とどのつまり

とどのつまり

とどのつまり、
家の水道から水が出なくなった。
「なんだ9.09の台風影響か?」
千葉か何かの関係か?

ただまあとどのつまり、
「困った」
水が出ないと皿が洗えないし、トイレも流せないし、シャワーも浴びれんぞ。
「いたし方あるまい・・・」
家を出て、ポストを開けて中を弄る。
「あった」
水道修理屋さんの磁石になってるそれを発見すると電話番号を確認して、その場で電話した。ミリオネア風に言うとライフラインのテレフォン。
「お電話ありがとうございます」
って出てきた女性のオペレータに、
「水が出ないんです」
という旨を伝えた。
そっから色々と聞かれたり、言ったりして結果30分ほどで家に来てくれるという事になった。

「どうもー」
来てくれた水道屋さんはさっそく玄関で靴を脱いで、それからわざわざ使い捨てのスリッパを履いて室内に入ってきた。
うわー。
それを見て、
「大変なんだな昨今は」
って思った。とどのつまり私にはできない。無理。
それから手際よく水道の確認をして、水道管を外したりして、いろいろとチェックし始めた。

こういう時、その家の人間は何をしていればいいだろうか?
まあ、やる事も無いのでスマホを見ながら立っていると、

「ああ!」
と、急に水道屋さんが小さく叫び、
「いったん失礼します」
と言って、家を出ていった。
「何だ何だ?」
大事か?大事が発生しているのか?とどのつまり無理案件なのか?と思っていると、すぐに戻ってきて、
「とどのつまりですね」
と言った。
とどのつまり?え?現実世界でとどのつまりって言った人初めて見た。
「え?なんですか?」
改めて、伺う。
「とどのつまり、とどのつまりです」
え?
バグってるの?
それまで、いい人に見えていた水道屋さんが急に異常者になったような気持ちが込み上げる。

そんな私の不信感を察したのか水道屋さんはおもむろにカバンから内視鏡みたいな胃カメラみたいな細いカメラを出して、それを水道管に突っ込んだ。
しばらくして、
「ほら、とどのつまり」
と言って、手元にある画面をこちらに向けた。

「トド・・・」
っていうか、いやまあ、私にはアシカもセイウチもジュゴンも何も見分けがつかないけど、でも、

映し出された画面にはトドが映っている。

トドが水道管に詰まっている。
ぎちぎちに詰まっている。

「あー」
って、あ、に濁点の入った声で鳴いてる。

とどのつまり

とどのつまり

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • SF
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-09-18

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