どこかで生きるものたちへ

約束のバニラビーンズをまぜこんで
とろり、やわらか、やさしい月は
怖いほど深い桔梗の世界にて
すました顔してくるりとまわる

まいごのこ、きらりを探して泣きながら
顔あげた先に燃えるシリウス
風もなくひろがる世界のすみっこで
必要なのは冷房? ストーブ?

愛すべきまるのかたちのいきものの
命のかたちもきっとまるくて
尾も腸も痣もほくろも生も死も
ぜんぶわかっておさまっている

ラジオからきこえた気がした雑音は
あの日叫んだ彼の悪口
果ての果てまで逃げたって追いつかれ
少女は耳をもう信じない

感覚にふりまわされて目をまわし
落とした記憶に引っ掻いた痕
ガラクタがつまれた山に敬礼し
背を向けてまた織るダンボール

ただいちど出会えた言葉のおもかげを
涙とお茶をこぼしてさがす

どこかで生きるものたちへ

どこかで生きるものたちへ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-09-16

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