雨音の記憶

戌井てと

 ぽつぽつ、さぁーっ・・・・・・
 窓にあたっては伝って落ちていく滴。しっとり濡らす、心地よい雨音。あなたは「子どもを迎えに行く」と、車の鍵を指先で掴んだ。「お願いね」と言うまえに、わらっちゃうから「どうした?」って返事がくる。必死になんでもないよって誤魔化して、あなたは首を傾げるも、車を走らせた。
 学校の行き帰り、田んぼばかりが広がる、あったかな風景。田植えを終えたそこは、空に浮かんでいる雲や周囲にある、一件二件ほどの家が水面に反転する。授業を受けて帰宅する、同じ毎日にみつけたときは心が踊った。その通りにある、廃止となったバス停で、気になる人といる時間。
「ずっと降ってるよな」
「梅雨だもんね」
 嫌いだった梅雨。声にしたくない二文字が、その人といることで、良いものに変わっていった。
 アスファルトに張った水溜まりが、車のタイヤによってきれる音が。帰ってきたかな。
「一緒に待ってた男子とは、友達?」
「そうだよ? なんで?」
 そういえば、お父さんにも似たようなことを聞かれた。今のあなたは、あのときの父と、同じ想いなのかな。

雨音の記憶

カクヨムで投稿してるのを、リメイクしました。

雨音の記憶

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-09-18

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