救済者

 人々は、古い世界でかつておこなわれていた太陽の信仰を忘れた。太陽が神だった世界は終わり、象徴としての太陽の役目は小さくなりつつある時代。もはや人々は疑いもなく自分こそがその活力と才能を持つと信じて疑わなくなった。
 実際彼等の中では、そうした装飾がはやっていた。けれどシンボルは統一されてなくては、人々一般に認められるものとはいえない。つまり再び彼等は太陽をもした装飾その胸に抱き巷、都市をあるいた。コンピューター、機械を体の一部に宿すと同じくらい、簡単に胸に太陽をもした電子的な光をともした。
 人々は、いつかくるAIが人間を超す世界を恐れてー自分もまた機械化しようと考えた。そして恐怖をぬぐいさった。しかしその噂は100年も前から行われていたが、いかんせん技術のスピードはある地点から、成長が緩やかになった、今ではもうあまたある災害や地球滅亡説といった、カルトやデマと同じように、シンギュラリティも扱われる。
“とうとう人々は技術的特異点”までに自分たちを振り返る事はしなかった。けれど自分だけが助かる事を望んで、科学的に発達した世界の一部を自分の身体に埋め込んだ。
 【とうとう技術的特異点が訪れるときまで、人は自分が生き残る事しか悩まないだろうと思われる】
 ただ、まるで太陽が持つような凄まじく力のある能力を、自分ではなく他人が持つことに期待して、あるいは一部の人間が持たない事を望んで、標準的無差別化、均等化を今日いまこの瞬間ものぞんでいる。
 そうして彼等は安楽を手に入れたが、“技術的特異点”が訪れるその前から、人々は、只一人の人間になろうとしていた。その時点で、機械がもつはずのなかった多様性というものを人類自ら開け渡してしまったのだ。

救済者

救済者

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-09-17

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