Sky in Alove ~魔法使いのアベック~

Shino Nishikawa

Sky in Alove ~魔法使いのアベック~

この物語は、世界の記録を更新する。

Sky in Alove2 【魔法使いのアベック】

ハァ、ハァ
ハイテムは、うだるような暑さのスラムの中を走っていた。

美しい花畑にたたずむ女性。振り向くと、それは、ミンティアだった。
『ミンティア。』

1人の男が、ミンティアを森へ呼んでいる。



「ミンティア、森へ行くな!!」
ミンティアは振り向いたが、幻は消えてしまった。

ハァ、ハァ

「こちらです。」
1人のインド人青年が、声をかけた。
ハイテムは、左に曲がり、テントの奥にある、部屋にむかった。

そこには、ハイテムに悪の魔法を与えた魔女、アルトルナ・マタラルが、危篤状態で寝ていた。

「アルトルナ。」
「ハイテム。」

「すまないね‥お前に、悪の魔法を与えてしまって。」
「そんなことない。そのおかげで、私の人生は、とても面白いんだ。」

アルトルナは少し笑って言った。
「悪の魔法使いは、1人の女を、魔女に出来る。‥誰に、やるつもりだい?」
「誰にもやるわけない。そんなこと。」

アルトルナは、また笑った。
「与えなければ、お前は、もうすぐ死んでしまう。魔法使いになって、もう30年たつ。」
「誰かに苦しみを与えるくらいなら、死んだ方がましだ。」

「そうか。」
アルトルナは目を閉じた。

「最後は聞きたいことは?」

「二番目の娘が、黄泉の国に連れて行かれた。助ける方法はあるか?」

「アベック‥。魔法使いのアベックだ。あちらの世界へ通じる、ドアを持っている。」

「私も、探すとしよう。」
アルトルナは、息を引き取った。


「今日が、人生で一番最低な日だわ。」
ジャスミンは、1階の窓の手すりにかけた、フラワーバスケットに、水をやりながら言った。


「ミンティアが家出をするなんて。それに、アルったらこんな事をしてる。」
ジャスミンは、新聞を持ってふくれた。

『ブルースイコスに選ばれし者。アラジン・リンドアーク。』
ロジーが、アラジンに膝まづく写真だった。

「おはよう。」
ジュリアが、自転車で来て、止まった。
「ジュリア、これ見て。」
「何。」
ジュリアは、新聞を手に持った。
「アル?王子になっちゃったんだ。」
ジュリアは笑った。
「どうしてそんなに呑気でいられるの?早く、助けに行きたいわ。」

「うん。でも、ジーニーさんが、もう少し様子を見てからだって。」
「もう少しって、いつよ!」

「‥俺、仕事に行くから。じゃあね。」
ジュリアは、行ってしまった。


「待って!!」
トリズは、リタルを追いかけていた。
リタルは、人ごみの中を、足早に歩いて行く。

「リタル。今日も出勤の日だよ。」
トリズが言うと、リタルは涙をぬぐった。

「リタル、戻ろう。大体、君には、他に行くあてがないはずだ。」
リタルは、両親と一緒に、アパートで暮らしている。

「この国から、もう逃げたいの。」
「そんなことをしても、意味はない。」
トリズは、リタルを抱きしめた。


ジーニーは、夢を見ていた。
追われたり、追ったりしている。
ジーニーは、あの頃、偽物の魔法の杖を持っていた。


『あなた。骨董市で見つけたの。』
それは、妻がくれた物だった。

『ああ、もう最低よ。どうして私を、魔女にできないの?』
『すまない、サレ。魔女に出来る魔法使いは、一部の者だと聞いている。私はその中には、含まれていない。』

うわあああ!!
魔力を持った暴漢達が、ジーニーを襲ってくる。
その頃、ジーニーは、悪の魔法使いについて、よく分かってなかった。
その暴漢達は、ジーニーの妻が雇った者達だった。

ジーニーは戦ったが、急所をつかれ、瀕死状態になった。

ジーニーは、黄泉の国へと続く、長くて暗いトンネルに来た。
人が横たわったりして、うめき声をあげている。
少し行くと、水色の服を着た女の子が、うずくまっていた。

「大丈夫かい?」
「はい‥。」
「おいで、一緒に行こう。」
2人は、出口を目指した。

「そちらに行ったら、私達、どちらも死んでしまうわ。」
「おや、ここは、天国へと続く道なのかい?」
「そうよ。私、自殺したの。」
「どうして自殺なんか。命を粗末にしてはいけない。」

「私が‥悪いことをしたから。」

「そうか。でも、どんな時だって、自分から死のうなんて、しちゃダメだ。」
「でも、あなただって、死んだから来たんでしょう?」

「自分から死んだわけじゃない。妻に殺されたんだ。でも、もう離婚する。」

白くて光る出口は、ドアに変わった。

ジーニーが開けると、白人の女の子が顔を出した。
後ろには、背の高い中国人がいる。
「あなた達、戻ってきたの?」
白人の女の子は、ニヤリと笑った。

ジーニーは、目を覚ました。


「じゃあね、ママ。仕事に行ってきます。」
「いってらっしゃい。気をつけてね。」

ドン
「すまない、ジャスミン。」
「お父さん?言っておくけど、こんなことになったのは、全部、お父さんのせいなんですからね。」

ジャスミンは、怒りながら、花屋に向かった。

「母さん。」
「おかえりなさい‥。アルトルナさんとは、話せたの?」
「ああ、話せたが、アルトルナは亡くなったよ。」
「そう、残念だわ。」

「それより、ミンティアが、黄泉の国に連れて行かれた。アルトルナの下に行く途中、幻を見たんだ。」

「なんて恐ろしい。助ける方法はないの?」

「助けるために、アルトルナはアベックと言った。俺には、それが誰だか、さっぱり分からんが。」

カチャン
蓋つきのツボが動いた。
ジャフカデが侵入して、聞いていたのだ。それは、正の魔法だった。


ジャフカデは、ドアの前に来た。
ピンポーン
「はい。」
白人の女の子が顔を出した。

「どうも。」
「ジャフカデ?‥何の用ですか?」
「黄泉の国について、話がある。」

「どうぞ。」
白人の女の子は、怪訝な顔をしたが、ジャフカデを中に入れた。


アラジンは、役人と話していた。
コツン
石が当たったので、アラジンは振り返った。
「ジュリア?」

「どうしたの?」
「それは、こっちのセリフだよ。」
「僕は、選ばし者として、国を統治しているだけだ。」

ジュリアは笑った。
「アル。変わってなかったんだ。」
「俺が変わるはずない。俺はずっと、俺のままだ。」
「そっか、よかった。」

「リンドアークさん。」
役人が呼んだので、「じゃあ、また。ジャスミンによろしく伝えて。」
アラジンは行ってしまった。


「はい、お茶です。」
白人の女の子が、ジャフカデにお茶をいれ、ジャフカデは女の子を見つめた。

「テラ。君は男の子だろう?なぜそんな服を‥。」
「魔女に‥なりたくて。」
「魔女に?」
「そう。悪の魔法使いは、1人の女性を魔女にすることが出来る。オーファンは、悪の魔法使いだから。」

「僕は、まだ、魔法使いではないんです。」
「魔法使いは、望んでなれるものではない。」
「そう。僕はそれを望まない日はない。だから、なれないんです。」

「黄泉の国についての話があると。」
「ああ。知り合いのお嬢さんが、黄泉の国に連れて行かれたんだ。‥黄泉の国へのドアを持っていると、オーファンが前に、自慢していた。」


「ええ。でも、行けるわけじゃない。黄泉の国に行く人を見たり、たまに、戻ってくる人を迎えたりするだけのものなんです。」

テラは立ち上がり、小さな家を持ってきた。

「これ。僕一人じゃ、開けられない。オーファンが帰らないと。」

テラはまた立ち上がり、お菓子を持ちに行った。
ジャフカデは、小さな家を調べた。

「どうしてこんなものを?」
「オーファンの家に代々伝わっている物なんです。」

ガタガタと窓が鳴った。
「ちょうどいい。オーファンだ。」

「ジャフカデさん、高速移動の時は、風になりますか?それとも、影になりますか?」
「俺は影だ。」
「オーファンは風なんです。」

バン
オーファンが、家に戻ってきた。
窓の外だ。
「オーファン!ドア、開けるね。」

「ただいま。いつも降りる場所を間違えてしまう。」

「ジャフカデさんが来てるよ。知り合いの子が、黄泉の国に連れて行かれてしまったんだって。」
「どうも。」
オーファンは、頭を下げた。

「でも、あちらへは、行けませんよ。」
「ああ、分かっている。見たいだけだ。」

オーファンは鍵を回し、小さな家の窓を開けた。
黒い空間の中に、道が続いており、魂が飛び回っていた。

「すごい‥ここが、黄泉の国か。」
「いえ、これはまだ、入り口です。向こう側がどうなっているかは、よく分からない。いつも、ぼんやりとしたものしか、見られないから。」

「この家には、魔法の起源も隠されています。」
オーファンは、もう一つの窓を開けた。


紀元前1800年。インダス文明が滅亡する。
紀元前2000年に起こった気候変動が原因とされているが、
実際には、街は、一日で、砂漠に飲まれたのだった。

不思議な力は、それによって生まれた。
その力は、1人の少女に与えられた。
名前を、シロア・カカリアという。
シロアは、そこから50キロ離れたベンジャーナ村に住んでいたが、その日、インダスに吸い寄せられるように、消えた。

シロアが、街を飲んだ砂漠から生えた緑に触れると、シロアは砂漠に飲み込まれた。

3日後、シロアを探しに来た、ベンジャーナ村の人達の前に、シロアが、砂漠から現れた。
「シロア‥、大丈夫か。」
「ええ。」

シロアは魔女になっていて、村で数々の奇跡を起こした。

シロアの伝説は、各地に伝わり、彼女は神とされた。

しかしある日。
一番の都市で、死刑が行われることになった。
罪はないが、嫌われ者の、タペックのギロチンだ。

みんな面白がって見た。

ついに、刃が下され、首が切れた。
しかしそれは、シロアの首だった。

人々は息を飲んだ。
シロアは、自分の命をかけて、殺人が悪いことだと、教えたかったのだ。

男達は悲しみ、身を投げた。
シロアの霊は、それを止めたが、悲しみの方が強かったため、止めることが出来なかった。

シロアの霊は、3人の男に呪いをかけた。
恋人のパランを正の魔法使いに、元恋人のワーデンも正の魔法使いに、そして兄のへブアンを、悪の魔法使いに。

これが魔法の起源である。

オーファンは、言った。
「俺は、へブアンの子孫だ。この家は、代々、俺の家に伝わってきていた。」

「俺は、ガンジス川に住む魔女に頼み、悪の魔法使いになったが、まだ、この家を破壊出来ていない。」

「破壊するつもりなのか?」
「ああ。これを狙う者は多い。災いの下だ。俺の先祖が、40才以上生きた例がないんだよ。」
「そうか。」

「知り合いの子が、黄泉の国に連れて行かれたと言ったな?」

「ああ。」
「では、体はどこかにあるはずだ。まだ死んで、燃えやされていなければの話だが。」


その頃、宮殿では‥。
アラジンは、宮殿の中を自由に歩き回り、万が一の時のために、宮殿の中を調べていた。

『キングズルーム』
「ここが、王様の部屋か。」
アラジンは、金色の扉をノックした。
「誰もいないみたいだ。」
アラジンが中を覗くと、トイレが丸出しで置いてあり、その隣には、キングサイズのベッド、大きな窓があった。中は、広々としている。

「ふーん。へ・ん・た・い。」
アラジンは、ニヤリと笑い、ドアを閉めた。

『ロジーズルーム』
「ロジーの部屋。」

ロジーは、部屋の中で、何かを見ていた。
コンコン
ロジーは振り返った。

「はい?」
「やぁ、ロジー。宮殿の中を歩き回っているんだ。」
「そうか。」
「よければ、君の部屋を見せてくれないか?」
「いいとも。」

ロジーは、悪の魔法で、『何か』を透明にした。

ロジーの部屋の絨毯は紫色で、本棚がびっしりとあり、ホテルのロイヤルスイートのように、部屋が続いていた。

「素敵な部屋だね。」
「まぁ、気に入っている。」
「本を読むのか?」
アラジンは、大きな本を手に取った。
それは、インドに関する植物の本だった。

「ああ、読むことは好きだ。」

「聞いてもいい?」
「ああ、どうぞ。」
「どこで、悪の魔法を?誰から?」
「お婆さん。子供の頃にね。ちょうど、その本の著者なんだ。ルメリダ・メリックス。」

アラジンは、ルメリダ・メリックスの名前を指でさわった。

「場所は‥、ネパール。カトマンズのふもと。」
「ネパール?インドじゃないの?」
「ああ。僕はね、昔、そこに住んでいた。」

「‥そう。」
「うん。」

バタン。
アラジンは、ロジーの部屋を後にした。
ロジーが隠していたものは、ミンティアだった。
ロジーは、ミンティアに布団をかけた。


ロジーは、奥の小さい部屋の、ベッドに横になり、昔を思い出した。

山のふもとの柔らかな緑の上を、お兄さんのチャダルと、飼い犬のフゥルと一緒に、走り回っている。
「チャダル!アベック!」
お父さんが呼びかけた。アベックは、ロジーの本当の名前だ。

「どうしたの、お父さん!」
「お婆さんが倒れたんだ!」
「そんな!!」

急いで家に行くと、ベッドのお婆さんに、お母さんが寄り添っていた。
「おばあちゃん、大丈夫?」
「ああ‥。チャダル。アベック。」
「おばあちゃん!!」
「残念だが‥お婆ちゃんは、もう死ぬよ。」
「やだよぉ!!」
「チャダル。お前には、父さんと同じ、魔法をあげてある。」
「うん‥。」
「正義の魔法だ。」
「うん‥。」
チャダルは、おばあちゃんの手に泣いた。
アベックは、ワケが分からず、チャダルを見た。

「アベック。手をお貸し。」
「え‥。」
「お前は、本当にいい子だから‥。」
お婆さんは、手から、紫の光を出し始めた。
「母さん、まさか。」
「ああ‥。アベックには、役に立つ。」
「止めろ!!」

お婆さんは無視し、紫の光は、さらに強くなった。
アベックは、黒い影に包まれた。

「アベック!」
チャダルは、心配して叫んだ。

紫の光と、黒い影は終わって、静かになった。

お婆さんとアベックの腕には、金色のブレスレットがはめられていた。
「アベック。悪の魔法だよ。」
「悪の魔法?」
「悪い事をする時にだけ、魔法が使えるんだ。」
「悪い事にだけ?」
「ああ。でも、この世界をよくするためには、必要な魔力なんだよ。」

「アベック。」
チャダルは、アベックを見た。

「母さん、頼む。行かないでくれ。」
「お義母さん!!」

「すまない‥。」
お婆さんは、目を閉じた。


10年後、18才のアベックは、別の場所にいた。
インドの中でも、都会の街の、観葉植物が飾ってある本屋だ。

外を見ると、11才ほどの女の子が、ふらふらと歩いている。
怪しげなスーツの男が話しかけていた。

「お嬢さん、どこから来たの?よければ、街を案内しましょうか?」
「いえ‥結構です。」
「いやいや、そんなこと言わずに、一緒にきたまえ。」

「止めろ!」
アベックが言うと、女の子は振り返った。
「え‥。」

「僕の妹から、離れてくれないか?」
アベックが言うと、スーツの男は、どこかに行ってしまった。

「大丈夫かい?」
「はい。ありがとうございます。」
「だけど君、どこから来たの?」
「ニューデリーです。」
「そう。ニューデリーから、ここまでは、電車で一時間くらい?」
「はい。」
「君はまだ子供だ。1人かい?」
「ええ。お姉ちゃんの誕生日プレゼントを買うために来たんです。」
「そう。プレゼントは、決まったのかな?」
「まだ‥。」

「良い店がある。来て、僕は安全だから。」
「うん!」

ミンティアは、1ドルほどの可愛いオブジェを買った。

「じゃ、気をつけてね。」
「はい。」
ミンティアは、電車で帰った。

ミンティアのことを気になったアベックは、ニューデリーに来た。
お母さんと一緒に歩く、ミンティアと出くわした。
「こんにちは。」
「あら、ミンティア。知り合いなの?」
「ええ。前に会った人なの。お姉ちゃんの誕生日プレゼントを選ぶのを、手伝ってくれたのよ。」
「あらあら、娘がお世話になったようで、ありがとうございました‥。」
「いえ、とんでもありません。」
「よければ家で、お茶でもいかがですか?」
「僕は、これから用事があるので‥。」
「そう。残念だわ。」

アベックは、立ち去りながら、鼻をかいた。
ミンティアと会えたことが嬉しかったのだ。

その後、アベックは、夕暮れの川を呆然と眺め、市場の食堂で食事をした。
あとは、酒場で、酒を飲みながら、タバコを吸った。

真夜中。
スラムの中にある、闇市に来た。
ここに、有名な占い師がいると聞いていたのだ。

爺さんが話しかけた。
「お前さん、こんな所で何をしているんだい?」
「闇市に、有名な占い師がいると聞いたんだ。占ってもらいたくて‥。」
「おや、恋の悩みかい?恋はした方がいい。若いうちはね。」

「はい。ところで、占い師を知っていますか?確か、名前は‥ダリティアン‥。」
「ダリティアン・レアン。そいつに会いたいなら、このテントの奥だよ。」
「そうですか。ありがとうございます。」

アベックが歩いて、テントの中に入ると、そこには、乳飲み子を抱えた母親が1人と、狂暴そうな男が3人いた。
「客人かい?」
「え‥。」
「人の家に間違って入ってきたのか?」
「すみません‥。」

アベックはテントから出ようとしたが、そこにも、狂暴そうな男が待ち構えていた。
お爺さんは、不気味な笑いをしている。
「だましたんですか?」
「だましてないさ。そこにいる男が、ダリティアン・レアンだ。」
「俺になんの用かな?」
胡散臭い男が、銃を持ってきた。

「捕らえろ。」
胡散臭い男が言った。

アベックは、悪の魔法の使い方を習得していた。
いくら防御といっても、防御は正の魔法だ。
だから、アベックは、乳飲み子を抱えた母親を狙うようにして、防御した。

「モミー!!」
胡散臭い男は、モミーに駆け寄った。
あとは、アベックが習得していたインド憲法で、狂暴な男達を倒した。
残るは、お爺さんだ。
お爺さんも、インド憲法の達人のようで、強かった。
アベックは悪の魔法を使ったが、お爺さんも目から光を出し、口から閃光を発射した。
お爺さんは、悪の魔法使いだったのだ。

「くそっ!」
アベックは、置いてあった大樽の影に隠れた。
お爺さんは我をなくし、目から光と口から閃光を発射し続けている。

「大丈夫か?」
男が覗き込んだ。
「やめろ!」
男は体から緑の影を出し、お爺さんに緑の閃光を浴びせた。
お爺さんは突き飛ばされ、辺りは静かになった。

男の体には、緑の影がかすかに残っている。
「立てるかい?」

「安全な場所に行こう。」
男は、電灯に光をともしながら歩いた。
「あなたは魔法使いですか?」
「そう。俺は、正の魔法使い。君は?」
「僕は、悪の魔法使いです。」
「そうか。でも、悪の魔法使いは、強いらしい。」
「悪い奴には使えない。お婆さんは役に立つと言ったけど、使い方がよく分からないんだ。」
「いずれ、分かるさ。答えは君の中にある。」
「みんなそう言うよ。そんなのは、鉄板の答えだ。チャダル。ニューデリーイチの占い師ダリティアン・レアンが、まさか兄さんだったなんて。」

「もう知っているかと思ってた。」
チャダルは、細長い人差し指を、アベックに向けた。

「僕の店についたよ。占ってあげる。」
2人は、チャダルの白いテントに入った。

「さぁ‥。」
チャダルは、タロットカードを机の上に広げてみせた。

「一枚とって。」
アベックが取ったカードは、黒い悪魔のカードだった。

「もう、一枚。」
次は、妖精のカードだ。

「ふーん。悪魔は、年下の子に、恋煩いを?」
チャダルは言い、アベックは何も言わず、もう一枚のカードを引こうとした。
「あ、ダメ。」
「え?」
「今、もう見えた。女教皇。」
アベックは不審そうに、3枚目のカードを引いた。

「年下は無理だ。あきらめろ。」
「あきらめられそうにないんだ。」
「よくない。女教皇は、死神より怖いんだよ。」

「じゃぁ、頑張れよ!」
チャダルは、テントから顔だけ出し、手を振った。

アベックは、朝になったスラムを、疲れた感じで歩いて帰った。


3か月後。
大学の図書館で、アベックは、大きな本をめくっていた。植物の本だ。

「植物に、興味があるんですか?」
白人の女の子が話しかけた。
「はい。」
「私、何を育てても、うまくいかなくて‥。」
女の子は、近くにあった植物図鑑を開いた。
「その本‥。」
「え?この本が何か?」
「俺のおばあちゃんが、著者なんです。」
「そうなの?」
女の子は、図鑑の後ろを見た。

「ルメリダ・メリックス。この人が俺のおばあちゃん。」
アベックが言うと、女の子は、指で、名前を触った。

図書館の窓は空いていて、カーテンがひらひらと揺れている。

「じゃあ、あなたに悪の魔法をくれたのは、この人ね?」
突然、大きな風が、図書館に入った。

「どうしてそれを。」
「あなたが、悪の魔法使いだってことは、知っていたわ。だって、金の腕輪をしているもの。」
「これ?こんなの、みんなしているじゃないか。」

「とてもめずらしいの。それに、これ、外せない。」
女の子は、金の腕輪に触れた。

「魔女になりたいの。」
「魔女に?」
「お願い。」
「ダメだ。そんな危険なこと、させられない。」

「テラ?」
「こんにちは、オーファン。」
テラは、少し早口で挨拶した。

「誰?」
「彼の名はアベック。悪の魔法使いよ。」

オーファンは杖を取り出し、しげしげとアベックを見た。
「君は‥、杖を使うのか?」
アベックは聞いた。
「護身用に持ち歩いているだけだ。」
背の高いオーファンは、アベックを見下ろしながら言った。


オーファンとテラは、話しながら図書館から出て行った。

アベックが下を見ると、ミンティアが、ジャスミンとリリホワと共に、歩いて来ていた。
ジャスミンのオープンキャンパスに着いてきたのだ。

「私は、1人で大学を見たいんですからね。」
ジャスミンは言った。
「それはいいけど、男子大学生に声をかけられても、無視しなきゃダメよ。」
「だけどママ、男のスタッフだっているのよ!」
「ダメ。女性についてもらいなさい。」

アベックは下に降りた。
「こんにちは。」
「あら、こんにちは!この大学の学生だったのね。」
「はい。僕は医学部で‥。」
「あら、そう。優秀なのね。ジャスミン、ミンティア。アベック君を見習いなさい。」

「大ホールはあちらですよ。」
アベックは指さした。
「ありがとう。」
3人は大ホールへと向かい、ミンティアは振り向いて、アベックに手を振った。

現在のアベックは、ミンティアを愛おしげに見つめた。


ハッ。
現在のオーファンは目を覚ました。
『ミンティアは、アベックの所にいるのか。』
テラの部屋を覗くと、テラはまだいびきをかいている。
オーファンは家を出た。
そして、前に、ジャフカデが歩いているのを見つけた。

「ジャフカデ!」
オーファンが呼ぶと、ジャフカデが振り返った。
ジャフカデは一呼吸置き、言った。
「ごきげんよう、オーファン。」

「何の用かね?俺はこれから仕事なんだよ。」
「仕事?仕事って何をやっているの?」
「俺は、霊媒師として働いている。」

「そうなんだ。」
「ああ。君の仕事は?」
「俺は、高校の教師をしているんだ。」
「悪の魔法使いが教師だとは。」
ジャフカデはニッコリとした。

ジャフカデは、話をしながら、歩きだした。
「ニューデリー1の黒の魔法使いと言われているが、俺は、正の魔法使いだ。」
ジャフカデはその後、悪霊の話をした。

「‥そうなんだ。ところで、君に言いたかったのは、ミンティアは、ロジーの所にいる。」
「王宮に?」
「ああ、そうだ。夢で見た。」

夢で。
ジャフカデは、何か分かったようにつぶやいた。
「ロジーは本物じゃない。知っているか?」
オーファンは聞いた。

「ああ、知ってる。入れ替わったのは確か‥ロジーが19の頃だ。今のロジーの本名は、アベック・メリックス。さて、本物はどこにいるのかな?」

2人は立ち止まり、魔力で透視をした。

「ダメだ。見えない。」
ジャフカデは、指で目を抑えた。
オーファンには見えた。
本物の王子は、乞食として、スラムにいる。

「見えたか?」
「ああ、見えた。」

オーファンは、アベックと本物のロジーが入れ替わった時のことを思い出した。
19才のアベックは、7才年下のミンティアと恋人になれないことにいら立っていた。
アベックは、兄のチャダルとシェアしているアパートには戻らず、スラム街で野宿するようになる。

「大変だ、プシュカルでテロが起きた。」
アベックが目を覚ますと、親父達が新聞を持ち、話していた。
レタという親父が、アベックを起こした。
「アベック。プシュカルでテロだ。」
「ああ‥。」
レタは、アベックに新聞を手渡した。
どうやら、王政に対抗したインド人グループによる犯行らしい。

「王族が相手なら、どうしようもないな。」
「手段ならあるさ‥。」
アベックは目をキリっとさせた。

「王子だ!」
「王子様だ!」
そこに、ちょうど、スラム街の病人の見舞いをするために、ロジー王子が歩いてきたのだ。

「王子‥?」
テラと一緒に、スラム街のアクセサリーショップに来ていたオーファンが、ロジー王子を見た。

「王子!王子!」
スラムの親父達は新聞を持ち、王子に駆け寄った。
「心配ない。」
王子は、親父達をなだめた。
王子はテントに入った。
そこには、グスラマという少女が熱でうなされている。

「グスラマ‥。」
王子は、グスラマに薬を飲ませた。
「王子様‥ありがとうございます。」
グスラマの両親は、泣いて感謝した。

ロジー王子がテントを出ると、黒い杖を持ったアベックが待ち構えていた。
「どうしたのだ?」
「この国の王子は、お前ではダメだ。」
「無礼だぞ!庶民は下がりたまえ。」

「俺と代われ。」
アベックは黒い影を出しながら、杖をロジーに向けた。

「王子様、早く中へ。」
グスラマの母親が呼んだが、
「大丈夫だ。」
ロジーは、マントの下に隠し持っていた赤とゴールドのピストルを、アベックに向け、発砲した。
しかしアベックは、魔法で銃を跳ね返し、包丁を持って出てきたグスラマの父親に当てた。

「お父さん‥。」
ロジーは、グスラマの父親の下にかがみこんだ。

アベックは、ロジーに杖を向けた。
「止めてくれ。なんだってするから。」
ロジーは言った。

民衆達は恐れた様子で、その光景を見ている。
王子の護衛は剣をぬこうとしたが、
「ダメだ!!危険すぎる。」
オーファンが止めた。

「アベック、やめろ!!」
オーファンはそう言って、杖を向けた。

アベックは無視したまま、杖をしまい、手の平をロジーに向けている。
オーファンは、魔法が使えなかった。
オーファンは、悪の魔法使いだからだ。

アベックとロジーは入れ替わった。
アベックは大地を揺らし、オーファンとテラ以外、全員の記憶を入れ替えた。
オーファンはテラの手を握り、テラを守った。

アベックは、ロジー王子となり、護衛と共にスラムを去った。

「アベック?大丈夫か‥?」
親父達が、ロジーに話しかけた。

「テロ組織だ‥。王子を狙って、騒ぎを起こした。」
親父達はぼーっとしながら、警察に言った。

「あなた!あなた!」
「先生、ドスラムが‥。」
白衣を着た老医者がやってきた。

老医者は首を振った。

「そんな!!なんとかしてくださいよ!!」

「行こう。」
オーファンはテラの肩を抱き、背を向けた。

「お父さん‥。」
グスラマがテントから出てきた。

「グスラマ‥。」
「お父さん、死なないで。」
「グスラマ‥、我が娘よ、愛している。」
最後に、ドスラムがグスラマの手を握ると、グスラマに、薄紫にも青色にも光る、魔女の証の腕輪がはめられていた。

宮殿についたアベックは、王の椅子に座った。
部屋に入ってきた王を、魔法で突き飛ばし、記憶を入れ替えた。


「アベックが戻ってこなくなって、今日で3週間だ。」
チャダルはカレンダーに赤バツをつけた。
「どうしたんだろう?」

「朝刊。」
紺色のガウンを着たチャダルは、新聞を読みながら、窓際のテーブルに向かった。
小さなテーブルには、トーストとコーヒーが置いてある。

王子の写真を見たチャダルは、コーヒーを吹きそうになった。
「アベック?!」
チャダルは、険しい目で、窓の外を眺めた。

王子になったアベックは、王室の車で、ニューデリーの街に来た。
アベックはサングラスを外し、見つけたミンティアを見た。
しかし、ミンティアは、アベックのことを見て、すぐに視線を外してしまった。

「ロジー様、お気に召す女はいらっしゃいますか?」
警護の者が聞いた。
「いない。」
「いないでは困ります。」
「しいて言えば、あの娘だ。」
アベックは、リタルを指した。ミンティアを標的から外すためだ。
そのため、リタルが標的になってしまった。
宮殿の女達と遊んでいたのは、王や高官たちだった。
アベックは、宮殿の女には、手を出していない。


「遅かったわね。」
家に戻ったオーファンに、テラが言った。

「ジャフカデに会ったんだよ。」
「ジャフカデに?」
「ああ。覚えているか?宮殿にいる今の王子は、本物の王子じゃない。」
「ええ、彼の名は、アベック。」
「そう。今、ミンティアは、アベックの下にいるみたいなんだ。多分、魔法で眠らされている。」
「そうだったんだ‥。」


仕事を終えたジャフカデは、ジーニーのテレビ収録現場に来ていた。
「ジーニー・アーノルドの下半期星占い」である。

「みなさんの願いは必ず叶いますよぉ!まずは、体に気をつけることです。」
ジーニーはその後、決め台詞を言い、収録を終えた。

「お疲れ様でーす!」
スタッフの女性が、ジーニーからマイクをもらい、言った。

「ジャフカデ。どうしたんだ、こんな所に来て。」
「今朝、オーファンに会ったんだ。それで、分かったんだが‥ミンティアは、アベック王子の下にいる。」

「え?アベック?オーファン?ちょっと待て。俺には話が見えないが。」
「ジャスミンの妹のミンティアの魂が、黄泉の国に連れて行かれている。今、宮殿にいるロジー王子は、本物じゃない。アベックという男と、8年前に入れ替わったんだよ。」
「そうだったのか。それは、初耳だった。」
ジーニーは胸をおさえ、言った。
ジャフカデは、神妙な顔で、ジーニーを見た。

「それで、オーファンというのは、誰なんだ?」
Caféに来たジーニーは、オレンジジュースを持ちながら聞いた。
「知り合いの悪の魔法使いだよ。黄泉の国に通じる城を持っているんだ。」
ジャフカデは言った。


「だけど、久しぶりだわ。アルと2人きりになるのなんて。」
ジャスミンは、手すりのフラワーバスケットに水やりをしながら言った。
「あー‥うん。でも俺、ジュリアに連絡しちゃって‥。もうすぐジュリアが来るんだけど、いい?」
王子の服を着たアラジンが言うと、ジャスミンは振り向いて、少し残念そうに言った。
「仕方ないわね。でも、来るまでは、こうさせて。」
ジャスミンは、アラジンに抱きついた。

「う、うん‥。」
アラジンは、軽く、ジャスミンを抱いた。

「私達、いつか結婚できるかしら?」
「結婚っ?!」
アラジンは、ジャスミンの肩をつかみ、離した。
「ええ。私達、いつかは結婚するわよね?」
「OK!でも、もう少し、この国をよくしてからでないと、結婚はできない‥でも、俺も、ジャスミンとずっと一緒にいたいさ!」
「アル‥。」
ジャスミンは、また抱きついた。

ピンポーン
「あら、ジュリアかしら?」
ドアを開けると、リリホワとペットの犬のチェリー、ジュリアが立っていた。
「ジュリア君とさっきそこで会ったの。リンドアーク君、久しぶりね!」

「どう?王子になった感想は。元々は主人のせいだから、心配で。」
リリホワが聞いた。
「いえ、楽しい毎日を送っています。」
アラジンは、白い歯を見せた。
「ところでおばさん、ミンティアの居場所は分かったの?」
ジュリアが聞いた。

「ミンティア?」
「ミンティアが、一週間前から、いなくなったの。」
アラジンが聞き、暗くなったジャスミンが答えた。

リリホワは顔を暗くした。
「実は、主人が言ったんだけど、ミンティアは、黄泉の国に連れて行かれたらしいの。」

「そんな!」
アラジンとジャスミンとジュリアは驚いて、青ざめた。

ドンドン
「あら、お客様だわ。」

「こんにちは。」
そこにいたのは、ジャフカデとジーニーだった。

「アラジンとジュリアもここにいたんだな。ちょうどいい。」
「どうしたんですか?」

「ミンティアの居場所が分かったんだ。ロジーの部屋にいる。といっても、ロジーは、本物の王子じゃないんだよ。」
「それ、どういう事?」

「ロジーは本当は、アベックいう名前で、8年前に、本物の王子と入れ替わったんだ。本物の王子は、スラム街で暮らしている。」
「まさか。信じられないわ。アベックさんは、ミンティアの知り合いだった人よ。」

「アベックさんがミンティアを誘拐したという事?」
「そうだ。」
「じゃあ、すぐに助けに行かないと。」

「ああ。だから、俺とジーニーは、黄泉の国に行っているミンティアの魂を追う。だから、3人は、ミンティアの体を守るために、王宮に向かってくれ。」
「わかった。」

「さっそく、僕たちは行く事にする。」
ジーニーとジャフカデは、青と黒の影になり、消えた。

アラジンとジュリアとジャスミンも準備をした。
「くれぐれも気をつけてね。」
「わかったわ、ママ、必ずミンティアを連れ戻すわ。」

「お母さん、ハイテム先生をよろしくお願いします。」
「もちろん。主人にはもう二度と、勝手な真似はさせません。」


その頃、ぼんやりとした影になったアベックが、ミンティアの体の所に来ていた。
「アラジンはブルースイコスの支配者だ。だから、この国は救われる。僕たちは、一緒に黄泉の国に行き、そこで永遠に暮らそう。」

アベックがミンティアにキスをすると、アベックは金色の光に包まれ、消えた。

そして、死んだように眠るミンティアだけが遺された。


途中、警備を倒し、変装をしたジュリアとジャスミン、アラジンが部屋に来た。
「アベックがいないな‥。」

「ミンティア!!」
ジャスミンがミンティアに気づき、かけよった。
「お願い、目を覚まして。」


ドンドン
「はい?」
テラが顔を出した。
「黄泉の国に行きたいんだ。知り合いの娘を助けたいんだよ。」
ジャフカデが言った。

オーファンが来て、ジーニーとジャフカデと魔法の言葉を交わした。

「黄泉の国に行く方法があるの?」
テラが聞いた。
「方法がないわけではない。」

オーファンは、ジーニーとジャフカデと、また、魔法の言葉を交わし、2人から正の魔法を少しもらった。
そして、2人に魔法をかけると、2人は立ったまま、青白い光に包まり、固まった。青と黒の魂が出て、黄泉の国の入口に入って行った。

「さよなら。」
オーファンが言った。
テラとオーファンは顔を見合わせた。
魔法を解くと、部屋が現れ、アベックが寝ていたのだ。

「こんなにお金をつまれたら、断れない。」
オーファンが言った。
テラは、2人をベッドに寝かせた。

「こいつらを殺そうか?」
オーファンが聞いた。
「ダメよ。しっかりと、謝礼をいただいたでしょう?」

「じゃあ、この城を破壊しよう。」
「それも、ダメ。まだまだ、このお城で儲けないとね。」
テラが言い、オーファンは、悔しそうに、城の窓をのぞいた。


ジャフカデとジーニーが目を覚ますと、ジェット機の中だった。
「飛行機の中だ。なぜここにいる?」
「わからない。これから墜落して、死ぬ事になるのかもしれない。」

ジャフカデは立ち上がり、飛行機の中を歩いた。
すると、無表情のアベックが乗っている。
「アベック。ミンティアを元の体に戻せないか?」
ジャフカデは聞いた。
しかし、アベックには聞こえないようだ。

「ジーニー。アベックがいるが、俺の声が聞こえないようだ。」
「そうか。」
ジーニーは、この飛行機は、死者が乗る飛行機だと気づき、ガタガタと震えた。

「どうした?俺は、死ぬ事には恐れはない。」
「俺には、もう一度会いたい人がいたんだ‥。」
「怖くなったのか?大丈夫さ。ミンティアを連れて、もう一度戻ろう。」

機内アナウンスが、黄泉の国に到着した事を知らせた。
空港は、普通の空港と同じで、スーツケースが無い事だけがちがっていた。

2人は、何も聞こえないアベックのあとにつき、バスに乗った。
「まるで、地上と同じだな。」
「ああ。」

「なんて、美しいんだ‥。」
美しい空に、薄桃色の雲に乗った城が浮いていた。

「二度と、元の世界には戻りたい気分になる‥。」
ジャフカデは、城に見とれた。

窓の外には、不思議な物がたくさんあった。

「ここが黄泉の国か‥。」

車内アナウンスが流れて、黄泉の国にようこその挨拶と、黄泉の国には寿命を迎えた者しか入れないという説明が流れた。
「ただし、夢見者(むけんしゃ)の人は別です。」

「夢見者?」

「夢見とは、生きている人間が、夢の中で、黄泉の国に見学に来ることです。」

バスは目的地についた。
目の前には、美しい城があった。

バスを降りる時に、ガイドは名簿を見て名前を確認している。
ジャフカデとジーニーとアベックも名前を確認された。その際に夢見者だという事も確認した。
「俺たちの名前も名簿にあったんだな。」
ジーニーはジャフカデに言うと、アベックがこちらを見た。

「おい、アベック。俺の声が聞こえるか?」
「うん。」
「ミンティアをどこにやったんだ?大切な人の娘だから、連れ戻すぞ。」
「わからない。先に行かせたんだ。」
「でも、体はまだ生きているだろう?ミンティアの魂を持って帰る。いいな?」
ジャフカデが言うと、アベックはうつむいた。

「おい。夢見者の3人は、ここに残って。」
「はい。」

「ミンティアも夢見者のはずだよな?」
「うん。」
ジャフカデが、アベックに聞いた。

「僕が案内する。僕は霊界ガイドのヒューだ。よろしく。」
「はい、よろしくお願いします。僕たち、女の子の魂を探しているんです。こいつが、魔法を使って、魂を黄泉の国に迷い込ませたんですよ。」
「そうか。でも、探すのは難しいだろうな。霊界はとても広いから。」
「霊界?黄泉の国とはちがうんですか?」

「同じだよ。天国と地獄、その周りの世界を総称して、霊界と呼んでいるんだ。」

「そうなんですね。お願いです、ミンティアの魂を探すのを手伝ってください。」
ジャフカデが言った。

「その子はミンティアという名前なのかい?わかった。仲間にも聞いてみるよ。」
「ありがとうございます。」

アベックは、ヒューに、両手を向けていたが、ヒューが言った。
「ここでは魔法は使えない。」

「はぐれないように気をつけろ。」
アベックは、ジャフカデとジーニーに両側をはさまれた。

「まず、ここで、気球に乗ってもらう。」

「落ちないように気をつけろよ。」
4人は、透明な気球に乗った。少し冷たいピンク色の霧の中をいくと、青い霧の中に入り、雨が降ったように思った。一瞬、傘を持った。
美しい自然の光景を目にし、気づくと、かなり高くまで昇っていた。
目の前に、巨大な釈迦像がそびえたっている。

「ブッダ様です。霊界は、国別になっているので、最高仏は、多数決で決まるんですよ。ほら見てください。別の国には、ムハンマド様や、キリスト様がいらっしゃいます。」
ヒューが言った。

ジャフカデとジーニーとアベックは、思わず頭を下げた。

「落ちないように気をつけてくださいね。ここで下まで落ちてしまうと、地獄に入ってしまいますから。」

「地獄は、この下にあるのか?」
「はい。地獄の入口はいたる所にあるんです。」

あああー!
ちょうどその頃、別の気球から、人が転落した。
空の救難隊が、その人に向かっていくが、追いつかない。
魔法の輪の雲が来て、落ちる速度がゆっくりになった。
そして、別の救難隊が、下から猛スピードで、助けた。
救難隊は、ガッツポーズをした。


「いよいよ、天国の入口です。その前に試練があります。」
目の前に、エスカレーターがある。
しかし、ドアの手前で止まっていた。

「ドアまでジャンプしてください。もちろん、失敗すれば、地獄へ落ちます。」

最初は、ジーニーが挑戦した。
「ふー‥。」
ジーニーはジャンプをして、ドアの前の狭い床になんとか降りた。
ジャフカデも同じ感じで降り、狭い床から、真下に広がる空を見降ろした。

アベックは足が届かず、狭い床に手でつかまり、なんとかよじ登った。

それぞれがドアに入ると、宇宙が広がっていて、自分の祖父や祖母が現れた。
アベックの前には、祖母が現れた。
「アベック、天国に来られてよかったねぇ。」
「ちがうんです。おばあちゃん、僕は悪い事をしたんだよ。」
「まぁ、そうだったの。でも、アベックが何をしても、私の大切な孫だという事に変わりないからね。」
「ありがとう、おばあちゃん‥。」

「このはしごを登って行くのよ。気をつけて‥。」
「うん。」
アベックは涙を拭き、銀のはしごを上ると、踊り場に出た。そこからは短い螺旋階段を上った。

すでに、ジーニーとジャフカデ、ヒューが待っていた。

2つのドアがある。ブッダ像やミッキー、魅力的なプリンセスの絵や、大統領の写真が貼ってあるドアと、不良の落書きだらけのドアだ。

「こちらが天国のドアで、落書きだらけのドアが地獄のドアです。もちろん天国ですよね?」
ヒューは、天国のドアを開けた。

そこには、美しい未来都市が広がっていた。
「地上の世界と同じ感じです。ここで、みんなが来世のための生活を送っています。」

地上にはありそうでない駅やショップやカフェがあった。
働いている人もいる。未来のための訓練なのだろう。
広場では、ダンスレッスンや、バク転の練習が行われていた。
先生もいる。

「ここに最初からいる住人はいません。みんなが元人間です。お釈迦様もね。」
「不思議な感じだ‥。」

「すぐに慣れますよ。」

「だけど、神は誰で、一体どこにいるんだ?」
ジャフカデが聞いた時、ヒューの電話が鳴った。
プルルル
おもちゃの電話のような不思議な形だ。
「はい。‥そうですか。わかりました。」

「ミンティアさんが見つかりましたよ。天国学校にいるみたいです。」

「それは本当か?」
「はい。」
「よかった。」
「さっそく学校へ向かいましょう。」
ヒューが数珠を出し、ゆらすと、4人の体が宙に浮いた。

「うわぁ!」
「魔法です。空を飛んでいきましょう。学校は、あの大きな木の中にありますから。」
天国の中心には、巨大な大樹がそびえたっていた。

「なんて美しい景色なんだ。」
天国には、遊園地もあるようだ。
綺麗なプールもある。

学校につくと、ヒューは、事務員に挨拶をした。
4人は、学校の中を歩いた。みんな、簡単な教育を受けている。
「ここです。」
そのクラスでは、来世のための道徳教育をしていた。

「ミンティア。」
3人は息を飲んだ。ミンティアは懸命に、道徳教育を受けている。

「ミンティア!」
アベックは、教室に入り込んで、ミンティアの下へ向かった。
「ミンティア、悪い事をした。もうここを出よう。全部俺が、ミンティアを愛しすぎたせいだ。」

ミンティアは聞こえないように、呆然として、アベックを見ている。

「あなた達は、一体どうしたのですか?」
白い観音様のような先生が、4人をとがめた。

「ミンティアさんなら、大丈夫です。私たちが、しっかりと彼女を守りますからね。」


4人は学校を出た。
「仕方ない。観音様がああ言ったのだから、大丈夫さ。」
「これからどうすればいいんだ?」
「今日はもう終了の時間だ。ホテルに泊まって、明日は天界見学に連れて行く。ミンティアさんは、明日も学校だから。」

ホテルは、白くて清潔だった。
高級ホテルだが、なんとなく居心地が悪い。綺麗なプールがあるが、誰も泳いでないし、バーに行きたかったが、暗くて閉まっていた。

「天国では、夜は出歩けない決まりなんだよ。」
「そうなんですか。」
「うん。」

次の日の朝は、高級バイキングだった。
とても美味しいが、不安が消えなかった。
「ミンティアは大丈夫かな?」
「大丈夫さ。観音様がついている。」

4人は、ホテルから天界に向かう透明な箱に乗る。
ヒューがチケットを渡した。
「天界は、神様になった魂が暮らす場所だよ。」

透明な箱の中にいる操縦士が聞いた。
「夢見者の方々かい?」
「はい、そうです。」
「天界は楽しいぞ。時々、暇になるけどな。」

「うわああ!!」
透明な箱での移動は、スリリングな旅だったが、とても興奮した。

「はあ‥、ありがとうございました。」

天界につくと、そこにはまた青空が広がっており、4人も空飛ぶスポーツカーに乗ることになった。
青空には、島がいくつも浮いている。

大きな島の城から、蒼い虎が出て来て、吠えた。
「あの方は、お釈迦様の守護神だよ。でも、もうすぐ、地上に戻らないといけない。神の契約期間が終了したから、人間に戻るんだ。」
「そうなんですか‥。」

お釈迦様の守護神の動物たちは、同じ島で暮らしているようだ。

4人は、運命の島に降り立った。
そこには、美しいブランコがあり、女性たちが休んでいた。

白い雲の中に、机があり、白い服を着た人が何かを書いている。

ヒューが言った。
「あの方は、運命の女神様だよ。観音様の一人だ。観音様は何人もいらっしゃるからね。」

「何をしているんですか?」

「人間たちの人生のあらすじを書かれているんだよ。人は死期が迫ると、タマワンという天界業者が、その人に会いに行って、大事な思い出や記憶、思想を持ち帰ってくる。苦しかった思い出も一緒にね。そして、大きな箪笥があるので、その中の一つの引き出しにしまうんだ。生まれ変わる時期になると、そのメモリーを、運命の王様の下に持って行く。運命の王様は、綺麗な雲の機械の中にいれて、一枚の紙を出す。それが、運命の女神様が書く紙だよ。穴埋めになっているんだ。その中に何を書くかは、運命の女神様が決める事なんだよ。」


「そうだったんですか‥。」
「ああ‥。人生は筋書き通りにはいかない。でも、祈り続ける事が肝心だよ。」

美しいペガサスが飛んできた。
綺麗な粉を落としていく。

「精霊の島に行ってみようか。」

精霊の島では、可愛らしい小さな妖精たちが、女神の白い像の水道から、粉を出して、袋に入れていた。
「あの子たちは、Essennseという粉を落とす妖精だよ。」

「幸運のEssennseだけではない。悲しみや涙、怒りを落とすんだ。でも、どれも、人生に必要な感情さ。妖精たちにしか見えない、金色の時計を見て、ひとりひとりのタイミングにあった、Essennseを落としていくんだ。」

「へぇ‥。」
「突然、涙が出る事ってあるだろう?」
「はい。」
「きっと、それはあの子達のEssennseなんだよ。」


ホテルの部屋に戻ると、ジーニーとジャフカデとアベックは、涙が止まらなかった。
ヒューが言った。
「明日、ミンティアさんが、天国のお菓子教室に行くんだって。俺たちもついて言ってみようよ。」

次の日、アベックの姿が見えないように、ぼんやりとしたミンティアと女性たち、4人は、魔法の船に乗り込んだ。

「ここに来るまでのバスの中から見えた、お城に向かうんだよ。」
ヒューが言った。

魔法の船は空を飛び、薄桃色の雲の上のお城を目指した。

そこで、パイを焼いた。
「美味い!」

ミンティアも女性たちも笑っているが、なんとなく、昔の恋人を思い出したように暗くなっている。

「ミンティア、大丈夫?」
アベックが声をかけたが、ミンティアは聞こえないように、行ってしまった。


帰りの魔法の船の中は、なんとなく虚しく、沈黙していた。

霊界につくと、ガイドが言った。
「これから、地獄見学ツアーがありまーす。地獄に興味がある方は、こちらにお越しください。」

「地獄だって。」
霊界の者達はそわそわしたが、ミンティアが真っ先にかけだした。

「ダメだ、ミンティア!」
3人が止めたが、ミンティアは、魔法の海に浮かぶ黒船に乗ってしまった。

「仕方ない、俺たちもついて行こう。」
「そうだな。」

「でも、地獄から戻れなくなる可能性もあるが、大丈夫かい?」
ヒューが確認した。
「ミンティアのためには、仕方ないよ。僕だけでいいから、君たちはついてくるな。」
「それはダメだ。君は信用できないから、俺たちもついていく。」
ジーニーがアベックに言った。

結局、聡明な表情をしているミンティアと、老婆と、4人が参加する事になった。

「参加者はこれだけですか?」
ジャフカデが、ガイドにたずねた。
「はい。でも、今日は多い方ですよ。参加者がいない時もあるんです。地獄は恐ろしい場所ですから。」

美しい海だと思い眺めていたが、目の前に黒い島が現れた。

「あの島が地獄なのかい?」
「今は島に見えているだけです。地獄は呪いがかかっています。」

「前世で罪を犯した者には、天国という選択肢はありません。初めから地獄に行き、魂を洗濯します。魂の洗濯は、とても大変な事ですよ。来世のために
とっておいた才能だとか、そういう物は全て消えてなくなります。前世の努力が全て無駄になるんです。」

「罪は犯さない方がいい。」
ジーニーが、アベックに言った。

「ミンティア。俺たちのこと、分かるかい?」
ジャフカデが、ミンティアに聞いた。
ミンティアはぼんやりとして、無視をしている。

「地獄見学ツアーを無事に終えたら、一緒に現実社会に戻ろうな。」

ミンティアは声が聞こえたように、こちらを見た。

「ミンティア、愛してる。全ては僕のせいなんだ。」
アベックはミンティアに近づいた。

「はーい、到着でーす。」

地獄の黒い島は、ツアーに参加した事を後悔させるものだった。
人間のバラバラ遺体が積み上げたり、半分燃えている人間が張りつけにされたりしていたのだ。

参加者は、目隠しをされ、門を通った。
大きな吸血鬼屋敷があり、危険な叫び声や、不気味な音がする。
階段を降り、地下に、地獄絵図に似た感じの地獄が広がっていた。

目隠しをとられ、小舟に乗った。最初はアトラクションのように感じ、わくわくしたが、徐々に恐怖に近づいた。

「ミンティアがいないぞ!」
「地獄は、男女別なんだよ。知らないのかい、ぼうや。」
小舟には、マントを来た老人が乗っている。

「おーい。」
非常階段の灯りの下にいるヒューが上から声をかけた。
「俺はガイドだから、そこには行けない。戻れるように頑張れよ!」
「わかった。」

まず、大きな鎌が左右に動く場所を小舟が通った。
小舟の老人は、鎌が当たっても、体を通過していく。
鎌がアベックに当たり、アベックはバラバラになり、川に落ちた。
「アベック!!」

「大丈夫さ、すぐに戻るから。」
老人が言った。
本当にアベックは元に戻り、川を泳いできた。

地獄の試練は、本当に危険な物で、顔も焼けただれたり、醜い水膨れが体にできたりした。

地獄の試練がひと通り終わると、魔女が火をたく窯にたどり着いた。

「窯の中にお入り。そんなに熱くないから。」
魔女は言うが、窯がグツグツ煮えている。

3人が躊躇していると、地獄の番人が、無理やりアベックを窯に入れた。
確かに、窯の水は熱くなく、むしろ冷たかった。
しかし、それからが試練だった。
アベックの体は煙になり、アベックはむせ込んだ。
霊界でも呼吸をしていたが、息は止まった。
目も閉じられない。目を見開いたままのアベックを、魔女は激しく上下に振った。

「よし、できた。」
魔女は、液体をコップに注ぎ、飲んだ。

ジーニーとジャフカデは、涙目でその光景を見た。

アベックの魂は、液体から出て、地獄の番人が持つ皿の上に、実となり落ちた。

ジャフカデとジーニーも、苦しい思いをして、実になった。
地獄の外には、広大な自然が広がっており、地獄の番人は、仙人に実を渡した。
仙人は鈴を鳴らし、不思議なつる性植物が天井を覆っている、美しい庭に入った。
庭の砂が、幻想的に光り、仙人に実を埋める場所を教えている。
仙人は、魂の実を植えた。

神秘的な音が鳴り、砂から、緑色の目が出た。
そこから光が出る。仙人はその光をそっと持ち、天界へつながるロープの小さなカゴに乗せた。
その光は、もう生まれ変わらないといけない。
その光が出たという事は、生まれ変わってもいいという証明なのだ。

だから、罪を犯した者は、天国での教育が受けられない。豊かな心を持つことができず、罪の人生を繰り返す場合もある。

天界へつながるロープの小さなカゴから、もしも光が、森に落ちれば、動物に食われる。そして、動物として、人生をやり直すことになってしまう。

アベック、ジャフカデ、ジーニーの実も埋められたが、ジャフカデとジーニーは、夜には芽が出た。
今は、ツアー中なので、カゴには乗せられない。
光となったジャフカデとジーニーは、庭の外で、元の姿に戻った。
ヒューが来た。
「お疲れ様。無事に戻ったんだね。」
「うん、ありがとう。しかし、アベックがまだなんだ。」

アベックが埋められた場所が、青白く光出した。
仙人は息を飲み、急いで、その場所に向かった。

「どうした?」
ジーニーとジャフカデは、心配そうに見た。

ヒューが言った。
「石になったんだよ。魂が本当に綺麗になるまで、そこからは出る事は出来ない。」

仙人は、青白い四角の氷のような美しい石を切なげに眺めた。

気づくと、空には朝日が射していた。
仙人は、急ぎ足で、庭から出て、小さい坂道を上った。
魂箪笥の番人に、霊界語で何か言い、魂箪笥の番人は了承して、石をしまった。

魂箪笥の番人は、書類に金色に光るペンで、霊界語で何かを書きこんだ。

3人が追いつき、ジーニーが聞いた。
「アベックはどうなるんだ?僕たちは、夢見者で、地獄ツアーに参加しているだけなんです。」
「魂が綺麗になるまで、戻る事はできません。夢見者だとしても、一定期間出てこられなければ、体は死ぬ事になります。」

「これを見てください。」
番人が取り出したのは、青白い石の中で泳ぎまわっている一匹の子魚だった。
「もう3年も戻らないんですよ。ついに魂が魚になってしまったんです。」

「じゃあ、魚に生まれ変わらせればいいじゃないですか。」
「それは、光に戻った後、魂が決めることです。あのロープにぶらさがっているカゴから落ちれば、別の生き物に生まれ変わりますから。」

「そうか‥。僕たち、アベックが光に戻るまで、待ってもいいですか?」
「今日1日だけなら、いいですよ。」

「何をしている?」
ヒューがジャフカデにたずねた。
パリーン
ジャフカデは、勝手に箪笥から石を出し、それを落としてしまった。
青白い魂が飛び出し、森に消えた。

「なんてことをした!!」
番人は慌て、どこかに連絡をした。

3人は、森の木からフルーツを取り、食べて休んだ。
鳥は、魂を探すかのように飛んでいる。

ジャフカデは仰向けになり、目を閉じた。

美しい夕日が出た時、番人が3人を呼んだ。
「おーい!アベックさんが光に戻りましたよ!」
「ええ!本当か?」

3人は駆け出した。
「よかった。」

アベックは光から元の姿に戻り、ジーニーとジャフカデがハグをした。
ミンティアも、元の姿に戻っていた。
魔法の船で霊界に戻った。

「いよいよお別れですね。」
ヒューが言った。
天界の魂のブランコで、霊界や天界や地獄の記憶を消さなければならない。

ブランコのそばでは、お釈迦様の守護神、蒼い虎神を務めていた男のお別れの儀式が行われていた。神だった男は、人間に戻るのだ。
蒼い虎は、見送りの者達を見た後、人間に変身した。

兵士の服を着て、胸にはバッチをつけ、敬礼をした。
「今まで、ありがとうございました!」

「こちらこそ、ありがとうございました!!」
みんなも泣きながら、敬礼をした。
大きな風が吹き、男は金色の光となり、消えた。
どこかに産み落とされるのだ。

ジーニーとジャフカデとアベックは、感動的な気分で、ブランコの下に向かった。
ミンティアは、健やかな表情で、空中ブランコに乗り、消えた。

ジーニーとジャフカデは、空中ブランコに立ち乗りしたので、落ちそうになった。
アベックの記憶がなかなか消えないので、アベックはブランコに乗ったまま、何回転かした。
「まだ、記憶残っていますね?」
観音様が確認した。

「いいえ。」
「いえ、あなたの記憶は、まだ残っているはずです。」

アベックはまた何回転かさせられた。

ジーニーとジャフカデは、魔法使いのカップルの家で目を覚ますと、オーファンがアベックを殺そうとしていた。
「やめろ!!」

2人はアベックを王宮に、魔法で運んでいた。

その頃、ミンティアも目を覚ましていた。
「ミンティア、目覚めてよかったわ。」
ジャスミンがミンティアにハグをした。

「アベックがまだ起きないんだ。」
ジーニーが言った。
「アベックは良いヤツだったのかい?」
ジュリアが聞いた。

「ああ。こいつと一緒にいると、最高の冒険ができるんだぞ。」

「アベックさん‥。」
ミンティアが、アベックの体にふれると、アベックは目を覚ました。

みんな歓声を上げた。

王宮の廊下を、本物のロジーが歩いてきた。

アベックの魔法で、みんなの姿を透明にした。

今はまだ旅の途中である。この先に、本物の幸せが待っているのだ。
Sky in Aloveを私が書くのは、これが最後になる。

Sky in Alove 2~魔法使いのアベック~ End

Sky in Alove ~魔法使いのアベック~

Sky in Alove ~魔法使いのアベック~

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-09-20

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著作権法内での利用のみを許可します。

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