ナルハヤ帰物語

ナルニアとナルハヤって似てるなって思ったらもう我慢できなかった

携帯電話の電池が減る、切れるみたいに私の充電も切れそうだった。
スマホを見ることがやめられない人みたいに、私は家に帰ることがやめられない。家を愛している。家を人生の伴侶としている。
スマホをいじるのが大好きな人みたいに、私は家が好き。
携帯電話の充電器、充電ケーブルが犬の首輪とリードみたいな人みたいに、私の首にも家から伸びたリード、首輪が付いている。
それは見ることができない代物だけど、でも確かに感じる。

私は家に帰りたがっているんだ。
帰宅途中、私は家までの道のりを急いで歩いていた。
家と離れて寂しかった。
このままではスマホの充電の前に私の充電が切れてしまう。

大変だ早く帰らなくては。

家に帰り、窮屈な服を脱いでシャワーを浴びたい。そしてそのあとゆったりとした部屋着に着替えて、首回りとかだるんだるんのシャツとかに着替えて、好きなことをしよう。

外に出ると私が少しずつ私以外のものに侵食されていく。私が私でなくなっていく。私ではないものが付着して私が剥がれていく。

でも家に帰れば大丈夫。家の中に入れば大丈夫。
家が私の中に入ってくる。家は私、私は家。私の半身が家。そうしたらもう大丈夫。私の中から私以外のモノが排出されていく。メンタルの中のにあるディスポーサーに吸い込まれていく。外に出ている間にはがれた私の事も修復してくれる。

そうして私は私を取り戻すのだ。それ以外に私を、完全な私を取り戻す方法はない。

家だけがそれをしてくれる。家だけにそれができる。

「はっ、はっ」
気が付くと小走りになっている。
ああ、そうだよなあ。
早く帰りたい。帰りたいよなあ。私も帰りたい。
体の想いにこたえる。私も腕を振って太ももを上げて、
「帰ろう」
走って家に帰ろう。早く家に帰ろう。
充電はもう切れそうだったけど、あと1%しか残っていないみたいな感じだったけど、でもそっからの持ち。スマホだってそう。あと1%、疲れや、負の感情が裏に入って逆に元気になる。あと1%だからと、もういろいろなことがどうでもよくなって面白くなってくる。

「はっ、はっ、はっ」
そうして前を見て、前だけを見て家までの道のりを、もう少しあと少しだけの距離を走っていると、前方に、
「はっ、はっ、はっ」
白を基調にしたおかしな格好をした女が立っていた。

なんか見たことあるな。

そう思ったが、今はどうでもいい。家に帰るのだ。今かかわっている場合ではない。家なんだよ。私は家に帰るんだ。

そうしてもう少しばかり白女に接近した時、その女が突然走っている私の方に向かって、
「見つけたぞおおお!貴様あああ!」
って言ってきて、走っている私の行く手を阻んできたので、

「うらああ!」
私はそのままラリアットした。

今はかかわっていられないんだ。見たらわかるだろ!

ラリアットしたら、ごぼっ!っていう排水溝が逆流したみたいな音は聞こえたが、そのまま構わず家まで走り続けた。

「いえー!」
家に帰っていつものルーティンをこなして、ようやく一息ついてふと思い出した。

「あ、あれティルダ・スウィントンだったくね?」

自分の充電もそこそこにクロックスつっかけてサイン色紙をもって、外に飛び出す。

しかし、白い格好の女性はすでにどこにもいなかった。

「コンスタンティンが好きなんです!ガブリエルさんもかっこよかったです!」
って言いたかったなあ。

ナルハヤ帰物語

ナルハヤ帰物語

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-09-30

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