漠野の枯骨

兎禅國

漠野の枯骨

第1章 逃げた姦人

馬は、男の荒い疾呼と叩きつける鞭に、漠野(ばくや)を駆けた。男は、虎口から脱したとは思ってはいない。郷関から遠ざかれば遠ざかる程に、馬に強く多くの鞭を入れ急かした。たが、馬は次第に汗をかき、口から泡を吹く様になり足取りも鈍化した。終には、漠野で馬は斃死(へいし)した。「畜生!畜生!潰れやがったな!」男は、自分の知っている悪態を全て使ってこの状況を罵った。彼は、馬に括り付けられた荷(約十四貫)を捨てて逃げようとはしなかった。然し、巨漢である彼には到底持って逃げられる筈もないのである。斃れた馬は荷を下にしていたので、男は馬をどかすのに半刻の時間を費やした。馬はどかされ、荷を引き摺り出せれた。男は馬に押し潰された荷を確かめ、顔をニヤつかせた。直ぐにその荷を巨体に巻きつけた。だがその頃には、宵時であった。暗くなれば漠野と言えども自らの場所は悟られないと考え、男はその体を横たえて草葉の床に付いた。

漠野の枯骨

漠野の枯骨

廣大漠野を独行する男。彼は姦人であり、盗人である。

  • 小説
  • 掌編
  • 冒険
  • サスペンス
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-09-29

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted