んだ。
「むうぅ、困ったものじゃ」
逃げだそうとトンファーを振り回し、切れ目を作っても効果は無かった。化け物がまた元の形に戻った時にはサリックを尻尾のようなもので締め付けていた。
「ぐっ…」
ローズはサリックの体の強さを幸いに炎を吹き付けた。その後にキーマが尻尾のようなものを叩き斬る。サリックをなんとか救出した。
化け物は洞窟内全体に響くか、というほどこ大声を上げた。黒い光が化け物の体を包み込んだ。
黒い光が引いたとき、ローズ達は驚愕した。
「え、嘘…。私がもう一人?」
目の前に現れたのは、ローズと姿形が全く同じものが現れたのだった。



「あ、マリンさん!あれ入り口じゃないですか?」
「敬語は要らないよ。おぉ、あれか。よし行こう」
圭人はマリンに手を引かれ、飛び回って入り口に向かっていった。しかし、入り口の直前で見えない壁にぶつかったかのように跳ね返された。
「何これ。こら!俺と人間をここから出せ!!」
“それはなりません”
どこからかイクスの声が聞こえた。
“まだ試練が終わっていないので、洞窟から出ることは許されません”
「へっ、勝手に言ってなよ」
マリンは入り口の方に両手を出した。
「トゥーリスレ・アズトックワイス、この真実は嘘になる」
そう唱えると、マリンは外に出ようとした。
「痛ッ」
何故かまた跳ね返されてしまった。
「術が、効かない…!?」
“あなた程度の妖精の力が私達大天使の力を突破できると思っているのですか?ここから出たいのなら全ての力を手に入れて下さい”
「こんの性悪大天使め…」
「マ、マリンさん!」
圭人の方に振り向くと、大量の化け物がわいて出てきた。
「祠は壊れていないぞ?どういうことだ?」
“呼バレタ”
“呼バレタ”
化け物は一斉に圭人に向かっていった。化け物の手が圭人に触れようとしたとたん、マリンが言った。
「人間、耳を塞いでおきな」
笛の音がする。化け物の動きが止まった。耳を塞いでいても微かに音が聞こえ、酔ったような感覚を圭人は覚えた。
「マリンさん、これは…」
「曲名は『光』自分で作ったんだ」
「いやそれじゃなくて、この現象は?」
マリンは動きの止まった化け物の姿を見て「あぁ」と答えた。
「この曲は聞いた奴を麻痺させるんだ。真実と虚偽だけじゃ、戦えないからね」
圭人達は洞窟の奥に視線を移した。
「前触れも無く、こんな事が起こるものなのかい?人間よ」
「………それは無いと思いますよ。きっと何か起きたに違いありません」
圭人達はまた洞窟の奥に戻ることにした。
「しっかしなぁ、俺にはだまされている気しかしないよ」
マリンは一人、そう呟いた。

永久愛物語2 -神の誕生祭3-

まだまだ続きます。
でも、この話は年内に終わらせます(希望)

永久愛物語2 -神の誕生祭3-

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-10-27

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