スイッチ屋と死にたがり少女ー第二話ー
第二話 『こわい話』
まんじゅうこわい?
こわくない?
じゃあ、何がこわい?
こわくない?
※
「宮前、お前今までどうしてた?」
久々に高校に電話すると担任の男性教師にそう訊かれた。正直「どうしてた?」なんて、そんな抽象的なこと訊かれても困る。生きていましたが何か。
「元気なのか?」
「元気です」
「どうして学校に来ない?」
どうしてって……。じゃあ、なんで私は学校に行かなきゃならないんですか、先生。
「元気なら来い。クラスの奴らも心配してるぞ?」
私が黙ったままなのにも関わらず、彼はずっと話し続けている。私のクラス担任は生徒からの人気も高い。比較的フランクにどの生徒とも接していて、親しみやすい人柄だ。きっとこの言葉も根っからの親切心で言っているのだろう。でも、それはつまるところただ親切なだけだと私は思っている。そもそも「クラスの奴らが心配」しているわけがないのは、私が一番よく知っている。心配どころか存在すら忘れているに違いない。適当なことをいかにも「心配してますよー」という風情で言わないでほしい。
その後、担任は夏休みの補習やら宿題やらの事務的な話をしてきたが、私はただ相槌を打つだけだった。と言うか、色々とどうでも良かったので話がこじれない程度に適度に相槌を打った。宿題のプリントを取りに来るように言われたが、住んでいるアパートから学校までが遠いのを理由にしてテキトーなことを言って電話を切った。
そして後ろに振り返る。できる限りの仏頂面で。
「これで良いの?」
電話中に私を後ろから視線で刺しまくっていた天パ男は何とも形容しがたい表情をして肩を竦めた。座布団の上にだらしない体勢で座っている。ベッドわきにあるパソコン机の上に携帯電話を置いてから、丸テーブルを挟んで彼の対面の座布団に座った。
「……まあ、とりあえず食え」
額に手を当てて、スイッチ屋がこちらに皿に乗ったまんじゅうを突きだしている。相変わらずワイシャツにネクタイといったフォーマルな格好である。それにしてはネクタイが緩んでいるのが気になるが、出会った日にしっかり結んであったのを除いて、これも実は毎度のことだ。とりあえずまんじゅう受け取ると、スイッチ屋は皿に乗ったもう一個の方にかぶりついた。口元はまんじゅうのおいしさになのか、心なしかほころんでいるように見える。しかし眼鏡の奥の目つきを見るに、どうやら電話の内容は良くなかったらしい。
※
そもそも何で学校に電話をすることになったかと言うと、スイッチ屋に不登校がばれたからだ。学校に行く重要性どころかその意味さえも感じなくなっていたので、これまで学校に連絡しようなどとは微塵も思ったことはなかった。学校に行かなくなったのは去年の冬ごろからで、一応今年の春に高2には進級したもののそれ以降は全く学校には行っていない。
さっきの電話で、学校から実家にも連絡が行っているような話もされたが、あの家の人たちは私の行動に関して何も興味はないはずなので担任は残念ながら不毛な努力をしたことになる。
「学校行けよ。楽しいぞ!」
スイッチ屋はどこで買ってきたんだか分からないまんじゅうを大量に頬張りながら言った。部屋にいる間、彼は常に何かしら食べているようだ。早くも二個目のまんじゅうに手を出している。これで体は細身なんだから不思議だ。
私としては、学校が楽しかったという思い出は残念ながらない。だからと言って特段酷かったわけでもないけれど。
いずれにせよ、スイッチ屋の発言はポジティブではあったが、常に説得力も根拠もなかった。
「別に楽しくなんかないけど」
「楽しいって!楽しいんだよ!青春だ!!」
でもきっと、私の発言も彼にとっては何の説得力もないんだと思う。非合理でポジティブなのか非合理でネガティブなのか。多分私たちの違いはそれだけなんだろうと思った。だから単純に私たちは分かり合えないんだろうな、と心のどこかで思っていた。でも実は分かり合えなくても、特に支障はない。竹中さんには「遠い知り合い」などと適当なことを言ったが、実際の私たちは赤の他人なのだ。赤の他人で良いのだ、私たちは。
箱に手を伸ばしてスイッチ屋はもう一つまんじゅうを手に取った。一体どれだけ食べるんだろうか。
「こういうまんじゅうをさ、学校帰りに友達と買い食いすんだよ!そんで毎日行くと
鶴亀堂のばあちゃんがおまけしてくれるんだ!あ、鶴亀堂ってこのまんじゅうの店なんだけどな……」
時々、こんな風に鬱陶しい語りが始まる。ポジティブな考えの彼なりの根拠提示らしい。ほとんど食べ物について語るだけだが、さっきの担任とは違って適当な相槌を打っていたらすぐにばれるので面倒くさいことこの上ない。
でも今回はスイッチ屋の話に、あれ?と思う。私は手に持っていたまんじゅうをひっくり返した。茶色い皮の上にお店の焼印がしてある。鶴と亀が寄り添った可愛らしい焼印だ。
「まだあそこ、つぶれてなかったんだね」
「……え?」
何個目かのまんじゅうを頬張りながらスイッチ屋はキョトンとした顔をした。頬にあんこが付いている。一度に頬張りすぎである。
「こんなにおいしいまんじゅうなのにつぶれるわけないだろ!」
彼の場合、この文の主語が「まんじゅうが」なのか「まんじゅう屋が」なのかは怪しいところだ。少なくとも今彼の手の中にあるまんじゅうはつぶれて、中からあんこが出ている。
「あそこのおばあちゃん、もう90代半ば過ぎてるから、そろそろお店畳むんじゃないかって噂」
それも私がまだ学校に行っていた頃の話だ。
「あー…」
スイッチ屋は何とも言い難い表情で、何とも言いようのない相槌をした。おばあさんの歳に納得したのか、まんじゅう屋がつぶれるかもしれないことを嘆いたのかはよく分からない。
鶴亀堂なら地元民ならみんな知っている老舗中の老舗の和菓子屋だ。ここから駅までの道のりにある商店街の一角に位置しているので、学校に行っていた頃はよく見かけていた。おばあさんが一人で店を切り盛りしていて、まんじゅうからかしわ餅まであらゆる和菓子を売っている。中でも断トツの一押しはまんじゅうらしく、私がここに越してきた当初から学校帰りの私を見つけては店主のおばあさんから箱一杯のまんじゅうを渡されていた。あんこから皮から全てそのおばあさんの手作りで、見た目は普通のまんじゅうなのだけれどまんじゅうの表はつるりと滑らかで、裏にひっくり返すと鶴と亀のマークが入っているのが特徴だ。
私がいらないと言っても何度も何度もまんじゅうを押し付けてきたのは、恐らく私が一人暮らしなのを知っていたからだと思う。こういう噂は案外簡単に広まるものだ。しかし少なくとも何で一人暮らしなのかまでは知らないはずだ。
実を言うと、スイッチ屋がこのまんじゅうを大量買いしてきているのは今日だけというわけではなかった。このように話をする数日前から、鶴亀堂からまんじゅうばかり買ってきていた。最初のうちはまんじゅうが好物なのかとも思ったが、出会った初日に野菜の切れ端炒めをおいしそうに頬張っていたのを見る限り、食べること自体が好きで何でも好き好んで食べるようだ。まんじゅう買い占めが何となく引っかかっていて、私はスイッチ屋に鶴亀屋のおばあさんの話をしたわけだ。まんじゅう以外のメニューもあるはずなのに、まんじゅうばかりを大量に買ってきてがっついている。私もそれに付き合わされていて、まんじゅう生活を送っている。
「弘香も行こう!鶴亀堂!」
スイッチ屋はいきなり勢いよく立ち上がった。
「え。なんで?」
「そりゃあ、まんじゅうを買うからだろ!」
「そんなのアンタだけで行けばいいじゃ…って、ちょっと!!」
突然腕を引かれて体勢が崩れる。というか、テーブルの上にはまだまだ大量のまんじゅうが残っていた。この上まだ買う気らしい。確かに彼の自腹で買うようなので私としては損なことは何もないけれど。だからと言って無理やり連行されるのは解せない。それに元来、私は必要最低限にしか外出しない、いわゆる引きこもり体質なのだ。
「放してってば!」
「良いから行こうって!」
「ああ…もう分かったから」
私は抵抗するのをやめた。してもどうにもならないだろうし、何よりなんかもう面倒臭い。代わりに自分の口を指さしてスイッチ屋を睨んだ。
「え?」
「餡子、ついてる」
「あぁ…なるほどね」
スイッチ屋はバツ悪そうに笑った。
※
「シノのばっちゃああん!また来たよ!」
古びた木造の小さな平屋の入り口でスイッチ屋が大きな声でそう言った。夕方の時間帯だが夏で日が長いので、辺りは明るかった。蝉の鳴き声が相変わらずうるさい。店の前を学校帰りの学生や会社帰りのサラリーマン、買い物をしている主婦なんかが通り過ぎていく。みんな一様に忙しなく、自分の数歩先の地面を睨みながら歩いている。
「おやまあ、来てくれたんかい?」
か細いが、しっかりと通る声が答える。店の奥、暖簾の向こうからちょこちょことした仕草で小柄なおばあさんが出てきた。腰は曲がっているが、しわいっぱいの元気そうな笑顔を浮かべている。抹茶色の渋い前掛けをしている。白く染まった髪を後ろでお団子にしていた。鶴亀堂店主、亀谷シノその人である。
「ばっちゃんのまんじゅう、おいしいからさ!まだ売り切れてない?」
「もう少しならあるよ。あるだけお食べ」
うんうん、と頭を大きく振りながら返答をするシノさんは、まるで人形のようにも見えた。今にも壊れてしまいそうな、と言うのは大げさかもしれないけれど、何だか薄気味悪かった。
そんなシノさんがこちらに向けて、おや、と首を傾げる。が、すぐにぱっと顔を輝かせた。こちらに向かってしわくちゃの手を差し出してくる。
「弘香ちゃん?弘香ちゃんやね?」
「え?えっと、そうですけど……」
「久しぶりやね!元気にしとった?」
表面上笑顔で接しながら、シノさんの手を握る。シノさんの手は薄くザラザラしていて薄ら寒い感覚が背筋を走った。なんとなくこれが老いるということなのだと思った。それにしてもよく私のことなんか覚えていたな、とちょっと感心する
おばあさんは私たちを店先の床几台に案内した。少し雨ざらしになっている様子の赤い野点傘があって、きつめの西日から逃れるのにはうってつけだ。それでも暑いものは暑いけれど。
「今、お茶を入れるからちーっと待っててな」
「お茶くらい俺が入れるって!シノばっちゃんは外座ってて!!まんじゅうも持ってきていい?」
スイッチ屋がやたらとはしゃぎながら言った。見た目20代の男が子どものようにテンションを上げているのはある意味圧巻である。
「うんうん、食べたい分だけ持っておいで。ありがとう」
私を置いてスイッチ屋は何故か勝手知ったる様子で店内に入っていく。なんだかすごく嬉しそうに見える。過剰に世話焼きなのは私に対してだけではないらしい。全くどれだけ迷惑をかければ気が済むんだ。そう考えるとため息が出る。
「面白い子だねぇ」
結局スイッチ屋に急かされて外に出てきたシノさんがそう言って私の隣にちょこんと座った。一瞬ギクリとしたが、シノさんが言っているのは私のことではなくスイッチ屋のことらしい。
「あのくるくるの頭の子、最近ひょっこりうちの店に来てくれるようになってねえ。シノのばっちゃん、シノのばっちゃんって言って、おいしそうにたっくさんまんじゅうを食べてくれるんだよ」
どうやらスイッチ屋は店先でもまんじゅうをごちそうになった上で、さらにまんじゅうを購入して持ち帰っているらしい。彼の食べているまんじゅうの量を考えると逆に恐ろしくなってきた。思わず頭を抱えていると、知り合いかい?と訊かれたので、とっさに赤の他人です、と返す。そうかい、とシノさんは笑った。あまりその部分に関しては気にしていないようだ。
「いい天気だねえ……」
こんなに晴れたのは一週間ぶりくらいだろうか。ここ最近はずっと雨模様でジメジメとした天気が続いていた。私もここ最近色々あったけれど、今は突き詰めて考えないようにしている。とは言え、全く考えるなというのは無理な話なわけだけれど。
そういえば、ここに越してきたばかりの頃にこの和菓子屋さんを教えてくれたのは竹中さんだったけ……。
「いい天気だ……」
しばらくして、シノさんはもう一度そう言って腰を上げた。丸まっている背中は小さな身長も相まってとても小さく見える。空を見上げると日が少し傾いていて、西日が眩しかった。目を細めると、ちょっと遠くの空でカラスが飛んでいるのが見える。
何となく胸が詰まる思いがして、私は唇を噛んだ。
「弘香ちゃん、ちょっとちょっと」
突然、肩をつんつんと突かれた。ハッとして振り返ると、シノさんと目が合う。まるで子どものようにあどけない表情で笑って、店の中を指さしていた。
立ち上がって暖簾をチラリと捲ると、決して広くはないが小奇麗な店内でスイッチ屋が忙しく動き回っている。店に入ってすぐのガラスケースには和菓子とそれを入れる箱の見本が置かれている。ガラスケースの上にはまんじゅうと見慣れない道具がいくつか置かれている。店の奥の方ではお湯が沸いているようでヤカンがカタカタと鳴っていた。
「お茶を点ててくれるつもりなのね」
シノさんが私の隣で微笑む。
「お茶を点てる?」
「そうそう。茶道具が置いてあるでしょう?」
シノさんに促されるまま店内に入ると、さすが和菓子屋と言うべきか、淡いいぐさの香りがした。小さめに琴のBGMも流れている。
シノさんは、これが茶杓、これが茶筅、と実際に道具を手に取りながら教えてくれた。
「トシオさんが茶道をやっていたからね。私もたまにお茶を点てるのさ。トシオさんと比べて、私は作法もへったくれもないけどね」
「ちなみにトシオさんってのはシノのばっちゃんの旦那さんな」
突如スイッチ屋がひょっこりと私の後ろに現れた。ギョッとして振り向くと茶碗を3つ持っている。驚いた私を見て、眼鏡の奥の瞳がいたずらっぽく細まった。完全に確信犯だ。
「ちょっと、何で突然現れるわけ」
「いーじゃねえか、別に。そんな些細なことで怒りなさんな、お嬢さん」
言い方がなんか腹立つ。スイッチ屋は私から目を逸らすとシノさんの方に茶碗を差し出した。
「まったく、座っててって言ったのに……この茶碗使っていい?」
「ええよ、ええよ」
シノさんは指でOKマークを作って微笑んでみせた。しかし「でも」と目の色を変えた。
「お茶を点てるのは私がやるわ」
シノさんは子供っぽく目を輝かせていた。
※
シュッシュッシュ……
茶筅によって碗の中の抹茶と湯が混ざり合っていく。
シノさんがお茶を点てる間、私とスイッチ屋は神妙な顔で待っていた。シノさんの手つきは滑らかで、愛しいものに触れるかのような丁寧さがある。夏の空気は暑くダレているものだとばかり思っていたが、シノさんがお茶を点てているこの場だけは空気が張りつめていた。張りつめてはいるがそれは決して不快なものではなく、心に染み入るような優しさも同時に兼ね備えている。
「はい、弘香ちゃん」
「ありがとうございます」
茶碗を受け取ったものの、こういうお茶はよく分からない。何か飲むときの作法のようなものがあったように思うが……確か茶碗を回すんだっけ?
「はい、スイッチ屋くん」
「お点前いただきます」
スイッチ屋は床几台の上に乗った茶碗を手に取り、時計回りに二度回した。そして、スッと口元に碗を持っていって、一気にぐいっと飲み干す。指先で軽く飲み口を拭うと、今度は反時計回りに茶碗を回し、再び元あったところに置く。一連の動作が流れるかのようで思わず見惚れてしまった。ちょっと悔しい。あくまでちょっとだけど。
「いやあ、ばっちゃんのお茶は美味い!」
近くには大皿に山ほど盛られたまんじゅうも置いてあり、スイッチ屋はそれを口いっぱいに放り込んだ。リスか。
「弘香ちゃんもどうぞ飲んでみて。お茶の作法とかは良いから」
こんなこと言ったらトシオさんに怒られちゃうかもしれないけどね、とシノさんは冗談めかしてニカリと笑みを浮かべた。私も一礼して茶碗に口をつけた。見た目の深い抹茶の色とは裏腹に濃い苦さの中に仄かな甘さが口に広がるのが不思議だ。流石に一気飲みは無理だったので何口かに分けて飲み干す。
「美味しいです」
「そう。よかったよかった」
素直に感想を口にすると、胸のつかえが少し取れた気がした。
「おまんじゅうも美味しいです」
「そう。そんな顔して食べてくれると嬉しいよ。ありがたいねえ」
そんな顔ってどんな顔なのだろう。
「ばっちゃんのまんじゅうは世界一だからな」
スイッチ屋がやけに自慢げに言った。彼が胸を張るような事柄は一切起きていないと思うのだが。
私は手に取ったまんじゅうを見た。表面は滑らかな茶色い皮だ。裏返すと亀と鶴の焼印。一匹と一羽はとても仲良さそうに寄り添っている。
「不思議でしょう?」
私の心を読んだというわけでもないだろうが、シノさんがそっとそう言った。
「焼印ってのは“これがうちの店のまんじゅうです”って見せるもんだからね。この店のようにまんじゅうの裏側に印があるところなんてそうないと思うよ」
「あー本当だ。裏側にある!すげえ!」
スイッチ屋がまんじゅうを片手に叫ぶ。というか、気付いてなかった方が驚きだ。
「でも何でばっちゃんは裏に印つけるの?」
シノさんはよくぞ訊いてくれましたと言わんばかりに一つ大きく頷いた。
「少し長い話になるけどね……」
※
昔、まだシノさんが若かりし頃、トシオさんはかなりやんちゃな男の子だった。近所の庭から柿を盗んだり、女の子のスカート捲って走って逃げたり。二人は生まれた時から家族ぐるみで仲良しで幼馴染。だからトシオさんのいたずらを叱るのは二人の親だったり、さらには祖父母だったりした。それはシノさんとトシオさんが中学生になった後も続いていた。
「こるあああ!ガキ!食い物を粗末にしちゃいかんて、いつも言うてるやろ!」
特にシノさんのお父さんは大柄な体つきで大きな声だったので、トシオさんのことをよく怒鳴る役に回っていた。学校帰りの時間帯によく見られる光景である。
「うるせえやい!!こんなまんじゅうのどこが良いんだ!」
シノさんのお父さんは鶴亀堂の二代目店主で、自分の作る和菓子には絶対のプライドを持っている人だった。特に丹精込めて作っているまんじゅうをバカにされるとどんな人に対してだろうと、本気で鬼の形相で怒っていた。
そうすれば大概の子どもは泣いて逃げ出し、大人は怯えつつも頭を下げたのだが、トシオさんだけはそのどの反応とも違っていた。
「皮もあんこも、どのまんじゅうも一緒だろ!!」
当時はまだ現在のようなガラスケースを設置していなかったので、まんじゅうは店先の小さな籠の中に入っていた。トシオさんはそれをおもむろに引っ掴むと道端に放り投げた。無理やり掴んだせいで力が入り、散らばったまんじゅうのいくつかは中からあんこが飛び出していた。トシオさんは最後にあっかんべえをすると、踵を返して一目散に駆けだした。シノさんはハッとして慌ててトシオさんに叫ぶ。
「トシくん!待って!」
「うっせえな!このノロマ亀!!」
シノさんのことをトシオさんはいつもそんな風に呼んだ。逃げ出すときの捨て台詞のようなものだ。
「シノ!追いかけんな、あんな奴!男の風上にも置けねえ!」
シノさんはお父さんの言葉に立ち止まった。
「……まーた、ダメにしやがって。あのガキ」
シノさんが振り返るとお父さんは大きな体を窮屈そうにかがめてまんじゅうを拾っていた。つぶれて砂が付いたまんじゅうも丁寧に汚れを払っている。シノさんはセーラー制服のスカートが地面に擦れるのを気にせず手伝った。散らばったまんじゅうのうちの一つを手に取ると、まんじゅうの表についた店の焼印の部分に小石が食い込んでいた。
「シノ、悪いな」
シノさんは、ううん、と首を横に振った。二つ編んだおさげが緩く揺れる。大体、なんでお父さんが謝るのか、お父さんは悪くないのに。以前から感じていた腹立たしさが何故かこの日は爆発して、収まりがつかなくなって言葉になって吐き出してしまった。
「お父ちゃん、あのね、私男の子って嫌い。どうしてあんなひどいことするの?」
言葉に出すとやっぱり腹立たしかった。悔しかった。お父さんがどれだけお菓子つくりを頑張っているか知っていたから。
「確かにああいう時期はあるんだ。やんちゃやる時期がな」
お父さんはよっこらしょと掛け声とともに立ち上がった。語る声はトシオさんを怒鳴っていた時よりも落ち着いた、野太い声だ。
「でもやんちゃをするんならもう少し利口にならにゃアカン。やんちゃとそうでないもんの線引きができんと、いつかすっ転んだときにえらいことになる」
「えらいこと?」
「ああ、えらいことや」
お父さんは頷いた。シノさんが腕に抱えたまんじゅうをその大きな腕に受け取った。手の中のまんじゅうは本当に無残な状態だった。
「それなら」
シノさんはにっこりと笑って胸を張った。
「私がトシくんにちゃんと教えてあげなきゃいけんね」
シノは怒らせると怖い。特に怒っているときの笑顔が怖い。伊達にそう子供のころから言われてきたわけではない。
「やっぱお前は母ちゃん似だな」
お父さんは多少引き気味に笑った。
シノさんは鶴亀堂店主であるお父さんをずっと手伝っていた。和菓子作りを手伝えるほど器用ではなかったので、当時は看板娘として店先で呼び込みをしたり、お客さんの相手をしたりなどしていた。決して大きな和菓子屋ではなかったが、近所付き合いも良く、こざっぱりとした人柄のお父さんと和菓子のおいしさで鶴亀堂は地元では人気だった。
シノさんのお母さんは体が弱く、日常生活に支障があるわけではないがやはり過度な運動はできない状態だった。調子が良ければ家事などはできたが、悪ければ数日寝たきりという日もあり、あまり店を手伝える状態ではなかったのである。
「そう。そんなことがあったの」
それでもシノさんやお父さんが食卓でその日一日のことを話すと、フワリと柔らかく笑うのだった。
「お母ちゃん、笑い事じゃないよ!トシくんったらひどいよ……」
「きっとどうしたら良いのか分からないのよ」
どうしたら良いか分からない?
そう聞き返すとお母さんはシノさんに答えた。
「もちろんトシくんのやったことは許されることじゃないわ。でもね、どうしたら良いか分からない時って、どうしようもないやんちゃをするものなのよ」
「……よく分からない」
食卓の焼魚を解しながら、チラリとお父さんを見ると黙って味噌汁を飲んでいた。食事中、お父さんは比較的無口になる。無言というわけではないが、眉根を寄せて食物と真剣に向き合っている。必要最低限しゃべって必要最低限相槌を打つのが基本である。
「シノはお父さんに似て鈍いみたいね」
「どうしてそこで俺が出るんだ?」
ムッとした様子でお父さんは口を挟んだ。
「お父さんは女性の機微を読むような器用なことはできなかったじゃありませんか。今もたまにそうでしょう?」
「し、失敬な!!」
残念ながら否定できない。お父さんは自宅ではすっかりお母さんの尻に敷かれている。それにしてもお父さんに似てると言われたり、お母さんに似てると言われたり、身内の発言とは言え、やっぱり自分が二人の子供なのだと思うとちょっと嬉しくなった。
「父ちゃんも母ちゃんも仲がいいね!」
嬉しくなって実際にそう口にすると、お母さんは嬉しそうに「そうね」と頷いた。お父さんは黙ってそっぽ向いたが、満更でもないように見えた。
そしてシノさんは決意を固めた。やっぱりトシさんにビシッと言わないと気が済まない。
「お父ちゃん、私トシくんのことちょっと考えたんだけど……」
ある日の放課後、トシオさんはよく掃除当番をサボって近くの田んぼにいた。それをシノさんもよく承知していたので、教室内にトシオさんがいないと見るや、すぐさまその田んぼへと駆けて行った。その日は梅雨明けたばかりの初夏の陽気で、少し汗ばむくらいの気候だ。特にセーラーの襟周りは暑苦しいくらいだった。稲穂はまだ青々としていて、風に吹かれるたび爽やかに揺れていた。
「ちょっと来て!トシくん!」
田んぼに立っている案山子の中に詰まった藁を取り出して遊んでいたトシオさんに少しきつめに声をかける。トシオさんは怪訝そうに顔をしかめた。何故か頬に田んぼの泥がベッタリ付いている。
「何だよ。いきなり」
「あのね、やっぱりこの間みたいなことはやめてほしいの」
「この間?」
トシオさんは初め合点がいっていないようだったが、やがてニヤニヤと笑いながら「ああ」と声を上げた。
「お前んとこのまんじゅうさ、俺ちょっと先にある二丁目のまんじゅう屋のも食ったけど、アレと全然変わんねえよ?まんじゅうなんてどれも餡子が甘いだけだろ?」
「……どうしてそういうこと言うの?」
少し泣きたくなったがグッと堪える。泣くためにトシオさんに声をかけたわけではない。
「トシくんちのおじさんもおばさんも、うちのおまんじゅう、喜んで食べてくれるもん」
「要はアレじゃねえの?シャコウジレイって奴だろ!」
「トシくんちのおじいちゃんもおばあちゃんも……反物屋のミエコおばちゃんだって……」
「はいはい!シャコウジレイ!シャコウジレイ!!まんじゅうなんかどこもおなj……」
パンッ!!!
シノさんはトシオさんに最後まで言わせなかった。トシオさんの頬を思い切り張った。張ったその手でトシオさんの学ランを引っ掴む。トシオさんの頬は少しばかり赤く腫れ、それとは関係なく顔が引きつっていた。
「トシくん、とりあえずちょっとうちの店まで来てくれる?」
シノさんは言った。トシオさんは何度も頷いた。シノさんは飛び切りの笑顔だった。
店先の鮮やかな赤い床几台の上に皿があった。もっと正確に言えば二つのまんじゅうがその皿の上に置いてあった。その皿を挟んでシノさんとトシオさんが座っていた。シノさんは学校の制服の上にお店の手伝いをするときにいつも使っている抹茶色の前掛けをしていた。
「何だよ!茶ぐらい出せよぉ!」
「はい」
ガラスのコップに冷えた麦茶を大雑把に注いで、差し出した。
「和菓子屋のくせにすごい手抜き……」
小声で文句を言うトシオさんを思い切り睨みつける。
トシオさんのお母さんは茶道をやっており、ご近所さん向けに茶道教室も開いていた。教室のときには鶴亀屋のお菓子を使ってくれていた。トシオさんもそれを小さいころから見て育ってきたので、お茶に関して並みの中学生以上にうるさい。
「あのさ……」
「お金とか良いから、これ食べて」
何か言う前に無理やり皿を差し出すと、気迫に押されたのかしぶしぶといった様子でトシオさんはまんじゅうを食べ始めた。一個目を手早く食べ終えると、二個目に手をつけてこちらは一口で食べ終えた。麦茶を一気飲みしているところに、シノさんはすぐさま尋ねる。
「どっちの方が美味しかった?」
「は?だからどっちも変わん……」
「どっちの方が美味しかったのって訊いてるの!」
どのまんじゅうも一緒なんてそんなはずはないのだ。トシオさんのお母さんのお茶教室では確かに鶴亀堂の和菓子を贔屓して使ってくれていたが、他の店の和菓子も使っていたのをシノさんは知っていた。そうして色んな和菓子に触れてきたトシオさんが「まんじゅうなんてみんな同じだ」なんて言うのはおかしな話なのだ。
答えないトシオさんをじっと睨む。今回の目的はトシオさんにお灸を据えることだ。ただでまんじゅうを食べさせることではもちろんない。
「トシくん、嘘つくんだもん。嘘はいけんよ」
シノさんはまっすぐトシオさんを見据えた。
「…二つ目。左に置いてあった方!!」
シノさんの視線に耐えかねて、トシオさんはそっぽ向いてそう言った。指だけはトシオさんから見て皿の左端を指している。
「右側は餡がちゃんと入ってないから、中すっかすか。形も歪!作った奴は出直してこい!」
あと、とトシオさんはイライラした様子で怒鳴る。
「鶴亀の印、左はちゃんと表についてたのに、何で右の方は裏についてんだ」
これ作った奴は相当鈍くてノロマな奴に違いないな、とトシオさんは吐き捨てる。シノさんは、前掛けをギュッと握って俯いた。しかしすぐに顔を上げる。勢いよくトシオさんの方に身を乗り出すと、その分トシオさんは仰け反った。
「な、何だよ」
「同じじゃないでしょ?」
「は?」
シノさんはまんじゅうが乗っていた皿を手に取って、トシオさんに突きだした。
「これ、どっちも同じ材料で作ってあるの。でも同じじゃなかったでしょ?おまんじゅうは同じじゃない。同じ材料で同じ作り方で作ったって、作った人によって違う味にだってなるの。材料から違うなら、なおさらそれぞれ違う味になるんだよ」
どのおまんじゅうにもどの和菓子にもそれぞれ美味しさがある。同じなものなんて一つもないのだ。
シノさんのセリフを聞いてトシオさんはキョトンとした顔でシノさんの顔をじっと見た。
「……だから、無駄にしないでよ」
捨てたりしないでよ!
心の中でははっきりと言い切ったはずだったのに、実際に口から言葉が出た時には最後の方は掠れていた。こんなはずじゃなかったのに。おかしい。もっとはっきり言ってやるはずだったのに。こんなに怒っているのにこんなに涙が出るのは何でだろう。
どうして泣いているのか自分ではもう訳が分からなかった。
ふいに暖簾が翻って、中から鬼、ではなくシノさんのお父さんが出てきた。店の接客が一段落したところに騒ぎを聞きつけて出てきたらしい。
「こるああああああ!うちの娘泣かした不届きもんは誰やあああ!!!」
「な?出た!!?……コイツが勝手に泣きやがったんだよ!だから俺は知らね!!」
トシオさんはシノさんのお父さんにいつも通り舌を出して、いつも通り逃げ出した。
「さっきの不味いまんじゅう作った奴に言っとけ!“悔しかったらもっと上手く作ってみろ、ノロマ亀!!”ってな!!」
「この悪がきがああああ!!!」
最後の捨て台詞もいつも通りで、シノさんはとうとう前掛けに顔を埋めた。お父さんは走っていってしまったトシオさんの背中が見えなくなるまで怒鳴り散らした。
「大丈夫か?」
「うん」
お父さんは床几台の前に屈みこんだ。シノさんは前掛けに顔を埋めたまま、頷いた。
「俺のまんじゅうとお前が作ったまんじゅう食わしたんだろ?何て言ってた、トシオは?」
シノさんはさっきのセリフをそのまま言って聞かせた。お父さんの拳に力が籠る。
「アイツ、泣かしやがって……」
「良いの」
シノさんは顔を上げた。涙の筋はまだ乾いていなかったけれど、笑うことはできた。怒っている笑顔じゃなくて、心から笑うことができた。
「トシくんね、私の作ったおまんじゅう食べて“こんな不味い物もう作るな”とは言わなかった。だから良いの」
また作ろう。何度だって。
「そうか。ありがとうな。これで鶴亀堂も安泰だ!」
お父さんはちょっと見当違いなことを言って笑った。やっぱりお父さんはお母さんの言う通り女心がちょっとわかっていないのかもしれなかった。
※
「いやあ、ばっちゃんのまんじゅうは美味い!」
スイッチ屋がさっき抹茶を飲んだときと似たようなセリフを口にした。あんなにたくさんまんじゅうを頬張っているのに普通に喋れるとは。どんな原理だ。そもそも今のシノさんの話を聞いていたのだろうか。
「トシさんは私が作ったおまんじゅうを“美味しい”って言ったことはなかった。本当に死ぬまで言わなかった。“もっと上手く作って、また持って来い”って。私はそう言われる度におまんじゅうを作って持って行った。お父ちゃんが作ったんじゃない、私が作ったんだっていう印に焼印を裏にしてね」
シノさんは自分のまんじゅうを手に取った。裏返して見えるのは、鶴と亀が仲良く寄り添う焼印だ。
「そしたらトシオさんったら“毎日俺のところにまんじゅう持ってくるのは面倒だろ?結婚するぞ”って」
「え?!」
「一つ屋根の下に住めば、届ける手間も省けるからって」
正直、発想の飛躍についていけない。
「愛はね、時には理屈を超えるのよ」
私の怪訝そうな様子が伝わったのだろう。シノさんはいたずらっぽい口調でそう言った。
「世の中言葉で説明できないことが多くて困ることもあるけんど、この部分はそれでも良いのかもしれんね……」
シノさんは自分の胸に手を当てて、“この部分”を示した。やんちゃだったのはトシオさんだけじゃない、シノさんもだったのだ、とシノさんの仕草を見て感じた。
「結果としてばっちゃんはトシオのじっちゃんと結婚したってことは、ばっちゃんもやっぱトシオのじっちゃんが好きだったってこと?」
スイッチ屋が指についた餡子をぺろりと舐めながら、口を挟んだ。一応話は聞いていたらしい。
「“貴方のやんちゃをちゃんと抑えられるのは私だけですから、ずっと傍にいてください”ってお返事したよ」
憎まれ口の中に愛が見えるから、不思議だ。こういう愛の形もあるんだとしみじみと思う。手のひらに乗ったまんじゅうが何だかとても偉大なものにさえ見えてくる。
日が沈みかけて、辺りは薄暗くなってきた。夏なので日の入りは遅いが、あまり長居するわけにもいかないので、私たちはおいとますることにした。
「ばっちゃん!俺また来るから!!」
スイッチ屋はシノさんにそう手を振った。もう片手にはまんじゅうの入った箱を数個抱えている。部屋にも相当な数のまんじゅうの余りがあるのを忘れているのだろうか。
「二人ともまた来なさいな!待っとるよ!!」
シノさんもそう手を振っていた。私もためしにそっと振り返してみる。心なしかシノさんの幸せそうな笑顔が素敵に見えた気がした。
結局、それが私がシノさんに会った最後の日になったのだ。
※
雨が降ると気が滅入るのは結構昔からだった。雨だとテンションが下がるという人はよくいるようだが、私の場合はそれとはまた違って心に何かが刺さるようなそんな気分になるのだ。
そんな日にスイッチ屋は一人でシノさんのところに出かけた。私とスイッチ屋がシノさんのところに一緒に行ってから数日経った頃だ。私はたまたま食料の買い出しに行っていて家にはいなかった。わざわざ雨の日に買い出しに行くのは至極面倒だったが、前日の夕飯にスイッチ屋が想定以上の食料を消費したからである。ちなみにスイッチ屋の食費やらなんやらの分はきっちりお金を頂戴している。
家に帰ると電気が消してあるのと、外の雲の厚さで室内は暗くどんよりとしていた。中央のテーブルには相変わらずシノさんのまんじゅうが乗っている。
出かけるならメモくらい残しておいてくれれば良いのに。そう思っているとインターホンなしにドアが開いた。インターホンなしに入ってくるのは不審者かスイッチ屋くらいである。まあ、スイッチ屋自体も不審者のようなものではあるけれど。
スイッチ屋の天パは少し濡れていた。眼鏡もちょっとばかりワイパーが必要そうな感じだ。とりあえずタンスからタオルを放る。
「玄関で拭いて。部屋、濡れるから」
「……悪いな」
返答する声のトーンがやたら低い。
今日、声を交わすのは実はこれが最初だ。昼過ぎまで寝てから買い出しに出かけた私は、朝からシノさんのところに行ったらしいスイッチ屋には会っていなかったからだ。
タオルで粗方拭き終ったスイッチ屋は部屋に入ってきた。私を見て、それからテーブルに置いてあるまんじゅうを見て、唇を噛んだ。どういう意図で噛んだかなんて分からないけれど、悔しげで悲しげに見えた。
唐突に嫌な予感がした。
「……シノのばっちゃんが、亡くなったんだ」
そして振り絞るようにそれだけ言った。
私は口を開きかけて、また閉じた。何も言えなかった。
その後少ししてから口を開いたスイッチ屋によれば、シノさんの死因は急性心不全とのことだった。スイッチ屋が鶴亀堂に着いた頃には、シノさんの親族が集まっていたらしい。つい数日前にはあんなに笑顔だった人がこうして亡くなってしまうのだと考えると、背筋が震える思いだった。
鶴亀堂のおばあさんが死んだその日、私たちは食べきれずに残っていたまんじゅうを食べ切った。スイッチ屋はまんじゅうが親の仇かのように頬張っていた。とにかく黙って食べ続けた。
ペットボトルのお茶を片手に私もまんじゅうを一つ口にした。本当は何か食べたいという気分ではなかったのだけれど、それでも私はそのまんじゅうを口に運んだ。甘すぎず優しい味がした。ペットボトルのお茶は薄く感じた。もっと濃いお茶が飲みたいと思った。
死にたいと願っていても、おいしいものはおいしい。私の消化器官は丈夫にそして正常に機能していた。私にとってそれは何とも皮肉で、そして悲しいくらいに滑稽な話だった。
スイッチ屋と死にたがり少女ー第二話ー
10/27 第二話全UPしました。ご意見ご感想、誤字脱字変な日本語指摘などなど何でもお願いします!