どこかで生きるものたちへ
約束のバニラビーンズをまぜこんで
とろり、やわらか、やさしい月は
怖いほど深い桔梗の世界にて
すました顔してくるりとまわる
まいごのこ、きらりを探して泣きながら
顔あげた先に燃えるシリウス
風もなくひろがる世界のすみっこで
必要なのは冷房? ストーブ?
愛すべきまるのかたちのいきものの
命のかたちもきっとまるくて
尾も腸も痣もほくろも生も死も
ぜんぶわかっておさまっている
ラジオからきこえた気がした雑音は
あの日叫んだ彼の悪口
果ての果てまで逃げたって追いつかれ
少女は耳をもう信じない
感覚にふりまわされて目をまわし
落とした記憶に引っ掻いた痕
ガラクタがつまれた山に敬礼し
背を向けてまた織るダンボール
ただいちど出会えた言葉のおもかげを
涙とお茶をこぼしてさがす
どこかで生きるものたちへ