第9話-1
「終わりなき神話」これまでは……
『繭の楯』『咎人の果実』は10人ずつ特殊な能力を保有する人間や異星人たちであった。
『繭の楯』と呼ばれる人々は救世主に覚醒するまでのメシア・クライストを守護するべく産まれた運命の10人。
『咎人の果実』は救世主に覚醒する前にメシア・クライストを殺害し、神々とデヴィルの永劫決戦の勢力図をデヴィルに傾けるため、産まれた運命の10人。
それぞれに思うものを胸に抱え、メシア・クライストの溢れる力により20人は遥か未来、すでに文明は滅んだ地球の、赤色巨星となった太陽の下、戦い続けていた。
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白い部屋の中で空気を華麗に操り、【繭の盾】とメシア・クライストを窒息させようとしているドヴォルは、その透明な肉体に青色の炎を一層大きく灯して、ケタケタと笑った。イ・ヴェンスに首を締め上げられながら。
「そう、そうでしたね。わたしは前世、別のオムニバース、別の宇宙で貴方の息子として生きていた」
イ・ヴェンスもはっきりと思い出していた。自分がこの眼の前にいる魂の持ち主に前世、殺害されたことを。
背後に立ち身体が半身、まるでコンクリートで固められたかのようになっているアニラ・ザビオヴァも、トチス人のオレンジ色の瞳をドヴォルに向け、自分がこの男の妹で、父親の殺害を隠蔽したことを思い出し声を漏らした。
「お父さん、わたしは――」
そう言いかけた時、酸素が行き渡らない筋肉を動かし、イ・ヴェンスは太い腕をドヴォルの首から外し、そのヌメリとした透明な腹部に分厚い手のひらを当て、能力を発動させた。
すると透明なラーフォヌヌ人の背中が爆発。腹部から背中に大きな穴が空いた。
が、それでもドヴォルは息絶えることはなく、能力は持続している。
後ろを振り向くイ・ヴェンスには、メシアがすでに気絶寸前な状態なのが見えた。
「アニラ、俺たちを移動させろ」
呼吸もままならない中で叫ぶイ・ヴェンス。
アニラ慌て異空間へつながる穴をなにもない空間に作る。
そこへイ・ヴェンスはドヴォルの身体を掴み、そのまま突進して行き先も分からない穴の中へ入って消えた。
半身が動かないアニラも、自らの足元に穴を作ると、その中に沈むように消えていく。
穴が閉じ、空間が通常に戻るとメシアは水面に出たかのように呼吸をした。
第9話-2へ続く。
第9話-1