オレンジ

間接照明?私からしたら本当に関節位大事だよ?

オレンジ色の照明には温かみがある。
ほっとするし、見ているだけで心が落ち着く気がする。
いや、落ち着く。
「ほー」
見ているだけで染み取り剤のように私の内外に付着している不安、不安感、嫌な事、ストレスを溶かしていく。

「はー」
いいなあ。オレンジ色の照明。間接照明。アマゾンで買った間接照明。でっかい箱で届いて、開けたら組み立てなくてはいけなくて、なんだこれ、何の部品だ?どうしたらああなるんだ。ってなった苦労もこうしてオレンジ色の照明がついてくれたらチャラだ。
「いいなあ・・・」
君、いいなあ・・・。
炭酸バブを入れたお風呂に入って、ふくらはぎのあたりを揉んだりしている時みたいに体の疲れ、だるさが溶けていくよなあ。

「私、オレンジ色の照明を浴びてるだけで、元気になってテンションも上がっていい気持ちになるの」
以前、知り合いにそのことを話した。
そしたら、
「スーパーマンかよ」
って言われた。

スーパーマンってそうなの?
太陽光で?へー。そうなんだ。便利ねー。
でも、私はそうじゃない。
オレンジ色の照明。照明だよ?それでスーパーマンみたいにはならないでしょ。飛べないし。

まあ、とにかく私はオレンジ色の照明を浴びてるだけで、元気が出る。
元気がもりもり出る。
気持ちも前向きになる。
また頑張ろうって思える。
思えてくる。

「・・・」
振り返って後ろを、部屋の端、ベランダの前の所を見ると、人が死んでいる。
知らない人だ。
見たこともない人だ。
その知らない人がいきなりベランダから私の部屋に入ってきた。

お風呂にも入ったし、もう寝ようと思っていた私につかみかかってきた。乾かした髪の毛も引っ張られた。

怖かった。びっくりした。何されるのかと思ったし、殺されるって思った。
だから抵抗した。

死ぬ殺される犯される。

手をバタバタとした。とにかく助かりたくて、助かる一心で。
「やだ、やだ!いや!」
そしたらその手が、振り回した私の手が、左から右に流れた手が、男の首にあたった。

ボキン。

と音がした。男の首が折れてしまった音のようだった。

男はその瞬間急に力を失って床に倒れた。股間のあたりから、徐々に染み出た液体が床に広がった。男は死んでしまったみたいだった。

それで恐怖や不安、ストレスが私の中で爆発して、それからしばらく座ってオレンジ色の照明を浴びてぼーっとしていた。
でも、オレンジ色の光を浴びたおかげで、元気が出てきた。
頭が回るようになって、いろいろなことが考えられたり思い出せるようになった。

以前知り合いに私とオレンジ色の照明の話をした時、
「スーパーマンかよ」
って言われた。

まさか、スーパーマンなんて大層なもんじゃないだろう。そんなんじゃないだろうけど、

でも、

でも、この死体の処理が済んだら、もう少し詳しい話を聞きに行こうかな。

そうしよう。それまではもう少しオレンジ色の照明を浴びていよう。

オレンジ色の照明を浴びていると元気が出てくる。
「いい、いいなあ」
とても元気が出てくる。

オレンジ

オレンジ

  • 小説
  • 掌編
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-09-29

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