君が自転車を降りる理由

時雨 水琴

  1. ゼロ
  2. 1

どうもどうも、こんにちは。時雨 水琴と申します。自由に思いついたことを書きました。面白いと感じてくださったら幸いです。(꒪˙꒳˙꒪ )

ゼロ

もし、世界が変わるのなら、僕は君にーーーーーーーー………………






ピピピピピ

ずっと規則正しくなる音。

目を覚ました僕は心の中でカウントする。
朝、目を覚ましてすぐに3秒前のカウントを取ることはいつのまにか日課になっていた。

サン、二ー、イチ…

"イチ"と言った次の瞬間、皿が落ちる音と、母さんの叫び声が聞こえる。

そして父さんと兄さんが慌てて向かう足音がする。

予想どうりに聞こえたそれに、僕はフッと笑うと、ベッドを降りた。

まっすぐ向かったのは机。

そこには1冊の真新しい日記があった。

中には何も書かれていない。真っ白なページが続く。


「なぁ、あと何日続くんだよ…」

そう呟いた声は静かな部屋に溶けて消えた。

1

夏真っ盛りな太陽が沈みかけ、オレンジ色が溢れてくる時間。十数分前に勢いよく降った雨のおかげでジメジメしく感じる。

朝からズボンのポケットに押し込んでいた鍵を取り出し、自転車の小さな穴にガチャンと差し込む。

そうしてから、僕はその生暖かい風をいっぱいに吸い込んだ。

「よし、やるぞ。今日こそは、」

今日こそは、絶対に何としてでも彼女に理由を聞きたい…!!!











学校帰り。

細い見慣れた風景。いつもの道。

沈みかけてる太陽が最も輝く時間。

所々へこんでいる黒ずんだガードレールが目に付く。

太陽の光によってツヤツヤと輝いている田んぼの間の細い道を通って、こじんまりとしたコンビニの所にある少し古びた信号。

…やはり、今日もまた、彼女はあの交差点で自転車を降りていた。

降りた彼女は自転車を引いてその先も続く長い道路を歩く。

特に道が上り坂というわけではなく、ガタガタいうわけでもない、比較的綺麗な道路を彼女は自転車を引いて歩く。

初めてその姿を見たのは、高校に入学して2ヶ月が経った頃だった。

自転車通学の僕は、部活が終わり家までの長い道のりをただひたすらに漕いでいた。

好きな音楽をスマホから流し、片耳にイヤホンを突っ込んで大きなビルも家も何も無い田んぼ道をぼかすようにただただ漕いでいた。

「あ、やばい。」

信号が赤にかわりそうだ。

さっきよりもスピードをあげて信号を目指す。

が、ギリギリなところで赤にかわり、仕方なく止まった。

その時、1人の女子が目に入った。


どうやら彼女は赤信号に間に合ったようだ。

彼女が自転車を降りる。

引いて歩く。

そんな姿を見たところで、信号が青にかわり僕は自転車を漕いで、歩いている彼女の横を通り過ぎる。

その日からこの場所で彼女を見かけるようになった。

そうして時が過ぎていく中でわかったことがある。

それは、彼女がクラスメイトだということ。

家が同じ方向だということ。

部活が同じだということ。

だが、僕が彼女と話したことはない。人見知りをする訳でもなく、逆に話をするのが割と得意な僕が彼女に話しかけたことはなかった。彼女は休み時間はスマホで音楽を聴いている。移動は常に1人。誰かと話している様子をあまり見た事がない。誰かが話しかけてもどこか素っ気ない。というか、彼女が放つ空気が話しかけにくくしていた。

そんな日常が繰り返し、いつのまにか僕の中である感情が占領していた。

なんで彼女は自転車を降りるのだろうか。

"聞きたい"

理由が知りたいーー。

聞いたって何か得があるわけでもなく、本当にどうでもいいはずなのに僕の中で気になって仕方が無いものとなっていた。

毎日飽きるほど繰り返すこの日に、この小さな出来事が僕を変えたんだ。

彼女が自転車を降りる理由とは





7月8日。

今日は一体何回目なんだろうか。

分からない。

もう数えるのも飽きた。

そうだ、少し話を変えよう。

今日も彼女は自転車をおりて渡っていた。

それが何故なのか最近すごく気になるんだ。

今度聞いてみようかな。






そんなことを日記に書く。

僕は机の上に分かりやすいように置いておく。

明日の朝、1番に見られるように。

この日記にはあれが起こった日から今日までの僕の全てが書いてある。

誰かが僕が書いたページを見たら、信じてもらえないどころか、頭大丈夫か?と心配されることだろう。

でも、その心配はない。大丈夫。誰にも見られることは無い。

きっとこの日記(ページ)も明日には消えるんだから。

だから、大丈夫。

君が自転車を降りる理由

君が自転車を降りる理由

ある秘密をもった男の子、主人公"僕"の話。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-09-19

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted