空耳
聞き慣れたその声は、
また聞こえてきた……
空を見上げるといつも
親父の声がするようで
まだ小さかった頃
意味もわからず聞いていた
もし、
お前に好きな人ができたなら
見えなくなるその日まで
お前の精一杯の愛情を
その相手に捧げてやれと
その人のためではなくて
自分の精一杯の姿を見せてやれ
それが伝わればその人が
一生お前の隣にいる人だと
まだ小さかった頃は
意味もわからず聞いていた
今はとなりにいる人の
穏やかな寝顔を見ていると
空から聞こえる
親父の声がするようで
この空見るたび響いてる
今は居ない親父の声が……
空耳
もう居ない人の声だった。