夏の夜空に降るあなた

そうね、
時代の終わりに星屑になるのは
幸運ですと十字を切りましょう

ぬるくなった缶ビール
濃厚ぶどうジュースの粒
ゆるゆる天の川に注がれて
そのまま果てまで流れていくから
わたしは心底ほっとして
贔屓の映画を観にいくわ

みだりにはじけるポップコーンは
生まれたばかりの細胞なので
顕微鏡でそうっと覗けば
ビッグバンなら観測できる
だって、地球はまるいもの

北極点にも南極点にも
こっちにおいでと呼ばれた夜の
「どちらにしようかな」
どこにいくのも同義と知って
遠心力で飛びたつ夜明け

目玉を焼いたフライパン
割れた殻から這い出るときめき
心も砕けたわけではないのよ
気高く駆けて風車にからまる
粉々になった白い破片が
懐かしい木々を励ますのね

桜は必ず散るのですから
終焉に星屑になる幸せを
諸手を挙げてよろこびなさい
美しく逝くストーリー

夏の夜空に降るあなた

夏の夜空に降るあなた

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-09-16

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted